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    しおり
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    冨岡義勇という男 これはどういう顔なの。
     頬を冷や汗が伝う。いやそもそもどうして自分はこの人の顔色をこんなに伺って朝食を用意しなければならないのだろう、わからない。かなり腹立たしい思いをしたはずなのに、絶対にこんな人と結婚はすまいと思ったはずなのに。何故私は今この人の妻としてこの場にいるのか。
     皿の中身が空になると、彼は手だけ無言で合わせて立ち上がる。
    「……食べた、もう行く。来週には戻る」
    「はい……」
     また一週間も家を空けるのか、と思ったが口には出さない。
     本当に何故、私は今この家に、この冨岡義勇なる男の妻として存在しているのか。誰か教えてほしい。


     冨岡義勇と知り合った切欠は、親戚から紹介された見合いだった。相手の職に関しては詳しく説明できないが、生活に苦労しないことは保証する。体が丈夫なことも。そう言われて紹介された。正直引き受けるのは嫌だった。
     しかし紹介を頼み仲人を務めてくれるらしい鱗滝さんなる老人が非常に礼儀正しくとてもいい方で、また切実に相手を探しているとわざわざ会いに来て言うから。私はその鱗滝さんのために「会うだけなら」と承知したのだ。結婚するとはいっていない、その時点では。もっと言えばそれ以降だってそんな返事した覚えがない。
     その上に、第一印象が最悪であった。
    「俺は結婚する気はない、恩師の顔を立てるために今日は来た。だからお前とは結婚しない」
     通り一遍の紹介をされ、事前に聞かされていたように彼の職に関することは一切質問と追求をしないよう念を押され、二人にされた途端これだ。紋付袴を着て感情の読めない目をした冨岡義勇と言う男は、酷く淡々と言った。
     せめてまず名乗れ。私は心の底からこの男に不快感を抱いた。なんだこの横柄さは、結婚する気がないなら見合いなど来るな。
    「……私も紹介されて、鱗滝さんから頼まれて来ただけなので」
    「ならいい。俺に家族はいらない。いても困るだけだ」
     逐一カチンとくるこの言い方はなんだ、本当になんなのだ。
     絶対に結婚しない、こんな男とは決して。私は心に固く誓った。あの礼儀正しい鱗滝さんには申し訳ないが、この男には結婚が向いていない。それどころか人間関係が向いていない。
     そのやりとり以降大した話もせず、そのまま帰ってきたので間違いなく破談だと確信していた。向こうもそのつもりのようだし、こっちだってそうだ。あの冨岡義勇と会うことはもう今後の人生で二度とあるまい。
     そう思っていたのに。
    「あ、の! 冨岡さん! 冨岡さん、一応これ!」
     出て行こうとしていたところを寸でのところで捕まえる。何故だか知らないが冨岡義勇は異様に足が速い。前も今出たところだと追いかけたのに、道のどこにもいなかった。
    「……忘れたものはないと思うが」
    「違います、お弁当」
     竹の皮で包んだおにぎりを差し出す。一週間も家を空けるのだから、弁当箱は邪魔だろうと思った。だが長く仕事に出るのに手ぶらで行かせるのも気がひける。だからと思って少し前からお弁当を持たせているのに、「忘れ物はない」ときた。
     そりゃあ持っていかなくても平気なものを持たせてすみませんね、くらいは思うものの口には出さない。冨岡義勇もどういう気持ちなのかわからない顔をしている。だからこちらだけ何か言うのも癪なのだ。
     けれど珍しく冨岡義勇は竹の皮包みと私を見比べて口を開いた。
    「……生活費は、足りないならまだ出せる。次に帰ったら持ってくる」
     ……なぜそうなる。もしや、もしやお弁当が握り飯だけだから、おかずも何もないから食べるものに困っていると思ったのか?
