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    同期な僕ら 最先端技術が結集した巨大な基地。世界を守るアベンジャーズの基地が再建されたのは半年前。スコットが毎月必ず基地を訪れるようになったのも同じ頃だ。
     大勢のヒーローたちが結集してサノスとの決戦に打ち勝った後、アベンジャーズは人々を守る存在として再び世界から強く求められるようになった。そのため破壊されたアベンジャーズ基地の再建もスムーズに進み、今では大勢の人々が平和のために基地で働いている。
     肝心のアベンジャーズはというと、ソーが宇宙へ旅立ち、ブルースは実戦から引退して研究・開発に専念した。スティーブは個人としての人生を取り戻したため現役を退き、クリントは愛する家族の元へ帰った。ヒーローとしての活動を続けると表明したのはサムとワンダ、そしてローディの三人だ。
     人数が大幅に減ったことによる戦力ダウンを避けるため、ヒーローたちにアベンジャーズ加入を呼びかけたところ、アントマンとスパイダーマン、そしてウィンターソルジャーが新たに加わることになった。他のヒーローたちは各々の役割を優先するため正式加入には至らなかったが、協力関係を維持することは約束してくれている。
     では、なぜスコットが毎月アベンジャーズ基地に来ることになったのか?それは新人研修のためである。
     同時期に加入した三人のうち、軍事経験があるのはウィンターソルジャーであるバッキーだけだ。アントマンであるスコットとスパイダーマンであるピーターはヒーロー活動を始める前は一般市民だったので兵器や戦略などの知識が乏しい。それはヒーロー活動を続ける上でマイナス要因になる。そのため二人は「必要な知識を得ること」「ヒーローとしての心構えを知ること」を目的とした新人研修を受けることになったのだ。
     新人研修は毎月第一土曜日に行われることになっており、朝から夕方までみっちりスケジュールが組まれている。アベンジャーズの一員であれば基地での宿泊は無料なので、スコットは前日である金曜日の夜にアベンジャーズ基地に来て日曜日の朝に帰るという日程で研修に参加していた。もちろんピーターも一緒に研修を受けている。
     スコットとピーターは大きく年齢が離れていながらも同期。そういうことなのだ。


    *****


     今日は金曜日。アベンジャーズ基地での研修前日。スコットは真昼の太陽に照らされながら基地の正面玄関を目指して歩いている。いつもは研修前日の夜に到着するようにしているのだが、今回はハンク・ピムから頼まれた用事のために早く来たのだ。
     サノスとの戦いの後、スコットの師であるハンク・ピムはアベンジャーズと協力することを決めた。それにより互いの研究データを共有したり様々な装置やシステムの開発を援助し合うようになったため、スコットは時々ハンクの代理として基地に足を運ぶことがあった。今回は研修とタイミングが重なったというわけだ。
     スコットは顔馴染みとなった施設職員と挨拶を交わしながら建物の中に入り、そのまま研究・開発室に直行した。部屋の中を覗き込むと機械と向き合うブルースの後ろ姿が目に飛び込んできた。
    「ブルース、お疲れ。調子はどう?」
     声をかけるとブルースは振り返って「やあ、スコット」と笑顔で迎えてくれた。
     スコットがブルースの方に歩いていくのと同様にブルースも機械から離れてこちらに向かって来る。
    「僕の体調は全く問題ないけど、研究の方は少し停滞気味かな。この前もピム博士に相談したんだ。」
     少し困った顔で話すブルースにスコットは「お土産だぞ」と言ってニヤリと笑った。そしてリュックサックを下ろして中から小さなケースを取り出す。
    「これ、ハンクが開発した装置。預かってきたんだ。これを使ってみろってさ。」
     スコットがケースを差し出すとブルースは目を丸くしながら受け取り、蓋を開けて中に収められている装置をじっくりと観察する。時間をかけて観察し終えた彼は「これはすごい」と感嘆の声を漏らし、蓋を閉めてからスコットに視線を戻した。
    「これを貸してもらえるのか?」
    「いや、プレゼントみたいだ。自分には必要ないってさ。」
    「本当に?嬉しいよ、ありがとう。後でピム博士に連絡して感謝を伝えておかないと。」
     ブルースは心から嬉しそうな笑みを浮かべながら自分の机の上にケースを丁寧に置いた。それを見届けたスコットは満足げに頷くと近くにあった椅子にリュックサックを座らせる。
     その時、ブルースから「そういえば、スコット」と声をかけられた。
    「ピーターには今日は夜じゃなくて昼に来るって伝えたのかい?」
    「ピーターに?どうしてだ?」
     その質問にスコットが首を傾げると、ブルースは「やっぱり」と小さく溜め息を吐いた。どこか呆れの見える表情にスコットはますます首を傾げる。
    「なあ、ブルース。今の質問ってどういう意味?それから何で呆れてるの?何か変だった?」
     重ねて尋ねればブルースが遠い目をした。その反応にますますスコットは困惑する。
     自分はそんなにもおかしな発言をしただろうか?全く心当たりがない。
     困惑するスコットにブルースが乾いた笑いを零す。
    「いや、なんていうか、スコットは鈍いんだな……って。少しだけピーターがかわいそうに思えてきた。」
    「いやいや、だから何で?」
    「僕から言えるのは、きっと後でピーターから怒りの電話が掛かってくるってことぐらいさ。それはいいから研究の話をしよう。」
    「う、うん?」
     疑問を解消できないままだが仕方ない。ブルースが中心になって進めている研究の話の方が大事だ。
     スコットの意識はモニターに映し出された研究データに移り、些細な疑問のことは頭の片隅に追いやられてしまった。


