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    なさけないはなし
    本当に参った。

    体調が悪いのだ。朝起きてその日がどれほどいい天気でも気分が良くならない。胃のあたりがなんか重い。食べてもいないのに。動悸がして熟睡できなくなった。食欲も、紅茶こそ飲めはするがしっかりした食事を目の前にしても食べられる気がしない。頭がぼーっとして、貧血になった時のように足元がなんとなくふわふわしている。

    「顔色が悪いな、Q。大丈夫か?」

    原因は目の前にいる。地下の照明に照らされた金髪がやけにぎらぎら光っているような気がした。
    「大丈夫です。ちょっと忙しいだけなので」
    まったく大丈夫ではないのだが、今ここで「原因はあなたです」と本人に言うメンタルは僕には残っていなかった。ほんとうに、残っていなかった。
    ボンドは小さく肩をすくめると、「無理するなよ」と言ってQ課を去っていった。僕は多分、「ええ」とか「はい」とか、「お疲れ様です」とかなんとか返事をして、普通に振る舞った、筈だ。たぶん。手元にある備品のチェックリストには書き込みがあるので、大丈夫、問題なく帰投後のやりとりを終えたはずだ。大きくため息をついて、僕は倒れこむようにして椅子にへたり込んだ。


    ***


    こんな風ではなかったのだ。一体どうしてしまったんだろう。そもそも、局内では誤解されていることもあるだろうけど、ボンドと僕は犬猿の仲、というわけではない。スカイフォールの一件から数ヶ月が経って彼のナビを担当し始めてから、そりゃ装備を持って帰ってこないとか若造だとからかわれたりとかということはあったが、それなりに飲みに行ったり立ち話をしたりする仲だったのだ。というか、ボンドは僕にしては珍しくーー次兄と長兄が聞いたら間違いなく驚くだろうーー妙に馬が合う、興味の持てる相手だった。そして、ボンドの方もどうやら僕に興味を持っていた。不思議とナビ中はぴたりと息が合い、姿が見えなくとも声や呼吸で考えていることがわかった。どうしようもなく意見がぶつかったときもあったが、互いの思考言語を知っているのでぶつかること自体は問題にならなかった。互いが互いを振り回しながら手綱を引き合う感覚が、妙に気持ちいい。僕らは一緒に仕事を始めてから割と早い段階でなんとなくパブに安酒を飲みに行って、会話でじゃれあってはそれをおもしろがっていた。僕らは驚くほど共通の話題が無かったが、どうしてだかそんなことは問題にならなかった。つまり、僕らは友人になった。
    なので、まだたった数ヶ月の仲ではあるが、僕はボンドの妙に細かいどうでもいいことを知っていた。食通だけどグリーンピースがどうしても食べられないとか(15分は笑いが止まらなかった)、ロンドンにいる時のランニングのコースとか(セントジェームズパークをぐるぐる回っているそうだ)、走ってる時に必ず会う犬の種類とか(黒のラブラドールだそうだ)、飛行機に死ぬほど乗っているので多分コーヒーの味で航空会社を当てられるとか(嘘だと思う)、そういう、本当にどうでもいいこと。
    逆に、ボンドも僕のどうでもいい情報をよく知っている。ハーシーズのチョコレートを箱で買ってストックしてるとか(紅茶に漬けるのが好きだ)、スター・ウォーズの新作に何回通ったかとか(回数は伏せておく)、朝寝坊して靴下を履き忘れたことがあるとか(寒かった)、コーラにメントスを入れてみたいけど勇気が出ないとか(メントスコーラで何が起こるのかから説明した)、そういう、しょうもないことだ。


    ところが。


    突然自覚してしまったのだ。この前、ナビ中に銃声とともにボンドとの通信が切れた時、僕は動揺してマグカップを割り、さらにそれを帰ってきたボンド本人に指摘されて、しかもボンドが新しいマグを買ってきてデスクに置いていったもんだから、もうだめだった。どうしようもなかった。何を考えているのか知りたくなるような人が、どうでもいいことを話して笑うような人が、冗談抜きで、世界を守っているのだということがどうしようもなく誇らしくて、自分はきっとこの人を支えるためならなんだってやるだろうと思ってしまうような、そして自分にそこまで思わせるような人が、僕にとってどれほど大きな意味を持っているか。認めざるを得なかった。この人に無事でいてほしいとごく自然に考えることが、僕にとってどれだけ特別なことか。
    自覚したら地獄のようだった。いつもの思考力や判断力が無くなり、自分が自分でなくなっていくような感覚に僕は怯えた。せっかく信頼できる友人を手に入れたと思ったのに、自分にとってボンドが大事な人だと気づいた途端、これまでの自分には戻れないような、急に自分が頼りなくなったような、心細い気持ちになるのだ。それでも、会って話せばするすると会話が噛み合って、居心地の良さばかり感じてしまう。離れた途端ボンドが自分にとってどれほど大きい存在か突きつけられて苦しんだ。このアップダウンに僕はとてもついて行けなかった。こんなスピードで感情が揺さぶられたことは30年近く生きてきて一度もなかった。一番癪に触るのは、僕自身がこの気持ちを何と言うのか知らないことだ。人によくわからない感情を(おそらく無自覚に)植えつけていったボンドも癪に触る。なんでボンドにこんなに心をかき乱されないといけないんだ、僕が! もし、これが恋、もしくは愛であるとしたら、こんなに心身の不調を伴う不可解極まりないものだとは知らなかった。なんで誰も教えてくれなかったんだ。



