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    【アイギス】王皇小ネタまとめ その3【皇帝に獣耳が生えた話】【『少しだけ、じっとしてて』『身体が、あつい』『苦しくて、泣きそう』】【辺境で普通の生活(仮)する話】【ケーキバイキングの話】【皇帝に獣耳が生えた話】 周りの物音に反応してか、ぴこり、と動く頭上の耳に、王子は思わず、うわぁ……、と戸惑いと歓喜の入り交じった複雑な声を漏らすも、間髪入れずに正面に立つ皇帝の目つきが険しくなり、慌てて表情を引き締めた。
    「これはまた、なんというか……」
     遺跡探索から戻った皇帝の頭部には、フサフサ、と柔らかそうな毛に覆われた獣耳が生えており、装備に隠れて見えないがどうやら尻尾まであるらしい。
     頭髪と同じ白銀の毛並みに黒の縞模様が入ったそれは、大型のネコ科の物と見受けられる。
     呪いではなく変化系の魔法によるものとの鑑定結果が既に出ており、命に関わる事でもないため、下手に弄るよりも自然に効果が切れるのを待った方が良いと、複数の魔術師から助言も貰ったようだ。
     とはいえ、皇帝のこの姿は帝国軍の士気に関わるだろうというのが、王子の偽らざる本音だ。
    「どこでどんな影響が出るかわからないから、元に戻るまで皇帝は前線には出ないで城で待機していてほしい」
     大真面目に告げる王子だが、皇帝の背後に控えているレオナの目が、ぴこぴこ、と動く獣耳に釘付けになっている様を目の当たりにしており、こみ上げる笑いを堪えているせいでいつも以上に固く強張った声が出てしまった。
     軍師として常に毅然とした態度のレオナですらこれなのだ。彼女以上に意志の強い者が一体どれだけ居るというのか。
     当の皇帝本人は、耳が付いたくらいでなんだ、と言いたげな顔をしているが、王子の隣に立つ政務官が真顔を保てていないという状況に、渋々ではあったが首を縦に振るしかなかった。
     だが、その政務官から待ったが掛かったのだ。
    「実はある町から『近くの廃墟に野党が住み着いたので助けてくれないか』と嘆願が来ておりまして……前準備として偵察をお願いできませんか?」
     人助けに奔走し常に人手が足りない王国軍だ。アンナが申し訳なさそうに頭を下げれば、皇帝は熟考するまでもなく了承の意を伝え、詳細は後で知らせろと言い置いてから執務室を出て行ったのだった。
     話を聞く為に残ったレオナにあれこれ説明し、彼女も退室したところでアンナは軽く肩を落とした。
     アンナ曰く。皇帝が城に居れば前線よりも多くの人の目に晒され、恐い物知らずが何人も居るここでは騒動が起こる未来しか見えないとの言葉に、王子は「その可能性もあったか……」と政務官同様肩を落としたのだった。

