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    きみはすきなこ

     結果論だが、それまで私は恋愛運のバランスを取っていたことになる。
     なにせ全くと言っていいほど、恋愛にいい思い出がない。例えば……いや、上げたらきりがない。やめよう。だから彼女は思った、おそらく、自分は、「はなからそういうことに縁と運がない」のだと。
     だから今になって思えば、もしかしたら。
     もしかしたら、私ははたった一人その人に出会うために、運を取っていたのかもしれなかった。



    「僕を君の彼氏にしてくれないかな」
     耳を疑った。突然何を言っているんだろうと思った。
     学食で正面に座っているのは、同じ学科で同じゼミの学生だ。今年同じゼミになって、くじ引きで研究のペアになった。接点はそのくらいである。他にいくらか講義が一緒になったことはあるけれど……けれど、という程度なのだ。なにぶん、人数の多い学科なのだ。
     メモを取っていた手を私は止めた。中途半端に聞いたからいけないのだ。にこにこしている彼に問い直す。
    「源君、なんて?」
    「だめ? 今他に彼氏、いる?」
     聞き間違いではなかったらしい。同級生の源髭切君ははっきりと彼氏と言った。源君は自分に彼氏にしてくれと言っている。何故だ、どうして。
    「いないけど」
    「じゃあそれって僕でもいい? だめ?」
    「なんで? 冗談にしては質が悪いよ」
     笑いながら私は言ったけれど、源君のほうはきょとんとして首を傾げただけだった。
    「おや、冗談じゃないよ。本気で言ってるんだけど」
     源君は基本的にいつも人のいい笑顔を浮かべていて、今もそうだった。優しげで、穏やかな表情でシャープペンシルを取り落とした私の手を取り、もう一度言う。手が私よりもすべすべだった。
    「君のことが好きだから、僕を彼氏にしてほしいんだけど、だめかな」
     ふざけている風にはどうしても見えなかった。というかこれ以上疑ってかかると源君にも失礼な気もした。ただでさえ一度冗談でしょうと聞いてしまっているし。
     困って、焦って、悩んで、何とか一言絞り出した。口の中が酷く乾いていた。
    「ご、ごめんなさい」
     それしか言えない。源君は何度か目を瞬いた。
    「ありゃ、そっか」
    「う、うん、ごめんね」
     すんなりと、源君は私の言ったことを受け入れてくれる。それに少しだけホッとした。あんまり落ち込まれたりされては、いたたまれない。しかし引こうとした手はなかなか離してくれなかった。どうして。
    「理由は?」
    「えっ、理由?」
     食い下がられた。いや、でもこっちだって逆の立場ならそれはちょっと気になるかもしれない。だが聞かれるほうになると困る。
    「今、特に好きな人とか、いないから……彼氏作ろうかなって気もないし」
    「そっか」
     本当にそうだったので、私は事実だけを述べた。そうするとやっと、するりと手を離される。納得してくれたらしい。私はホッと息を吐いて、再びシャープペンシルを取る。
     ルーズリーフにメモを取ろうとして……一応源君に尋ねた。
    「あの、源君、誰かとペア変わってもらう? 今さら難しいかもしれないけど、源君相手なら誰かそうしたいって言うかも」
     すると資料を手にした源君は不思議そうにこちらを見つめた。蜂蜜のような色をした、ビー玉のような目だった。
    「どうして? 君、僕と組になるの嫌かい?」
    「えっ、ううん、大丈夫。源君が平気なら、全然」
     不思議な人だなあと私は思った。いや、最初に会ったときからずっと、源君は変わった人だった。
     ゼミが同じの源髭切君はかなり目立つ人で、私も入学当初から何度か名前は友達の間で聞いたことはある。何故なら源君は顔立ちが大変……いや、大変なんて程度で済ませていいのかわからないくらい整っているのだ。そういう人はかなり目を引く。加えて人当たりもいいようで、いつもにこにことしていて周りには人がいた。