    そういうわけで、僕はここ最近すこぶる調子が悪い。最悪なのは、そろそろこの不調をボンドに勘付かれるだろうな、という謎の予感がすることだ。そして、僕にはわかる、こういう予感は往々にして当たるのだ。


    ***


    「食べるか?」

    金曜の夜、1人課に残って仕事をしていたら、ビールとデリの袋を2人分抱えたボンドがやってきて言った。賭けてもいいが、僕が絶対に追い返すことをしないと分かってやっている。そして、僕は実際彼を追い返したことはなかった。

    「なんであなたがこんな時間までいるんですか」
    「仕事だよ」
    「嘘だ。金曜ですよ」
    「Mに呼ばれて会議に出てた」
    「……Mは夕方帰り際に僕に資料を渡しに来ましたけど」
    「わかった、白状しよう。君を待ってた」
    「隠す気ないでしょ」
    乾いた笑い声と一緒に言ったら、ボンドも笑いながら言った。
    「まあ、そうだな」
    それで? ボンドはビールの瓶を差し出して僕の顔を覗き込んだ。
    「……職場ですよ」
    「職場だからだろ」
    僕はため息をついて瓶を取った。取ってしまった。こんな不調時にアルコールなんて摂取したらどうなるか、後悔することはわかっていたのだが。





    「………マグカップ」
    「ああ」

    デスクに並んで座って、しばらく2人とも黙ってビールを飲んでいた。ボンドはデリのローストビーフを摘んでいたが、僕はほとんど口にしなかった。申し訳ないが、出来るわけがなかった。

    「Jのやつ」
    「ああ」
    「置いときました」
    僕はビール瓶をじっと見つめていたが、横でボンドが少しだけ笑ったのがわかった。
    「ありがとう」
    「僕のと似てるから、間違えてあなたの取りそうで」
    デスクに深く腰掛けていたので、僕の足は浮いていた。所在無くぶらぶらさせていたら、ボンドが横からわざと足をぶつけてきた。ぶつけ返す。
    「確かにそうだな」
    「部下が間違えてあなたのに紅茶を淹れちゃって、なんか似合わなくて笑っちゃいました」
    きっと高いんだろうな、この靴。
    「Jのマグにアールグレイか」
    「はい。もったいないから飲みましたよ」
    「僕のマグなのに?」
    「あなたのところに持ってったとしても飲まないでしょ、紅茶」
    「君のマグにコーヒーだって似合わないだろうな」
    「そうですね」

    体温でぬるくなっていくビール瓶を見たまま笑ったら、ボンドも笑った。ちょっと泣きそうなぐらい居心地がよかった。でもものすごく悲しかった。僕はきっと、この夜を終えたらボンドを遠ざけようとする。はっきりとは言わずに、ゆっくりと、きっと彼は気づくかもしれないけど、優しいから多分何も言わないでくれるだろう。そうやって徐々に、こうして安いビールを飲む機会を断って、ふざけて足をぶつけたりするのをやめて、軽口は叩くかもしれないけど、一線は引いて、それで、たぶん大丈夫。傷は残るし痛みはすごいだろうけど、きっと慣れる。心を閉じてしまったほうが楽なのだ。だって、僕が抱えているこの感情は、肥大した友情なのか恋なのか愛なのか知らないけど、きっとボンドが僕に対して持っているものとは違うものだ。この、なんだかよくわからないこれを、ボンドに投げつけて彼を困らせてしまうぐらいなら、知らせないでいて彼を遠目に眺めている方がよっぽどいい。
    これでいいんだ。

    キュウ、とボンドが呟いた。

    「僕が知らないうちに君に何かしてないといいなと思ったんだが」

    心臓が気持ち悪く音を立てている。僕は黙って首を振った。ボンドは小さな声でそうか、と呟いた。
    触れ合っていた靴の先が離れていく。



    ***



    「メキシコですか」
    「ああ、メキシコだ」
    「骸骨の格好とかするんですか?」
    「ひょっとしたらな」
    「お土産あります? サボテンって言ったら怒りますよ」
    「サボテンかな」
    「絶対いらないです、やめてくださいね僕のデスクに勝手にサボテン置いて行くの」
    「いいじゃないか、サボテン」
    「1メートルぐらいのサボテンをジェスチャーするのやめてください」
    「武器にもなるし」
    「世の中の物質に武器になるかどうかで価値をつけるのやめません?」

