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    【アイギス】王皇小ネタまとめ その4【歯を食いしばって殴られてほしい】【相変わらず己の身を大事にしない皇帝の話】【皇帝女体化話】【透明人間になりたい】【歯を食いしばって殴られてほしい】 風切り音と共に足下に突き刺さった矢を目にした瞬間、王子は完全に自分の采配ミスであったと悟ったのだ。
     応戦から逃走へと転じた一団を追うように戦線を押し上げ、今や廃墟と化した町の中へと踏み込んだ王国軍を待ち受けていたのは、物陰に潜んだ複数の弓兵であった。
     近接戦闘を得意とする編成であることを逆手に取られ、まんまと誘い込まれたのだと、戦況はこちらが有利だと思わされていたに過ぎなかったのだと気づくも、時既に遅し。
     即座に撤退を指示するも高所から放たれる矢に身動きが取れず、遮蔽物の影に転がり込むので精一杯であった。
     戦力は分断され最早陣形など意味をなさない。
     王国軍は守りを固め敵を迎え撃つ事には長けているが、兵を率いてこちらから仕掛けるといった戦法は不得手であると言えた。
     ただし、一糸乱れぬ統率力で他国を侵略してきた帝国と比べれば、であるが。
    『比べる相手が悪いな……』
     脳裏を過った男の顔にひとつ苦笑いを漏らし、王子は即座に表情を引き締める。
     共同戦線を張っている帝国軍は後詰めとして待機している。
     帝国の偵察兵が進軍中もつかず離れずの距離で潜んでいた事も知っている。
     報告を受けた皇帝は速やかに進軍命令を出すだろう。
     障害物の多い場所である為、実際に踏み込んだ人数がそこまで多くない事は不幸中の幸いであった。おそらく町中の異変にいち早く気づいたケイティが、咄嗟に後続部隊を止めたのだろう。
     撤退援護の為に遠距離攻撃の出来る者を再編成している事を信じ、こちらも出来る事はしておかねば、と敵の位置の把握に努め退路を素早く模索する。
     実際に姿は見えずとも身を潜めている場所は相手にはバレている為、少しでも身を乗り出そうものならば、ここぞとばかりに矢の雨が降り注ぐ。
     だが、相手もいつまでも遠距離から矢を射かけるだけではないだろう。こうしている間にも別働隊が路地を回り込み、近づいてきていると考えるのが妥当だ。
    『これは……ジリ貧だな』
     一瞬、ほんの一瞬ではあるが諦めそうになったその時、頭上を大きな影が過った。
     新手か!? と勢いよく振り仰げば視界に飛び込んできたのは、純白の翼を大きく広げ旋回する四つ足の生き物と、その背から躊躇無く飛び降りた漆黒の姿であった。
     靡くマントが重力に従うよりも早く振り抜かれた大剣から放たれた斬撃が、敵が潜んでいた建物ごと弓兵を粉砕する。
     予想外の上空からの乱入者に浮き足立った敵の隙を見逃さず、王国軍の遠距離攻撃による援護射撃が開始された。
     文字通り矢面に立ち、通りの真ん中で大剣を振るい続ける皇帝の背後では、隠密行動に長けた者達の手によって撤退作戦が滞りなく遂行されている。
     王子の安全を確保した時点で、勝負は既に付いていた。