     いやそもそも、冨岡義勇が私に渡す生活費は法外な額だった。一体何の仕事をしているのか心底気になるが、それは追求しない約束になっている。しかしとにもかくにも、生活費が足りないなんてことは欠片もない。
    「ち、違」
    「来週戻る」
     皮包みだけ私の手から取って、冨岡義勇はまた踵を返して玄関を出て行った。だから違う、違うのに。
    「冨岡さ、ん」
     一度閉められた玄関の向こうに、冨岡義勇はもういなかった。念のためと思って少し出てみたが影も形もない。ああまた言い損ねた。
    「……行ってらっしゃいまし」
     いつも、こうしていなくなる。止める間もなく出て行って、追いかけようと飛び出すのに後姿さえ見たことがない。仕事に出ると連絡が来ることは決してなく、来週戻るといったのなら来週になればまた静かに帰ってくる。
     どうしてこうなったのだろう。誰か私に教えてほしい。
     あの音もなく消えてろくに戻ってもこない、何を考えているのさっぱりわからない冨岡義勇という男。何故その男の妻になってしまったのか、私に教えてほしい。


     冨岡義勇と言う男は、普段全く家にいない。
     昼も夜も関係なく、とにかく家にいなかった。つまり、この冗談でも狭いなどと言えない屋敷には常に私一人である。寂しいだとかいう程度ではない。最早笑える。家具を好き放題できるだとかも思えないくらいには。
     生活費を、毎月の初めに渡される。足りなかったら、言うようにも。だが殆ど私一人で暮らしている現状では十分すぎるほどのお金だったので、私は困って残りをただ貯金していた。蓄えはあって困るものでもなし。
     加えて何をしていてもいいと言われていた。習い事をしようが生き物を飼おうが、ご近所の同年代の女性を呼んでお茶会をしようが、何でもいいと。
     ただし、夜は必ず、日が落ちてからは絶対に出歩くなと。欠かさずにこの香を炊くようにと、生活費と一緒に紫色をした香を渡される。訳も意味もわからないが、逆らう理由もないので従う。特段何の要求もしない冨岡義勇の、唯一のいいつけだ。
     それから二日に一度の頻度で、お手伝いさんが来て掃除だけはしていく。広い屋敷を私一人で管理するのは無理だ。冨岡義勇の仕事の伝手だとかで来るお手伝いの人は、私に何も言わない。ただ粛々と掃除をし、家を清潔に、かつ快適に保って帰っていく。季節ごとに、庭を整えたり調度品を変えたりもする。無論会話はない。最初の一度だけ「お茶でも」と声を掛けたが「結構です」と断られた。
    「私どもは冨岡様に申し付けられて、奥方様の家を整えているだけです」
     素っ気ないわけではないが、有無を言わさぬ調子でそう言われた。相変わらず、私に冨岡義勇の職に関する追求は許されていない。それが仕事の流儀なのかもしれないが、あんまりではなかろうか。
     というか「奥方様の家」という表現も気になる。ここは一応、冨岡義勇の家ではないのか。その言いようでは、冨岡義勇には他にも家があるようではないか。
     いやしかし、それはそれで納得できる。私との見合いの席で、既に冨岡義勇は「恩師の顔を立てにきた」とはっきり言ったのだ。冨岡義勇にとってこの結婚はそのまま縁談を進めただけであり、本当は想う女性がいたとしても何も不思議ではない。むしろその方が得心がいくくらいだ。
     だから、冨岡義勇はこの家に帰ってこないのだと。
    「……それなら結婚なんてしなければよかったのに」
     顔を立てるだけならば、縁談だけで十分だったろう。何故結婚までしてしまったのか。鱗滝さんというあの男性がいい方なのは私にもわかるが。このままでは何もせず、ただ帰ってくるかどうかわかりもしない冨岡義勇のために食事だけを作り続けるだけの生活を送ることになる。
     ……開き直って気ままに過ごせるほど、私は図太くなれそうにない。
    「今帰った」
     ぼんやりしていると、縁側から声がする。
     顔をそちらに向ければ、冨岡義勇が立っていた。
    「お、かえりなさいまし」
     今日は帰ってくる日だったか。冨岡義勇は戻る日付を正確には言わない。「半月後」だとか「来週」だとか、範囲が広い。
    「申し訳ありません、お戻りだと思わず」
    「……来週戻ると、言わなかったか」
    「いや、それはわかっていたんですが」
     来週では七日間幅があるではないか。それより何故中庭にいる。
    「あの、冨岡さん、どうして中庭に」
     一応縁側まで出てはみたが、冨岡義勇は一向に玄関に回る気配がなかったので聞く。靴を脱ぐのが面倒なのだろうか。何故だか知らないが冨岡義勇はいつもたっつけ袴を履いている。そういう仕事なのか聞きたいがそれもできない。
     庭を眺めていた冨岡義勇は、縁側の私を見上げる。相変わらずどういう顔なのかさっぱりわからない。