     帝国軍の獣人ふたりを従え三日前に出立した皇帝は、戻ってきても依然として獣耳は健在であった。だがそれよりも王子は違う理由で、きりきり、と痛むこめかみを押さえている。
     決して、白銀の髪をもったヴァイスとシュペットと並んだ皇帝に違和感がなかったからとか、そのような理由ではない。
    「……偵察って話だったよな?」
    「あの程度ならば王国軍が動くまでもない」
     しれっと野党を叩きのめし壊滅させた事を肯定する男の頭上では、獣耳が、ピン、と悪びれた様子も無く立っている。
     奥義持ちのソードマスターと巨大な重槍を携えたキャノンアーマーを連れていった時点で、偵察する気など端からなかったということだ。
     しかも町長からは早急に対処をしてくれた事に対する感謝の言葉が届いており、さすがに「手違いでした」とは言えない空気になっている。
    「被害もなかったから今回は不問にするが、皇帝には話があるから残ってくれ」
     はー……、と深々と溜息をついた後の王子からの処罰なし宣言を受け、獣人ふたりは生真面目に一礼する。若干シュペットが不服そうな顔を見せたが、隣のヴァイスが顔色ひとつ変えぬまま彼女の尻尾を抓ったか、ひゃんっ、と小さく悲鳴を上げるも即座に口を両手で塞ぎ、そそくさと退室したのだった。
     さて、と王子は改めて皇帝を見上げ、ちょいちょい、と軽く手招きをする。
    「部下ふたりは不問に処したけど、上官はそうはいかないと思うんだ」
    「……そうだな」
     仮にふたりに処分が下れば、皇帝は全て自分の責任だと言っただろう。それを踏まえた上で無駄な問答を省略すべく、部下へのお咎めは無しにしたのだ。
     素直に執務机を回り込んだ皇帝が隣に立つと同時に、王子は腰を上げた。
    「座って」
     ぽん、と今の今まで自分が腰掛けていた椅子の背もたれを叩けば、皇帝は隠す事無く怪訝な顔をする。
    「早く」
     理由を告げぬまま急かしてくる王子を警戒するかのように視界の端に捉えたまま、皇帝はゆっくりと浅く腰を下ろした。それは尻尾が邪魔な事もあるのだろうが、なにかあればすぐに立ち上がれるようにだろう。
    「存分に獣耳をモフらせろ」
    「………………」
     真顔での要求内容に皇帝は怒りとも呆れとも憐れみともつかぬ、なんとも形容しがたい眼差しを王子に向けた後、淡々と「好きにしろ」と応じたのだった。
     王子とて断られれば食い下がる気はなかったが、こうもあっさりと了承されるとは思ってもおらず、少々肩透かしを食らった気分だがそこはそれ。
     この絶好の機会を逃してなる物かと、しばし無心で、もふもふ、ふにふに、と柔らかで可愛らしい獣耳を堪能していたのだが、ふと、耳慣れぬ音に気づき僅かに首を傾げる。
     微かに聞こえてくるのは、くるくる、と、ぐるぐる、の中間の音とでも言おうか。それは耳慣れぬが知らぬ音ではない。
    『喉……鳴ってる……?』
     機嫌が良いときや甘えているときに猫は喉を鳴らすが、今の皇帝の反応はまさしくそれで。
     気づけば手中の耳は仄かに温かくなっており、もしかして眠くなったのか? と王子が、そっ、と横から皇帝の顔を覗き見れば、その眼はぴたりと閉ざされていた。
     んん~ッ!? と込み上げる衝動に任せて珍妙な声を上げそうになるも、王子は気合いでそれを飲み込み、その代わりのように獣耳を更に柔く揉みしだく。
     確かシュペットが耳の付け根が気持ちいいと言っていたな、と思い出し、髪を掻き分け爪先で、かりかり、と掻くように撫でれば、皇帝の喉奥から響く音に混じって鼻から抜けるような小さな声が耳に届いた。
     ここで「気持ちいいか?」と聞いてしまったら、この時間は即座に終了であることは目に見えている。
     はぁ~大きなネコチャンだぁ~……、と内心で噛み締めながら、その手は耳だけにとどまらず髪を、頭全体を撫でるように、わしゃわしゃ、と動き回る。
    『耳も髪もふわふわ……ネコチャン……』
     無心で撫で回していたかと思えば、そのまま吸い込まれるかのように白銀の髪へ鼻先を埋めていた。
     猫は吸うものと一体誰が言い始めたのか。その魅力に抗わず王子も、すぅぅ~、と存分に堪能する。
    『あっ……ちょっと砂っぽい……』
     任務から戻った際、最低限の身繕いはしたが報告を優先させたからだろう。
    「……おい」
    「ネコチャンおふろはいる?」
     堪らず声を上げた皇帝に寄越された王子の返事は、非常に残念な物で。
     冗談で言っているのならば一発ぶん殴れば済む話だが、あまりにも蕩けきった声音はとてもではないが正気とは思えず、皇帝は拳を固めたまま思案に暮れる。
     王子はただ単に疲れていてあらぬ事を口走っただけならばまだ良いが、世の中には猫をご主人様と呼び、自らを下僕と称する者がいるという。
     もしや魅了や催眠系も付与された魔法だったのではないかと、皇帝が大真面目に考えている後ろで王子は、尻尾も触らせてくれないかな、などと不埒なことを考えていたのだった。