     だから普通にしていれば、私にに突然彼氏にしてほしいなんて言ってくる人ではないはずなのだ。普通に、していれば。
    「はあっ? 告られたっ? なんで」
    「私が聞きたいよそれ」
     カフェオレ奢るからの一言でヒトコマさぼってくれた別学科の中学からの友人、清光に事の次第をぼやく。清光は一度取り落としそうになったプラスチックのカップを持ち直して、真ん丸に見開いた目で上から下まで私を見た。
    「いやー、なんで、今の今まで男っ気なし、彼氏なしのあんたに。自分で恋愛に運も縁もないって言ってたじゃん」
    「いやだから、わかんないって」
    「ゼミ一緒になっただけって言ってなかった?」
    「うん……」
     それだけ、なのだ。本当にそれだけ。源君と私は地元も同じではないし、サークルも違う。というか、源君はサークルになんて入っていないようだ。バイトもしているのかどうか知らない。聞いたことがない。そのくらい、私は源君のことを知らない。
     ズココと音を立てて清光はカフェオレを啜った。氷の関係か、あまり量は多くなかったらしい。
    「はー、しかしあの源ね、あの……」
    「あのってやめない? あのって」
    「いやでも、あの源だろ、あんたも噂知らないわけじゃないでしょ?」
     まあ、そうなのだけれど。私は苦笑いした。源君と言えば……「あの」源君である。
     なんでも、あまり女性関係でいい話を聞かない、ような。私はまた聞きの話なのだ。信憑性は知らない。ただそういう話たまに……、いや、結構頻繁に聞く。
    「仕方ないじゃん、あの顔じゃモテるでしょ、そりゃ」
    「いや本当に、綺麗な顔だなと思う……それは思う……」
    「まーね。そりゃ女絶えないよ、固定の彼女はいないって聞いたけど」
    「当たり前だよ!」
     彼女がいて私にあんなことを言っていたら大問題だ。前提条件としてまずい。しかし、私の中で源君と言えば「あの」源君なのである。悪い人だとは思わないが、、思わないがと前置いてしまう程度。前情報が良くなかった。
     カラカラと氷の入ったプラスチックカップを振りながら、清光が中身を見る。どうやら本当に空になってしまったらしい。
    「それで? なんて返事したの」
    「もちろん断ったよ」
    「あっさり振ったの? もったいな!」
    「清光?」
    「いやごめん、つい本音が。えっそれで普通に別れてきたの?」
     清光の問いに私は頷いた。元々今日は別に、ゼミの日ではなかった。だがゼミの時間内は基本的に他の学生の発表を聞いて質疑応答をする場であり、研究したりそれを取りまとめたりするのは個々人でなんとかしなくてはならない。だからゼミの日にいつがいいか聞いて、今日は空き時間を使って源君と発表の準備をしていたところだった。
     あれから源君と私は普通に発表の段取りを決め、次にまとめておかねばならない箇所を決め、四日後のゼミで確認しようと言って別れた。「じゃあまたね」と源君は笑っていたし、私もそれに「またね」と返した。ペアを変えるか聞いて平気だと言われた以上、またがあることになる。
    「全然わかんない、普通気まずくなったりするでしょ、普通」
    「私は気まずかったけど、源君はそうじゃなかったんじゃ、ないかなあ……いや、わかんないけど……」
    「まー、源が気を遣ってる可能性はまあ、あるけどね」
     やはりそうなのだろうか。居たたまれない気持ちになって私は肩を竦めた。気にしても仕方ないとわかってはいるのだけれど、源君がこちらを気遣ってそうしてくれた可能性はもちろん考えていた。申し訳ない……。
    「全然そんな感じじゃなかったから、源君。わかんなかったし何より動揺しちゃった、どうしよう」
     本当に、源君は最初から至って普通に私に接してきた。
    「初めまして、籤で一緒になった髭切さ。発表までよろしくね」