     篝火の焚かれた野営地を大股に進み、王子はひとつの天幕の前で足を止めた。
     残党の掃討や後処理が済み、自由の身になったのはほんの十分ほど前の話だ。それはこの天幕にいる人物も同様で、むしろ彼の方がいろいろと面倒な事になっていたが、そこは優秀な軍師殿が話を収めたようだった。
     まさか部下のペガサスをぶんどって駆けつけるなど、誰が予想し得るというのだ。
     しかもペガサスへの騎乗はこれが初めてだと言うではないか。
     あまりの事に言葉を失えば「細かい事は気にするな」でその話は終わってしまったのだった。
     だが、相手は帝国で最も地位のある人間だ。もしもの事があったらどうすると王子が若干声を荒げれば、皇帝は僅かに眉を寄せた後、ゆうるり、と静かに言葉を放った。
    「『皇帝』は替えが効くが『王子』はそうもいかないだろう。ならば優先されるべきはどちらか、考えるまでもない」
     まるで息をするかのように自然に紡がれたそれに対し、王子は固く拳を握り締めた。
     何故にこの男は己の身をこうも粗末に扱うのか。
     そして、こちらも息をするかのように滑り出た言葉が、
    「歯を食いしばって殴られてほしい」
     であった。
     当然のことながら周りからは驚きの声と共に止められたが、こればかりは譲れないと王子が頑として言い張れば、言われた当の本人は涼しい顔で「あとで俺の天幕に来い」と、承諾とも取れる返答を寄越したのだった。
    「――いつまでも突っ立っていないで入ったらどうだ」
     天幕の中からの声に、王子は、はっ、と回想から現実へと意識を戻す。
    「人払いはしてある。遠慮は無用だ」
     続けられた言葉に、皇帝は本気で俺に殴られる気なのか、と王子は内心で苦々しく思いながら天幕内へ足を踏み入れた。
     寝台に腰掛けている皇帝は装備を外しており、無防備なその姿に王子は自分が言い出したにも関わらず、微かな苛立ちを覚える。
     立ち上がろうとした皇帝を手で制し、王子は相手の目の前に立つと、ぐい、と勢いよく胸倉を掴み引き寄せた。
     ぐっ、と唇を引き結んだ皇帝は次に来る衝撃を覚悟するも目は閉じず、王子を真っ直ぐに見据えたままだ。
     だが次の瞬間、皇帝の目が大きく見開かれた。
     近すぎてぼやけたそれを王子は惜しいと思いつつも、押しつけた唇を離す気は欠片もない。
     虚を突かれたか身動ぎひとつしない皇帝の下唇を柔く食み、王子は喉奥で小さく笑った。

    2022.03.05
    【相変わらず己の身を大事にしない皇帝の話】 負傷した兵の間を練り歩く皇帝の後ろには、小柄な少女が付き従っている。
     皇帝陛下直々に様子を見て回っているのかと、その様子を何気なく視界に収めた王子であったが、皇帝の一歩に対して後ろの少女は三歩、しかも小走りのそれに違和感を覚えた。
     王国兵、帝国兵分け隔て無く集められている負傷兵の治療には、両陣営からできる限りの人員が割かれている。皇帝と共に居るのは帝国の治癒士長で、彼と居てもなんらおかしくはない組み合わせなのだが、それでもやはり王子は妙な引っかかりを覚え、ふたりから目が離せないでいた。
     徐々に近づいてくるふたりを盗み見ていれば、治癒士長――アウローラは彼を呼び止めようとしているのか、「陛下、陛下」と抑揚のない声で繰り返している。それに対して皇帝は全く聞こえていないのか、そもそもアウローラの存在に気づいているのかすら怪しい。平然とその声を無視したまま歩みが緩む気配もない。
     厄介事の気配を感じ王子がその場を離れようと頭を巡らせた瞬間、狙い澄ましたかのように皇帝の目が王子を捉え、ぴたり、と足を止めた。
    「手は足りているか」
    「え? あ……」
     不意の問いかけに王子が窮すれば、リストと思しき物を手にしたアンナが代わりに口を開く。
    「思ったよりも重傷者が多く出ています。できればあちらの天幕に運ばれた方々を看て頂きたいのですが」
     手中の物を皇帝に手渡しながらアンナが説明すれば、皇帝はそこに書かれた負傷者の名と状態の一覧を一瞥してからアウローラにそれを渡し、一言「行ってこい」とだけ口にするや、そのまま悠然と立ち去ったのだった。
     少女は表情ひとつ変えていないが、恐らく腸が煮えくり返るほどに激怒していると王子にはわかった。しかし、だからといってどうしてやる事も出来ず、アンナが「よろしくお願いします」と頭を下げるのを見ているしかない。
     見ているしかなかったのだが、不意に「王子殿下」と静かに呼ばれ知らず背筋が伸びた。
    「お願いがあります」
     じぃ、と美しいが精巧な作りの人形のような無表情で見上げられ、どう返した物かと迷っている王子の胸中など関係なしに、その作り物めいた可憐な唇が小さく動き一方的に「お願い」を音にした。