     スコットがブルースの「きっと後でピーターから怒りの電話が掛かってくる」という言葉を思い出したのは夕方になってからだった。
     スマートフォンから着信を知らせる陽気な音楽が流れ出したので画面を見れば、「スパイダーボーイ」という名前が表示されていた。それを見て一瞬だけ怯んだのはブルースの言葉を思い出したせいだ。スコットにはピーターに怒られる理由が全く思い当たらないのだが、ブルースにはわかるらしい。理不尽な話である。
     スコットは軽く息を吐いてから電話に出て「よう、スパイダーボーイ」と努めて明るい声を出した。
    『その呼び方はやめてってば。もしかして、まだ僕の登録名をそれにしてる?』
    「親しみを込めた俺だけの呼び方なんだけどなぁ。」
    『──って、そんなことはどうでもいいんだよ!スコットさん、どうして今日は昼から来てるって教えてくれなかったの⁉サムさんが教えてくれなかったら知らないままだったよ!』
     突然興奮し始めたピーターの大声がスコットの耳を直撃した。スコットは耳に響く大声に顔をしかめながらサムに言われたことを思い出す。
     ブルースと研究について話している時に研究・開発室に顔を出したサムから「早めに来ることをピーターに言っておいたのか?」と尋ねられ、伝えていないと答えると彼は呆れ顔を見せた。そして彼は「俺が連絡しておいてやる」といたずらっぽく笑って去っていったのだが、どうやら本当にピーターに知らせたらしい。
     スコットはスマートフォンを耳から少し離してピーターの質問に答える。
    「ハンクの用事のために早く来たんだ。遊んでたわけじゃないぞ。それにお前は学校だったろ?その後はパトロールだし、連絡したって会う時間は取れないじゃないか。」
    『スコットさんが来てるって知ってたらパトロールは休みにしたよ!ねえ、僕たちは月に一回しか会う機会がないってわかってる⁉』
     再びピーターの大声が耳を直撃した。
     スコットはピーターに落ち着いてもらう必要があると確信する。このままでは耳がおかしくなってしまいそうだ。
    「ピーター、愛しのダーリンに会いたい気持ちはわかるけど落ち着けよ。」
     スコットは呆れ混じりに冗談で返した。ところが返ってきたのは沈黙だ。「バカなことを言わないでよ」などと呆れた声が返ってくるとばかり思っていたのに予想外の反応だ。
     まさか引かれたのだろうか、とスコットは慌てる。
    「冗談だよ!悪かった!こんなおじさんにそんなこと言われたら気持ち悪いよな!ごめん!」
     必死に謝ったが、電話の向こうのピーターは沈黙している。嫌われてしまったのだろうか?
    「……なあ、ピーター。変なこと言ってごめんな。本当に悪かったよ。」
     反応がないために思わず悲痛な声が出た。その時、小さな声で「怒ってないよ」と返ってきた。
    『別に気持ち悪いとは思ってないし、会いたいのも本当だよ。電話とかメッセージでやり取りしてるけど会って話す方が楽しいから。僕は毎月の研修でスコットさんに会えるのが嬉しいのに……スコットさんは違うの?』
     それはとても悲しそうな声だった。その声を聞くとピーターが悲しげに目を伏せて俯いている姿が目に浮かぶ。当然だが、彼を悲しませたいなどと思ったことは一度もない。
     スコットは自分を慕ってくれている少年を悲しませたことを心から反省し、彼を悲しませたことに対する胸の痛みを感じながら口を開く。
    「ピーター、ごめんな。俺もお前と話すのが楽しいし、一緒に研修を受けられるのが嬉しいんだ。お前が同期でよかったと思ってる。嘘じゃない。いつもより早く来る時は必ずお前に連絡するよ。約束だ。」
     心からの謝罪と反省を込めて語りかけると、「やったー!」という元気な声が聞こえてきた。
    『次から早く来た時は僕と遊ぼうね!約束!あー、嬉しい。今度遊びに行く場所を考えておかなきゃなー。そうだな……』
     先ほどまでの落ち込みが嘘のようにピーターは一人で元気よく話し続けている。完全にいつものピーターだ。
     スコットはがっくりと肩を落としながら話しかける。
    「お前なぁ……落ち込ませたと思って本当に心配したんだぞ?まあ、お前が元気ならいいさ。それより、今日は基地に泊まりに来るのか?」
    『当たり前だよ。スコットさんに話したいことがいろいろあるから前乗りしないとね。夜食用のスナックは何がいい?』
    「んー、ポップコーンがいいな。」
    『わかった、買っていくね。じゃあ、また後で!』
     通話が終了すると、スコットはスマートフォンを見つめて小さく笑う。
     ピーターはいつも研修の前日から基地に来る。理由としては「少しでも長くスコットさんと一緒に過ごしたいから」らしい。ピーターは両親を早くに亡くしたと聞き、「父親みたいに思われてるのかもしれない」と考えたスコットは彼の望むようにさせている。ピーターと過ごす時間は楽しいので大歓迎だ。
     きっとピーターが基地に到着するのは夜の八時頃になるだろう。それまでは自由に過ごそう。
     スコットは自由時間をどのように過ごすべきか考えながら、当てもなく歩き出した。


     時計の針が午後八時を少しばかり過ぎた頃、談話室でテレビを見ていたスコットの前に現れたピーターが「スコットさん!久しぶり!」と元気良く挨拶をした。
     スコットはテレビを消してソファーから立ち上がり、ピーターと軽く抱擁を交わす。
    「一ヶ月ぶりだな。学校とパトロール、お疲れさん。」
    「聞いてよ、今日のパトロール中にすごいことがあったんだ!」
    「わかった、わかった。夕食を食べながら聞かせてくれ。腹ペコなんだ。」
     その言葉にピーターが目を丸くした。
    「スコットさん、まだ食事してないの?」
     その問いにスコットは「当たり前だろ」と頷いた。
     いつもは行きの飛行機の中で夕食を済ませてしまうので金曜日の夜にピーターと一緒に食事をしたことはない。今回は一緒に食事ができると思って待っていたのだが、もしかしたらピーターは食事を済ませてきてしまったのかもしれない。
     先に確認しておくべきだった、とスコットは気まずさを感じながら鼻の頭を掻いた。
    「ピーターは夕食を食べてきたのか?だったら急いで食べてくるから、悪いけど部屋で──」
    「違う!まだだよ!」
     興奮したように大きな声で答えたピーターは真っ直ぐにスコットを見つめている。その頬が微かに赤い。
     ピーターは自身を落ち着かせるようにフーッと息を吐いてから話す。
    「こんな時間だし、スコットさんは食べ終わってると思ってたんだ。まだ食べてないなんて思ってなくて……もしかして僕を待っててくれた?」
     上目遣いで尋ねてくる少年に向かってスコットは笑顔で首を縦に振った。
    「もちろんさ。お前と一緒に食べたかったからな。じゃあ、一緒に食堂へ行こう。今日の日替わりメニューは何だろうな?」
     そう言ってスコットは歩き出したが、談話室を出たところで服の裾を引っ張られる。振り返れば俯き気味のピーターに服を掴まれていた。
     スコットは首を傾げながら「ピーター?」と彼の名前を呼んだが、ピーターは黙り込んでいる。
     やがて、ピーターは小さく溜め息を落としてから呟く。
    「スコットさんのそういうところ、狡いけど好きだよ。」
     スコットから視線を逸らしながら呟いたピーターの頬も耳も赤く染まっていた。それを見て彼が照れているのだと知る。
     なぜピーターは照れているのだろうか?そんな風に照れている姿を見ると理由がわからないのにこちらまで照れてしまう。
     スコットはピーターの照れが移ったかのように自分の頬がほんのりと熱くなるのを自覚した。
     「い、行くぞ」とぎこちなく告げてからスコットは歩き出し、その後ろをピーターが大人しく付いてくる。広い廊下を歩く二人に会話はない。その沈黙は賑やかな食堂に到着するまで続いた。