    この時はメキシコであんなことになるとは思ってもみなかったが、休暇を取ると言ったボンドと最後に交わした会話はかなりのんびりしたものだった。結局サボテンは買ってこなかったが(そもそも飛行機に持ち込めないんじゃないか?)、代わりに僕は彼に時計をあげて、さらに危険すぎるおねだりを聞く羽目になった。まったくこっちの気も知らないで。
    ポストカードを送るよ、なんて。
    実際、ボンドが休暇先からふざけたポストカードを僕に送ってくることはよくあった。僕らの間のちょっとしたジョークで、外国に行っているというのにボンドはわざわざ空港で売っている飛行機の写真のポストカードを送ってくるのだ。飛ぶのが嫌いな僕をからかって。非常に不本意だし、悔しいけれど、1つ残らず取ってある。
    そう、1つ残らず。ボンドと初めて会ってから四年が経っていて、僕が彼に対するよくわからない大きな感情を封じ込めてからも四年が経っていた。一度こうと強く決めてしまえば驚くほど楽になって、僕の心の平穏はほとんど取り戻された。相変わらず軽口を叩き、戻ってこない装備に文句を言い、任務や休暇で行った先のお土産をふてぶてしくたかってみせたりする。半年に一度ぐらい飲みに行って、どうでもいい、当たり障りのない話をして笑ったりする。なくなったのは、ふざけて足をぶつけ合ったり耳を引っ張ったり、頬をつねったりすること、ぐらい。
    時間が解決してくれることは山ほどある。偶然かどうかわらかないが、僕のボンドに対する感情がただもう膨れ上がる一方だったあの数ヶ月、彼にはガールフレンドがいなかった。多分偶然だと思うけど。今はもちろん違うし、僕ももう特になんとも思わなかった。自分がジェットコースターのような感情を抱えていたことを忘れることすらあった。それはびっくりするほど穏やかな痛みで、僕らはやっぱり友人だった。









    ない。
    重い音を立てて開いたガレージの先にあるはずの、DB10。ない。009の、いや元はボンドのだったけど、ていうか改造したのは僕だけど、ない。シャンパンがある。意味がわからないけど、いや、わかるけど、誰が持っていったとかなんでシャンパンがあるかとか、わかるけど、シャンパンがある。意味がわからない。シャンパンが、ある……。

    「Q、いるかい?」

    背後で朗らかな声が聞こえた。009だ。最終確認をしたら持っていくから上で待っててくれと言っったのは僕だ。

    「ごめんね、待ってたんだけど外寒くて、来ちゃった。でも地下もそんなに変わらないかな……」

    oh、という小さな声とともに軽快な足音が止まる。続いて、ふ、という笑い声。立ち尽くす僕にゆっくりと近づいて、009は僕の肩にポンと手を置いた。





    「よく朝からシャンパンなんて飲めますね」
    「だって車無いから、試乗もなにもなくない? すごいいいやつだよこれ」

    ラボのヒーターの前に仮眠室から取ってきたブランケットを敷いて、僕と009はこの時間からシャンパンを開けていた。最も僕は手をつけずに紅茶を啜っていたけど、009は来客用のマグに注いだシャンパンをちびちびと舐めている。
    009ともそこそこの付き合いがあった。ボンドよりかは短いが、何度か装備を揃えたりナビをしたりしたことがある。僕やボンドよりも背が高くて、妙に柔らかい物腰をしているので優男にも見えるが、近くに来るとかなり体格がしっかりしているのわかる。ダブルオーの中では一番僕と歳が近く、昇進したばかりのころは何かと接点を持とうとしてくれた。茶金色のフワフワした髪と眼鏡、なぜかスーツを着ても清潔感がある髭がトレードマークだ。初めて会った時、「地下にいると髪の毛跳ねない? 僕もなんだよね」「その眼鏡どこのやつ?」とマイペースに話しかけられたことは、今でもよく覚えていた。

    「全部飲むんですか、それ」
    「いや、いくら僕でもそれは流石に……Mに持っていきたいところだけど、ボンドはDB10でどこに行ったんだって問い詰められるだろうな。彼がどっか行ってるってMは知らないんでしょ?」
    「………仰る通りです」
    溜息とともに行ったら、彼はエヘヘ、と特徴的な笑い声を漏らした。
    「だと思った。持って帰るよ、これ」
    「すみません、これでもし何かあったら、あなたも巻き込んじゃうことになります」
    「今更だって、そんなの。気にしないで」

    この人はとても穏やかないい人なのだ。歳が近いのに距離感を保つことを忘れず、誰のことも等しく尊重して扱う。殺しの許可証を持っているとはとても思えない、善良な人だ。殺しの許可証を持っていることと善良であることを両立させるのがこの世界であるということは、わかってはいるけれど。