    「掃除をしているものが、お前が退屈そうだと言っていた」
    「はあ」
     ……だから何。
     私が何も言わないでいると、冨岡義勇はまた庭を見る。暫くぐるりと見てから、やっと冨岡義勇は玄関のほうに足を向けた。私は慌てて縁側からそちらに回る。
     上着だのなんだのの始末を、冨岡義勇は自分でする。洗うものだけが洗濯場に出され、あの羽織は自分で手入れしているようだった。だから私は冨岡義勇の衣類を世話することは殆どない。そもそも家にいないのだし。
     念のため程度に食事を用意しておいて良かった。着替えて居間に来た冨岡義勇に食事を出す。この間、握り飯のみを持たせて生活費が足りないと勘違いをさせた。だからちゃんと三品おかずがある。
     手を合わせてから、冨岡義勇は食事を摂り始めた。腹は減っていたらしい。好物とか、ないのだろうか。注視しても表情から気持ちを読み取ることが出来ないために、いつもとりあえずの栄養価があるものを出すことしか出来ていない。冨岡義勇は静かに静かに食事を摂る。その割に、口周りに米粒をつける。笑っていいのかわからないので、私も黙っておく。
    「お風呂は、いかがなさいますか?」
     食べ終えた冨岡義勇に聞いてみる。用意はしてあるけれど。ちらりと壁の時計に目を向けてから、冨岡義勇は立ち上がった。
    「もらう。夕方には、家を出る」
    「えっ、もう」
     今帰ってきたところなのだが。いや、そういうことを言っている場合ではない。私は冨岡義勇を慌てて風呂場に押し出すと、台所に戻って今度は弁当を作った。
     職に言及してはいけないのはよくわかったが、予定ぐらいやっぱり教えてほしい。こっちにも都合があるのだ。言えないけれど、そうは言えないのだけれど。
     握り飯と簡単に食べられるおかずをまとめて包み、結局家には殆どいなかった冨岡義勇に渡す。他に家があろうと仮に別な女性がいようと、この家で生活費をもらって生きている以上、私は冨岡義勇の妻に他ならない。務めは果たそう。
    「いってらっしゃいまし」
     数時間前出迎えた男を見送る。冨岡義勇はたっつけ袴を履いて立ち上がった。
    「来週には戻る」
     だから、来週のいつなのか。また七日間二人分の夕食を作る私は「わかりました」と返事をした。冨岡義勇は来たとき同様静かに出て行った。
     翌日、いつも掃除に来てくれる人たちが何故か庭に南天の木を植えていった。正月が近いからだろうか、わからない。あれで正月飾りでも作ればいいのか。
    「縁側から見える位置に植えるよう、言われています」
     それだけ言って、その人たちは帰った。
     手入れの仕方がわからない……私は縁側に座って、ぼんやり南天を眺めた。緑緑の広い庭に、赤い実がぽつぽつとあるのが見えた。


     あっ、やっぱり。
     私は気づかれないようにちらちらと冨岡義勇の様子を伺った。その箸が大根の煮物に伸びる。いつもより早い、食べるのも箸を運ぶのも。
     冨岡義勇はきっと、大根が、好きなのだ。
    「次のお戻りはいつに」
    「……早くて明日の昼」
     じゃあ、お結びでいいだろうか。大層な携行食はいらないだろう。私は竹の皮で包んだ握り飯を冨岡義勇に渡した。
    「中身は三つとも別々ですからね」
     だから別に生活費をこれ以上増やさなくてもよい。その意味で私は言った。冨岡義勇はじっと竹の皮包みを見て、頷くこともなくそれを懐にしまう。毎度返されもしないということは、食べてはいるのだろう。三種類具を分けたのはその中のどれかが冨岡義勇の嗜好に合うのではないかと思ってのことだが、感想を言ってくれるような相手ではない。ややもどかしいことである。
    「いってらっしゃいまし」
     いつもの通り頭を下げて見送れば、冨岡義勇はからからと引き戸を閉めて出て行った。私は厨に急ぎ足で戻る。それから暦に鉛筆で書きつけた。大根、丸。
     ぺらぺらと暦を捲る。他に丸が付いたのはなんだったか。酒、そうでもない。白米、割と好む。ああそう、鮭。先日鮭を出したとき、今日のように少し食べる速度が速かった。
     冨岡義勇は好き嫌いをあまりしない方らしいと気づいたのは、比較的最近のことだった。大体、出した食事は器を空にする。もうちょっと好みだのなんだのわかれば、たまに帰って来たときくらい好物を振る舞おうという気にもなるものを。冨岡義勇はそういう好みの話をあまりしなかった。というか基本的に話をしなかった。
     だからこれは私が勝手に始めたことなのだ。暦に、冨岡義勇に出してちょっと反応が異なったものを記録しておく。その組み合わせのいくつかから、冨岡義勇の好物を割り出そうという寸法である。
    「鮭と大根、ねえ」