    *****


     土曜日の朝。研修の日。空は美しい青色に染まっている。
     スコットはスマートフォンのアラームによって目を覚まし、ベッドから抜け出して全身を伸ばす。
     昨夜はピーターと話し込んでしまい、解散したのは日付が変わって二時間ほど経ってからだった。研修は九時から始まるので準備のためにも二時間前には起きなければならず、多少の睡眠不足は否めない。居眠りしないように気をつけなければならないだろう。
     スコットは何度もあくびをしながら着替えて顔を洗い、朝食を食べるために食堂へ足を向ける。その途中、眠そうな顔をしながら歩くピーターを見つけた。
    「ピーター、おはよう。眠そうだな。俺も人のことは言えないけど。」
     挨拶をすればピーターはフニャッと笑って「おはよう」と返してくれた。
    「昨日はごめんなさい。つい話し過ぎちゃった。」
    「謝るなよ。楽しかったんだから。今日は居眠りしないようにお互いに気をつけよう。」
    「僕が寝てたら起こしてね。」
    「いやいや、そこは頑張ってくれよ。」
     そんなやり取りは食事の間も続いた。食事の後は研修の準備のために一度解散し、研修の行われる会議室で合流すると再び他愛のない話でリラックスした時間を過ごす。
     ピーターとは年齢の差が大きいが、それを感じないほどに彼と話すのは楽しい。互いに話題が尽きないのでいつまでも話していられると思うほどだ。妙な気遣いをせずに気楽な関係でいられることが嬉しく、「ピーターが同期でよかった」と心から思う。そのうちに研修の時間となり、今日の講師であるサムが部屋に入ってきたので楽しいお喋りはお終いとなった。
     研修の講師役は主にアベンジャーズのメンバーが務めており、自分の経験に基づいた話をしてくれるので非常に勉強になる。それだけでなく講義の内容に関するレポート提出もあるとなれば居眠りする暇はない。聞き漏らしがないようにスコットもピーターも必死だ。
     熱心に講義を受けている間に午前の時間は瞬く間に過ぎていって昼休みになる。二人は昼食を食べながら受けたばかりの講義の内容について語り合う。
    「さっきの話、どれくらい理解できた?俺は半分くらい。」
    「僕も同じくらいかな。学校の授業の方が簡単だよ……今日の講義のレポートを書ける気がしない。」
    「だよな。また通話しながら書かないか?難しくて一人だと厳しいよ。」
    「うん!もちろん!スコットさんの都合が良い時に連絡してね。」
     そんなやり取りを交わしながらの昼食は瞬く間に終わる。食事の後は午後の研修の準備だ。
     揃って食事を終えたスコットとピーターが会議室に戻ろうとしたところへサムがやって来る。緊張感の漂うサムを見てスコットは任務への参加を言い渡されるのだと察した。
     スコットとピーターの前で立ち止まったサムは二人の顔を交互に見遣りながら口を開く。
    「スコット、ピーター、午後の研修は中止になった。お前たちには任務に参加してもらう。スーツは持ってきてるな?」
    「ああ、ある。任務の内容は?」
     スコットが問うと「誘拐の被害者の救出だ」という答えが返ってきた。
    「人身売買グループの拠点を見つけた。明日にも取引が行われるらしい。その前に被害者を救出して奴らを捕まえる。人数が必要だからお前たちにも来てほしい。」
     その要請にスコットとピーターは一瞬だけ目を合わせてからサムに向かって「了解、キャプテン」と頷いた。
     力強く頷いた二人にサムが微かに笑みを浮かべる。
    「助かる。二十分後に飛行場に集まれ。頼んだぞ。」
     そう言ってサムは足早に去っていった。スティーブからキャプテンアメリカを引き継いだ彼は常に忙しい。
     スコットはサムの後ろ姿を見送ってからピーターの方に顔を向ける。
    「俺たちの出番だな。急ごう、ピーター。」
     それに対してピーターは大きく頷いた。
    「うん、頑張ろうね。」
     スコットとピーターは笑みを向け合い、それぞれの部屋に戻るために足早に歩き出した。急いで準備をして集合場所に行かなければならない。
     スコットは高まる緊張に全身を包まれながら「ベストを尽くすぞ」と自身を奮い立たせた。


     基地の飛行場から任務用の飛行機に乗ったスコットたちはターゲットがいる港町の近くに移動し、着陸地点から目的地の近くまでは車での移動となった。
     人身売買グループの拠点は港にある廃工場だ。誘拐した人たちを集めて監禁し、他の場所へ運び出すには好都合な場所と言えるだろう。
     今回の任務はアベンジャーズに正式に加入しているメンバー全員が参加する。敵や保護対象者の人数が正確に掴めない状況では何人いても足りることはない。スーツや装備を身に着けた皆は普通の車に偽装した特殊車両の中で任務の説明を受ける。
     今回の任務のリーダーであるサムは「ここが目的の工場だ」とモニターに映し出された建物を指差した。背の高いフェンスに囲まれた二階建ての工場はなかなかの大きさで、駐車場も広い。以前は大勢の従業員が働いていたことが窺える。それはつまり、人身売買グループが誘拐してきた人々を大勢集めておくのに好都合ということだ。
     スコットは工場の画像を見つめながらサムの話に耳を傾ける。
    「事前の偵察でわかってるのは建物の外に見張りが四人いることだけだ。点在してるから個別に対処すれば敵に気づかれにくいが、問題は建物の中だ。」
     サムがモニターをスワイプすると表示されている画像が工場の見取り図に切り替わった。二階建てのように思えた建物には地下があり、ボイラー室や倉庫があるようだ。
    「内部の見取り図は入手できたが、誰がどこにいるのか全くわからない。被害者がまとまって監禁されてるのかバラバラに閉じ込められてるのかも掴めてない状況だ。だから俺とスコットが偵察して情報を集めることから始める。」
     サムはそう言ってスコットに顔を向けた。
    「お前は縮小して中に忍び込め。被害者の居場所と突入に適した場所を調べてほしい。」
    「わかった。みんなが突入するまでは手を出さないってことでいいか?」
    「ああ、そうしてくれ。」
     サムは頷き、次に他の仲間たちを見る。
    「俺はレッドウィングで外から偵察するが、それには見張りが邪魔になる。俺とスコット以外のみんなは外の見張り全員を潰してくれ。情報を集め終わったら突入する。突入の合図をするまでは勝手な行動は禁止だ。いいな?」
     それぞれが了解を示したので作戦会議は終了だ。
     最終的な準備を終えて車外に出ると皆で輪になる。作戦実行前の恒例行事だ。
    「今回の目的は誘拐の被害者の救出と人身売買をしてるクソ野郎どもを捕まえることだ。難しい任務だが、俺たちなら必ず成功できる。……誰もケガするなよ。行こう。」
     リーダーからの言葉に誰もが自信に満ちた顔で頷く。仲間を信頼して臨めば大丈夫だ。
     輪が解けた時、スコットはピーターの方を見た。ピーターもこちらを見ていたので目が合う。ピーターが微笑みながら力強く頷いたのでスコットも同じように頷き返した。そして二人同時に別々の方向へ走り出す。
     さあ、任務開始だ。