    「ちなみに聞くけど、きみはボンドがどこにいるか知ってるの?」
    「知りたくなかったんですけど、スマートブラッドがあるので知らざるを得ません」
    「ああ、そっか……折角いろいろ付けてもらったのにね。楽しみにしてたんだけど」
    「シナトラ、つけたんですけどね」
    009はシャンパンに口をつけようとしたが、まるでそれをすっかり忘れたかのように僕を見た。
    「本当に?」
    「僕は真面目なんです」
    「ありがとう、嬉しいよ。実際に聞けないのが残念だけど……ボンド、聞くかなあ」
    「嫌な顔するでしょうね。いい気味だ。次ボンドに車を作る機会があったらまたつけてやろう、嫌がってもつけてやる……」
    僕の恨み言に009はまたけらけらと笑うと、モバイルを取り出した。
    「ボンドにはニューヨーク・ニューヨークより似合う曲があるよ」
    「シナトラですか? ダブルオーって古い物好きが多いですね」
    「古い部署だから」

    イエローの華やかなカバーがつけられたモバイルから、それはそれは派手なスウィングが流れてきた。


    I’m gonna live till I die!
    I’m gonna laugh ’stead of cry
    I’m gonna take the town and turn it upside down,
    I’m gonna live, live, live until I die

    おれは死ぬまで生きるつもりさ
    泣く代わりに笑ってやるつもりだ
    この街をモノにして、思いのままにするんだ
    おれは生きる、死ぬまで生きるんだ


    「ね、死なないエージェントにぴったりでしょ」
    マグを持ったまま笑い転げる僕に009が言った。
    「最高です。DB5につけてやりましょう」
    僕らはそのまま音楽を聴きながらしばらく笑っていた。そもそもダブルオー同士はあまり接点がないので、ボンドは009のことをただの009だと思っているが、009のほうはボンドに絡みに行ってはおもしろがっていることを僕は知っていた。僕らはちょっとその点で結託している節がある。はるか年上の同僚をいかにやり込めるか、というような。

    「Qはもう、ボンドと前みたいな付き合いはないの?」
    「………はい?」

    笑いが途切れて、彼がふと言った言葉に僕は思わず動きを止めてしまった。紅茶はもうとっくに冷めている。

    「いや、君たちずっと一緒に仕事をしてるから、仲がいいのは知ってたんだけど、途中からちょっと雰囲気が変わったなと思って」
    「……えっと」
    「余計なお世話だったかな、ごめんね。でもなんか心配だったんだ、ずっと」
    「あ、いや、違うんです、その……」
    自分でも驚くほど動揺していた。隠し通していたつもりだったが、彼にはばれていたらしい。
    「つきあってるのかなとか、思ったりしたんだけど」
    「ま、まさか!」
    「違ったんだね。ごめん、変なこと聞いて。僕の勘違いだった」
    「いや、勘違い、というわけでは」
    ああ、僕は一体何を支離滅裂なことを言ってるんだ。ジェットコースターのような感情が呼び起こされつつあった。まずいぞ、使い物にならなくなってしまう。009は案の定首を傾げている。
    「あの、……情けない話なんですけど」
    「うん」


    気づいたら僕はそれはもういろんなことを彼に話してしまっていた。アルコールが入ったわけでもないのに、ていうか入ってるのは009の方のはずなのに、蛇口が壊れてしまったように、一度話し出すともう止まらなかった。
    「……だから、大丈夫なんです、概ねは。もう4年も前のことだし、あんな苦しい思いをするのは、ほんと、勘弁してくださいって感じで。ボンドのことは、ま、大事ですけど、僕が1人で勝手にやってることなんで」
    全部話し終えて、僕は大きく息をついた。今日が日曜の早朝で本当によかった。それまでずっと冷めきった紅茶を見ていた目を隣に向けると、009はなぜかちょっと泣きそうなような、困ったような、優しい顔をしていて、小さな声でこう呟いた。



    「すてきな感情を持ったね」



    話してくれてありがとう。君がもっと幸せになれたらいいのに。
    照明に照らされた茶金色の髪がきらきら光っていて、僕はちょっと涙が出た。





    ウェストミンスター橋が燃えている。正確には、橋に突っ込んだヘリコプターが燃えている。Mがものすごい剣幕で警察を蹴散らし、立入禁止のテープの中に入っていく。タナーは本部と連絡を取ろうと必死に電話をかけていた。僕はといえば、ラップトップの入った鞄を走るために両手で抱えた体勢のまま、テープと、Mと、大量のパトカーと、ヘリコプターの向こうにいる、地面に付したオーペルハウザーに銃を突きつけるボンドの姿を目にして固まっていた。イヴはそんな僕を横目で見ていた。
    11月だというのに、燃えるヘリの熱気がこちらまで来てひどく暑かった。いろんなものの向こう側にいるボンドは、僕がいつもモニターで見ていたように、とても小さく見える。小さいボンドのさらにずうっと向こう側に、ミス・スワンが立っているのが見えた。