     暦の前で首を捻る。何の変哲もないと言えば、何の変哲もない素材だ。普通に出してみようか、二つとも。他の日の暦もちらほらと見たけれど、とりあえず丸印のついているこの二つから。
     そういうわけで、翌日の昼帰ってきた冨岡義勇には大根の煮物と鮭の焼いたものを出してみたのだが。
    「……」
    「……」
     ……悲しい顔をされてしまった。
     いや、ほぼ変わらない。表情に変わりはしないのだ、あまり。だが心なしかしゅんとしているというか、なんというか。とにかく悲しい顔をされた。
     一体何が悪かった。私は慌てて献立を見る。白米、汁物、焼いた鮭に大根の煮物。前に出したときはさほどはずれの反応ではなかったものを組んだはずなのに。もそ、もそとそれを食べた冨岡義勇は、いつものようにのっそりと立ち上がると玄関に向かった。もう行くのか。
    「も、もうおいでですか?」
    「……ああ」
    「いつお戻りで……?」
    「来週」
     だから、来週のいつ。というかそのしょげ方はなんだ、なんなのだ。冨岡義勇はそのまま出て行った。一応見送った私はまた暦を見る。前回の大根と鮭は丸だったのに、今日は丸を付けていいものか憚られる。
    「何が悪かったの……?」
     私はただ、暦の前で腕を組んだ。



     もしや食材は合っていても調理の仕方に問題があったのではないだろうか。私はそうあたりをつけて、冨岡義勇が帰ってきそうな日に買い出しに出た。掃除をしてからになってしまったので、昼下がり。巡り合わせの悪い冨岡義勇のこと、私の留守中に帰宅なんてしていないといいが。
     商店街に出て、鮭と大根を見繕う。鮭と大根、前回は焼き身と煮物だった。鮭は焼いたのが悪かったのか、大根は煮たのがまずかったのか。いや、前々回の大根も煮物だったはず。なら大根は煮るので間違っていないと考えた方がいい。
     手掛かりのない謎解きに向かっている気分だ。私は材料を見繕いながら、献立も考えねばならなかった。ただ美味しいものを買うだけではいけない。食材だけではだめだと学んだ、問題はきっと組み合わせなのだ。先日出した食材に必ず好物が隠されている。ここまでくるともう意地だ、絶対に冨岡義勇の好物を割り出す。
    「定食屋……」
     ふと足を止めて、中を覗く。献立、何か引き出しが欲しい。
     私は私の知っているものしか作れない。だから鮭と言えば焼いたものだったし、大根は煮てみた。この二つを使って何かないだろうか。
     からからと音を立てて店内に入る。愛想のいい給仕の女の子が「お品書きをどうぞ」と渡してくれた。冨岡義勇もこのくらいの笑顔を浮かべてはくれないものだろうか……無理だな。そんなに笑いかけられたら私のほうが吃驚してしまう。
     注意深く、お品書きを捲った。鮭と大根を使う料理、大根は煮てあるほうが好ましいのは間違いない。鮭、この間のお結びにも入れてみたのだが……あれは良くなかったのだろうか、と考えたそのときだ。
    「……あ」
     そんな、そんなことって。それでよかったのか。
     ぱたんと思わず冊子型のお品書きを取り落としてしまった。
    「お客様?」
     先ほどの給仕の女の子が心配げに私を見る。それに慌てて首を振った。
    「だ、大丈夫です。これをいただけますか?」
     その献立を指さして頼めば、「かしこまりました」と彼女は笑顔で厨房に向かう。
     作り置きがあるのだろう、比較的すぐに出されたそれを食べながら私は「なあんだ」と内心で繰り返した。美味しい、味を覚えておかなくては。それから本屋に寄って作り方を調べて。
     ふふふ、と私はおかしくなって笑う。近くの席に座っていた男性がいぶかしげにこちらを見たので、すぐに顔を整えたけれどそれでもおかしさはしばらく残っていた。



     鼻歌なんて歌いながら帰り路を歩く。ちょっと遅くなってしまって、もう日が落ちていた。腕に提げた買い物かごには鮭のアラと大根と調味料が少々。若干重いがまあ大した距離ではない。私はよいしょとそれを持ち直しながら歩いた。
     さて、件の冨岡義勇はいつ帰ってくるだろう。多少日持ちのする献立だから、今日試作を作って、それから。ほぼほぼこれが正解だと思うが、どうだろうか。私はまた一人でクスクスと笑った。いけない、これでは全く不審者である。誰かに見られでもしたらまた変な顔をされるだろう。
     だが、それにしたって楽しみなのだ。
     しかし下駄をからころ、と鳴らしたときのこと。
    「あら……?」
     ガサ、と物陰で音がしたような気がした。振り返るが誰もいない。日が落ちて暫くの空でまだ僅かに明るいと思っていたが、いい加減急ぐべきだろう。この辺りは、人通りも少ないし。
     少しだけ足を速める。もうすぐ、家が見えてくる距離だ。カラ、とまた下駄の歯が音を立てたときガサガサと嫌な風が渡る。今の季節にしては変に生ぬるいような、そんなじっとりとしたもの。
