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    しおり
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    しおり
    鮫愛づる姫君:その七(後編)夜の窓辺に、霜が幻の栞を挟んでいく。
    ホオリは目を覚ました。同時に頰に触れている机の冷ややかさから、ここが自室ではないことに気付く。波間に揺蕩う意識を再び瞳へと結いづけるように、少女は睫毛を瞬かせた。唇から漏れた小さな吐息が、黒漆の机に六花の欠片を散らして消える。
    身を起こしたホオリは、緩やかにあたりを見回した。灯火の消えた数多の燭台。物言わぬ銀の蟹の群れ。綴られた想いを陽に歌う術を、月光の帯に閉ざされた数多の書。山幸宮とは異なる沈黙が降りているこの場は、瑞書倉の一角だった。背を流れていた一筋の髪がぱさりと音を立てて、目を丸くした少女の肩へと伝い落ちる。

    (わたくしは、なぜ……ここに)

    確かに目を閉じる前は、山幸宮の自室にいたはずだ。いつものように灯りを消し、ヤヒロと言葉を交わし、寝台へ横になったはずだ。思わず左手の手首に視線を落とす。翡翠の腕輪は変わらずにそこにあった。清らかな白緑の輝きに安堵の吐息を吐くと、ホオリは貴石の滑らかさに純白の絹ぶすまを重ねるように、思考の玉を転がせる。

    (腕輪以外のものも、何も取られてはいない。衣が乱れた跡も、泥がついたようすもない……)

    眠っている間に自室から拐かされたのだとしたら、ホオリの身を自由にしておく必要性がない。仮に自由にする余裕があるのだとしても、逃げ出さぬよう見張りの一人もつけておかないのは不自然だ。そしてそもそも、見知らぬ場所ならいざ知らず、山幸宮の敷地内である瑞書倉にホオリを攫う利など、どこにもありはしない。何より不用意にホオリの体に触れれば、病魔に身を喰まれるのだ。そのような危険を犯してまで、この身を攫う理由は現状存在しない。となれば、ここは。

    (ここは……わたくしの、夢の中……なのかもしれない)

    ホオリは深く呼吸した。次いで目を凝らして室内の様子を注意深く見渡す。やはりこの造りは先日訪れた瑞書倉そのものだ。四隅に銀鏡が煌めく巨大な黒漆の書棚も、そこに積み上げられた群青の書の群れも、穏やかな陽射しのもとで眺めた時と何ら変わってはいない。だが、それでもなお室内へ視線を巡らせ続けたホオリは、居並ぶ書棚の最奥の異変に気が付く。銀の蟹の彫像は、ここまで数が多かっただろうか。沈黙が夜に帆を降ろす中、微睡む人の軌跡へ数多の鋏がひしめきあう様は、黒の瞳に酷く奇妙に映った。同時に幾多の銀影は現を写す鏡と化し、少女の泉に夢の容貌を確かに描く。その時だった。不意に物言わぬ彫像の群れに蠢く影を見つけ、心の臓がどきりと脈打つ。

    (何かしら)

    明らかに蟹とは異なる形の影に、少女は息を殺して様子を伺う。だが、やがて銀の波間を漂うように姿を見せた影に、ホオリは目を丸くした。

    「シラフネ」

    青い燐光に星を透く海月に、思わず音を立てて椅子から立つ。その音に呼応するように近づいてきたシラフネに、ホオリはそっと手を伸ばした。

    「どうしたの、こんなところで。まいごになってしまったの?」

    指に留まる花房を優しく撫でながら、ホオリはシラフネのやってきた方角を見る。ムツハナの姿はない。珍しいことだ。どちらかと言えば大人しいシラフネが、片割れを伴わずに行動することはあまりない。ホオリにムツハナを探してほしい素振りを見せないことからも、この場ではぐれたというわけではないのだろう。だが眠る書の梢に佇む海月は、変わらず悄然の青に身を染めている。詩に刻まれぬ宵の凪に、己の心を閉ざしているかのように。
    ホオリは静かにシラフネに微笑みかけた。片割れの欠けた玻璃の月へ、温かな淡紅の風を寄せるように、柔らかな声音を紡ぐ。

    「だいじょうぶよ、シラフネ。何も、何もこわいものはないわ。わたくしといっしょに、ムツハナのところに帰りましょう」

    ね、と触手を撫でながら見つめると、シラフネの身から青い光が僅かに薄まる。次いで海月は、青の点滅を繰り返した。幼子の頷きのような仕草に微笑みを崩さぬまま頷くと、ホオリは居並ぶ書棚から身を翻す。夢とは言えど、これ以上シラフネに心細い想いはさせたくなかった。
    幸い、瑞書倉の扉の在り処は覚えている。だが三歩ほど歩いたところで、海月の花房が指を強く握りしめた。驚いて振り返れば、シラフネはその場から動かぬまま、こちらの様子を伺っていた。