    「Q」
    イヴが僕の顔を心配そうに見ている。
    「大丈夫?」
    「……ええ。ちょっと、………待ってください、もう少し」
    「そうね」
    イヴは納得したように頷いて、僕と同じ方向に顔を向けた。僕は鞄を抱きしめる手にぎゅっと力を入れて、小さなボンドを穴が空くほど、ほとんど睨みつけるようにして見て、念を送った。



    撃つなよ。
    撃ってこっちに戻って来たら許さない。



    あ、と、イヴが小さく声を上げる。ボンドがなにかをヒュッと川に投げ捨てた。

    銃だ。


    ああ、と口から勝手に声が漏れた。ボンドはそのまま橋をまっすぐ歩いて行って、ミス・スワンにキスをすると一緒に立ち去った。
    別にそんなことなかったのに、僕はまるでそれまでずっと、あの人に対する気持ちを閉じ込めてからずっと、僕自身の息も止め続けていたかのように、大きな大きな、長いため息をついた。これまでの感情を全部全部出して、ここにちょうどある炎で燃やして熱い空気にしてしまって、空に飛ばしてしまうように、僕は大きく息をついた。鼻がツンと痛くなる。鞄を抱きしめたまま泣き出した僕を、さらにイヴがぎゅっと抱きしめてあやすように背中をさすった。イヴにこのことは話してないと思うんだけど、まあそんなことは、今はちょっともうどうでもいい。

    「………よかった」
    涙で震えた情けない声でやっと言った。
    「そうね、よかったわね」
    よく頑張ったわ、あんた。イヴはひどく優しい声で言った。ああ、僕はきっと僕が思ってるよりもずっと沢山の人に助けられている。








    僕の涙が盛大についてしまったイヴの上着は、平謝りしたのちにクリーニングに出して、チョコレートと一緒に返した。なんで僕の気持ちを知ってたの、というようなことをごにょごにょと聞いてみたら、
    「あんなに2人とも楽しそうにしてるのに、気づかないわけないじゃない」
    だそうだ。ボンドがどうだったかはともかく、少なくとも僕のほうはダダ漏れだったわけだ。ああ情けない。

    ほっとしていた。すごく大きな仕事を1つやり遂げたような気持ちだった。ダブルオーセブンが生きて引退するまで彼を絶対に死なせないという、ニキビ跡の残った若造には途方もなく巨大な仕事。死にたがりの老犬の手綱を引いて、崖からなんとか引き離して自分の元に戻って来させる、4年前にナショナルギャラリーから始まった仕事だ。どちらがどちらの手綱を引いているのか分からなくなることはしばしばあったが、それでも僕らは互いが歩みを止めることを許しはせず、仕事を続けてきた。
    DB5の鍵を渡すことに迷いはなかった。一応あれはMI6の車なので、Mの雷をまともに喰らいはしたけれど、僕にとっては4年がかりで身も心も削ってやってきたことの仕上げなのだ。ボンドを幸せに向かって送り出す仕上げになるなら、例えそれが飛行機でも涼しい顔で渡していただろう。老犬を死なせないための僕の最後の仕事は、もう戻ってくんなよと言って首輪を外し、彼を愛してくれる人のところへ離してあげることだったのだ。これでよかったんだ。おつかれさまでした、ダブルオーセブン。これで任務は終了です。絶対戻ってくんなよ。




    ***




    マドレーヌと僕は似たもの同士で、互いの深いところで繋がりあっていた。ウェストミンスター橋でMに背を向けて彼女のもとへ歩いてからというもの、数年の間僕らは間違いなく互いに恋をしていて、その繋がりを頼りに地球のあちこちを旅した。世界を救うことから逃れて、地名もわからないようなヨーロッパの小さな町やどこかのビーチを彼女と一緒に巡り、僕は何処にしまったかも忘れていた本来の自分のうちの多くを取り戻した。MI6に入る前、ひいては海軍に入る前、ひょっとしたら、スカイフォールにいたときの自分を。自分がダブルオーだったことを忘れるような瞬間さえあった。僕の人生では滅多にないことだ。


    そんな忘れかけていたほとんどのことを、僕はある時飛行機のポストカードを目にして思い出した。


    ロンドンを離れてから最初のトランジットで降りた空港の片隅に立つ、誰も気にしないような売店で、オーストリア航空の少し古い型の飛行機がポストカードになっていた。飲み物を買いに行った彼女を待っていた僕はそれをなんとなく手に取り、以前イヴが言っていた「Q’s afraid flying」という言葉を思い出していた。オーストリアは気持ちよく晴れた天気のいい日が続いていたが、Qはきっとこれを体験したことなどないのだろう。真冬の雪山にしか来なかったのだから。僕はコインを出して、そのポストカードを購入した。
    イタリア、ギリシャ、スペイン、チリ、ブラジル、あとはトルコ、キューバ、ベネズエラ。ポストカードがついに束と呼べる多さになって、メキシコの空港でポストカードと一緒に小さなサボテンの鉢植えに手が伸びたとき、僕はやっと自分がQに会いたいのだということに気づいた。