    「……」
     家に帰っても、私は一人だ。冨岡義勇に言われたとおりにあの香を焚き、冨岡義勇が帰ってこないのならば支度を整えて寝る。帰って、来ないのであれば。
     そういえばと私は懐を探った。香とは別に匂い袋を持たされていた。いつも何の香りなのだろうと思っていたそれを取り出して、スンと鼻を鳴らす。ほんの少し甘い、これは花の匂いだろうか……。辺りに僅かにそれが薫った。
    「何をしている」
    「ひゃっ」
     突然背後から声を掛けられて飛び上がった。ぎょっとして振り返れば冨岡義勇がぬぼっとそこに立っている。いつからいたのだ、さっきまで誰もいなかったのに。
    「……家に戻ったらお前がいないから見に来た。日が落ちる前に家に戻るように言っていたはずだが」
    「あ、はい……すみません、ちょっと買い出しに時間がかかって」
     そう答えれば、冨岡義勇は僅かに考え込むような仕草を取った。そういわれてやっと、「買い出しだとかそういうものも必要だと気づいた」みたいな顔だった。
    「一度買い出しをするのにこんなに遅くなるなら、手伝いに誰かを雇う」
    「い、いや、結構です! 大丈夫です、今日はたまたまなので……」
     そうか、と簡潔に冨岡義勇は答えた。それからちろりと私の腕に目をやると、提げていた籠を取り上げてすたすた歩きだす。そうか、今日が帰ってくる日だったのか……。私は驚いて一拍遅れたけれど、慌ててその奇妙な模様の羽織を着た背中を追いかけた。カラコロ下駄が鳴る。帰る家が同じなのだった。
     歩くのが異様に早い冨岡義勇に追い付くのは早々に諦めたので、私はさほど距離が離れないように三歩ほど後ろを歩いた。
    「今度から余裕をもって家に戻ることだ。日没の前に」
    「はい……あの、すみません」
     なぜ、それほど前に日没にこだわるのだろう。わからない。けれど答えてもくれないとわかっていたので、私は聞かなかった。代わりに冨岡義勇が籠を持ち直したのを見て、別なことを伝えようと口を開く。
    「あの、冨岡さん、今日の晩御飯なんですが」
     先を行く冨岡義勇は無論、返事などしない。ただ逐一返事をしないだけで聞いているのだろうというのはわかるので、私は続けた。
    「鮭大根、を、作るつもりです」
     ぴた、と冨岡義勇の足が止まる。
     ……あたりか、そうでないか。冨岡義勇の反応からそれを推し量れるだろうか。そう僅かこみ上げた不安は、振り返った冨岡義勇の顔を見て吹き飛び、私は声を上げて夜道で笑った。


     冨岡義勇が、近頃以前より家に帰ってくるようになった。
     とはいっても毎日というわけではなく、それでも一週間や半月に一度顔を見せると「多いな」と思うくらいだったのが、二日三日に一度やってくるようになったので驚いているのだ。
     深く追求してはいけないと言われているので直接聞いたことはないが、仕事の都合なのかもしれない。先日「いつお戻りですか」といつものように聞いたところ、冨岡義勇は「暫くは、数日に一度」と答えた。それからは言葉通りにここに顔を見せている。相変わらず一日在宅しているわけではないが、食事を摂り、たまに休息を摂り、それからまた出て行って数日後に帰宅する。
     そしてかなり珍しいのが、夜間の在宅が増えたことだ。冨岡義勇が日没後家にいることは、私がこの家に来てからこれまで片手で数えられる程度しかなかった。それが最近はこの家で睡眠を摂る日が増えている。全くわからない。だが考えたところで理由はよくわからないので、私はただ「遠出の仕事がなくなったのかな」程度に留めた。
    「お風呂の支度が整いましたけど、お入りになりますか」
     縁側で静かにしていた冨岡義勇に声をかける。すると冨岡義勇は音も立てずに腰を上げた。しかし足音はてちてち立てている。何なのだろうあの音。
    「もらう。今夜はいるが、明日は戻らない」
    「わかりました。では残っていた鮭大根はお弁当に詰めましょうね」
    「……ああ」
     冨岡義勇の好物が鮭大根だとやっとわかったので、近頃出す頻度を上げた。冨岡義勇は何も言わないが嬉しいは嬉しいのだと思う。無表情ではあるが気持ち嬉しそうなのだ。本当に僅かにだが。
     脱衣所に手ぬぐいや着替えを置いて、私は夕飯の支度にとりかかった。米はある、鮭大根の作り置きは温める、あとはどうしたものか。漬物と汁物で十分だろうか。そんなことをあれこれ考えながら襷を締めていると、玄関の方から声が聞こえた。滅多にないことだが客人かもしれない。火を入れる前でよかったと思いつつ私は玄関に向かった。
    「はい、お待たせしました」
     引き戸をカラカラと開ければ、そこには緑の市松模様の羽織を着た少年が立っている。少年は私を見てぱちぱちと目を瞬いた。赤くて綺麗な目だ。
