茶釜奇譚 信長は最近、非常に機嫌が良かった。それは何をしていても笑みが零れてしまうほどの上機嫌であった。
なぜ機嫌が良いのかというと、信長からの家臣の誘いを二度も断った明智十兵衛光秀が遂に信長を主君に選んだからだ。十兵衛は信長討伐を進める将軍・足利義昭と袂を分かち、家臣として信長を支えると決めた。その決意と共にやって来た十兵衛を迎えた瞬間の喜びは生涯忘れられそうにない。
十兵衛が織田家の家臣となって以降、信長は頻繁に十兵衛を呼び出した。軍議以外の用事にも彼を連れ回したのは単純に自慢したかったからだ。「十兵衛は自分の家臣になったのだぞ」と皆に見せつけるのは非常に気分が良く、十兵衛が自分を「殿」と呼んで常に傍にいてくれることも嬉しかった。浮かれていると言われても反論のしようがない。
そして今日も客人との会談に同席させるため、都にある己の館に十兵衛を呼び出した。十兵衛は自身がいなくても問題ない用事であることに不思議そうな顔をしていたが、特に何も言わずに信長の傍に控えている。その姿を盗み見ては信長は密かに笑みを零した。
客人との会談を終えた信長は十兵衛を連れて茶室へと足を向ける。彼に自ら茶を点ててやろうと思ったのだ。
信長は廊下を歩きながら十兵衛に「今日は付き合わせて悪かった」と話しかけた。
「そなたが同席する必要はなかったのだが、織田家の家臣となったばかりのそなたとあの者との顔合わせを済ませておいた方が良いと思うてな。」
信長が示した理由に十兵衛が納得したように頷く。
「左様でございましたか。お気遣いいただきありがたく存じまする。」
「この程度の顔繋ぎは主としての務めじゃ。今後、十兵衛は織田家の顔として多くの者と会わねばならんからのう。」
「殿のお顔に泥を塗ることのないよう励まねばなりませんな。」
「期待しておるぞ。とりあえず今日の用事は終いじゃ。十兵衛、わしが茶を点ててやるから飲んでいけ。」
「はい、いただいてから帰ります。」
今後は十兵衛と共に茶を飲む機会も増えるだろう。その他にも共に楽しめることをやりたい。
そのように考えて笑みを零した時、十兵衛が庭に顔を向けた。信長はそれを特に気にも留めず歩き続けたが、数歩歩いたところで異変に気づく。十兵衛が後ろを付いてくる気配がないのだ。
後方を確認するために振り返ってみれば、十兵衛は庭を見つめたまま立ち止まっていた。その表情は渋い。
信長が十兵衛の様子を訝しく思いながら名を呼ぼうとした時、十兵衛は庭を見つめたまま声を出すことなく「わしは行かぬ」と言って首を横に振った。まるで庭にいる誰かと会話しているようだが、庭には誰の姿もない。
十兵衛はしばらく庭を睨んでいたが、やがて小さく息を吐くと顔を正面に戻した。それにより信長と目が合い、慌ててこちらに近づいてきた。
「申し訳ございませぬ、お待たせしてしまいました。」
「いや、構わぬ。」
そのように答えながらも信長は先ほどの十兵衛の行動が気になって仕方なかった。彼は誰と話していたのだろうか?