    「シラフネ?」

    どうしたのかと問いを紡ごうとして、少女は顔を強張らせる。清らかに星を透いていた玻璃の月は、その輪郭を陽炎のように揺らがせていた。表皮が泡立つ狂気もない。厭わしい月蝕に身を裂かれる悲鳴もない。だが、円な舟は静寂の果てへ色彩を埋(うず)めたように、青い光を無へと帰して、少女の眼前を塞いでいる。まるで、主を現世に戻すことを拒んでいるかのように。
    心の臓が再び強く脈打つ。光が駆ける速さで色を無くしていく指先に、異形の声が反響する。

    『浅緋色の乙女と、かの呼び声の主には近づくな。名を呼ばれようが、眼差しを交えようが、その場から決して動かず待て。声も返すな』

    目の前に在るのはシラフネだ。仕草や傘の模様からして間違いはない。だが指を締め付ける無色の触手に、心の泉が酷くざわめく。眼差しに映る全てがシラフネのものであっても、その身に宿す魂は、本当にシラフネの形をしているだろうか。それとも。記憶の底に沈んでいた、赤黒い玻璃の欠片が鈍くきらめく。ムツハナの時と同じように、シラフネも何らかの呪術をかけられているのだろうか。
    ホオリは触手を振りほどかぬまま、今一度眼差しをシラフネへと向けた。無言のまま茫洋とした月の輪郭は、かつて絵物語で目にした、火を噴く山の纏う気に似ている。不用意に触れ返せば、瞬時に纏う色を浅緋に変えぬとも限らない。山の奥底に眠る煌々とした灼熱の岩が、いずれは融け落つ赤に野を焼くように。

    (……けれど、ならばどうして)

    月を割った悪意の幻を振り払うように、桜花は懸命に思考の枝葉を伸ばす。あの夜のように、ホオリの身に害を為すことが目的であれば、何故こちらの様子を伺っているだけなのだろう。己の方へホオリを引き寄せることさえもしない。こうして身を捕らえているのであれば、すぐにでも毒を撃ち込むことは容易であるはずなのに。
    そこまで考えを巡らせ、不意に気付く。そうだ。まだ幼体のアカボシクラゲに、人間の指をこうも強く握るような力は出せない。否、握ることは可能かもしれないが、それはあくまで瞬間的なものだ。アカボシクラゲの触手は見かけこそ細くはないが、その気になれば人間の子供にさえ砕けてしまうほど、儚く、脆い。あの夜のムツハナのように呪詛に侵されていたとしても、そうした体の礎を瞬間的ではなく、完全に作り変えた可能性は低い。元来、鱗を持たぬ者の中でも、アカボシクラゲは呪詛に抗う力が強い種族だ。いくら邪鬼の術が強大であろうと、アカボシクラゲにそうした類の呪詛をかけるのは、薄葉の器に火を注ぐようなものだ。そのような危険を犯してまで、二度も同じ手を使うとは考えづらい。それも、こうしてホオリに警戒心を抱かせるようなやり方で。
    再び、注意深く腕に視線を落とす。色を無くして寄る辺なく夜を漂うように見えた海月の腕は、よく見れば明滅する薄緑を透いていた。梢にそよぐ風ではない、月に翡翠の片鱗をきらめかせるその色彩に、ホオリは小さく息をのむ。

    (……まさか)

    瞬く間に玻璃へと消えそうな薄緑は、思い浮かべた影に肉を与えるにはあまりに淡い。だが、少なくとも現世のシラフネが、ホオリの指を強く握りしめようとしたことは一度もない。いつも主の身を慮るように、窓辺に舞い降りる花弁がごとく、軽く指先に留まるだけだ。その記憶だけは決して淡いものではない。ホオリは意を決して口を開いた。

    「あなたは」

    先ほどとは異なる声色に、少女を結ぶ触手がぴくりと震える。ホオリは模造の月に透かれた銀の蟹から名を繋ぐように、言葉を紡ごうとした。

    「あなたは、もしや」

    だが、少女の言葉はそこで断ち切られた。眼前の模造の月が突然縮み上がったかと思うと、勢いよくその身を伸ばしたのだ。まるで月から急速に槍の穂先を打ち出したような変貌に、ホオリは思わず目を丸くした。

    「え」

    驚愕の火花が弾けた次の瞬間、勢いよく顔に何かが吹き付けられる。ホオリはとっさに目を瞑った。なるべく息を吸わないように努めながら、少女は浅く瞳を開き、前方を見定めようとする。一面の黒。何も見えない。煙。否、違う。この香は煙のように身を灰に燻すものではない。己を追う目を五色へと眩まし、千紫万紅に名を隠す墨の香だ。そしてそれは、闇の中に見えざる腕を走らせる。漆黒の靄を裂く巨大な腕に気付いた時には、すでにホオリの手首から翡翠の腕輪は失せていた。身から離れていく夜風の貴石に、琴の弦が引き裂かれた花弁の音を落とす。