    神経質でプライドが高く、嫌味な物の言い方をすることはあるが、どうやら自分にとても懐いているらしいということは分かっていた。憎まれ口や軽口はしょっちゅう叩いているが、それと同じぐらいQは僕によく笑ったし、よくふざけてきた。職員に言っても信じてもらえないだろうが、彼は非常に表情豊かな、わかりやすい人間だ。
    飛行機の写真のポストカードを始めて買って行った時、Qは「また人のことを馬鹿にして!」と険しい顔で言ったあと、独り言のような小さな声で呟いた。
    「これ、わざわざ買ってきたんですか」
    「ああ、君のためにね」
    おどけたように言うと、Qはぷっと吹き出して破顔した。

    「随分手間のかかることしますね。むかつくなあ、全く」

    それ以来、僕はQの「むかつくなあ」の顔が見たいがためにポストカードを送り、何かを買って行っては彼のデスクに置いていったのだ。出かけた先の場所にちなんだものもあれば、全く関係ない買った僕自身でさえよくわからないものもあった。ロンドンに戻ってそれを披露するたびに、Qは僕の土産に沢山の辛辣なコメントを残してくれた。「わざとやってるでしょう、あなたならもっとセンスあるもの選べるはずですよ」、「これはない」、「微妙に捨てにくいもの持ってきますね」、「普通に嬉しいと思っている自分に腹が立ちます」……。ある時は眉間に皺を寄せて、ある時はため息をつきながら、またある時は、あの緑色の目をきらきらと輝かせながら。
    彼の態度がなんとなく変わったように感じて、自分で知らないうちに彼のことを傷つけてはいないか心配になった僕は、えらく曖昧な質問をした。Qは目を伏せて、黙って首を振るだけだった。僕はおそらくかなり久しぶりに、ひょっとしたら初めて、次に何を言うべきか分からなくて、そうか、と呟くのがやっとだった。
    メキシコで買った小さなサボテンを長い間眺めてやっと分かった。傷つけていないか心配になったのは、曖昧な聞き方をしたのは、それ以上何も聞くことができなかったのは、自分よりはっきりとした言葉で拒絶されるのが怖かったからだ。
    職業上、誰かから強い感情を向けられることには慣れていた。特に、自分に向けられる強いプラスの感情は、だいたい恋という言葉におさまってきた。はじめは曖昧でも、恋というまとめ方で今まで間違いだったことは恐らくないし、そうすることで恋が始まるということもあった。自分に恋をしている人間がどんな顔をするのか、僕はよく知っている。マドレーヌと僕は恋という言葉にすっぽりと収まっていて、それはかなり心地いいものだった。
    Qからこちらに向かってくる感情を、同じものだと言ってまとめるのは別段難しいことではない。ただ、それが正しいことであるとは限らないと、僕は初めてそう考え出していた、それはともかくとして。
    またあの緑色の目を、どうにかして見られないものか。


    ロンドンに戻ろうと思う、と口にした時、マドレーヌは一瞬目を大きくした後に悲しげに伏せて、しばらく沈黙したのちに「私、自分の病院を持つのが夢なの」と呟いた。場所をどこにしようか迷ってたんだけど、パリにしようかな。電車で来れるでしょ、開業したらお祝いに来てくれる?



    勿論。山ほど花を持っていくよ、と、僕は答えた。そうしてロンドンに戻ってきた。





    人と話さなくてもいいのなら、と思ってDJ役を引き受けた。別に踊るようなパーティじゃないし、かといって音楽をじっくり聴くような集まりでもないし、つまり何が流れてたって同じなら僕が隅っこの方でこっそり好きな曲を流したっていいはずだ。一番大きな会議室を一つ使って開催されている親睦会は、秘書課の提案で数ヶ月に一度行われている。今月の主催はQ課だ。次は法務部だったかな。もしダブルオー課が主催になったら一体どうなってしまうんだろう。
    たまにやってくる部下や他部署の職員たち以外、みんな僕のことを放っておいてくれる。実にありがたい。長テーブルを一つ使って軽食やビールで砦を築き、右側のヘッドホンをずらして、僕は個人のラップトップから実にのびのびと音楽を流していた。冗談のつもりで「ニューヨーク・ニューヨーク」を流したら009が10秒と経たないうちに飛んできて、僕はちょっとだけビールを吹いた。シナトラは意外と好評で、アウトロが終わるとあちこちから拍手が聞こえた。DB10を盗まれた朝に聞いた別のシナトラを流そうか迷ったけれど結局やめて、今朝聞いていた曲をクリックした。


