2月26日【2月26日】
「この世界は決められたシナリオの上に成り立っている。そして、シナリオ通りにいけば、地球は滅ぼされてしまう。僕らはそのシナリオを変える役割に選ばれたんだよ」
そう語るのは、隣を歩く少年だ。ごく普通の、どこにでもいるような出で立ちをした少年は、世界を救うためにと、どこかの機関から派遣されてきたらしい。
しかし、買ってやったばかりのアイスをくわえながらそんなことを言われたところで、信じる気にはなれない。そんな私の気も知らず、少年は続ける。
「もし滅ぼされても、地球はもう一度巻きもどるんだ。役割に選ばれた人間のデータ以外は、完全にリセットされてしまう」
巻き戻った後の人々は記憶がリセットされるらしい。
「だから、次からは僕と一緒に覚えててほしいんだ」
少年は平然と言った。
世界が滅びるのが初めてではなかったことを、その言葉でようやく理解した。