    「あ……!」

    ホオリは必死で墨を払った。無影の腕に掴まれた翡翠のきらめきは、霞む少女の視界の果てを流星のごとく駆けていく。ついには瑠璃の緒をなびかせながら銀の蟹の群れへと消えた腕輪に、ホオリは墨を吸い込むのも構わず叫んだ。

    「まって!」

    すかさず銀の蟹へと向かって走る。最奥であるはずの一角はだが、奇妙なことに今は一本の通路を拓いていた。その果てに束の間見えた翡翠の影に、ホオリは一瞬の躊躇もなく見知らぬ道へと飛び込んだ。
    夜を滑るように書棚の合間を進む腕輪を、一心で追う。右へ。左へ。無数の黒漆の廊の角を曲がり、幾多の海蛍の灯篭を通り過ぎながら、視線だけは眼前に定めて疾く駆ける。どうにか腕輪との距離を詰めようともがいているうちに、色彩の弦を断った筈の模造の月は、その身に五色の調べを奏でていく。百の白星を抱いた紅蓮の蔦のごとき、吸盤の生えた八本の腕。深淵の叡智を納めた壺のごとき、楕円の胴部。未来の彼方までも水平に見渡すように、瞳孔を横に刻まれた金の瞳。古より青海原に存在する、変幻自在の鱗なき者。シンメイダコだ。優雅に腕輪をなびかせながら泳ぐタコを前に、ホオリは血がざわめくのを感じた。

    (やはり、わたくしを呼んでいるのは……)

    銀蟹の鋏が絹を裁ち落とすように、身に射す予兆は夜を渡る道に綻びを生じさせる。眼前の紅蓮の影が黄金色へと変じ始めた瞬間、海蛍の光が一斉に消えた。群青の灯火を闇に失い、反射的に足を止めそうになった少女の頰を一陣の風が撫でていく。陽炎のゆらめきを瞳から消すように、現世の天幕を遥か彼方へと羽ばたかせるように。涼風はやがて道の至る場所へと光を灯し、目に映る全ての礎を組み換えていった。道に居並ぶ黒漆の書棚は、巨大な白亜の岩礁へ。闇に閉ざされた海蛍の灯は、玻璃の輝きを撒くアカボシクラゲの星影へ。磨き抜かれた鏡のごとき廊下は、真珠の夢を交えて煌めく、一筋の清水の流れへ。少女は黄金色の影を追い、白い踝に雫を纏いながら人ならぬ世界を駆けて行く。
    そうしてどれほど進んだのかわからなくなってきたころ、不意にタコが動きを止めた。思わずつられて止まると、タコは己が身に纏う色を瞬時に黄金から翡翠へと変える。それと同時に目の前の岩壁が音もなく視界から消え去った。開かれた洞窟の入り口に滑るように入っていくタコに、ホオリも黙して続く。純白の衣の裾の最後のひとひらまで洞窟に入った瞬間、再び背後で岩が塞がる気配があった。だが少女は後ろを振り返ることなく、目の前に広がる光景を静かに見つめる。
    そこはあまねく降り注ぐ日々の色彩が、身に宿す音をひととき休める籠のような場所だった。ほの青い清水を静寂に湛えた、柔らかな銀の砂地。祈りの碑石のように佇む、幾多もの石英の結晶。その中央に鎮座した一際巨大な白亜の岩に、かの人影は腰掛けていた。
    白絹に浅葱を重ねた下衣。火炎宝珠の刺繍が銀糸にきらめく、紺瑠璃の上衣。八重と重ねられた薄絹の裾は、清水に浸された白い踝へ、深き闇に眠る真珠の光沢を添えている。地に着きそうな程に長く背を流れる黒髪は、神が極繊(ほそ)く宝珠から紡いだ糸をなびかせているかのように、時折翡翠の光沢を交えていた。切れ長の碧の瞳は、身を断ち切る刃ではなく、全てを見透かす水晶の灯をつがえている。だが何よりも特徴的なのは、額から伸びた雷のごとき真白の角と、額に花弁のように浮かび上がった五枚の鱗だった。まごうことなき、龍の印。そしてその持ち主は、この広大な青海原を探してもただ一人しかいない。
    ホオリは硬く手を握りしめた。水面に立ち渡る朝霧が引いていく凪の美を湛えた男に、少女は何とか声を振り絞る。