    It’s unbelievable
    This is as good as it gets
    It’s unbelievable
    Don’t know what’s gonna happen next

    信じられないよ
    良くなる一方なんだ
    信じられない
    次に何が起こるのか分からないなんて


    なにが良くなる一方なのかと言うと、テクノロジーのことだ。僕はそれを気に入って昨晩からこの曲を繰り返し聴いていた。子供の頃の“最新技術”がたわいもない思い出と一緒に歌われている。C3POを買うためにお金を貯めてたとか、『ライオン・キング』が流行ってたとか、バスの最後尾でダイエット・コークにメントスを入れようとしたとか。
    僕は『ライオン・キング』に特に思い入れはないし、C-3POのことは買うよりも作ろうとしていた節があるが、メントスコーラ、これは未だにやったことがない。このことを昔ボンドに話したら、「自分のラボがあるならやればいいじゃないか」とあっさり言われたが、僕のラボじゃなくてQ課のラボなんだ、何度言えばわかるんだろうあの人は。
    と、そこまで考えて、僕は自分がかなり自然にボンドについて考えていることに、つまりこれまで感じていた緩やかな胸の痛みさえ無くなってきていることに気づいた。
    当たり前だ、ナショナルギャラリーで会ってから何年経ったと思ってるんだ。多分、今ボンドが目の前に現れても僕は微動だにしないだろう。いや、ちょっと身動きはするかな、ボンドの方は本当に微動だにしないだろうけど。こういうところがむかつくんだ。こっちの気も知らないで、しかも自分が許されると知っていてあれこれ好き勝手やってくる。もっとむかつくのは、思惑通り僕はいつも彼を許してしまっていたことだ。いつも。
    ぬるくなっていくビール瓶を見つめていたら、僕はそれまで話し声や食器の音でざわついていた会議室が妙に静かになっていることに気づいた。さ、と目の前に影が差す。








    微動だにしないだなんて、僕はなんて思い上がっていたんだろう。身動きどころではなかった。動揺で椅子から落ちかけた僕はきっとかなり間抜けな顔をしていたに違いない。ボンドが目の前に立っている。





    ***





    会議室にいた全員が静まり返って僕と帰ってきたボンドを見つめる中で、「It’s unbelievable 」と歌い続ける自分のラップトップが憎らしくて仕方なかった。誰だこんな曲流したの!
    きっとわざとやってくれたんだろうけど、たっぷり二十秒ほど音楽の独壇場となったのちに、会議室の注目はシャンパンがいっぱいに乗ったトレーをひっくり返した009に集まった。慌ただしく進み始めた周りの時間に対して、僕は金縛りにあったように固まったままボンドを見つめていた。
    ボンドも同じだけ僕のことをじっと見ると、ふっと息をついて、椅子から体がずり落ちかけた僕の横に座った。

    「いいか?」
    「は?」
    「落ちるぞ。引っ張り上げていいか?」
    「……なに、」
    「腕。いいか掴んでも?」
    「あ、……はい」
    ボンドは僕の左の二の腕を掴んで、僕の体の位置をまっすぐに直した。
    「……ありがとうございます」
    「君に転ばれると僕が困る」
    「……ビール飲みます?」


    ボンドはなにかを確かめるように頷いて、口元を緩ませながら、ありがとう、と呟いて、それから、
    「ここにいてもいいかな」
    と言った。どこを見ていいのかわからなくてラップトップの画面を眺めていた僕は、思わずボンドの方に顔を向けて、迷った。
    「……どうぞ、あなたがいたかったら。僕はずっとここにいますけど」


    ボンドはもう一度、ありがとう、と小さな声で言った。
    それから僕らは長いこと、パーティがお開きになるまでその場から動かなかった。ボンドは黙って左隣に座って、時折ビールに口をつけながら僕がラップトップから音楽を流すのを見て、聞いていた。僕は左側のヘッドホンをずらして、音楽と一緒に、横にボンドがいる音をこっそり聞いていた。





    Can I sleep in your brain tonight, stranger?
    Can I rest my bones in your head?
    I won’t make too much noise while I stay here
    I just need some kind of shelter

    あなたの脳を一晩貸してくれませんか
    あなたの頭の中で僕を一晩休ませて欲しいのです
    その間にうるさく音は立てません
    シェルターのような場所がいるのです



    ***




    仕事で抜けられなかった部下たちに軽食を届けて、退勤を促しに行った。疲れた顔をした彼らはサンドイッチやフライドポテトに顔を輝かせた後、僕の横にいるボンドを見て声も出せないほど驚いて、それは速やかに帰宅していった。

    「ちょっと面白かったですね、今の」
    「幽霊にでもなった気分だよ。僕は死んでることにでもなってるのか?」
    「2回生き返る人ってなかなかいないから」

    パーティで余ったソフトドリンクの瓶やパックを給湯室の冷蔵庫に詰め込んだ。入りきらなかった小さいコーラの瓶をボンドに渡して自分はペリエを開けて、いつだったかそうしたように僕らは並んで僕のデスクに腰掛けていた。
    ふと、ボンドが妙に納得したようにああ、と声を上げる。