    2022.01.08
    2022.02.22 加筆微修正
    【『少しだけ、じっとしてて』『身体が、あつい』『苦しくて、泣きそう』】 インナーの首元を摘まみ、僅かに隙間を作る。籠もっていた熱が多少とはいえ逃げていくも、正直焼け石に水でしかない。
     雪崩のように押し寄せる魔物を大剣ひとつで薙ぎ払い、打ち払い、斬り捨てる。
     限界を超え酷使した身体が、あつい、苦しい、と悲鳴を上げようとも、従えている兵たちの先頭に立つ以上、ここで無様に膝を着くわけにはいかないのだと、皇帝は神器を下ろすことなく遠くに見える第二波を、鷹のように鋭い眼差しで見据えた。
     将が先陣を切るなど愚策も良いところだと、口さがない大臣達の言を知らぬ訳ではない。
     客観的に見ればそうなのだろう。
     だが、ここに至るまでずっとそうしてきたのだ。
     このような戦い方しか知らぬのだ。
     真っ先に飛び出し、真っ直ぐに敵の要へと突き進み、討ち取り、切り崩してきた。
     悲鳴を上げ続ける身体とは裏腹に、気持ちは前へ前へと出たがっている。
     今にも地を蹴り、ひしめく魔物のど真ん中へ躍り込みたいと、熱に浮かされたように思考がそれ一色に塗り潰されたかに思えた刹那――
    「少しだけ、じっとしててくれ」
     大剣を握る手に白銀の籠手をつけた手が、そっと添えられた。
    「……遅いぞ」
     すぅ、と途端に冷えていく思考を実感させる落ち着き払った声が、皇帝の口から滑り出る。
    「間に合ったのだからいいだろう?」
     王国軍からの伝令により、展開していた帝国軍が戦線を下げていく。それに変わって着々と配置されていく王国兵の動きを目に留めながら、王子は未だ下げられぬ大剣を握る腕を、すぅ、と撫でる。
    「配置が完了したら下がって回復してもらうから、それまで……」
     保つか? と目だけで問うてくる王子に対し、皇帝は「当たり前だ」と言葉少なに応じる。
     帝国の力の象徴である皇帝が迷いのない真っ直ぐな眼差しで、俺が最後まで戦場に立っていなくてどうする、と言い切るその姿に、王子は息が詰まるような、胸が締め付けられるような、自分との有り様の違いがあまりにも苦しくて、泣きそうになるもそれを押し隠し、さすがだな、と心からの賞賛の言葉を贈った。

    2022.02.12
    【辺境で普通の生活(仮)する話】『普通の生活』とは果たしてどういうものなのだろうか、とカップを傾けながら特に深い考えも無く、ただふと思った事を口にしただけであったのだが、向かいで同様にカップを口に寄せていた皇帝は動きを止め、まじまじ、と王子を見つめてきた。
    「それは、どの立場での『普通』の話だ?」
     互いに人を従え、その肩に何千何万もの人の命が掛かっている、数少ない立場の人間だ。
     王子のこれまでの普通は皇帝には普通の事では無く、皇帝のこれまでの普通もまた、王子からすれば普通ではなかった。
    「そんな難しいことじゃなくて、そうだな……俺たちが守っている『普通の人たちの生活』と言えばいいのかな」
     家に帰れば「ただいま」と言い、迎えた者は「おかえり」と言う。劇的な要素など欠片も無い、何の変哲も無い人々の営みの一部だ。
     だが、王子はそれを「知らない」のだ。
    「……そういうことなら俺は貴様よりは普通に近い生活をしていたが……」
     過去を思い返してか皇帝は一瞬、何かに耐えるように顔を歪めるも、それは瞬きひとつの間もなく消え去った。
    「興味があるのなら、真似事でもしてみたらどうだ? 幸いにも今は戦況も落ち着いている」
     皇帝からの思わぬ提案に王子は目を、ぱちぱち、と瞬かせ、うん? と首を傾げる。
    「辺境で供を連れずしばらく暮らしてみればいい。王都から離れれば、貴様の顔もそこまで知られてはいないだろうからな」
    「帝国であまり顔が知られていない皇帝が言うと妙に説得力があるな……」
     悪気のない王子の一言に、じろり、と険しい目を向けるも、皇帝はすぐにそれを瞼で隠し、静かにカップを傾けた。
    「うーん、さすがに俺ひとりじゃ無理だろうな」
     アンナを筆頭に「ダメです!」と猛反対する女性陣の姿が容易に想像出来、皇帝は軽く肩を竦める。
    「おれひとりじゃ説得もままならないだろうから、皇帝も一緒に頼む」
    「……は?」
     まさかの展開に傍観者のつもりでいた皇帝は咄嗟に言葉が出ない。