茶を飲みながら尋ねてみよう、と考えた信長は茶室へ向かう足を少しだけ速めた。
信長と十兵衛の二人だけしかいない茶室には穏やかな空気が流れている。
信長は心を込めて十兵衛のために茶を点てた。その際に十兵衛が「茶を点てる所作が美しゅうございますな」と褒めてくれた。微笑ましげに笑いながら告げられた言葉に信長はむず痒いような気持ちになった。十兵衛に褒められるのはとても嬉しい。
十兵衛は信長の所作を美しいと褒めてくれたが、信長からすれば茶を飲む際の十兵衛の所作こそ美しいと称すべきだと思う。十兵衛は指先の動きまで美しく、信長はこれほどに美しい所作で茶を飲む者を他に知らない。彼が茶を飲む姿を永遠に眺めていたいとさえ思ってしまう。信長は「結構なお手前でございました」と言う十兵衛の声で我に返るほどに彼に見惚れていた。
信長は見惚れていたことをごまかすために咳払いをしてから、茶室に来る前の十兵衛の行動について尋ねる。
「ところで、十兵衛。茶室に来る前に庭を見ておったようだが、何か気になることでもあったか?『わしは行かぬ』と申しておったようにも見えたのだが。」
その問いを受けた十兵衛は決まりが悪そうに眉を下げて、溜め息を吐いてから口を開く。
「今から私が申すことは信じ難いことではございますが、嘘ではないと事前に申し上げておきます。」
「無論じゃ。そなたが嘘を吐くはずがない。」
その言葉に十兵衛は一瞬だけ微笑み、すぐに真剣な顔つきになった。そして居住まいを正してから話し始める。
「私が生まれたばかりの頃、明智庄に旅の僧侶が訪れました。穏やかな人柄で、それは良い御仁であったと母が申しておりました。その僧侶が赤ん坊であった私を見て『この子は他者を惹き付ける性質を持っている』と仰ったそうです。」
その話に信長は「確かにな」と感想を漏らした。
十兵衛は多くの有力武将から目を掛けられ、己の家臣や民からも慕われている。公家の中にも十兵衛を気に入っている者が少なくないと聞く。もちろん本人の人柄によるものではあるが、「他者を惹き付ける性質を持っている」と聞いても素直に納得できた。
納得する信長を見て十兵衛は微かに苦笑を浮かべたが、それはすぐに消えた。
「他者を惹き付ける性質そのものは喜ぶべきことでしょう。しかし、僧侶は『惹き付けられるのは人だけではない。神や妖といった存在も惹き付けられる』と仰っしゃり、幼い間は一人にせぬよう忠告していきました。」
「どういうことじゃ?」
「連れて行かれる、という意味でございます。幼い子どもはこの世とあの世の境界線に立っているため、神や妖に気に入られると連れて行かれやすいのだそうです。実際、子どもの頃は人ならざる者に数え切れぬほど遭遇いたしました。」
「連れて行かれそうになったことがあるのか?」
信長は自身の口から出た言葉に顔をしかめた。何者であっても十兵衛を連れて行こうとするなど許せることではない。
十兵衛は信長の問いに「ございます」と首を縦に振った。
「子どもの頃ほどではありませぬが、今でも誘いに来る者がおります。先ほども庭にいたのです。」
それを聞き、信長は目を瞠った。思わず腰の脇差に手が伸びる。
「それは誠か?」
「はい。『自分と共に来い』と手招きされたので断りました。殿がご覧になったのはその様子だったのです。殿に仇なすことはございませぬが、人ならざる存在が館に入り込んだのは私の責任。申し訳ございませぬ。」
十兵衛は謝罪と共に頭を下げた。その様子を見て信長は憤りを覚える。
「そのようなことは問題ではない。そなたの周りにそなたを連れ去ろうとする輩が彷徨いておることが問題じゃ。追い払う手立てはないのか?」
それに対して十兵衛は「ございませぬ」と首を横に振った。
「誘いを断れば一度は引き下がりますが、また姿を現します。断り続けるしかないのでしょう。私にそっぽを向かれては困るのか、強引なことはされぬのが救いですな。」
そのように話す十兵衛からは深刻そうな気配は感じられない。それが信長を困惑させる。
神や妖に連れて行かれるということは人の世から離れるということだ。つまり二度と帰ってこられない。それを恐ろしいと思っていないのだろうか?