     最初に挨拶したとき、にっこり笑ってそう言った顔がとても綺麗だったので、そりゃあ女の子が放っておかないだろうなとは思った。噂を聞いていただけに若干身構えていたのだけれど源君は礼儀正しく、聞いていたほど女たらしには見えないような、そんな気がした。連絡先も交換しなかったくらいだ。研究だって、いつもちゃんと進めてきてくれていたし、今日そんなことを言い出されるまではまるで。
    「どうしようったって、ねえ。断ったんでしょ? それまでじゃん」
     その通りでは、あるのだが……。はあと私が溜息を吐いて鞄を抱え直したのを見て、清光が咥えていたストローを離す。
    「最悪、あんたから気まずいからペア変えてって言ってもいい気がするけどね」
    「わかるんだけど……なんだかそれ、申し訳ない気がして」
    「……なら試しに付き合ってみればよかったのに。あんた彼氏いないでしょ」
     ぎょっとして私は清光の方を見た。なんてことを言うのだ。清光は笑うでもなく、ただ無表情に私の方を見ている。
    「むっ、無理だよ、そんなことできない。源君に悪いし、何より私が嫌だよ」
     そんな、噂がどうであれ源君の気持ちをいいように利用するなんて絶対に嫌だ。勢いよく首を振った私を見て、ふっと清光は瞳を緩めて笑った。
    「そう言うと思った。ならあんたの良心が痛まない程度に源と接するしかないんじゃん? どうせゼミが同じだけなんだし。発表が終わったら話すことだってなくなるでしょ。向こうが普通にしてるんだったら、普通にしてな。源だってそのほうが楽だよ」
     よっと、と軽く言って少し腰を上げた清光が、側のごみ箱にプラスチックカップを投げ入れた。カコンとそれは綺麗に収まる。清光はスマホに目をやった。
    「俺今サボったので今日終わりだったんだけど、あんたどうする? こっからあと」
    「あー、いや、語学だから一応出るよ。……でも一コマで終わりだから、ケーキとか買ってきてくれたら後で家行って、食べるけど、なー?」
     私が言えば、清光はむっと口を尖らせた後にこちらをデコピンした。
    「もー、現金な奴」
    「あはは、だってなんか聞いてほしそうだったし。じゃああとでね」
    「はいはい、終わったら連絡してよね! お茶淹れとくから!」
     じゃあと手を上げて清光は行ってしまった。
     中学のころからの友達である清光は、大学に入ったタイミングで一人暮らしを始めた。それは私も同じで、まあそれなりに清光と面識のある両親が「清光君と一緒なら大丈夫なんじゃない」なんて大雑把すぎる許可をくれたからである。最近、その一人暮らしの家の近くに最近ケーキ屋が出来て、清光はそこでバイトしている女の子がどうにも気になるようなのだ。そういうわけで、清光は何となくケーキ屋さんに足繁く通っている。だから清光の最近のお土産はケーキが多い。
    「またあとでねかあ……」
     清光は所謂、私の初恋の人だ。


     どんなに悩んでいても、一日というのは無情に過ぎる上に止まってくれるわけでもなければ戻ってくれるわけでもない。戻ってくれるなら、四日前のあの日に戻って源君の口を塞いでいる。
     行かなきゃどうにもならないよなあ、と私は教室の前で肩を落とした。ゼミなのだし、落とすわけにはいかない。それに休むと発表のペアである源君に迷惑がかかる。それはちょっと、という気持ちが強いのだ。
    「あんたの良心が痛まない程度に源と接するしかないんじゃない?」
     脳裏で清光が言う。これで既にものすごく両親が痛んでいるのだ。休むわけにはいくまい……。はあと一息ついて、ドアノブに手を掛けたときだった。
    「ありゃ、おはよう。今日ゆっくりだった?」
     ぎくっと肩が跳ね上がって不自然な勢いで振り返ってしまった。源君だ。薄い、中身が入っているのかいないのかわからないトートバッグを肩から提げて、源君は首を傾げる。
    「みっ、なもとくん、おはよう」
    「うん、おはよう。入らないの?」
    「いや、入る……」