    「よしじゃあ脱いでくれ」
     王城へと戻り一息つく間もなく執務室へと呼ばれた皇帝は入室後、王子の開口一番に眉ひとつ動かさず「お盛んだな」と返した。
    「誰かさんと違ってこっちは後方でおとなしくしてたからな。体力なら有り余ってる」
     軽口に軽口で返し、王子はソファ前で、こいこい、と皇帝を手招く。だが、皇帝が扉前から動く気配はない。
    「くだらん戯れ言を聞かせる為に呼んだのなら……」
    「こっちは至って大真面目なんだが?」
     心底くだらんと声音から滲み出ている言葉に被せるように王子が口を開けば、皇帝は怪訝に片眉を上げる。
    「背中」
     端的な言葉に皇帝の眉間に若干しわが寄った。
    「アウローラに頼まれた。『貴方なら陛下を捕まえられるでしょう』って。なんで彼女を無視したんだ。治して貰えばいいのに」
    「これくらい怪我のうちには入らん」
     平然と言ってのけた皇帝に王子は、うわ……、と無意識のうちに若干引き気味の声を上げていた。
     前々から感じていた事だが、皇帝の言う「これくらい」「この程度」は常人からすれば放置していいレベルでは無いのだ。皇帝自身が大事だと認識するレベルを直接聞く勇気は無いが、おそらく腕や足の一本や二本は軽く無くなっているに違いない。
    「女性陣に囲まれて無理矢理服を剥がれるのがお好みだっていうなら、俺は止めないが……うん、それはそれで見て見たいな」
     自分の発言に『俺って天才か』と言わんばかりの顔をする王子を一瞥し、皇帝はなにか言いかけるも結局その口から音は出ず、黙ってソファ前まで足を進めた。
     促すまでも無く装備を外し始めた皇帝を眺めながら、王子はアウローラや他の者に聞いた話を思い返す。
     相当な無茶をやらかさない限り、皇帝が傷を負う事は滅多にない。それ程までに皇帝は強く、それは王子も知るところだ。
     混戦、乱戦状態にあろうとも敵意や殺意を察知する能力が高く、背中に目でも付いているのでは無いかと思うくらい、彼には不意打ちが効かないのだ。
     そんな彼が今回、背中に一発食らったのだ。
     だがそれは敵とて狙ったわけでは無く、偶然が重なっただけの話だ。
     投擲の意志もなく、ただただ手からすっぽ抜けただけの棍棒が、たまたま皇帝にクリーンヒットしたに過ぎない。
     これが笑い話で済まないのは、棍棒の所持者が巨躯と怪力で知られるオークであったからだ。
     常人ならば背骨が、ぼっきり、逝っていてもおかしくないほどの衝撃であったはずだ。それにも関わらず戦闘後、皇帝は平然とした顔で王子やアンナと言葉を交わし、今も目の前で平然と服を脱いでいる最中だ。
    「脱いだらそこにうつ伏せに……」
     装備は床に、マントやインナーを背もたれに掛け終えたのを確認してから王子は声を掛けるも、その背を目にした瞬間、最後まで言い切れなかった。
     青いを通り越し最早どす黒いとしか言いようのない変色した肉は腫れ上がり、内臓にまで影響が出ているのではないかと思わせる凄惨な状態であった。
     状況を甘く捉えていたと王子が後悔と共に顔を歪めれば、皇帝は王子を見る事なく、ただ、ぽつり、と「大した事はない」と口にした。
    「なに、言って……」
    「昔から、怪我の治りは早い」
     皇帝の背中に残る大きな傷跡は胸にも同じ場所、同じ大きさの物がある。つまりは刺し貫かれた傷であるが、このような致命傷を負いながらも、この男は生き長らえてきたのだ。
     死の淵まで降りた事のある男の基準は「死ぬか」「そうでないか」の二択なのだと、王子は改めて理解し、背筋に、ぞわり、としたものが走った。
    「それでも……」
     震えそうになる指先を反対の手で一回きつく握り、王子は用意して置いた薬を布に塗布する。
    「治療しなくて言い理由にはならないからな」
     べちょべちょ、と粘性の高い湿布薬をたんまりと塗り、変色した背中に貼り付ければ、その冷たさにか一瞬ではあるが皇帝の肩が跳ねた。
    「他にも怪我してるの隠してないだろうな」
     何回かに分けて背中を布で覆い終え、皇帝に起き上がるよう包帯片手に促す。黙って身を起こした皇帝の身体に、床に膝を着いた王子が腕を回すように包帯を巻いていれば、頭上から、くつり、と喉奥で小さく笑う音がした。
    「なんだ」
    「確かめてみるか?」
     王子が怪訝に目だけで見上げれば、楽しげに口角を上げた皇帝と目が合った。
     するり、と意味ありげに中指の背側で輪郭をなぞられ、王子の背に先程とは違った意味で震えが走る。
    「怪我人らしくおとなしくしてようとは思わないのか?」
     言葉とは裏腹に王子の口角も皇帝同様、にゅっ、と上がった。慎ましやかに、だが目の前で存在を主張するそれに軽く吸い付けば、感じ入った吐息と共に差し入れられた指が王子の髪を、くしゃり、と乱した。