    「こんにちは。俺は義勇さんの弟弟子の竈門炭治郎です。義勇さんはいますか」
    「あ、ごめんなさい。冨岡は今席を外していて。上がってお待ちになりますか?」
    「ありがとうございます」
     はきはきとその喋る少年――竈門さんは冨岡義勇と同じような服装をしていた。弟弟子と言っていたが、仕事関係の知り合いなのだろうか。ならばあまり立ち入ったことは聞けない。
     私は竈門さんを居間に通して、浴室へ向かった。脱衣所の戸を叩く。開けてそこに居ても困る。
    「冨岡さん、竈門炭治郎さんとおっしゃる男の子がいらしたので居間にお通ししています」
    「……わかった」
     静かな声で返事があったので、私はお茶を用意して再び居間に戻った。竈門さんも夕飯を食べていくだろうか。後で冨岡義勇に確認しよう。湯呑とお茶菓子を出すと、竈門さんは笑顔でこちらを見た。
    「初めましてですね、義勇さんの奥さんですか?」
     今の自分の状態で妻と言えるかどうか大変怪しいのだが、言うと面倒だ、黙っておこう。私は愛想よく笑っておいた。
    「はい。主人がいつもお世話になっております」
    「いえ! お世話になってるのは俺の方です。俺はいつも義勇さんに助けてもらうばっかりで」
     しまった、何もわからない。私は曖昧に微笑んだ。
     私は冨岡義勇の仕事内容を全く知らないため、弟弟子がいることも今初めて知った。しかもこの少年を助ける冨岡義勇が全く想像できない。もしかして鉄面皮なのはこの家でだけで、冨岡義勇は外ではにこやかに後輩に慕われるような人間なのだろうか。
     やはり、知らないことばかりなのだなと思う。冨岡義勇のことを、私は何も知らない。好物だって、勝手に割り出して作っているくらいだ。妻だなんて烏滸がましい。もっとも、それだって望んでなったわけではないが。
    「何か悩んでますか?」
    「え?」
     穏やかな声で竈門さんが問う。顔に出ていただろうか、笑っていたつもりだが。戸惑ってどう答えたものか考えていると、竈門さんは笑顔のまま言った。
    「大丈夫ですよ。義勇さん、この家も、あなたもとても好きだと思います。寛いでいる匂いがする」
    「え……」
    「炭治郎」
     静かな、聞きなれた声に振り返る。浴衣の上に羽織を着た冨岡義勇が音もなくやってきて私の手前に座った。
    「家内は何も知らない。言わなくていい」
    「あっ、そうだったんですか! すみません」
     焦った表情で竈門さんはぺこりと頭を下げた。私も反射で会釈する。
    「構わない。炭治郎にも食事を出してくれ」
    「あ、はい、わかりました」
     寛いでいる匂いとは、一体なんだろう。味噌汁を作りながら私は考えた。
     冨岡義勇という男は、私にとってはまだ「他人」のような気がしている。日を空けて何日か置きにこの家に帰ってくる他人。おにぎりが塩握りだと生活費が足りないと思って金額を上げる他人。私が縁側で暇を持て余していると知ると、そこから見える場所に南天を植えさせる他人。日没後に家にいないと探しに来る他人。そして私の作った鮭大根を喜んで食べる他人。
     知らないことが多すぎるから、どう距離を詰めたらいいかわからない。それに向こうも距離を詰めたいとは思っていないのだと考えていた。たぶんそれは間違っていないと思う、思うけれど。
     竈門さんは私がいない間に冨岡義勇と仕事の話をし、夕食を摂り、一礼して帰っていった。美しい赤い瞳が印象的な少年だった。冨岡義勇は夕食後に暖かい緑茶を出すとゆっくりと飲む。だからここ数日と同じようにそれを用意して二人で飲み、寝支度を整えた。
     夫婦と言いつつも私は冨岡義勇と一緒に寝ることはしない。布団と布団の間は衝立で仕切る。言いつけ通り香を焚いて、おやすみなさいと声をかければ冨岡義勇は「ああ」とだけ言った。そしてすぐに明かりを消した。
    「……」
    「……」
     冨岡義勇が寝ているのかいないのかわからないが、私は黙って天井を見つめていた。
     静かな夜だ。何の音もしない。だから突然話し始めた冨岡義勇の声が、ひどく部屋に響いた。
    「……俺はお前に話していないことがたくさんあるが、お前だから話さないわけじゃない」
     冨岡義勇という男は、自分から私に向かって話し始めることは殆どない。だからどうしてそんな風にいきなり喋り始めたのだろうと思いつつも、私はその言葉に耳を傾けた。冨岡義勇が不必要なことを言うとは思えなかった。だから何か伝えたいことがあるのだと思った。
    「……はい」
    「話したくないから話さないだけだ。誰にも話していないし、これからも話さない。その方が楽だからだ」
    「……」