     源君に促され、私はドアを開けて教室に入った。私が荷物を置いた机に、ごく自然に源君は一席分空けて座る。今までもそうしていたし、そうしなければゼミの間討論もできなければ発表の段取りを決める打合せもできないのだから、当たり前だ。そうなのだけれど……気まずさに耐えかねて肩身が狭い。
     しかし源君はいたって普通にトートバッグから筆記具を出して机に出した。自分も同じようにしながら、会話がないのも、と思いなんとなしに口を開く。
    「荷物、少ないね」
     源君は私の言葉ににこりとして小首を傾げた。
    「いつも通りだよ」
    「そ、そうなんだ……」
     会話が終わってしまった。だめだ、余計な気を回さない方がいいだろうか。すると源君はくすくすと笑って、ジーッと音を立てながらペンケースのチャックを開く。
    「僕、この講義しかないから、金曜」
    「そうなんだ。じゃあそれだけでもなんとかなるよね」
    「うん。あ、もしよかったら昨日の、えーっと四限目の」
    「四限? えっと、ああ、教養の美術史かな」
    「うん、なにか配られたものがあったら見せてくれない?」
     教養科目で大教室の授業だったから意識していなかったのだが、源君も同じものを取っていたのか。私は鞄を探った。忘れるのが怖くてルーズリーフもファイルも一週間分ひとまとめにしてしまっているから持っているはずだ。
    「いいよ、これでいいかな。一応ノートも」
     バインダーから昨日の授業の分を抜いてルーズリーフも源君に渡した。源君がありがとう、とそれを受け取る。
    「この授業が終わったら写してしまうから、借りてもいい?」
    「うん。コピー機この階にあったよね」
    「ありがとう。三日休んじゃったから、他のも何とかしないといけないんだよね。まあ一時間分くらいならなんとかなるかな」
    「えっ、三日も? 具合悪かった? 大丈夫?」
     源君はパチパチと長い睫毛を瞬いた。またビー玉みたいな瞳がこちらを見る。
    「……うん」
     キンコンとチャイムが鳴って、教授が入ってきた。今の間が気になったけれど、私と源君は話をやめて前を向く。
     今日の発表になっていた学生がレジュメを配り、授業が始まった。カチカチとシャープペンシルの頭を押して、何となくメモを取る姿勢を取った。質疑応答で何も言えないとまずい。
     するとスルッと何かが横から滑ってきた。気づいて見てみれば、一枚のスーズリーフである。横には源君しかいないため、流してきたのは源君だろうなと思ったが、源君は前を向いたままだ。
    「四日前のことだけど」
     整ってはいるのだけれど、端々がちょっと雑な字でそう書いてあった。どきりと胸が跳ねる。当然だが文章には続きがあった。あまり読む勇気が湧かない。
    「自分の良心が痛まない程度に」
     また清光が脳裏で言い始める。無視は、良心が痛む。一度だけ小さく呼吸をしてから、私はルーズリーフに再び視線を落とした。
    「どうして僕じゃだめだったか教えてくれる?」
     持っていたシャープペンシルの頭をカチリと押す。何と書いていいか迷った。
    「源君が悪いとかじゃなくて、今、好きな人がいないってだけだったから」
     机の上でルーズリーフを滑らせる。源君が僅かに首を下に向けたのがわかった。紙が擦れる小さな音が響く。
    「好きな人がいなくて、彼氏もいないなら、僕じゃだめなのかい?」
     意味もないのに、カチリとまたシャープペンシルの頭を押してしまう。あまり使ってもいないのに芯を出したら折れてしまうのに。
    「そういう風に、誰かと付き合おうって思えないから。ごめんね」
     私の返事を見て、源君はカチと私と同じようにシャープペンシルの頭を押したけれど結局何も書かなかった。ぺらりと源君がレジュメを捲る音だけが聞こえる。
     発表のメモなんか取れる心境にはまるでなれず、その日は質疑応答で指名されなかったことを感謝した。九〇分が異様に長かった。
    「じゃあこれ、借りるね」