    「……父上」

    龍王は手元に広げていた巻物を緩やかに巻き、真珠貝の帯を留めた。そしてそのままホオリへと視線を定める。

    「我が血を継ぎし子よ」

    波の残響がごとく二重に響き渡る真白の声は、無表情の顔に等しく、あまり抑揚が感じられない。人々の願いを吸う白雪に肌を濯いだような、あまねく民を見守る神秘の彼方にある声色のまま、龍は淡々と言葉を紡ぐ。

    「久しいな。以前よりも、魂に帯びる光が増した」

    龍王は玉座のごとき白岩に座したまま、近づいてきたタコに顔を向けた。そうして差し出された腕輪を預かると、手の平からこぼれ落ちた瑠璃の輝きに目を細める。

    「良き品だ。強き縁が結ばれている」

    ホオリは意を決して跪いた。緊張に震えそうになる声を喉の奥に押し込めるように、足元の銀砂が影へと沈み込む。

    「お久しぶりにございます、父上。こうして我が夢にてお会いできたこと、火遠理は嬉しくおもいます」

    水泡が昇らぬ白亜の壁に、返る言葉はどこにもない。だが、頭上に注ぐ父の視線が続きを促しているのを察し、少女は顔を上げて問いかけた。

    「ですが、いかがなされたのですか?父上が、わたくしの夢に……現世におりておいでとは」

    龍王は乙姫とは対極を為す存在だ。四年に一度、それも大祓いの儀の時以外、宮に降り立つことはない。あまりに力が強大であり、長くは現世に留まれないためだ。綿津見の神籬(ひもろぎ)となりし王。青海原の守護をせし者。それが、龍王が純白の鱗に戴く責の名である。
    伝承において、初代龍王は青海原の永遠(とわ)の幸を願い、死した後に自らの骨を竜宮の礎へと埋めた。そして三代目までの龍王は、己の力を民の生きる土壌を育むのに用い、務めを終えた後に綿津見御神の元へ還ったとされている。以降の歴代の龍王は、乙姫が宮を守るように神の御許で座を守護し、青海原の民を彼方から見守り続けている。ゆえにこそ、こうして公的な場ではないにもかかわらず、父が現世に姿を現すことは珍しかった。加えて、今対峙している父は実際の山幸宮ではなく、ホオリの夢の中に在る。龍が現世に降り立つには血族の血を起点とするが、かの者の夢に身を落とす方が、現世に留まる力をより使わないとされている。つまるところ、その分長く血族の者と言葉を交わせるのだ。この点だけを見ても、父がただホオリの夢に現れたのではないことは明らかだった。
    確信と疑問を水底に抱いた娘の声に、龍王は短く答える。

    「助けが必要な状況だからだ」

    言うや否や、龍王は緩やかに腕輪を持ちあげた。鱗なき者は碧の一瞥に身を翻し、白光に満ちる静寂は一層の冴えを湖面に帯びる。雨垂れる絹のごとき睫毛を伏せた龍王は、手にした翡翠の腕輪を巻物に触れさせた。すると白緑の貴石に刻まれた時が、絹糸に綴られた文字へ金の細波を寄せるように、巻物の纏う色彩を変えていく。
    星光を編む白絹の表紙は、海底の岩礁のごとき漆黒へ。銀糸にきらめく題目は、焼印のごとく暗い火焔のゆらめく緋の字へ。古物語を留める真珠貝の帯は、語り手の唇を戒める真紅の紐へ。ホオリは否応なく心ノ臓が脈打つのを感じた。和迩家創祀記(わにけそうしき)。ヤヒロの生家を冠する名だ。禁忌を侵す邪鬼の舌のごとき緋に、水面の桜はひどくざわめく。龍王は目を細めた。