     スコットは工場を囲むフェンスが見えてきた地点で縮小した。そして仲間である羽アリを呼び、小さくも頼もしい体に飛び乗って本来の身長よりも遥かに高いフェンスをあっさりと越える。
     フェンスを越えたスコットは退屈そうに佇む見張りの近くを通り過ぎて開け放たれた窓から工場内に侵入した。工場の中は古ぼけていて薄暗い印象だ。工場が閉鎖してから何年も経っているのだろう。
    (まずは一階を見て回ろう)
     そのように決めたスコットは羽アリに乗ったまま廊下を進む。
     一階は機械が置いてある大きめの部屋がほとんどだった。置き去りにされたように佇む機械はサビが目立つ。居並ぶ機械の間に誘拐の被害者の姿が見えないかと捜してみたが、どこにも被害者らしき姿はない。
     一階を探索している途中、銃を携えた男三人とすれ違った。一応は見回りをしているのだろうが、ダラダラと歩く姿からは警戒心の欠片も見当たらない。これまでに一度も警察に見つかっていないという自信が慢心になっているように思えた。
     スコットは通信機器を使って仲間たちに一階の様子を報告する。
    「一階は銃を持った男三人が見回ってる。油断してるみたいだな。誘拐された人たちは見かけなかった。次は二階に行ってみる。」
     報告を終えると、サムの「気をつけろよ」という声が聞こえた。
     階段を進んだ先の二階は一階とは雰囲気が異なり、小さめの部屋がたくさんあった。事務室に応接室、更衣室や休憩室などが並ぶフロアの奥には食堂が見える。そこから聞こえてくるのは男たちの笑い声だ。
     スコットは羽アリに食堂に向かうように指示を出して他の部屋を後回しにした。耳を澄ませてみても声が響いてくるのは食堂の方向からだけなのだ。
     食堂にはリラックスした様子で談笑する男たちの姿があった。人数は七人で、その誰もが腰に拳銃を下げている。全員が人身売買グループの人間だと考えて間違いない。これで全員だろうか?
     スコットは食堂の中や厨房を確認し、その後は二階の他の部屋を回って囚われの身となっている人々を捜したが、それらしき人はいなかった。残された場所は地下だけだ。
     スコットは再び仲間たちと通信する。
    「待たせてごめん。二階には人身売買グループの奴らしかいなかった。食堂に七人いて、全員が銃を持ってる。捕まってる人は地下にいると思うから行ってくる。」
     スコットは状況を報告しながら地下に向かう。
     地下には見張りの男が一人しかおらず、階段付近に立って雑誌を読みふけっていた。男から視線を外して奥を見遣れば、右側には「ボイラー室」と書かれたプレートが貼られたドアがあり、左側には二つのドアが並んでいるのが見える。二つのドアそれぞれには「倉庫A」「倉庫B」との表記があった。
     スコットは「倉庫A」の部屋に近づいてドアの鍵穴から中に侵入する。そして、薄暗い部屋の中で身を寄せ合う若い女性たちを見つけた。部屋の中にいたのは十人で、いずれも年齢は十代後半から二十代前半といったところだ。諦めたように俯いていたり、体を震わせながら泣いている彼女たちを見ると胸の痛みと共に強い憤りを覚える。スコットは「後で助けに来るよ」と心の中だけで励ましを送り、隣の部屋へ移動する。
     「倉庫B」と書かれた部屋にも十人が押し込まれていたが、その部屋にいたのは若い男性だ。隣の部屋の女性たちと同じ年頃の彼らは縮こまって座っていたり、声を抑えながら泣いていた。
     スコットは若者たちを誘拐した者たちへの怒りによって眉間にしわが寄るのを自覚しながら部屋を出て、次はボイラー室へ入る。ボイラー室には誰の姿もなく、ここは全く使われていないようだった。
     全てのフロアの調査を終えたスコットは仲間たちに連絡する。
    「誘拐された人たちを見つけた。地下にある二つの倉庫に閉じ込められてる。十代後半から二十代前半の男女が十人ずつだ。ボイラー室は使われてなくて、地下の見張りは階段付近に一人だけだ。」
     そのように報告すると、サムから「その場に留まって聞け」と指示があった。
    『状況を整理するぞ。外の見張り四人は気持ち良くお昼寝中だ。工場の一階は見回りの三人が彷徨いてて、二階の食堂には七人が集まってる。地下には二十人の保護対象者が二つの部屋に監禁されてて、見張りは一人。敵は全員が銃を所持。合ってるか?』
    「うん、それでいい。」
    『スコットの報告以外の敵はいない。敷地の外も監視してるが、今のところはここに近づく不審者もいなさそうだ。危険物も設置されてないから、今すぐにでも突入したいところだ。その前に作戦を立てる。』
     その時、ローディが「ちょっといいか?」と口を挟んだ。
    『せっかくだからスコットとピーターに突入の作戦を立てさせよう。講義で勉強したことを応用するチャンスだ。それに、二人とも実戦経験がゼロってわけじゃない。だろ?』
    『そうだな……おい、ルーキーズ。お前たち二人で突入の作戦を考えてみろ。三分でな。』
     サムの指示にピーターの声が「三分⁉」と裏返ったが、スコットも釣られて驚いている場合ではない。すぐに作戦を決めなければ。
    「えーっと、一階は裏側に非常口がある。正面玄関から一人、裏側の非常口から一人が突入すれば一階は十分だと思うよ。二階は窓から突入して不意を突けば制圧しやすいはずだ。」
    『じゃあ一階は僕とバッキーさんが担当して、他の三人が二階に突入、スコットさんが地下の見張り一人をやっつけるっていうのはどうかな?スコットさんはそのまま地下に留まって全部終わるまで監禁されてる人たちの護衛。この作戦でイケると思います!』
     スコットとピーターの提案に対してサムから「よし」との声が返ってきた。
    『なかなか良いぞ。その作戦でいこう。配置についたら知らせろ。』
     その言葉に全員が「了解」と応えた。
     スコットは廊下に出て見張りの男の隣に立つ。相変わらず雑誌に夢中になっている男を睨みつけながら「俺は大丈夫だ」と報告した。
     そのうちに仲間たちが準備完了を次々と連絡してくる。作戦実行まで後少しだ。
    『全員、準備ができたな。三秒数えたら突入だ。』
     リーダーの言葉にスコットは無言で頷く。恐らく他の仲間たちも同じように頷いたことだろう。
     そしてサムのカウントダウンする声が聞こえ、スコットは拳を握る。
    『──行け!』
     その言葉が聞こえると同時にスコットは縮小をやめて元のサイズに戻り、男の腰にある拳銃を一瞬で抜き取った。突然現れたスコットに驚いて目を丸くする男の顔面に躊躇することなく拳を叩きこめば、防御する余裕のなかった男は一撃で床に倒れ込んだ。白目を剥いているので完全に気絶したらしい。
     上階からは銃撃音や何か硬いものがぶつかる音、そして情けない悲鳴が聞こえてくる。仲間たちも順調に作戦を進めているようだ。
     上から聞こえてくる物騒な音を耳にした誘拐の被害者たちが悲鳴を上げたり「何が起きてる⁉」と混乱した様子で叫ぶのを聞き、スコットは倉庫に近づいて穏やかに声をかける。