    「君はコーラが飲めないのか」
    「……言ってませんでしたっけ?」
    「ああ。ラボを汚したくないからだとばかり思ってたんだが、そうか、コーラが飲めないのか」
    「……よくもまあそんな昔に話したこと覚えてますね」
    「さっき自分でそういう曲流してなかったか?」
    「聞いてたんですか」
    「ああ、聞いてた」
    僕がそうですか、と言う前に、ボンドはジャケットの内ポケットから小さな本ぐらいの大きさの包みを取り出して、僕の手に取らせた。
    「……なんですか」
    「開けて」
    「やだ」
    「なんで」
    「なんとなく」
    「いいから」

    眉間にしわを寄せながらペリエを横に置く。包みを開けて、中身を見て、横にいる彼を見た。

    「……この、一番上のやつ。最後にスペインで買ったんだ。すぐ横に、小さい……これくらいの、サボテンの鉢植えが置いてあった」
    そう言って、ボンドがポストカードの上にすごく小さな透明な箱に入ったサボテンを置いた時には、僕はもうだめだった。こんなのひどすぎる。
    「それで、君に会いたくなった」
    「……ほんと、むかつく」
    自分でも驚くほど大粒の涙がどんどん溢れてきて、ぼたぼた眼鏡に落ちていって、ポストカードもサボテンもあっという間に見えなくなった。
    「あなた、今日ずっとポケットにサボテン入れてたんですか」
    「そうだな」
    「ばっかみたい」
    「同感だ」

    厳重に鎖をかけて海の底に沈めていたはずのジェットコースターのような感情は、ポストカードとサボテン一つであっという間に引き戻されてしまった。ボンドの手が僕の背中を優しく摩った。

    「……僕が、どれだけあなたに振り回されてたか知ってますか」
    「後になってから気づいたよ」
    「でも、こんな、こんなよくわからない、……あなたに押し付けたくなくて、必死に押し殺して、やっと送り出して、車まであげて、やっと、……幸せになれると、思ったのに、あなたが、」
    「僕が?」
    「あなたの、こと、嫌いです、ほんとうに」
    「ああ」
    「でも、あなたのことが大事です」
    背中を摩っていた手が止まった。
    「あなたが、死なないといいなって、誰か、……大事な人ができて、できなくてもいいけど、どこでもいいから、好きなところへ行って、おいしいもの食べて……好きでしょ、おいしいもの」
    「……そうだな、好きだよ」
    「なんでもいいから、あなたが、……大事なことなんです、僕にとって……あなたが無事かどうかとか、大丈夫かなとか、……幸せかなって、考えるのは」
    泣くのに疲れてきた僕は大きく深呼吸をして、使い物にならなくなった眼鏡を外した。きっと明日には目が腫れる。
    キュウ。ボンドが僕を呼んだ。涙で濡れてしまったポストカードとサボテンを僕の手からそっと取ってデスクに置くと、彼は俯いている僕の顔を覗き込んで言った。君にハグしてもいいか。涙に滲んだ青い目が見える。僕は鼻を啜って頷いた。ボンドは僕のことをぎゅう、と抱きしめると、頭を撫でながら言った。


    「Q、僕がロンドンに戻ったのは、幸せになるためだ」




    だから、よかったら。君の幸せに、僕が入る隙間があったら、入れてくれないか。






    ***



    Can I sleep in your brain tonight, stranger?
    Can I spend one night on your mind?
    I can’t live with this pain
    With this anger
    And I need someplace else to go

    あなたの脳を一晩貸してくれませんか?
    あなたの心で一晩過ごすだけでいいのです
    もうこの痛みとは生きていけない、この怒りとも
    どこか他に行くところが必要なのです






    僕はボンドから送られてきたポストカードをデスクの引き出しにしまっていたが、一気に束で増えて入りきらなくなったので家で保管することにした。小さなサボテンはラップトップの横が定位置になり、装備のケースが空っぽになって返ってきた時にボンドに投げつけている。悔しいことに毎回必ずキャッチされるので、鉢植えが割れたことはなかった。勿論、未だ名前のつかない感情や、ボンドに聞きたいことや、そのほかにも僕らに関して明らかになっていないことは山ほどあったが、互いが互いの大事な存在であることをこうして認め合ったのは、僕らにとってものすごい進歩だった。いい歳した大人が情けない、でも多分、大人はみんな、少なくとも僕らは2人とも情けないし、それでいいんだろうということで同意している。
    Zero_poptato Link Message Mute
    2022/11/21 18:34:12

    なさけないはなし

    #00Q

    Qくんがパーティで流した曲は実際にプレイリストを作りました。聞きたい方はこっそり教えてください。

    more...
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