     楽というのが、面倒くさがっているという意味合いではないということは私にも理解できた。冨岡義勇が、何か、事情がある人なのだろうということは聞かなくてもわかる。そして追及するなと言われた「仕事」はおそらく、それに関係あるだろうことも。
     普通の人間は帯刀して出歩かないし、衣服に血液をつけて帰ってくることもなければ、掌があんなに硬く肉刺だらけなこともないだろうし、体中に傷もないだろう。たとえ一緒にいる時間が僅かでも、寝食を共にしていればわかる。仲人をしてくれた鱗滝さんも、いい人ではあったが普通の人ではないだろうことは薄々察していた。
     ただそういう冨岡義勇を、どうしてだか「恐ろしい」と思えなかった。後ろ暗いことをしている人には見えなかった。むしろその逆、私には冨岡義勇は澄んだ水のような、透き通った美しい人に見えていた。けれどその青い水底はよく見えなくて、いつも何を考えているかわからなかったけれど。
    「お前は何も知らなくていい」
    「……」
    「お前が何も知らずに、ここで毎日普通に暮らしていると思うと、安心する。それでいいと思える。だからお前は、俺のすべきことを何も知らなくていい」
     二度、息を吸って吐いた。
     相変わらず勝手だ。それは私の最低限知っておきたいという気持ちを無視している。曲がりなりにもここで妻として暮らして、毎日冨岡義勇の帰りを待っている寂しさを無視している。
     けれど仕方ないかと諦めるほかなかった。冨岡義勇という男はそういう男なのである。そして癪なことに、私はそういう冨岡義勇にいくらか慣れ始めていた。
    「……わかりました。ですが今度から、いつ帰るのかきちんと教えてください」
    「……いつも言っている」
     衝立の向こうから心外そうな返事が返ってきた。心外なのはこっちだ。
    「冨岡さんのお返事はざっくばらんすぎます。来週と言われたら、私は七日間の間ずっと余分にご飯を作らなくてはいけません。七日間鮭大根を切らさないようにするのは大変です」
     どこで何をしているのか知らないが、たまに帰ってきたら好物くらい食べたいだろう。そういういじらしい私の努力をせめて知っていてほしい。
    「……わかった」
     本当だろうか。私は冨岡義勇から返ってきた返事に微かに笑った。
    「おやすみなさい、冨岡さん」
    「ああ」
     おやすみにはおやすみと返してほしい。やっぱり変な男だ。私は衝立の向こうで眠っているだろう冨岡義勇のことを考えながら、その日は目を閉じた。



     玄関先でベルトに刀を差す冨岡義勇を見つめる。今日は戻らないと言っていた。
    「いつお戻りですか?」
     そう尋ねれば、冨岡義勇は口を開きかけ、それから閉じていくらか考え込んだ。
    「……帰ってこられそうなら明日戻る」
    「来られなさそうなら?」
    「使いをやる」
    「わかりました。行ってらっしゃいまし、冨岡さん」
     いつも通りにそうして頭を下げる。すると冨岡義勇はじっとこちらを見つめたけれど、結局普段通りに「ああ」と言って出ていった。挨拶を知らないのか。
     今日は戻らないそうだから、日が出ているうちに買い出しに行こう。日没までには戻って、それで、毎月もらっている香を焚いて眠る。冨岡義勇が戻るまでここでそうして暮らす。癪なことに、私は冨岡義勇の妻なのだから。
     しかし翌日の昼頃、冨岡義勇の使いがやってきた。それはいつも屋敷内を整えたりいつか南天を植えてくれた人だった。ひどく疲れて、黒い衣服も乱れて汚れている。嫌な予感がした。
    「奥方様にお伝えします、冨岡様は本日戻られません」
     今日は戻らない。それは予想していたことだ。けれど恐らく、それ以外もある。三和土に膝を突いて座っているその人に私は尋ねた。
    「いつ戻りますか」
    「……わかりません。酷い、怪我をされて、それで」
     怪我の程度や具合がよくないものだろうことは、その人の表情を見れば一目瞭然だった。自然と手を握りしめてしまう。今どこにいるのだろうか、会える状態なのだろうか。そもそもどうしてそんな怪我をしたのか。
     知りたかった。聞きたかったけれど、でも。
    「わかりました、では帰る日が決まったら教えてほしいと、冨岡に伝えていただけますか」
     私がそれだけ言うと、使いの人はやや動揺したようだった。
    「あ、会いに行かれませんか、冨岡様、本当に怪我が酷くて、意識がなくて」
    「参りません。ここで待っているとお伝えください」
     会いに行くことは、きっと簡単だ。この使いの人から詳細を聞いて、連れて行ってもらえばいい。いつも莫大な生活費をくれる「勤め先」なのだから、冨岡義勇がどこに居てもきっとそうしてくれる。