    「心配しないで。俺たちはアベンジャーズだ。君たちを助けに来た。悪いんだけど、悪い奴らを拘束するまで少し待っててほしい。まだ危ないからね。」
     そのように呼びかけても不安を訴える声が絶えなかったため、スコットは縮小して鍵穴から部屋の中に飛び込み、皆の前で元のサイズに戻って姿を見せてやった。そうすると被害者たちは驚きながらもホッとした顔をした。
     もう一つの部屋でも同じように姿を見せて安心させてから廊下に戻り、気絶している男の衣服を探って鍵を取り出す。両方の倉庫の鍵を手に入れたスコットは一階へと続く階段の近くで待機する。もし敵が下りてきたら容赦なく叩きのめすつもりだ。
     スコットは上階の荒々しい音に耳を澄ませながら仲間たちからの連絡を待つ。本当は上に行って人身売買グループの男たちを捕まえたいが、この場に留まって被害者たちを守ることがスコットの役目だ。それを放棄することはできない。そのため「誰もケガなんてしないでくれよ」と祈り続ける。
     やがて「スコットさーん!」という呼びかけと共にマスクを被ったままのピーターが駆け下りてきた。その後に続いて下りてきたのは顔だけを晒したローディだ。
    「スコットさん、無事?被害者の人たちは?」
    「ああ、全員無事だ。見張りはこの通りさ。」
     スコットは床に転がっている男を指差しながら答えた。スコットが指差す先を見て、ピーターとローディがホッとしたように「よかった」と呟いた。
    「ところで、二人が地下に来たってことは男たちを全員捕まえられたってことでいい?」
     そう尋ねるとローディが力強く頷いた。
    「もうすぐ地元警察が来るから奴らの身柄を引き渡して、被害者たちも保護してもらうことになってる。そろそろ被害者たちを解放しよう。鍵はあるか?」
    「もちろん、確保済み。」
     スコットはニッと歯を見せて笑いながら倉庫の鍵を掲げる。それを見たローディは「よくやった」と笑顔で鍵を手に取り、監禁されている人たちを解放するために倉庫の前に移動した。
     その時、スッと近くに寄ってきたピーターに腕を掴まれた。
    「スコットさん、本当にケガはない?」
    「なんだよ、信じてくれないのか?本当に大丈夫だって。」
     スコットは苦笑混じりに答えたが、ピーターは納得していないようだ。彼は「前科があるのを忘れた?」と溜め息を吐いた。
    「模擬訓練の時にケガしたのを隠してバッキーさんに叱られたことを忘れたとは言わせないよ。僕もしっかり叱ったはずだけど。」
    「……忘れるわけないよ。二人とも怖かった。その時に反省したから正直に申告してるの。本当にケガはしてません。」
    「わかった。信じる。でも、嘘だったらこの前以上に叱るからね。」
    「了解。」
     スコットが頷くとピーターは手を離してくれた。
     以前、模擬訓練の最中にスコットはケガをして「心配させたくない」という思いからそのことを隠そうとしたのだ。それを見破られ、模擬訓練の指導役のバッキーから「任務中のケガを隠すのは任務に影響し、他の仲間も巻き込む事態になりかねない」とひどく叱られた。ピーターからも「ケガを隠される方が余計に心配する」としっかり叱られたことは忘れられない。二人に叱られて深く反省したスコットは二度とケガを隠さないと自身に誓っている。
     スコットとピーターが言葉を交わしている間に誘拐の被害者たちが解放されていたので、二人はローディと共に被害者たちを上の階へ誘導した。
     一階では今回の任務に同行しているアベンジャーズ基地のスタッフが資料用の写真撮影や警察の対応への準備など、とても忙しそうに動いている。そのスタッフの一人がスコットたちに気づき、医療スタッフのいる場所へ案内してくれた。
     スコットは優しく微笑むことを心掛けながら怯えた様子の被害者たちに向き直る。
    「疲れてると思うけど、まずは健康状態をチェックさせてくれ。入院しなきゃいけないくらいに体調の悪い人がいるといけないからね。警察が来たらみんなを安全な場所に連れて行ってくれるから、もう少しだけ頑張ろう。」
     そのように呼びかけると強張った顔をしていた皆は表情を和らげて頷いた。そして診療室に入っていく時、スコットたちに「ありがとう、アベンジャーズ」と口々に感謝の言葉を伝えてくれた。その言葉にスコットはピーターやローディと顔を見合わせて微笑む。
     そこへサムが歩いてきて「お疲れさん」と労いの言葉をかけてくれた。
    「お前たち、ケガはないか?」
     その問いにローディが「三人ともピンピンしてるよ」と答えた。
     サムがホッとしたように微笑むと、ピーターが勢い良く挙手した。
    「あの、敵はどうなったんですか?一階の三人は正面玄関の近くに集めておいたんですけど。」
    「一階の奴らを二階に連れて行って全員を食堂に閉じ込めてある。バッキーとワンダの監視付きでな。うちのスタッフたちも張り付いてるから絶対に逃げられない。」
    「そっか、よかった。」
     ピーターは小さく頷きながら呟いた。マスクの下では安堵の笑みを浮かべているのだろう。そのピーターの肩をサムが叩き、その次にスコットも肩を叩かれる。
    「二人とも、よくやった。判断も的確だったし行動も問題なし。今日の任務は満点をやれる。」
     スコットはピーターと顔を見合わせて「やった!」と喜んで拳を軽く突き合わせた。任務の成功が嬉しいのはもちろんだが、自分たちの任務中の判断や行動を認めてもらえるのも嬉しい。
     喜び合う二人と二人を見守るサムのところへ基地のスタッフが近づいてきて、「警察が来た」と教えてくれた。サムは「すぐ行く」と答えてからスコットたちに顔を向ける。
    「警察に引き継いだら撤収するぞ。それまで大人しく待ってろよ。」
     それだけを言い残して去っていったサムを見送り、スコットはピーターを見る。
    「じゃあ、俺たちは隅っこで大人しくしてようか。」
    「うん、そうだね。」
     ピーターが頷き、二人は近くの壁際まで移動した。そして並んで壁にもたれながら周囲を眺める。喧騒がどこか遠くに思えて、自分たちの周りだけ周囲から切り取られたように感じた。
     無言で周囲を見つめるスコットと同じように、ピーターも先ほどから黙ったままでいる。任務を無事に終えた達成感や、仲間が一人もケガをしなかったという安堵。それらが心を満たしているせいなのかもしれない。その穏やかな沈黙はスコットにとって心地の良いものだった。
     研修と任務という忙しい一日の終わりに、スコットは自分の部屋でピーターと過ごしていた。今日の頑張りをお互いに労うためだ。
     ベッドを背もたれにして横並びで座り込む二人の前には様々なスナック菓子が広げられ、それぞれの手にはペットボトルのジュースが握られている。お世辞にも行儀が良いとは言えないので「娘にはナイショにしてくれ」と頼むと、ピーターは笑いながら頷いてくれた。