    2022.02.15
    【ケーキバイキングの話】 話がある、と大真面目な顔で呼び止められ、片眉を上げたレオナが口を開く前に皇帝は先に行くよう指示を出し、彼女が廊下の角を曲がったところで王子に向き直った。
    「なんだ」
    「ここではなんなので執務室に行こう」
     そう言うが早いか踵を返した王子の背に皇帝も黙って続く。いつにない硬い表情であったことから両国に関わる深刻な話かと思いきや、執務室に着くや否や、王子は土下座せんばかりの勢いで頭を下げてきたのだった。
     突然のことに面食らった皇帝が無言でその様を見下ろしていれば、王子は腰を直角に折った体勢のまま本題を口にした。
    「ケーキバイキングについてきてほしいです!」
     予想していたこととは全く別方面の話に、皇帝は思考が追いつかないのか無言を貫いている。
     うんともすんとも言わぬ皇帝を王子が、ちら、と上目に見れば、相手は無表情のままではあったが「まずは座ってから落ち着いて説明をしろ」とソファを示したのだった。
     一体どのような経緯で王子が皇帝をケーキバイキングのお供に選んだのか、順序立てて説明させればなんということはない。
     過去にオーガスタ主催のケーキバイキングが執り行われた際、一部の女性達がこぞって自分のおすすめであるケーキを王子の元へと運び、それを断り切れずに大変なことになったのだという。
     数日後にまたケーキバイキングが行われるとの情報を得た王子は、過去の教訓を活かし対策を練った結果、道連れ……もとい、最強の盾を用意するのが最善との答えを弾き出したのだった。
    「参加しない……のは無理か」
    「さすがに短時間でも顔を出さないわけには……」
     不参加で通せるのならば王子もここまで頭を悩ませたりはしないだろう。皆も王子が来ること前提で動いているのは明白であった。
    「好かれていて大変結構ではないか」
    「それはとてもありがたいけどね」
     楽しいことは分け隔て無く皆で分かち合いたいのだという、王国の気質が見て取れる話だ。皇帝を頂点に据え忠誠を誓い、盲信的に付き従う帝国とはありようが違うのだと、皇帝はふとしたことで実感するのだ。
     このような場はほぼ無礼講との暗黙の了解があるのか、アンナやケイティも迫り来る女性陣に強く言えないのだと、王子は申し訳なさそうに後ろ頭を掻く。
    「……壁役をしてやるのも吝かではないが、当然無償ではあるまい?」
    「東の国のとっておきの酒で引き受けてくれるとありがたい」
    「それだけか?」
     すっ、と細められた目とは裏腹に、皇帝の口角が、にゅっ、と上がった。
    「俺が思ってることで合ってるなら、それはむしろ俺の得になるんだがいいのか?」
    「多忙な貴様を俺が占有するのだ。これ以上はない褒美だろう?」
     とんだ誘い文句に王子は長い前髪で隠れた目を軽く見開き、参りました、と顔を覆いながら応じたのだった。

    2022.02.17
    茶田智吉 Link Message Mute
    2022/02/23 3:28:16

    【アイギス】王皇小ネタまとめ その3

    #千年戦争アイギス #腐向け #王皇 #王子×皇帝 #白の皇帝 ##アイギス
    ツイッターで書き散らした王皇まとめ。
    フツーにできてる。
    1.皇帝に獣耳が生えたよ(ド直球)
    2.セルフワンライ王皇『少しだけ、じっとしてて』『身体が、あつい』『苦しくて、泣きそう』
    https://shindanmaker.com/159197
    3.茶田の王皇本のタイトルは『ただいま、おかえり』
    煽り文は『その瞳に映るのが僕だけだったなら』です。
    http://shindanmaker.com/717995
    辺境で普通の生活(仮)する話。こうですか?わかりません!
    4.セルフワンライ王皇『王子が皇帝に言ったわがままは「ケーキバイキングについてきてほしい」です。』
    http://shindanmaker.com/733842

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