別れと再会、終わりと始まり妖怪ウォッチの男の子主人公とウィスパーとジバニャンと犬神の話です。男の子主人公が年老いた後、どうしたのかなって素朴な疑問で書いてました。
く、暗すぎるだろ・・・・・!!!!
とりあえず、若干死にネタなのでご注意。
あと、今回は名前表記内のでお好きな名前を思い浮かべて読んで下さい
「好きだよ!」
と、その子は笑顔で言う。誰に対しても隔てが無く、人間や妖怪にも優しい。
「かわいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
と、その子は叫んでは抱きついたりしてきた。よく体の小さい妖怪は圧死しかけては、周りで助けていたものだ。
「なんで、そんな無茶するんだよ!!!!」
と、その子は滅多に(でも本気では)怒ることは無かったが、何か過ちをした時は叱ってくれた。笑ったり泣いたり怒ったりとクルクルと変わる表情は、見ていて飽きなかった。人間にも妖怪にも優しいその子は、いつしか老いていた。
自分の子供、孫が産まれても、変わらず妖怪達にも同じように接していた。側にいた白いのも、赤いのも微笑ましく、少しずつ来る別れの時を予感していた。
「早く良くなってね」
孫はそう言って、帰って行った。小さく手を振り、孫の姿が見えなくなるとベットに倒れ込む。最近は、喋るのにも体力が居るようだ……誰かが帰った後は、ため息をつきベットに倒れ込むようになっていた。
「お疲れさまでウィス、はいお茶」
「ありがとう、ウィスパー」
「チョコボー食べるニャン?」
「大丈夫だよ、ジバニャン。ただ、撫でさせてー」
「しょうがないニャー。思う存分撫でるニャ!」
「ありがとうー」
そういってお茶を飲み、優しく赤いのを撫でていた。赤いのは、気持ちよさそうにゴロゴロ鳴いていた。白いのも赤いのも私も何も言わず、ただ穏やかで物寂しい時間が過ぎる。
撫でている本人は、撫でながら窓の外を見ている。
「もう、長くない」
小さく呟いた言葉に、赤いのは飛び起き、白いのは驚きで何も言えず、私は目を伏せた。
「ウィスパー、ジバニャン。それに、犬神、今までありがとう」
窓から順繰りに目線を合わせ、微笑んだ。
「そ、そんな事言うニャン!!!! まだ、まだ大丈夫ニャン!」
「自分の事は自分で分かるんだよ。俺だって、君らを置いて逝くのは辛いよ」
頭を優しく撫でると、赤いのは下を俯きピタッと引っ付いた
「……そんな事、そんな事言うのは卑怯ニャン……」
「うん、卑怯だね。でもね、心残りあるなら、それなんだよ。子供も出来て、孫の顔も見れた。それは凄く嬉しかった」
優しく頭を撫でながら、寂しげな微笑みも浮かべていた。あれから長い年月が経った。皺だらけの顔になっても、その輝かしい笑顔だけは変わらなかった。
「だけどね、君らは俺よりもずっと生きるでしょ? そんな君達を置いていくのは、凄く辛いんだよ」
「私達も辛いですよ、君が居なくなるのは……ウィス……」
「嫌ニャン、置いてかないで欲しいニャ……」
片手を赤いのを抱き締めつつ、白いのを呼び寄せて頭を軽く撫でてやりながら抱き締めると、ちょいちょいと手を振られる。何も言わず近付くと、少し屈むように言われると白いのと挟むように抱き締められた。
「皆に会えて、嬉しかったよ。毎日が楽しかった。だから、」
残して逝ってごめんね……ありがとう。
白いのと赤いのは泣いていたが、私は何も言えず、ただただ抱き締められるがままだった。それから、数日してあの子は逝った。
最後のその時も、あの子の家族と混じって、私と白いのと赤いので看取った。
その表情は、穏やかだった。最後の瞬間。私は、たまらずその手を握った。歳を重ねてしわしわになった、その手を。ただ、それだけの事なのに、その子は笑った。言葉が無くとも、想いは伝わるほど長く、側に、ずっと居た。
「人間に深入りすれば、残されたとき辛い思いをするだけだ」
自分と同じ姿をした妖怪はそう言っていた。それは自分に対することだったのか、それとも己に対する言葉だったのか……今となっては分からない。私は一人、おおもり山神社に来ていた。ここで、私はあの子と出会い、そして生きた。
それが、今日全てが終わった。
「……」
涙は出なかった。あの子が生きている間に、一度だけ泣いた……あの子の前で一度だけ。あの子はそれでも穏やかな顔で、何も言わず頭を撫でていた。だけど……
「もう、何もかも過去なのですね」
そんな風に思いに耽っていると、何かが近づく気配が。振り向くと、あの子の孫だった。年の頃は、出会った当時のあの子と似ている。その脇で、白いのと赤いのも居る。その子は、泣きはらした顔をお社に向けた。何故、ここに? 私の視線に気付いたのか、白いのは言った。
「あの子の遺言ですよ」
「遺言?」
曰く、自分が死んだ後、孫に妖怪ウォッチを託す。それを身に付ける付けないは、本人の意志に任す。もし身に付けた場合は、“長年の友人達を宜しく”と。
「そういうことか……」
生前、白いのも赤いのも居ないとき、泣いた日。あの子は言った。
「叶うか分からないけど、そんなに寂しい思いはさせないと思うよ」
そんな風に言いながら、頭を撫でていた時があった。
「そういう……ことか……」
口元を覆いながら、もう一度小さく呟いた。何処までも、何処までもお人好しな人間だ。
「え、居るの?ウィスパー居るの??」
「あ、あぁ、すみません。妖怪ウォッチのレンズで、お社近くを覗いてみて下さい。アナタのお爺様が合わせたがっていた妖怪が居ます」
白いのに言われるがままに、私に向けてレンズを向ける。私が見えるようになったのだろう。酷く驚いた様子を見せて、固まってしまった。余りにも反応が無いので、お社の上から眼前に降り立つ。
「おわああ?!」
「いつまで固まっているのですか? ……今更怖じ気つきましたか?」
「ううん、違うよ。おじいちゃんから聞いていた通りだなって」
「え?」
「すっごくね、綺麗な白い妖怪だって。とても、とても綺麗で自慢の友達だって! 本当にそうだったから、びっくりしちゃった!」
ああ、笑った顔もますます在りし日のあの子にそっくりだ。
「ねぇ、アナタの名前はなんて言うの? 私は“ ”だよ!」
知っている。病室によく来ていたから。でも、敢えて知らない振りをする。これから長い付き合いになるんだ。
「私は犬神。“ ”でしたか。ならばアナタに、これを」
何処までも、お人好しな変わり者の人間の孫だ。きっと、何かと厄介事に巻き込まれるだろう。だったら……。
「私との友情の証に。メダルを」
これからも、また側に居させて貰おう。あの時と同じように。
・オマケ
「犬神ー!!!!!! 犬神、ヘルプぅうう!!!!!!」
「・・・・・・・・何をやってるのですか、アナタは」
「ジバニャンが、あの子にちょっかい出して、巻き込まれたああああああ!!!!!! 助けてぇえええ!!!!!!」
「・・・・・・・・」
「お願い! 呆れてないで助けて!!!!!!」
(あの子といい、この子も。本当に、どうして、こうトラブルに巻き込まれやすいのか)
そう思いながら、大切な子供からの要請に答えるべく呆れながらも向かうことに。