     ささやかな慰労会は今日の任務の話から始まり、次は同じアベンジャーズのメンバーの話、その次は各自のスーツの話など、次から次へと話題が変わっていく。
     一通りの話が済むと会話が途切れて沈黙が生まれた。その沈黙に気まずさは感じない。沈黙さえ心地良さを感じるほどにピーターはスコットにとって親しい存在なのだ。
     スコットが温くなったジュースを一口飲んだ時、ピーターが呟く。
    「……僕、サンフランシスコの大学に行こうかな。」
     思いがけない呟きにスコットは目を瞠った。
     驚きを隠さないまま顔をピーターの方に向ければ真っ直ぐな眼差しが注がれていることに気づく。
    「どうしてサンフランシスコの大学に行きたいんだ?」
     率直に問えば「あなたが住んでる街だから」と返ってきた。
    「電話やビデオチャットじゃなくて、こんな風に直接会っていろんな話をしたい。もっと一緒の時間を過ごしたいと思ったんだ。」
    「だからって、わざわざサンフランシスコの大学にしなくても……」
    「僕たちの研修は一年の予定だよ。毎月会えるのも残り半年。研修が終わったら……僕たちが会えるのは任務の時だけ。それも年に何回あるのかわからないよ。僕たちの住んでる場所は離れてるから。」
     そのように話すピーターの表情は暗い。それだけで彼がスコットと会えなくなることを悲しんでいることがわかる。
     確かに、研修が終わればスコットが毎月ニューヨークに来ることはなくなるので、二人の会う機会が激減するのは事実。サンフランシスコとその周辺を守ることが基本であるスコットが任務で頻繁に呼び出されるとは考えにくい。そうなれば二人が顔を合わせるのは片手で数える程度になる可能性が高く、それを寂しく思うのはスコットも同じだ。
     しかし、ピーターの進路をそのような理由で決めていいはずがない。
     スコットはピーターに近寄ると彼の顔を覗き込みながら語りかける。
    「ピーター、お前が俺のことを大切な友だちだと思ってくれて、会えなくなることを寂しがってくれるのは嬉しいよ。俺だってお前に会えなくなったら寂しい。……でもな、俺が理由で進路を決めるのは反対だ。」
     ハッキリと告げればピーターが感情を堪えるように唇を強く噛んだ。そんなピーターにスコットは努めて優しい声音で話し続ける。
    「行きたいと思う学校があるならいい。興味のある学科があるならいい。サンフランシスコの大学でもピーターのやりたいことができるなら文句なしだ。さあ、どうだ?よーく考えてみろ。」
     ピーターはしばらく黙っていたが、やがて首を横に振って「ない」と答えた。これで答えが出た。
     スコットは「そうだろ?」と微笑んでピーターの頭を撫でる。
    「大学は自分が勉強したいこと、やりたいことのために選ばなきゃ意味がない。行きたい学校に行って楽しい大学生活の話を聞かせてくれ。な?」
    「……うん。」
     消え入りそうな声で返事をしたピーターの頭をスコットは勢い良く撫で回す。
    「もう!元気出せって!会いたかったら遊びに来ればいいし、俺も会いに来るから!」
    「え?……え、本当に?」
     ピーターは目を丸くしながらスコットの手首を掴んだ。がっちりと掴まれているので放してもらえそうにない。
     スコットの手首を掴むピーターは目を輝かせている。先ほどまでは沈んだ様子を見せていたというのに、今は妙に生き生きしている気がする。「遊びに来ればいいし、会いに来る」という言葉がそんなにも彼の心にヒットしたのだろうか?
     戸惑うスコットにはお構いなしでピーターは勢い込んで顔を近づけてきた。
    「サンフランシスコに遊びに行ってもいいの?迷惑じゃない?本当にいいの?」
    「も、もちろんだ。ホテルに泊まったら金が掛かるから俺の家に泊まればいい。同居人がいるけど。」
    「うん!泊まりたい!それと、スコットさんも来てくれるの?わざわざニューヨークまで?本当に来てくれる?」
    「ハンクの用事のついでになっちゃうけど、それでもこっちに来る時は絶対にピーターに連絡する。それに、たまには観光したいしな。いろんなところを案内してくれると嬉しい。」
     距離の問題を考えると頻繁な行き来は難しい。回数で考えれば多いとは言えないだろう。そうであっても研修や任務以外でピーターと一緒に過ごしたい気持ちは本物だ。
     スコットの返事を聞いたピーターは心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべた。そしてスコットの手首を掴んでいた手を離すと、今度は「ありがとう!」と抱きついてきた。
     幼い子どものような反応をするピーターにスコットは苦笑しつつも彼の背中を撫でてやる。
    「お小遣いを貯めて、長期休みになったらスコットさんに会いに行くよ。その時は街を案内してね。僕もニューヨークを案内するから。」
    「うん、友だちとニューヨークを回るのを楽しみにしてる。」
    「……スコットさん、言っておきたいことがあるんだけど。」
     ピーターはそこで言葉を切り、抱きつくのをやめてスコットの顔を覗き込んできた。常になく近い距離で見つめられると柄にもなく照れてしまう。スコットは自分の心臓が落ち着きをなくしたことを悟られないように必死に平静を装った。
     そして、スコットが「どうした?」と尋ねようとした時にピーターの人差し指の背がスコットの唇に触れる。どこか艶めいた仕草にスコットは全身を硬直させた。
     身動き一つできずにいるスコットにピーターが落ち着いた口調で告げる。
    「僕はいつまでも子どものままでいられないし、スコットさんとの関係を友だちで終わらせるつもりもないから。覚えておいてね。」
     その瞬間のピーターは大人の男の顔をしていた。想いを寄せる相手を口説く時の大人の男。それに気づいた途端にスコットの顔は一気に熱くなった。
     可愛い少年だと思っていた相手の意外な一面を知り、彼が胸に秘めていた自分への気持ちに気づいて平静でいるのは無理だ。顔は熱く、鼓動は速い。
     硬直したままのスコットとは対照的にピーターは「もう遅いから部屋に戻るよ」と言ってスナック菓子やペットボトルを片付け始めた。スコットも慌てて片付けを始めるが、片付けよりもピーターの存在に意識が行ってしまう。普段と変わらない様子の彼にますます混乱が深まった。
     ピーターは片付け終わると「おやすみなさい」と部屋を出ていった。もちろん、普段と変わりなく。
    「な……何だったんだ?」
     スコットは一人、呆然と呟いた。
     状況を整理しようとピーターに言われたことを思い出そうとするが、同時に先ほどの表情を思い出す。初めて見た「恋する相手を見る時の表情」を思い出しただけで再び鼓動が速まり、胸の奥がキュッとなったように感じられる。
     スコットは床に座り込んだまま「参ったなぁ」と頭を抱えた。
     今夜はきっと眠れない。そんな気がした。


