2月28日【2月28日】
生贄を選ぶらしい。
大人達が、これは名誉なことなのだと口を揃えて言っていた。何の為の生贄なのか、何が生贄を欲しているのかは誰も教えてくれなかった。
走り回って情報を集めようとしていると、不自然な人だかりが見えた。なぜ大人達が集まっているのか、その原因は遠目からでも見ることができた。
ピンク色の派手な髪をした少女に、真っ黒な煙のようなものがまとわりついている。少女は境内の中心でぐるぐると円を描くように歩いていたが、突然姿が見えなくなった。
雨が降り始めた。大人達が歓声を上げた。狂ったように笑っていた。そこからはもう、祭りのようになっていった。
誰一人として、少女を助けようとする人は居なかった。
いても立っても居られず、辺りを見回す。すると、神社の裏の祠に、不自然な十字架が置かれているのを見つけた。朽ちかけた木で作られたお粗末な物だったが、これが何かに関わっているような気がした。
十字架を手に取って、両手で押し潰した。
すると、祠の隣に先程の少女が現れた。呆然としているが、自我はしっかりとあるようだ。
大人たちに見つかる前にと、手を取って走り出した。
雨が止んだ。