     チャイムが鳴って源君は講義が終わると立ち上がり、私のプリントを手にそう言った。そうだ、美術史のプリントとノートがあった。まるで授業中のルーズリーフのやり取りなんてなかったみたいだ。切り替えが早いか、気を遣うのがうまいのか、私はやや慌てて頷いた。
    「平気、多分来週の授業まで見ないし」
    「でも僕が持ちっぱなしだとくしゃくしゃにしてしまいそうで怖いし、この後空いてる?」
     源君はにこりとして言った。
     空いては、いるけれど。
    「ありゃ、白黒になっちゃった。これじゃ絵がわからないや、あはは」
    「いや笑い事じゃないよ、ちゃんと設定いじらなきゃ。源君カラーコピーは五〇円だからお金入れて」
    「これでいいのかな」
    「あっ向きが、源君ゆがむから、ちゃんと押えないと」
     結局断り切れずに学内のコピー機まで来てしまった。先ほど次のコマのチャイムが鳴ったので、コピー機が置いてある付近には誰もいない。ウィーンとコピー機の動く音がいやに響く。
     そのまま返すから、と言われたので私は傍のベンチに座った。そういえば発表の段取りを確認するはずだったのに、今日は打合せもできていない。ごそごそと鞄を漁ったときだった。
    「あ、髭切君だ、何してるの? 久しぶりだね」
    「ありゃ」
     顔を上げれば、おそらく同じ学科の女の子が源君に話しかけている。彼女の方はちらりと私に顔を向けたけれど、生憎見知った子ではなかったので会釈した程度だった。
    「ここ何日か見なかったからどうしたのかと思った」
    「ちょっとね」
    「取ってる授業のレジュメあるよ、見る?」
     彼女はそう聞いたのだが、源君は首を振った。三日も休んでいたのだから、必要なのではないだろうか。
    「平気、またね」
     源君はやや一方的に話を切り上げて手を振った。その子がいなくなると、またコピー機のウィーンという読み取り音だけになる。
    「借りなくてよかったの? レジュメ」
     私が聞けば、源君はこちらを見て瞳を細めた。
    「じゃあ、火曜の古典文学基礎と水曜の社会学と心理学、貸してくれる?」
    「え」
     それは私が取っている講義だった。源君は眉を下げて笑う。
    「君、本当に僕のこと眼中になかったんだね。火曜も水曜も木曜も、いくつか同じ授業取ってたんだよ。教室が広いからかなあ」
    「あ……」
     カッと耳が熱くなった。
     恥ずかしい。申し訳ない。いや、人数が多い以上、気づかないのも仕方ないのかもしれないのだけれど。ガコンと源君がコピー機の読み取り口を上げて、ルーズリーフとレジュメを入れ替えた。沈黙に耐え切れなくなって、私のほうが口を開く。
    「……源君、一つ聞いてもいい?」
    「ん? なあに?」
    「源君、どうして私のこと好きなの?」
     パチパチと源君はまた長い睫毛に縁どられた目を瞬いた。音が聞こえるくらいだ。
    「気になる?」
     にこりと表情を緩めて、源君はコピー機が吐き出した紙を見る。今度はうまくコピーが取れていたようだ。
    「わかった、僕の話何か聞いた?」
    「……」
     聞いたというか、知っていたというか……。あまりいい話でないだけに、答えるのに躊躇する。しかし源君はくつくつと笑い、原稿台からルーズリーフを抜き取り薄っぺらいトートバッグにコピーをしまいつつ私の隣に座る。
    「いいよ、殆ど本当のことだから。君がどの話を聞いたのか知らないけどね」
    「えーっと……」
    「ありがとう、これ。返すね」
     源君は私にレジュメとルーズリーフを差し出した。火曜と水曜の授業の分は、いいのだろうか。鞄の中にはもちろんそれらも入っている。貸そうと思えば、すぐに取り出すことができた。
    「休んでる間ね、弟に君のこと話したんだ」
    「弟? 源君、弟がいるの?」
     それは知らなかった。私が聞けば、源君は嬉しそうに頷く。