    *****


     研修の日から一週間後の土曜日。スコットはピーターとビデオチャットをしていた。課題レポートを書くためにビデオチャットで相談し合うのは恒例行事のようなものだ。
     先日のピーターの思わせぶりな態度を思い出すと妙に緊張してしまうが、会話が始まってしまえば緊張は吹き飛んでしまう。いつものように二人揃って頭を悩ませながら話し合う。
    「この前の任務の時って俺はほとんど単独で動いてたから、他のみんなの動きが全然わからないんだよな。自分のことだけでレポートを書くのは厳しすぎる!」
    『ほとんど単独で動いてたのは僕も同じだよ。スコットさんは偵察について書けるからマシだと思う。僕の方こそ何を書いたらいいのか……』
    「そうだなぁ……あの時の作戦は俺たちで立てたわけだから、作戦内容について書いたらいいんじゃないか?どの方法を応用したのか、とか、改善点の洗い出しとか。それなら書けそうだろ?俺は偵察のことを書くから、作戦内容についてはお前に譲るよ。」
    『いいの?うわー、助かる!ありがとう、スコットさん。』
    「どういたしまして。だけどな、ピーター。講義の方のレポートも忘れるなよ。任務のレポートもあるからいつもより短くていいって言われたけど、そっちも厄介だぞ。」
    『忘れていたかった……頑張ろう。』
     このようにしてピーターと相談し合いながらレポートを書き進めていく。その時間もスコットにとっては楽しくて大切なものだ。
     課題レポート作成の時間は賑やかに流れていった。長時間集中したことによる疲れを感じたスコットはキーボードを打つ手を止めて座ったまま上半身を伸ばし、画面の向こう側で考え込みながらレポートを作成しているピーターを見つめる。
     ピーターは現役の高校生であり十代の若者だ。話し方や行動から若さを感じることは多く、やはり成人して何十年も経ったスコットとは違う。そうであってもスコットとピーターは信頼し合う仲間であり、心を許せる大切な友人なのだ。そのことについてスコットは「不思議だな」と思いながら口元に笑みを浮かべる。
     親子と間違われてもおかしくないほど年齢差のある自分たちがアベンジャーズの同期で、親しい友人で、恋し恋される関係だなんて不思議に思わずにいられない。それと同時にステキなことだとも思う。
     これから先、スコットのピーターに対する感情がどのように変化するのかわからない。それでも普通であれば出会うはずのない自分たちが数奇な運命の巡り合わせによって結びついたことは純粋に嬉しい。これは確かな感情だ。
     スコットが自分の心を確かめていると、不意に顔を上げたピーターから「どうかした?」と尋ねられた。
     不思議そうに首を傾げるピーターに向かってスコットは笑いかけながら答える。
    「なんか不思議だなーと思ってさ。」
    『不思議?何が?』
    「こんなにも年齢差があって、本来なら出会うはずのない俺たちが時間を共有してること。不思議だけど嬉しい。そんなことを考えてたんだ。」
     スコットの答えを聞いたピーターはパチパチと瞬きをしてから「なるほどなぁ」と笑った。
    『住んでる場所も遠いし、確かに接点はないね。そうやって考えるとアベンジャーズの同期メンバーになるなんて奇跡的なことだよね。……こうやって仲よくなれたことも奇跡的なのかもしれないけど。』
     ピーターは言葉を切って真っ直ぐにこちらを見た。その視線にスコットはドキリとさせられ、胸の高鳴りを感じながらピーターの口から発せられる次の言葉を待つ。
     ピーターはこちらを見つめたまま、ゆるりと笑みを浮かべた。
    『同期で、仲間で、友だちのあなたに僕は恋をしていますよ、スコット・ラングさん。』
     そう告白したピーターはあの夜と同じように大人の顔をして微笑んでいる。
     ピーターから向けられる微笑みに照れてしまったスコットは片手で顔を覆い、「勘弁してくれ」と呻く。
    「そんな風に笑うのは狡いぞ、ピーター。お前ってかっこいいんだからな。」
     顔に触れる掌が熱を感じ取る。常よりも高い体温はピーターのせいだ。耳も熱を持っているので、もしかしたら赤くなっているかもしれない。
     顔を隠したままでいるとピーターの楽しそうな笑い声が耳に届く。
    『スコットさん、ときめいちゃった?』
    「……うん、ときめいた。この前の夜も。」
    『じゃあ大成功だね。僕、決めたんだ。あなたへの気持ちを隠すのをやめるって。迷惑になるようなことをする気はないけどね。』
     意外にも真摯な声に釣られてスコットは顔から手を離し、画面の向こうからこちらを見るピーターに視線を向けた。穏やかに笑む彼の顔は、やはり大人びている。
    『まだまだ子どもっぽいところはあるけど絶対に魅力的な男になってみせるよ。だから、いつかスコットさんも僕に恋してほしいな。』
     一途な想いが伝わってくる言葉を受け取ったスコットは胸の奥がキュッとしたことを自覚する。
     こんなにもときめいてしまうのは飾ることなく恋情を向けられるのが久しぶりだからなのだろうか?久しぶりに寄せられる恋愛感情としての好意に対する免疫がないせいなのだろうか?
    (違う。こんなにも心を揺さぶられるのはピーターだからだ)
     スコットは頭に浮かんだ疑問に対して即座に答えを出した。
     相手が誰でもいいわけではない。きっと、自分でも気づかないうちにピーターは自分にとって特別な存在になっていたのだ。だから彼の言葉に揺さぶられる。
     そのことに気づいてしまえば照れくささがぶり返し、スコットは再び手で顔を覆った。赤く染まった顔を画面の向こうの少年に見せるわけにはいかない。
    『スコットさん、照れてないで顔を見せてよ。』
    「見せない。」
    『あっ、照れてるのは否定しないんだ。なんか嬉しいな。』
    「もう、俺のことはいいからレポートに集中しろ!」
     照れ隠しにそんなことを言ってみたものの、レポートに集中できないのはこちらの方だ。
     スコットは顔に集まる熱を自覚しつつ、次の研修の時にどのような顔をすればいいのか悩み始めたのだった。

    End
    ♢だんご♢ Link Message Mute
    2020/09/18 21:51:02

    同期な僕ら

    #蜘蛛蟻 #ピタスコ ##蜘蛛蟻


    pixivに投稿した作品と同じものです。
    アベンジャーズEG後の蜘蛛蟻。
    アベンジャーズに同期加入したスコットとピーターの新人研修&任務のお話。


    同期な蜘蛛蟻が読みたすぎて書きました。ご都合主義全開なので細かいことは気にせず読んで頂けるとありがたいです。
    ちょっと長いのでお暇な時にどうぞ。


    2020.9.19 一部を修正しました。

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    • リック受まとめ #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      ♢だんご♢
    • 飽きたなら、さようなら #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      ニーガンに素っ気なくされるようになったリックが徴収の前日に調達に出かけるお話。


      ニーガンに素っ気なくされるリックを書いてみたかったので挑戦してみましたが、あんまり素っ気ない感じがしないかもしれません。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • リック受けまとめ2 ##TWD ##ニガリク ##ダリリク ##メルリク

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      ほぼニガリクでした。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • スコット受まとめ #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      ♢だんご♢
    • スコット受け他まとめ ##アントマン ##蜘蛛蟻 ##スコット ##ロケット ##トニー

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      CPあり・なしの話がごちゃまぜ。CPありは蜘蛛蟻のみ。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ある寒い日のこと #ウースコ  #アントマン  #腐向け ##ウースコ ##アントマン


      自宅軟禁期間のウースコ。
      寒い日にスコットの自宅を訪ねるジミーのお話。

      寒い日は妄想がはかどるので書いてみました。ウースコというよりもウースコ未満かもしれません。
      いつも「ウーさん」と呼んでいるのでCP表記をウースコにしましたが、ジミスコの方がいいんでしょうか?
      とりあえずウースコでいこうと思います。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤ずきんとおばあさん #蜘蛛蟻  #ピタスコ  #腐向け  ##蜘蛛蟻


      小説投稿機能のお試し。
      ぷらいべったーで投稿したものを少し手直ししました。タイトルのセンスがないのはお許しください。
      ピーターが遊びに来るのを待つ心配性なスコットのお話。
      よかったらどうぞ〜。
      ♢だんご♢
    • 本能が「欲しい」と囁いた #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿した作品です。
      S7のニガリクで、オメガバース設定を使用しています。
      ネタバレになるので詳細は控えさせていただきます。

      好きなように設定を詰め込んでいますが、よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 小さなバースデーパーティー ##TWD ##リック ##カール

      アンディの誕生日にグライムズ親子の誕生日ネタで1つ。
      放浪中の親子の誕生日のお話。短いです。
      ♢だんご♢
    • さよなら、私のアルファ #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  #オリジナルキャラクター  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の続きになります。
      ニーガンが運命の番と出会ったため、サンクチュアリを出ていくことにしたリックのお話。


      オリジナルキャラクターが複数名登場します。出番が多く、ニガリクの子どもも登場するので苦手な方はご注意ください。
      詳細は1ページ目に案内がありますので、そちらをご覧ください。
      ニガモブ要素を少し含みますし、ニーガンがひどい男です。
      よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • ベッドひとつぶんの世界 #TWD #ダリリク #ニーガン #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿したものと同じ作品です。
      S7辺りのダリリク。
      ニーガンの部下になったダリリクと、二人を見つめるニーガンのお話。


      ダリリクが揃ってニーガンの部下になったら、互いだけを支えにして寄り添い合うのかなーと妄想したので書きました。
      寄り添い合うダリリクはとても美しいと思います。
      CPもののような、そうでないような、微妙な話ではありますが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ちょっとそこまで逃避行 #蜘蛛蟻 #ピタスコ #腐向け ##アントマン ##蜘蛛蟻