    「あの異形のことが知りたいようだな」

    曇りなき水晶の瞳は、小さく跳ねた娘の肩を見逃さなかった。真白に凪いだ声音は、桜花の花弁を繊手へと掬い上げる。

    「あれに纏わる縁(えにし)は、全てこの書に記してある。手に取りたければ、我にそう望むが良い」

    ホオリは下唇を噛んだ。龍の鱗に揺らめく淡紅の花弁は、漆黒ではない碧の瞳へとさざめく。

    「なにゆえ……なにゆえ、そのようなことをおっしゃるのですか、父上」

    無表情の父は、淡々と言葉を紡いだ。

    「そなたとあの異形の語らう様を、波の狭間から見ていた。出会いから今宵に至るまで」

    感情を顕さぬ碧は、浅く目を見開いた少女を鏡のように映し出す。記憶を記録と読み解く眼差しは、桜花の影から群青の鱗を辿り、純白の凪に異形の軌跡を興していく。

    「あの異形は、未だ己の目的を話してはいない。そなたの傍に居て、偽りは言わないとしても、真実を口にすることもない」

    瑠璃の玉緒が、薄絹の袖に揺れる。

    「そのような中で、そなたは、真にあれを信 ずることができるのか。終(つい)の時が来るまで、傍に置いても良いと思うるのか」

    龍は白亜の岩に座したまま、少女を見つめた。全てを平らかに見定める天秤の眼差しが、岐路に揺らめく桜花に巨大な碧の影を翳す。

    「あまり時もない。今この場で、手を伸ばすのなら伸ばすがいい」

    唇の端を引き結びながら、ホオリは幼き日のことを思い出す。強大な父。玉座に座る母の背後に立つ父。綿津見御神の神籬となりし、己の心を封じた王。一定の距離を置いていても、青海原に息吹く数多の鱗の脈動が感じられる佇まいに、魔祓いの布の下で空の手を握りしめていた、あの日のことを。
    龍の血が流れていながら病魔の呪詛に食まれている身には、一片の穢れもない父王は酷く眩かった。凛と微笑む姉とは対照的に、濃紫の下に乾いた喉と背を伝う汗ばかりが、常に父の輪郭に思い返されていた。錆びた檻が軋むような、祠に罅が入るような。神棚に奉じられた白磁の器に満ちる水はなく、船虫の死骸だけが塵と共に干からびているような。己の内には血と泥土しかないことから目を逸らしつづけていた、痛みの追想。せめて泣いてはならないと悟った、散りゆく桜花の標の記憶。ホオリは碧の影に目を閉じた。そうして往く道を示すために、淡紅の花は今一度、暁星のもとに瞳を開く。

    「……父上」

    凪いでいた清水の面に、澄み渡る琴の音が波紋を広げる。少女は碧の瞳を見据えると、揺るぎのない眼差しで言葉を紡いだ。

    「わたくしは、ヤヒロが己が出自を口にするまで、待とうと思います」

    父は瞼を瞳の半ばまで引き下ろした。ゆっくりと、だが短く問いかける。

    「何故だ」

    怒気や嘆きは真白に閉ざされた故に、龍の問いはただ問いとして響き渡る。吐息一つにも青海原の波全てがさざめき、足元の銀砂は龍に砕かれた玻璃と化して、桜花の花弁を貫いていく。だが少女は目を逸らさずに、こちらを見据える碧の瞳に言葉を連ねた。

    「ヤヒロの目的は、確かに未だはっきりとは分かりません。けれどあの夜、彼はこう言いました。わたくしのことをまだ、見定めてはいないと」

    泡沫がごぼりと弾ける。

    「姉上や母上を、そして民を害することが彼の目的であるのなら。真の姿をわたくしにあかした時点で、もっと他の言葉を紡いでもよかったはずなのに。いくらでも、他に耳障りのいい言葉でごまかすか」

    少女の瞳に弾けた泡沫は、折られなかった手首を映す。闇を纏う金の瞳に千日を想い、濃紫の袂から零れた淡紅の香は、刀傷の痕へと舞い降りる。

    「わたくしに問いを投げかけるまでもなく。彼のもつ力で、わたくしを本当に脅かすことだって……きっと……きっと、できたはずなのに」

    刻まれた傷の重さに眼差しで添うように、少女は言葉を続けた。

    「おもえば、ヤヒロは初めからそうでした。単にわたくしを己のために利用しやすくしたいと思うなら、ただ一言だけささやけば良かった。自分だけは味方だと。わたくしを恐れない、たった一人の者だと。けれど、彼はそうしなかった」

    錆に閉ざされた祠の前に、異形の影が一人佇む。目醒めの錦糸を閃かせる金板の音に、蟲の死骸の背は割れる。

    「彼はわたくしに、一時の憐憫ではなく、人の理を指し示してくれました。わたくしを籠の中の人形にはせず、人として籠の外へと歩んでいけるように、外から手を伸ばしてくれたのです」

    薄氷を帯びた夜風の鱗の感触が、少女の白い頬に蘇る。ああ、そうだ。彼は人ならざる身でありながら、人との対岸にありながら、あまりにも己と異なる月を背に受けながら。横顔を伝う雫の代わりに、煌めく群青の鱗が手のひらへと舞い降りていく。もし雫が両目から溢れ落ちるのであれば、瞼を氷に閉ざして二度と開かぬようにと願っていた記憶を解き放つように。明星を透く薄翅のごとき螺鈿の鰭が、罅割れた灰青の殻に広がる。曙の陽光に艶めく一対の白角(しらづの)を戴いた龍の御子は、真っ直ぐに父を見つめた。