    2022.03.09
    【皇帝女体化話】「経緯は以上です」
    「……なんて?」
     至極真面目に現在巻き起こっている厄介事の説明をしてくれたアンナには悪いが、王子はそうとしか言い様がなかった。
     だが、だからといってもう一度アンナに馬鹿馬鹿しくも頭の痛い説明をさせたい訳ではないため、無理矢理に話を進める事にしたのだった。
    「それで、当の本人はどんな様子なんだ」
    「落ち着いておられるというか、その……全くお変わりがないと言いますか……」
     困惑も露わなアンナとは対照的に王子は、まぁそうだろうな、とどこか確信めいた物がありさほど驚きはない。
    「実際に見てみない事にはなんとも言えないな。ちょっと行ってくる」
     普段ならば相手を執務室に呼ぶところだが、今回はそういう訳にはいかない事をアンナも理解しているため、立ち上がった王子を止める事なくそのまま見送ったのだった。

     目的の人物の部屋を訪れれば、応対に出たのは帝国の優秀な軍師で、その険しい表情も随分と懐かしく思えるな、などと王子が少々場違いな感想を抱く程に、レオナの顔は警戒心からかかなり厳しいものであった。
    「アンナから一通り話は聞いた。その、災難だったな」
    「災難で片付けられればどれだけ……」
     ぐぅ……、と言葉に詰まったレオナの心境を察し、王子は席を外しがてら休憩してくるよう促したが、彼女が皇帝の側を離れるとは正直思っていなかった。
     案の定、お気持ちはありがたく頂戴する、と固辞したレオナを動かしたのは、室内から上がった皇帝の一言であった。
    「王子とふたりで話がしたい」
    「かしこまりました」
     否やを唱える事無くレオナは扉を大きく開き、王子を中に招いてからふたりに対して一礼し、そのまま退室したのだった。
     さて、と王子は小卓を挟んだ皇帝の向かいのソファに腰を下ろし、改めて相手の姿を頭の天辺からつま先まで、まじまじ、と眺める。
     先程聞いた声は常より幾分か高いものの、ハスキーで落ち着いたものであった。頬は丸みを帯びており、鋭い眼差しは密に茂った睫毛の影響か印象が柔らかな物に変わっている。
     座っていてもわかるほどに全体的に身体は小柄になっており、減った分の質量はどうやら胸部と臀部に集中して盛られたのだという事が見て取れた。
    「……なんでこうなった」
     実際に目にした皇帝の姿に王子が頭を抱えて低く呻けば、皇帝は組んだ腕に乗る胸が邪魔であるのか不快そうに目を眇めてから、若干苛立ちを隠し切れていない声音で、アダマスに聞け、と投げやりに答える。
     おそらくなにかしら複雑な理由があるのであろうが、アンナの報告を要約すると『アダマスがアイギスと姉妹喧嘩をし、臍を曲げた末妹神は姉を困らせるためだけに皇帝の性別を変えた』という事だった。
     レオナがあからさまな悪態をつけなかった理由はこれである。信仰する神が相手では下手な事は言えず、口を噤むしか無かったのだ。
    「なんで皇帝が女体化したらアイギス様が困るんだ」
     わけがわからん、と天を仰ぐ王子同様、皇帝自身も同じ疑問を抱いたのだが、優秀すぎる元帥曰く、
    「アイギス様お気に入りの王子ちゃんを困らせる事で、結果的にお姉様を困らせる事が出来るって考えなんじゃないかしらぁ~?」
     との事であった。
     搦め手にもなってないだろうそれは、と皇帝が呆れた様子を隠す事なく口にすれば、レオラは軽く首を傾けてから、うぅ~んそれはどうかしらねぇ~、と意味ありげに笑ったのだった。
     他の神を信仰している者には手を出さず自分を信仰している者を選んだのは、アダマスなりの分別の付け方であったのかも知れないが、白羽の矢が立った皇帝からすればとんだ迷惑でしかない。
    「……ところで素朴な疑問なんだが」
     最初に皇帝の姿を検分してからは下を向いたり上を向いたりと忙しなかった王子が、再び視線を床に落としてから絞り出すような声で問いを投げてきた。
    「なんで、レオナの服を着てるんだ」
    「全裸よりはマシだろう」
    「よりにもよってそれか」
     胸の谷間と臍が全開の服を前に、王子はなにもわかっていない皇帝を引き倒して、伝家の宝刀を服を着たままの胸の間に捻じ込んでやろうか、と本気で思ったのだった。
     だが、実際にそんな事をすればどうなるかなど火を見るよりも明らかであるため、行き過ぎた妄想は脳内だけで留めるしかなかった。