    「うん、一人。しっかり者で、二つ下でね、今年受験生なんだ。僕は家を出ちゃったんだけど、今でもよく様子を見に来てくれてね。僕が三日も大学に行かなかったものだから、叱りに来たんだよ」
    「叱りに……それは、すごいね……」
     どんな弟なのだろう。源君の様子からだと、しっかり者で、源君を叱ってという人物像が全然繋がらない。
    「弟に怒られちゃった、兄者の日頃の行いだろうって。それでまあ、君も話を聞いてるだろうなあって思って」
    「いや、そんなに悪い話じゃない、と思うけど……」
    「無理しなくていいよ」
     源君は笑いながら言った。我ながら薄っぺらなフォローすぎて、私はやや恥ずかしくなった。
    「でも振られちゃったのは初めてだったから。僕もびっくりして三日も休んじゃった」
    「休んでたのって、それっ? それが理由だったの?」
    「そうだよ、変?」
     源君は笑顔のままで聞く。私は何も言えなくなった。胸の奥が少しだけ痛む。それは自分にも覚えのある傷だった。
    「……ごめんね」
     なんとなく謝ってしまった。すると源君は足を組み直し、不思議そうに首を傾げる。ふわふわの髪が揺れた。
    「どうして謝るの? 僕は君のことが好きだけど、君は僕のことを好きじゃなかったのは仕方のないことだよ」
    「そうかもしれないけど」
     有り体に言えば、そうなのだろうけど。でもそれでも。
    「でも私が逆の立場だったら、落ち込むよ……」
     好きな人の眼中にもなかったと、思ったら。それはあなたを好きじゃないと言われるより、ずっとつらい。忘れていたはずの、忘れようと思ったはずの自分の傷がやはり痛んだ。
    「嫌だった? 僕に彼氏にしてって言われて」
     源君はこちらを覗き込んで言う。それには慌てて首を振る。
    「そんなことないよ、すごく驚いたけど」
    「そっか、ならよかった。じゃあ僕が君のこと遊びに誘っても嫌じゃないよね」
    「え?」
     今急に話が飛躍したような。しかし当の源君はにこにこして私の顔を覗き込んだまま、ポケットからスマホを取り出してポチポチと弄る。初めて源君のスマホを見た。普段それはしまい込まれていることが多い。
    「弟がね、ずっと休むくらいなら納得がいくまでしたほうがいいって。僕のこと知らないならこれから知ってもらえばいいし。ずっと連絡先教えてもらっていなかったから、教えてもらってもいいかな。発表の準備でも使うかもしれないからね」
    「え、あー、あの、いいけど」
    「ありがとう、これだよね」
     よくあるメッセージアプリを見せて源君は言った。ゼミの発表の準備をすると気は、時間と場所を決めてしまえば何とかなっていたのだ。なんだかんだで週に一度必ず顔を合わせていたし、確かに連絡先を交換していなかった。
     源君はあまりそれを使っていないのか、交換方法を知らなかったらしい。結局私が操作して自分で連絡先を入れた。メッセージの履歴には一人、「膝丸」としかなく、やっぱり源君は女たらしでも何でもないんじゃないのかなと少し思った。
    「じゃあ今度からこれで連絡することにするね、ありがとう」
     笑顔で言う源君は、画面に映った私の連絡先を見て嬉しそうにした。やっぱり不思議な人だ。良心が痛まない程度に、また私の脳裏で清光が言う。
    「……教えてって言えなかったんだよね、何となく」
     ぽつりと源君が呟いた。
    「……どうして?」
     そう聞けば、源君は微笑んだままスマホをしまった。
    「どうしてだろう」
     キンコンと遠くでチャイムが聞こえる。腕時計を見てみれば、このコマの授業が終わる時間だった。私は次のコマに授業がある。だからもう、行かなくてはならない。思えばこんな風に長く、ゼミの研究以外のことで源君と話したのは初めてのことだった。
     鞄を探って、私は火曜と水曜のレジュメとノートを取り出した。源君にそれを手渡す。
    「いいの?」
    「うん、返すの、またで構わないし……私はまだ授業があるから。またね、源君」
     ベンチに座ったまま源君は「うん」と頷いた。