    「わたくしの振る舞いを見、わたくしがわたくしであったがゆえの。そうして我が魂の根に添ってくれたヤヒロの心を、陰で踏みにじるような行いはできません」

    龍王はホオリを見つめ返した。水晶の光を瞳へ秘めたまま、純白の凪に言葉を紡ぐ。

    「では、もしも。そうした振る舞いが、全て偽りであったなら。そなたを見定めると言った言葉も、そなたと語らい、共に在った眼差しも」

    碧い瞳は陽を射す浅葱から、深淵を秘す紺青の音を帯びる。

    「……例えそなたの姉や、母や、青海原の民を害するものではないとしても。真の目的が他にあり、そなたと過ごした全てが、あれにとっては布石に過ぎぬのだとしたら」

    二重の声音は波濤を興す。龍の眼に刻まれた瞳孔は、少女の魂の奥までをも見通すように縦に長く伸び、桜花を射抜く鏑矢と化す。

    「それでもそなたは、この場で書を読み解かぬと誓えるか」

    魂への道を開かんとする眼差しを前に、ホオリは静かに返した。

    「そうであるなら、わたくしは、尚更固く誓わねばなりません」

    涼やかな玉石の感触に、少女は再び手を握りしめる。

    「例え欺かれていたのだとしても。それを理由に、わたくしがヤヒロを欺き返して良きことには成り得ぬからです。真に行うべきは、何故彼がそのような手立てをとったのかを考え、その上で彼に問うことであると思います。それが人の持ち得る尊きものであり」

    ホオリは揺るぎのない瞳を龍王へと向けた。

    「……わたくしを、人の子と呼んだ彼に。せめて返すことができるものであるからです」

    龍王はホオリを見た。生まれ落ちた時から生涯にわたり呪いを食むと告げられた、自分の娘。かつて魔祓いの頭巾の下で、濃紫の影に俯いていた小さな幼子。父であり王である己を見る時の彼女の瞳は、密やかな絶望と諦念に淀んでいた。己が手を伸ばした瞬間に、抱えた闇と囚われた業に潰れそうな華奢な肩。談笑を遠い幻に、睫毛を伏せる面影へ呼び起こされるこの想いを、彼は口にしたことがない。言葉にしてしまえば最期、その言葉が何よりも娘の心を殺すと、直感的に悟ってしまったがために。
    眇(すが)めた碧い瞳の彼方で、凪いでいた純白の鱗がさざめく。あの狂い笑うおぞましい鬼を海溝の闇に押しとどめながら、彼の水底を常に揺蕩うのは、目に宿す光を鈍いものにしていく妻の姿だった。嘆きに身をやつしたサクヤへ指一本触れられぬ己を呪い、彼女の折れた誇りに滲み出る血を目にしながら、彼の総身は滅びの予兆に軋んでいく。この世の何もかもが呪詛を礎に存在している。竜宮が初代龍王の骨を礎としているように。美しく一片の穢れもないものなどなく、常世の国は砂上の楼閣でしかない。時折己が守っているものの輪郭が、凪に霞んで見えなくなるほどに。
    だが今、かつて抗えぬ運命に縛り上げられるだけだった子供がこちらを見つめている。その黒い瞳に帯びた光は、遠い日にサクヤが持っていたはずのものと酷く似ていた。泥土に塗れながらもきらめく桜花の一振りに、手折られる前の石楠花が重なる。

    『ニニギ様』

    青海原にあまねく生きる者達の中で、己の名を唯一呼ぶ声が反響する。龍王は目を閉じた。今はもう無い指先を辿るように、そして目の前の少女へ告げるために口を開く。

    「我が血を継ぎし子よ。輝き照る炎より最も遠く、昏き水底を歩みし者よ」

    白い手に抱かれていた巻物が、龍の声音に呼応するようにほのかな光を帯びる。そのまま瞬く間に宙に浮いたかと思うと、真紅の戒めが翡翠の紡ぎ紐へと変わった。

    「であれば、これはそなたに預けよう。己の懐へ秘めておくか。信頼の置ける者へ預けるか。然るべき時が来るまで、そなたの好きに扱うが良い」

    ホオリは驚いて父を見上げた。だが、紺青に轟く波濤でも、疾風を裂く鏑矢でもない、星光を透く水晶の眼差しに、少女は淡く微笑んだ。

    「……はい。ありがとうございます、父上」

    父は無言で頷くように、瞬きを一つ返した。ほどなくして、龍は天を仰いで呟く。

    「我は、行かねばならぬ」

    龍王は音もなく白亜の岩から立ち上がった。揺れた黒髪から翡翠の輝きが散り、雨垂れる睫毛は明け初めし夜の朱を帯びる。天を昇る泡沫のように、父の輪郭は真白の角の先から、風に煌めく龍の鱗へと解けていった。そうして神籬へ還るかと思われた時、父は不意に声をあげる。

    「……火遠理」

    ホオリははっとした。純白の凪へ微かに滴り落ちた雫を偲ぶ響きは、今まで耳にしてきた父のどの声とも異なっていた。過去への郷愁に似たかの呼び声は、おそらくホオリが知りえることのない影を連れている。だが龍王は、確かに今のホオリの瞳を見据えていた。無表情な顔立ちに力を与えるかのごとく、端正な唇から竜の牙が覗く。