信長は戸惑いながら十兵衛に問う。
「十兵衛、そなたは困っておらぬのか?深刻そうな雰囲気が少しも感じられぬぞ。神や妖に連れて行かれたら二度と帰ってこられぬ。普通は怖がるものではないか?」
そのように問うと十兵衛は顎を撫でながら考え込む。彼は暫し考えてから答えを口にする。
「連れて行かれるのは困りますが、あの者たちが誘いに来ること自体については然程困っておりませぬ。幼き頃より対応しておりますゆえ、慣れてしまったのでしょう。寄せ付けぬことができぬのであれば、その都度対応するのみです。」
その答えに呆れはするものの「流石は十兵衛」と感心する気持ちもある。相手が誰であれ、十兵衛は己の力で対処できる男だ。
しかし、信長としては十兵衛の周りに彼を狙う存在が彷徨く状況を放置しておけない。世の中には万が一ということもある。何か打てる手はないか考えなければならない。
思案するように目を細める信長の顔は戦に臨む武人のものだった。
*****
十兵衛が信長に仕えるようになって三月ほどが経った。次から次へと舞い込む命令に息つく暇もないが、十兵衛がそれを不満に感じたことはない。大きな国を作り、平らかな世にするためであれば何事も苦労だとは思わない。
主君からの呼び出しを受けた十兵衛は「今日の呼び出しはどの件についてだろうか?」などと考えを巡らせながら信長の前に座した。
「私をお呼びと伺い参上いたしました。」
頭を下げながらそのように告げると、信長から「面を上げよ」と声をかけられた。その声には機嫌の良さが滲む。
顔を上げた十兵衛は笑みを浮かべる主君と目を合わせた。
「そなたに渡したいものがあるゆえ呼んだ。そなたがわしに仕えるようになって三月が経ったが、よう働いてくれて感謝しておる。その気持ちじゃ。」
信長はそのように言ってから己の前に置いた包みを解き始める。中から現れたのは茶釜だった。
「美しい釜であろう?これは十兵衛が持つに相応しい。そなたにやろう。」
差し出された茶釜は見事なものだった。美しい形のそれは腕の良い職人によって作られたものだろう。貴重な品であることは間違いない。
そのような品を家臣になったばかりの十兵衛に与えるということは評価の高さを意味する。その有り難さと期待の重さに自然と頭が下がった。
「身に余る光栄でございます。殿が私に寄せてくださる信頼の証と思い、大切にいたします。」
そのように返して深く頭を下げれば「そのように畏まるな」と言われたため、十兵衛は顔を上げて姿勢を戻す。そうすると信長が包みごと茶釜を持ち上げて近づいてきた。信長は十兵衛の正面にしゃがんで茶釜を差し出してくる。
「受け取るが良い。」
「はっ。頂戴いたします。」
十兵衛は軽く頭を下げながら茶釜を受け取った。手にした瞬間にズシッとした重みを感じる。
受け取った茶釜を膝の前に置くと、信長が「のう、十兵衛」と声をかけてきた。
「この茶釜はわし自ら磨いたのじゃ。」
その一言に十兵衛は軽く目を瞠った。
「殿が?」
短く問えば「そうじゃ」と楽しげな声で肯定の言葉が返ってきた。そして、信長は自身と十兵衛の間に鎮座する茶釜を撫でながら語る。
「心を込めて、時間をかけて、このわしが十兵衛のために磨いたのだぞ。丹念に磨いておいたから輝きも増しておろう。」
「左様でございましたか。お手を煩わせたようで……」
「なに、十兵衛のことで煩わしいことなど有りはせぬ。大切にしてくれるならそれで良い。」
その言葉に十兵衛は「もちろん大切にいたします」と力強く頷く。
「この茶釜は坂本城に飾るのが相応しいでしょう。大切に飾らせていただきます。」
十兵衛の答えに信長は「それが良い!」と笑顔で喜んだ。
「どうせなら十兵衛がよく過ごす部屋に置け。さすればいつでも見ることができよう。うむ、常にそなたの傍に置いておくのが良い!」