    「連絡するね」
     源君はひらりと手を振る。正直なところ、これでよかったのかどうかわからないけれど、でも良心は痛んでいない。だから、と私は自分に言い聞かせる。
     その日の晩、源君からは「おやすみ」とメッセージがあった。脈絡がなくいきなりそれなのかと私は不思議で笑った。おやすみと返せば「月曜日時間ある?」と返ってくる。やっぱり変わった人だと思った。


     月曜、指定された場所はまた食堂だった。ゼミの資料なんかを一応持ってきたのだが、源君は普通に現れて私に何を食べたいのか聞く。
    「僕ここの食堂って食べるのには使ったことなくって。君何食べる?」
    「えーっと……私も使ったことない、コンビニで済ませちゃってるから」
     なんなら食堂のメニューがこれだけ豊富なのも知らなかった。私は学生食堂らしい、簡素なメニュー表と食品サンプルの並ぶ棚を見た。安価だ、五百円玉一つで事足りる。
    「君、一人暮らし?」
    「うん、大学に入ってから」
    「そうなんだ、僕と同じだね」
     いくらか迷ったけれど、私は唐揚げ定食の食券を買い、源君はとんこつラーメンをプラス百円して大盛にした。そんなに食べるのと列に並んでいる間に聞けば、僕結構食べるんだよと源君は笑った。
     唐揚げ定食と大盛のとんこつラーメンを受け取って、私と源君は隣り合わせの窓際の席に座る。昼休みの前のコマ、まだ少し空いている時間帯ではあったけれど、この間の私たちのように何かの授業の話し合いや、そういうときに食事を済ませてしまおうという学生ももちろんいて、完全に空いているというわけではなかった。
    「いただきまーす」
     源君は手を合わせて、大盛のラーメンに箸をつける。それなりの量だったが、本当に全部食べるのだろうか。私も同じように手を合わせた。
    「普段ご飯どうしてるの?」
     ふーっと息を吹きかけてラーメンを冷まし、一息に啜った源君が言う。私は唐揚げを一つ箸でつまんで答えた。
    「土日だったら、ちょっとは作ったりもするけど。平日は簡単に済ませちゃうかな、友達と食べたりとか」
     何せ清光の家が近い。バイトなんかの時間が合えば、一緒に食事を摂ることが多いのだ。
    「そうなんだ、今度僕も誘ってね」
    「え、う、うん」
     ずるるっと勢いよく源君はラーメンを食べる。「結構食べる」という言葉は本当だったらしい。瞬く間に大盛ラーメンは減っていった。私も唐揚げ定食を口にはしたけれど、生憎やや量が多い。学生食堂は基本的によく食べる男子学生向けに量が決められているようだった。
    「唐揚げ、一つもらっていい?」
     源君が食べるのに邪魔なのか、ふわふわの髪を耳に掛けながら言う。
    「あ、うん、いいよ」
    「ありがとう、お肉ちょっと食べたかったんだ」
     ひょいっと源君は一つ唐揚げを箸で取り、そのまま一口で食べてしまった。口が大きい。ぱくぱくとテンポよく源君は大盛とんこつラーメンを平らげる。私も少し遅れながら唐揚げ定食を空にして、ごちそうさまと二人で手を合わせた。
     食器が載ったお盆を少しずらし、源君は水を飲む。美味しそうにたくさん食べたなあと私は思った。
    「あー美味しかった。結構いいねえ、食堂。今度から使おうかな」
    「そうだね、美味しかった。ちょっとだけ多かったけど」
    「ふふ、残ったら僕が食べてあげるよ」
     屈託なく源君は笑う。不思議な人だ。もう何度目かのその感想。一週間前に私は源君の告白を断ったのに、源君はそんなのお構いなしで話しかけてくる。
    「どうして今日、食堂だったの?」
     私が聞けば、源君はパチパチと瞬きをしてにこりと笑った。
    「この間君とお話しするの楽しかったからね。話しながらご飯食べるのもきっと楽しいなって思って」
    「あはは、何それ」
     わかるような、わからないような。私は一緒になって源君と笑う。
    「そういえば研究進んでる?」