    「そなたに。そなたの姉に。そなたの母に。そして、青海原へあまねく生きる者達に」

    ほんの一瞬、父はホオリへ手を伸ばそうとした。かつてぎこちなく姉の頭を撫でようとした、遠く幼い日のように。だがまるでそうすることが烏滸がましいと感じたかのように、父は静かに手を降ろす。己への罰を抱いた指先はただ風を手繰り、翡翠の腕輪を宙に浮かせた。純白の凪に波紋を描いた瑠璃の緒のきらめきに、龍は未来への願いを謳う。

    「……我が加護の、至らんことを」

    終の言葉と共に、白緑の貴石は在るべき場所へと還る。手首にそっと納められた翡翠の腕輪に、ホオリは目を見開いた。思わず父へ一足歩み寄り、声を紡ごうとすれば、白龍の影は桜花の枝を手離すように湖面を発つ。碧の瞳は朝霧の果てで光を拓き、夜のほとりへ佇む娘へ力強く告げた。

    「さらばだ。我が娘よ」

    清水に涼風を湧き起こす玉鱗の音が、虚空の彼方へと満ちていった。



    ホオリは目を覚ました。夜明けを歌う楽の音が遠く淡藤色にたなびく中、純白の寝台から身を起こす。すぐさま手首に視線を落とすと、薄絹に射す東雲の灯に、翡翠の腕輪が白緑の煌めきを撒いていた。少女は小さく息をつき、そっと玉石に額を寄せる。霧煙る夜を断つ清(すず)らな感触が、常にも増して身に沁み入るような心地がした。傾いだ首筋に添い流れる黒髪を暁へ濯ぐように、瑠璃の緒が朱華の光を仄かに帯びる。
    少女は少しの間そうしていたが、やがて顔を上げた。それから窓を見上げた時、白木の縁に漆黒の巻物が置かれているのに気付く。翡翠の紐はどこにもない。ただ通常の巻物と同じように、留め具の貝紐が巻かれているだけだ。ホオリは曙の雫を帯びた表題を見つめる。

    (夢では……ない)

    波を逆巻く龍の影が、桜花の水面に反響する。純白の鱗に架けられた願いを淡紅になぞるように、少女は淡く睫毛を伏せた。

    (いいえ。夢から……現世に、かえってきたのね)

    天上に寄せる波の音を聴きながら、ホオリは巻物を手に取った。奈落を舐める炎のごとき禍々しい筆致に、見た目より遥かに重い黒鉄の書へと刻まれた名を、少女は眼差しの奥深くへ包みこむように胸に抱いた。閉ざした瞼の裏に映る群青の鱗が、闇の最中で一際鮮やかな光を放つ。その時だった。窓の開く音が室内に波紋を描き、ホオリは緩やかに目を開ける。寝台から少し離れた二つ目の窓の前に、見慣れた群青の影が佇んでいた。

    「ヤヒロ」

    ヤヒロは薄絹の帳を静かに払った。三日月のごとく硬質な鰭を纏った異形の腕に、泡沫を乗せた風が吹き込む。銀の髪が昇り行く陽にそよぐ中、彼は不要な言葉を口にしなかった。巻物を懐へ抱いた少女へ、異形はただ一言だけ質す。

    「目を通さなくても良いのか」

    銀糸に靡いたそよ風が、白む陽に艶めく少女の黒髪を静かに揺らす。ホオリは一瞬目を丸くした。だがすぐに微笑むと、小さくヤヒロへ頷き返す。

    「ええ」

    巻物を両手に抱え直してから、少女は闇を纏った金の瞳を見つめる。

    「これは、あなたにあずけようと、思っていたから」

    ホオリは寝台から降りてヤヒロへと近づいた。少女の影は崖にかけられた橋へと歩を進め、溝に流れる闇に淡紅の花弁を手向ける。

    「ここに書かれていることは。わたくしではなく、あなたの魂へとつらなる縁だもの。だから」

    光を帯びた泡沫が、白い頰に弾ける。

    「この書は、わたくしに見せてもいいと思うときまで。ヤヒロが、もっていてほしいの」

    ホオリは巻物をヤヒロへと差し出した。桜花の香に誘われた暁星の糸が、橋の上へと萌芽する。灰青の狭間へ紡ぎ出された琴の音が、異形の抱いた月へと架かる。

    「だめ、かしら」

    ヤヒロはホオリを見つめた。黄朽葉の亀甲花紋に煌めく錦糸。金粉に散る蓮華の花弁。翡翠の腕輪が放つ白緑の光。歩んだ軌跡に息吹く千の色彩を引いた桜花が、金の瞳に淡い影を落とす。月を巡る思考の水に流れるそれは、つかの間木漏れ日に笑む少女の瞳を映した。やがて異形は、対岸から波紋を広げた花弁に触れるように、群青の声音を静かに紡いだ。