上機嫌な信長に十兵衛は頷いて返した。
家臣に褒美を与えるだけにしては妙にはしゃいだ様子の信長に戸惑いは覚えるものの、十兵衛はそれ以上深く考えなかった。単純に機嫌が良いのだろうと思っただけだった。
そして、嬉しそうに笑う主君を見つめながら「どこに飾るのが良いだろうか?」と考えを巡らせた。
*****
十兵衛は信長から茶釜を与えられた翌日に坂本へ戻った。
茶釜の所在は十兵衛の執務室と決まった。坂本城で過ごす際に一日の大半を過ごすのが執務室なので、「十兵衛がよく過ごす部屋に置け」という信長の言葉に相応しいのはそこ以外にないだろう。
十兵衛は執務室に飾られた茶釜を見て小さく笑みを浮かべる。本来の役割を果たすことができないのは茶釜にとっては不服かもしれないが、信長が自分のために磨いてくれたものだと思うと湯を沸かすために使う気にはならない。懸命に茶釜を磨く主君の姿を思い浮かべると微笑ましい気持ちになる。だから、この茶釜は執務室で十兵衛の目を楽しませるためにあってほしい。
「いつか、殿にもご覧いただきたいものだな。」
十兵衛の執務室に飾られた茶釜を見れば信長はきっと喜ぶだろう。その姿を想像し、十兵衛の笑みは更に深くなった。
坂本城に戻った翌日、十兵衛は城下町を視察するために少数の供を連れて城から出た。
しかし、城から少し離れたところで十兵衛は足を止める。そこに見知った者──人ならざる者が立っていたからだ。その者は人間の子どもの姿をしているが、狐か犬か区別のつかない面を常に付けているため本当はどのような顔をしているか知らない。出会ったのは子どもの頃であり、数十年経っても変わらぬ姿形を保ったまま「私と共に行こう」と未だに誘ってくるのだ。
十兵衛は一瞬だけ眉根を寄せて、供の者たちに「暫し待て」と言い置いてから人ならざる存在のいる方へ足を向ける。
「懲りずに待っておられたか。何度も申し上げたが、わしは誘いに応じる気は欠片もない。お帰りになるが良い。」
溜め息混じりに告げた言葉はこれまでにも繰り返してきたもので、他の神や妖にも同じことを伝えている。それでも誰一人として諦めようとしないのだから困りものだ。
十兵衛は一定の距離を置いた地点で立ち止まって相手を見据える。そうすると向こうは楽しげな笑い声を上げた。
「相変わらずだのう。少しは絆されてくれぬのか?私のことを知ってみようとも思わぬのか?」
十兵衛は顔をしかめて「全く思わぬ」と言い切った。
「そなたらのことを知れば縁が強くなる。それはわしにとって良いことではない。それを理解した上でそのように申されるのはいかがなものかと存ずる。」
十兵衛がはっきりと拒否の意思を示しても拒否された本人は怒る様子もない。
「誠にそなたは面白い。だから共にいたいのだぞ、明智よ。まあ、今日の本題は別件だ。明智、そなたに確認したいことがある。」
「確認したいこと?」
「ああ。そなた、誰かから物を与えられたのではないか?」
その問いに妙な胸騒ぎがした。思い当たるのは信長から贈られた茶釜だ。
「……確かに、贈り物を受け取った。それが何かあるのか?」
そのように答えると「やはりな」と溜め息混じりの声が返ってきた。
「そなたが受け取ったのは人間の念が込められたものだ。それも尋常ではない強さのな。」
「どういう意味だ?」
「そなたへの執着が源となっており、我らのような人外の存在がそなたに近づくことを阻んでおる。『十兵衛に近づくな』という強い念が城を中心に広がっておるものだから我らは城に寄ることができぬ。近づくほどに体が重くなり、動くことができなくなるのだ。」
「困ったものよ」と嘆く相手に対して十兵衛は何も言えなかった。信長から与えられた茶釜にそのような効果があるとは考えられない。そもそも信長が自分に対してそれほどの執着を抱いているということが想像できなかった。