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンFFH後の蜘蛛蟻。
      FFHのネタバレを含むのでご注意ください。
      辛い状況にあるピーターがスコットの家に逃避行するお話。


      FFHが個人的に辛すぎたので自分を救済するために書きました。
      蜘蛛蟻というより蜘蛛蟻未満?
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 数値は愛を語る #蜘蛛蟻 #腐向け #Dom/SubAU ##蜘蛛蟻

      pixivに投稿したものと同じものです。
      Dom/Subユニバース設定で、Switch×Subの蜘蛛蟻。
      ピーターに惹かれながらも寄せられる想いに向き合うことができないスコットさんのお話。
      特にどの時間軸というのはなく、設定ゆるゆるです。


      突然降ってきたネタに萌えてしまったので勢いで書きました。スコットさんがヘタレです。
      特殊設定なので「大丈夫だよ!」という方は、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(前半) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク

      S7の頃。救世主として日々を過ごす主人公が偶然リックと関わり、それをきっかけにリックやニーガンと深く関わるようになるお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 家族写真 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      大切にしてる家族写真をニーガンに奪われたリックのお話。

      「ニーガンはグライムズ親子の写真を勝手に持って帰りそう」と思ったので書いてみました。
      特に盛り上がりのない私向けの話です。お暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち③ #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックは食料調達のためにシェーンとカールと共に森に入り、その最中に事件が起きる。それはグループの運命を変えるものだった。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      ニガリクタグを付けたら詐欺になりそうなくらいにニガリク要素が少ないです。ニガリクを探せ!という気持ちで読んでください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 僕はコーヒー豆を挽かない #TWD #ダリリク ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S5でアレクサンドリアに到着した後。
      「生きてきた世界が違う」という理由でリックや仲間と距離を置くダリルを心配するリックのお話。


      ほんのりダリリクの味がするお話です。
      アレクサンドリアに着いたばかりのダリリクの何とも言えない距離感も良いですね。
      タイトルについては深く考えずに読んでいたたければありがたいです。
      地味な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • Restart #蜘蛛蟻 #ピタスコ #最新作のネタバレあり ##蜘蛛蟻


      ※スパイダーマンNWHのネタバレを含むのでご注意ください。


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンNWH後。
      パトロール中のピーターがスコットに出会うお話。
      蜘蛛蟻未満だけど後々に蜘蛛蟻が成立するという解釈で書いているので蜘蛛蟻です。


      スパイダーマンNWHは面白い映画でしたね。
      でも個人的にとてもしんどい展開だったので自分を救済するために書きました。蜘蛛蟻は癒やし。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 侵入者との攻防 #ロケスコ #腐向け ##ロケスコ


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      アベンジャーズ・エンドゲームでのロケスコ。
      毎朝ロケットが自分の上で寝ていることに困惑するスコットのお話。


      エンドゲームを観て見事にロケスコにすっ転んだので書いてみました。
      口調が掴みきれてないので違和感があったら申し訳ないです。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 亡霊殺し #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S2終了後のダリリク。
      リックの傍にシェーンの亡霊が見えるダリルのお話。ほんのりシェンリク風味もあります。

      盛り上がりが特にない私得なダリリクです。ダリリク未満かもしれません。
      じんわりとリックへの執着を滲ませるダリルが好きなので書いてみました。
      本当に暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 雛の巣作り #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の番外編。
      ニガリクが番になって1年が経った頃のお話。
      よかったら、どうぞ〜。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 罪な味 #TWD #リック #シェーン #カール #ダリル #ニーガン ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      リックと誰かの食にまつわるお話。
      時期も長さもバラバラ。基本的にほのぼのですが、ニーガンとの話はほのぼのしてません。


      ・【ピザ】 リック&シェーン
       アポカリプス前。「ピザの魅力には抗えません」というお話。

      ・【ケーキ】 リック&カール
       アポカリプス前。「いつもと違う食べ方をすると楽しくて美味しい」というお話。

      ・【肉】 リック&ダリル
       平和な刑務所時代。「調味料は偉大だ」というお話。

      ・【フルーツティー】 リック&ニーガン
       S7辺り。「悔しいけれど美味しいものは美味しい」というお話。


      リックに美味しいものを食べてほしいと思ったので書いてみました。ニーガン以外はほのぼのしてます。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 特に何も始まっていない二人 #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿した作品と同じもです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      特に何も始まってないけれど仲よしなダリリクの詰め合わせ。

      CPというよりブロマンスなダリリクです。お互いに相手を大事に思ってることが滲み出るダリリクが好きです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち① #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックの家族を捜す旅に出たリックとニーガンだったが、過酷な世界での旅は簡単なものではなく……。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      長編なのでのんびり書いています。次の章を投稿できるのがいつになるのか不明です。
      完全に私得な話なのでお暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(後編) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク


      S7の頃。前作の続きで、ケガの治療のためにサンクチュアリに滞在するリックを世話する主人公がリックとニーガンの関係性を目の当たりにするお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      前編よりも主人公がリックに肩入れしています。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 恋しい、と獣は鳴いた #TWD #ダリリク #ニガリク #腐向け #オメガバース ##TWD ##ダリリク ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのダリリク・ニガリク。
      リックと番になっているダリルがリックと引き離されて情緒不安定な時にニーガンと話すお話。ダリルとニーガンのちょっとしたバトル。


      「αが番のΩに依存する」という設定で書きたくて書いてみました。会話してるだけなので特に盛り上がりのない地味な仕上がりです。
      気が向いた時にでもどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 彼らが愛したのは「   」です #TWD #セディリク #ゲイリク #ニガリク #妊夫 #腐向け ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S8終了後。
      ニーガンの子どもを妊娠したために孤立するリックを支えるセディク、ゲイブリエル、ニーガンのお話。セディクがメインです。

      ※注意
      ・男性の妊娠、出産、授乳の表現あり
      ・リックへの差別、迫害要素あり
      ・全体的に重苦しい展開


      CP要素があるような無いような微妙なところです。
      重苦しい雰囲気の話なのでご注意ください。
      本当に気が向いた時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 生まれ落ちた日 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S1初回。
      ニーガンが病院でリックを見つけるお話。
      S1初回にニーガンを放り込んだだけ。ニーガンの過去について原作の設定を使っているので未読の方はご注意ください。


      S1の時点でニガリクが出会っていたら最強コンビになったのでは?という妄想を形にしてみました。別人感が強いです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤い糸の憂鬱 #TWD #カルリク #ニガリク #腐向け ##TWD ##カルリク ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7のカルリク・ニガリク。
      リックとニーガンが赤い糸で繋がっているのが許せないカールのお話。
      特殊な設定がありますが、深く考えない方がいいかも?


      カルリクとニガリクで三角関係が読みたくて書きました。カールの前に立ち塞がるニーガン美味しいです。
      「カールは赤い糸が見える」という特殊設定がありますが、深く考えず雰囲気を味わって頂ければと思います。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 「大丈夫」の言葉 #TWD #ダリリク #腐向け #ケーキバース ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      リックが「ケーキ」であることを知ったダリルが思い悩むお話。
      ケーキバース設定を使っています。この話にグロテスクな要素はありませんが、ケーキバース設定自体がカニバリズム要素を含むので苦手な方はご注意ください。


      リックのことが好きすぎて思い詰めるダリルが大好物なので書いてみました。
      盛り上がりの少ない私得な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
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