    2022.03.20
    【透明人間になりたい】 まるで魔法のようだった。
     他者の主観混じりの話でしか知らなかった彼と相対し、洗脳に抗う強い意志を宿すその瞳を目の当たりにした瞬間、ばちり、となにかが胸の奥で爆ぜたのだ。
     一瞬にして惹き付けられ、昂揚する気持ちをそのまま力へ変え剣を振るった事は覚えている。
     それは強大な力の具現化と言っても過言ではない白の帝国の皇帝という存在に対する、緊張と興奮と若干の敵対心がない交ぜになったが故の感情がもたらした物だと、その時は思ったのだ。
     だが、城に戻ったあとも、そこから数日が経とうとも、正体の知れぬ胸の燻りは収まる事を知らず、もしや皇帝救出の際になにかしらの呪いにでもかかったのではないかと疑うも、そうであれば周りの者が気づかぬ訳がないと即座にその可能性を打ち消す。
     皇帝の何がここまで自分を落ち着かない気分にさせるのか。
     まずは原因を突き止めようと、どんなに些細な事であろうとも関連のありそうな事を全て書き出していく。
     初めてその姿を目にした時。
     初めて言葉を交わした時。
     その時に自分は何を思ったか。何を感じたか。
     ひとつひとつ記憶を揺り起こし、ひとつひとつ書き留めていく。
     そして明確な答えを得られぬまま月日は流れ行き、王国と帝国の溝は徐々に埋まっていき、協力する事も増えていった。
     その間も王子はその都度感じた事、思った事を書き留め続けていったのだった。

     頻繁に合同演習を行うようになる頃にはふたりの関係性も確立され、その習慣はすっかりと忘れ去られていたのだが、積み重ねられた王子の気持ちの束は執務室の机の奥深くに眠ったままであったのだ。
     赤裸々に綴られた皇帝に対する王子の気持ちの数々。自分で読み返しても当時は何故これほどまでにわかりやすい感情に気づけなかったのかと、首を捻り赤面したくなるほどの言葉の数々。
     執務の息抜きがてら、ふと、それを恐い物見たさからかうっかり引っ張り出してしまったのが、王子の運の尽きであった。
     僅かに離席している間に入れ違いでやって来た皇帝の手中に、紙の束を認めた瞬間の王子の切なる願いはただひとつ。

    「透明人間になりたい」

    2022.03.28
    茶田智吉 Link Message Mute
    2022/04/02 0:29:32

    【アイギス】王皇小ネタまとめ その4

    #千年戦争アイギス #腐向け #王皇 #王子×皇帝 #白の皇帝 ##アイギス
    ツイッターで書き散らした王皇まとめ。
    フツーにできてる。
    1.王子が皇帝に言ったわがままは「歯を食いしばって殴られてほしい」です。http://shindanmaker.com/733842
    2.相変わらず己の身を大事にしない皇帝の王皇。
    そういうふいんき()に持って行くだけで力尽きた。えちちへの道は長く険しい。
    3.女神が健在な謎時空。
    性の癖に素直に従って皇帝におっぱいつけた王皇のさわりの部分。
    4.セルフワンライ王皇。
    茶田さんには「まるで魔法のようだった」で始まって、「透明人間になりたい」で終わる物語を書いて欲しいです。可愛い話だと嬉しいです。http://shindanmaker.com/828102
    可愛い話?知らない子ですね……

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