     けれどそれはできない。冨岡義勇は私にそれを知ってほしくないだろう。知れば、ここで普通に暮らせなくなる。冨岡義勇が今まで何をしていたのか、どういうことをしていたのか知ってしまえば、この家は冨岡義勇の望む「普通の暮らし」を維持できない。
     たとえ自分が死ぬとしても、冨岡義勇はその理由を私が知ることを望まない。
    「……残り物で申し訳ないですが、これだけ、持って行っていただけますか」
     いつも冨岡義勇に持たせていた曲げわっぱに鮭大根を詰める。作り立てが食べたければ帰ってこい。それくらいは、要求する権利が私にはあるだろう。
     使いの人は辛そうな様子で私からそれを受け取った。その人自身も怪我をしている様子だったので、私は玄関先で簡単な応急処置だけ行った。
     そしてその人が帰ってしまうと、私は一人になった。
    「……一人は慣れてる」
     口に出してから、これは失敗だったなと思った。こんなの「普通」ではない。冨岡義勇が望んでいたそれではない。
     冨岡義勇は私が毎日この家で、暇を持て余しながら掃除をしたり料理をしたりして、平和過ぎるほど平和に、穏やかに暮らすことを望んでいる。冨岡義勇がいつ帰ってくるやらと苛立ったり気を揉んだりしながら、毎日なんとなく暮らしていることを。
     だがしかし、ああ。
     普通というものはなんと脆く、簡単に壊れてしまうものなのだろうか。
     私はしばらくそのまま玄関に座っていた。日が傾き、そして落ちて、屋敷内が暗くなるまで。そうして外から冷気が流れ込みやっと、火鉢をつけるために立ち上がった。


     桜の花びらがひらひらと庭を舞っている。
     南天はとうの昔に実の時期が終わった。私の屋敷は相変わらず二日に一度庭や部屋を整えるための人がやってくる。冨岡義勇が帰って来なくなってからしばらくは彼らも怪我をしており、自分でできるからいいと言ったのだが、「お館様から奥方様には変わりなく過ごしていただくようお言い付けです」と言われた。どうやら冨岡義勇の雇い主はそう呼ばれているらしい。
     季節が春になっても、冨岡義勇は使いを寄越さなかった。それどころではないのかもしれない。だが流石に死んだら連絡が来るだろうと私は自分を宥めている。全く、結局こちらの言うことは聞いてくれないわけだ。
     私は息を吐いた。それでもやはり、電話や玄関の呼び鈴が鳴るのは恐ろしかった。
    「……私は普通に暮らしています」
     本当に、習慣は恐ろしい。時折どうしようもなく寂しく苦しい気持ちになることはあるものの、私の生活は「普通」を保っていた。
     朝が来たら目を覚まし、朝食を摂り、洗濯をする。寝室や居間などよく使う部屋を掃除して、日中はたまに買い出しに出たりして、日が落ちる前に帰宅したら夕飯を作って食べて寝支度をする。寝る前に焚く香は毎月、「お館様」から生活費と共に届いた。
     そうして冨岡義勇が望み、恐らく守ってくれた「普通の生活」を私は送っている。
    「それにしたって待たせすぎよ」
     小さくぼやき、私は庭に足を下ろした。暇すぎる、庭の花びらでも片付けよう。
     そうして竹箒を取りに行き、玄関先に向かおうとして――それを取り落とし走り出した。
     羽織がない、いや髪も短い。あと腕も片方ない! だがそんなことどうでもよかった。
    「おかえりなさい……っ」
     腹立たしいことに、冨岡義勇は片腕でも私が飛びついてもびくともしなかった。書生姿だと年相応に見える。
    「今戻った」
     だから挨拶を知らないのかこの男は。ぎゅっと強く冨岡義勇の着物を握りしめる。
    「っ、使いをくださいと言いました」
     文句を言えば、冨岡義勇は淡々と答える。
    「帰ったほうが早かった」
    「約束が違います、鮭大根がありません」
     そう伝えると、冨岡義勇はあからさまにがっかりした顔をする。言ってくれなかったのだから作ってるわけがないだろう。相変わらず勝手な男だ。
    「わかりました、今から作ります」
    「ああ。……お前が作ったものが一番美味い」
     なるほど、何か心境の変化もあったらしい。私は顔を拭い、冨岡義勇の左手を引いた。
    「さ、お上がりください。おかえりなさいまし、冨岡さん」
     鮭大根を作ったら、次は風呂を焚く。夜になったら布団を用意する。癪なことに、それが私の冨岡義勇の妻としての普通の暮らしなのだ。
    micm1ckey Link Message Mute
    2025/07/31 18:33:35

    冨岡義勇という男

    #鬼滅の夢 #冨岡夢 #冨岡義勇
    冨岡義勇と見合い結婚した女の話。
    以前別垢で書いていた冨岡さん夢を完結させました。映画かっこよかったですね。

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