戸惑う十兵衛に構うことなく相手は言葉を続ける。
「私とてこの場所が限界だ。これ以上は城に近寄ることができぬ。明智、そなたは尋常ではない執着を抱かれていると知っておくべきだぞ。」
「そんな、馬鹿な……」
「良いか、明智。可愛い坊よ。」
その諭すような声には慈しみが滲んでいた。
「人間にとって人ならざる存在は恐ろしいだろう。しかしな、我らから見れば人間も恐ろしい。人間の思いの強さは時に神や妖を超えるのだと……そのことを忘れるでないぞ。」
それを言い終えると相手は十兵衛に背を向けた。なぜだが二度と会えないような気がして、十兵衛は思わず「待たれよ」と小さな背中に向かって声をかけた。だが、相手が振り返ることはない。
「私はもう行く。そなたにまた会えると良いのだが。ではな、明智。」
瞬きの間に人ならざる者の姿は消えた。気配を探っても感じられない。完全に去ったのだ。
十兵衛は先ほどまで相手が立っていた場所に視線を注ぎながら言われた言葉を反芻する。
『人間にとって神や妖は恐ろしい存在であろう。しかしな、我らから見れば人間も恐ろしい。人間の思いの強さは時に神や妖を超えるのだと……そのことを忘れるでないぞ。』
人間にとって思いの強さは力となる。それが良いことであるはずなのは間違いない。
しかし、神や妖を押さえつけるほどの思いの強さはどうだろうか?それは危ういものなのではないか?そして、その思いの強さが向かう先にいるのが自分なのだと思うと恐ろしさが這い上がってくる。
十兵衛はふるりと体を震わせて、先ほど出たばかりの坂本城を振り返る。そこにあるのは常と変わらぬ美しい城だ。だが、あの美しい城には神や妖を寄せ付けぬほどの念が込められた茶釜がある。その事実が存在するだけで城の纏う空気が異質なもののように感じられてしまう。
「まさか、殿は全てを承知した上で……」
十兵衛はそこまで言いかけて口を噤んだ。そこから先の言葉を声に出してはならぬ、と本能が訴えている。
信長が自分のことを高く評価して気にかけてくれていることは十兵衛自身も理解している。一部の家臣から「明智は贔屓されている」と妬まれるほどに少し過剰であるため、それとなく信長本人に忠告もしていた。そのため、十兵衛を気にかける信長の思いが茶釜に宿ったとしてもおかしくはないのだろう。
しかし、信長から贈られた茶釜に込められた念は尋常ではない。神や妖を捻じ伏せるほどの念ということは、それほどに十兵衛に対する思い入れが強いということになる。
尋常でなく思い入れが強いのであれば「神や妖が十兵衛を連れて行こうとしている」という話は面白くないだろう。信長の気性から考えて排除する方向に動いても不思議ではない。相手が人ならざる存在であっても信長は恐れずに動く。その結果があの茶釜なのだとしたら──。
十兵衛の脳裏に茶釜を渡された時の信長の姿が浮かぶ。
『この茶釜はわし自ら磨いたのじゃ。』
『心を込めて、時間をかけて、十兵衛のために磨いたのだぞ。』
『うむ、常にそなたの傍に置いておくのが良い!』
茶釜に念が込められているという話を聞くまでは微笑ましく感じられた記憶は恐ろしい記憶に変わった。
もし信長が十兵衛の周りから神や妖を排除することを目的として茶釜を贈ったのであれば、同じようなことを再び行わないと言えるだろうか?その対象が人間になる可能性はどれほどあるだろうか?そのように考えると恐ろしくて堪らない。
十兵衛は今後の己の振る舞い方を見直さなければならないと強く思い、拳を硬く握った。
その後、十兵衛は信長から数え切れぬほどに物を与えられることになった。そして、いつの頃からか十兵衛が神や妖の姿を目にすることは一切なくなった。
終