    「それが、お前の選択か」
    「ええ」

    ヤヒロはホオリの抱えた巻物の頭に触れた。硬質な鱗の指先で、乾いた紙の音が散りゆく。

    「……元よりそれに記されているのは、血の連なりであり、縁などではない。この身に纏ろうものなど、初めから存在しない。俺は俺だ。だが、仮に縁というものが存在するのであれば」

    金の瞳は蒼い月光を帯びる。漆黒の巻物はホオリの元へ頭を傾げ、焼印の緋を黒檀の鞘へと閉ざす。綴られた人の言葉の狭間で、縫い取られるはずのない異形の声が、暁星の糸に清水の玉露を紡ぎ、灰青の奈落へと響いていく。

    「その時は。お前の先の言葉を、我が縁として。この身に流れる血の由来を語ってみせよう」

    巻物に触れている異形の指先に、淡黄の光が灯る。

    「ゆえに。これはその証としてお前に託す。来たるべき時まで、灯火の近くに保管するといい」

    吹き込んで来た泡沫に、少女の黒髪がなびく。紡いだ日々の断片が彼方へ香る風の渡りへ耳を澄ませるように、綺羅星の調べが寄せられた玉露を照らし出す。

    「……うん」

    少女は靡いた髪を耳にかけた。月蝕の橋の下、分かち合った異形の影に手を重ねるように、ホオリはヤヒロへ柔らかく微笑みかけた。

    「うん、ヤヒロ。まっているわ」

    瑠璃の緒が、澄んだ音を立てて朝焼けに揺れた。



    艶めく海驢の皮が敷かれた床。翡翠の瞳を開いた白龍の柱。鮮やかな牡丹の絵画が彫られた朱金の机。黄昏の残光が注いでいる海幸宮の自室で、ホデリはホオリからの文を読んでいた。日当たりのいい場所に飾られているリュウグウノツカイの人形のもとで、妹の綴った文字を辿る少女の表情は穏やかだった。だがかの侍従の名が書かれた箇所に差し掛かるたび、縹深き瞳には暗雲が広がる。波間を裂く雷でも、地に凍える霙(みぞれ)でもない、翡翠の玉を穿つ針の雨を孕むように。

    (また……また、あの侍従の名前)

    ぐしゃりと曲がる紙の音に、ホデリは我に返る。手元に視線を落とせば、握り締めた指の合間で文の端が幾筋にも折れ曲がっていた。慌てて皺を伸ばそうと丁寧に文を伸ばしながら、少女は己に言い聞かせる。

    (いいえ、駄目よホデリ。喜ばなくてはいけないわ。あの侍従は、務めをきちんと果たしているようだし。何よりホオリは、あの侍従のことを信じているのだし)

    ホデリは唇に弧を描いた。

    (そうだわ。ええ、そうよね。ホオリが信頼を置ける相手が増えるのは、いいことだもの。ひとりぼっちでは)

    記憶の彼方で鈴の音が鳴る。濃紫の布に伏した影へ、決して届かぬ己の手が浮かぶ。

    (……ひとりぼっちでは、かわいそうだものね)

    ホデリは暗雲を振り払うように頭を振った。玻璃の文鎮を丁寧に文に乗せ、机から勢いよく立ち上がる。

    「そうだわ。久しぶりに、占をしてみましょう」

    わざと言葉を声に出し、ホデリは祭壇へと向かった。螺鈿細工の火炎宝珠が精緻に施された黒漆の引き出しを開ければ、亀の甲羅の一部が黄昏の残光に煌めく。初代乙姫、亀姫のものだ。竜宮の礎に埋められた初代龍王の骨と対を為すように、歴代の日嗣の御子に継承されるこの甲羅は、御子が迷いを抱えた時に占を行えば、正しい道を示すと伝えられている。ゆえに、いつものように甲羅の溝へ紅珊瑚の破片を当てた時だった。不意に女の忍び笑いが聞こえたような気がして、ホデリは背後を振り返る。振り向いた瞳の先にあったのは、変わらず黄昏の窓辺に伸びた己の影だけだった。だがほっと息を吐いて甲羅に向き直った時、ホデリは眦を裂かんばかりに目を見開いた。

    災禍の鰐は、炎より最も遠き者の傍に。

    真紅に刻まれた文字の並びに、ホデリの表情から色が消える。甲羅を眺める瞳は煌めく金の鈴を無くし、褪せた瑠璃色の鞠を地に落とす。
    玻璃の文鎮に押し潰された文は、落陽の光に赤々と照らし出されていた。

    ほるん Link Message Mute
    2022/09/01 21:59:46

    鮫愛づる姫君:その七(後編)

    #オリジナル #創作 #少女 #人外

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