    「あ、ごめんね。先週は三日間落ち込んで何もしなかったし、土日は今日君とご飯食べようと思ってたから全然できていないや」
    「えっ、嘘。私進めてたんだけど」
    「あはは、発表まだ先だから何とかなるよ。おおらかにゆったりいこう」
     おおらかって。まあ確かに、まだ余裕はあるけれど。ふふ、とまた笑いが漏れて私は口元を押さえた。キンコンとチャイムが鳴って、昼休みになった。少しだけ食堂には人が増え始める。ちらりと源君は視線だけ後ろに向けてそれを見た。
    「どこか移動する? 僕、次の時間は授業があるんだけど、昼休みは何でもないから。甘いもの食べたいなって」
    「あんなに食べたのに? いいよ、コンビニでも行く?」
    「君のおすすめある? 教えてほしいな」
     ガコとやや丈のある窓際の椅子を下りた。今日の源君のトートバッグにはやや荷物が入っていた。学内にコンビニがあるのだ、私と源君はそちらに移動しようとごった返し始めた食堂の出入り口のほうへ向かった。おすすめのコンビニのお菓子、何だろう。そんなことを考えながら進んだとき、ひらっと振られた手が目に入る。
    「あれ、あんた食堂? 珍しいね」
    「あっ」
     口を開けて、足を止める。トンと軽く私の後を歩いていた源君がぶつかった。
    「なんだ、食堂使うなら声かけてくれた、って」
    「清光……」
    「ありゃ」
     清光は私の後ろに目をやって、私と同じように口をあんぐり開ける。清光が前に、後ろに何度も視線を移動させて私と源君を見比べたのがわかった。
    「あ、あー、そういう、あー!」
    「ち、ちが、清光、これは違って」
    「ごめんごめん、じゃあ俺行くね、また!」
     元気よく、それも笑顔で清光は行ってしまった。私は鞄の肩ひもを握り締めて動けなくなる。一歩進んだ源君がこちらを覗き込んで、それから肩を押した。
    「つかえちゃうから、行こうね」
     穏やかにそう言って、源君は私の手首を掴む。それに頷くこともできず、引っ張られるままに足を前に動かした。がくんと一度だけ前につんのめる。
     コンビニではなく、源君はずんずん進んで校舎の上の階のほうに向かった。上の方は研究室のほうが多く、昼休みのこの時間帯は学生も教員も少ない。とても静かで、源君のスニーカーが絨毯を擦る足音だけがよく響いた。
    「源君、源君ごめん、もう、もう大丈夫だから! 源君!」
     そう声を掛ければ、源君はぴたりと足を止めて振り返る。じっとビー玉のような瞳が観察するように上から下まで私を見た。
    「ごめんね、ちょっと、友達に会ったから吃驚しちゃって」
     鞄を持ち直しながら視線を下げて言う。それでも源君はこちらを見ているのだろうなと思った。クリーム色の源君のスニーカーは汚れておらず、最近買ったのだろうなとそんなことを考える。
    「次、源君授業なんでしょう? また連絡するから、ゼミの準備もしなきゃいけないし」
    「君」
     言葉を遮り、源君が口を開く。
    「あの子のことが好きだったんだね」
     端的に、しかし正確に真っ直ぐと源君は私の心に切り込んだ。
    「違う、そうじゃなくって、私は別に、清光のことは」
    「本当に?」
     穏やかな源君の声はしずかな校舎によく響く。源君は傍にあった学生が自由に使えるミーティングスペースのドアを開いた。私を引っ張ってそこに入れると、ぱたんと閉める。
    「僕に嘘つくのは、無しにしてね」
     ドアの前に立ち、源君は微笑む。適当に誤魔化すことも考えた。しかし、また脳裏で清光が言うのだ。
    「良心が痛まないように」
     わかっている。そんなのわかっている。
     だってそれは、きっと清光が私にしてくれたことなのだ。
    「……振られたとかじゃ、ないの。振られたほうがよかったのかもしれないけど」
     私の通う中学は学区の関係で二つの小学校が同じ中学にまとめられた。つまり単純に考えてクラスの半分は知らない子で、私はそれが少しだけ憂鬱だった。新しい友達を作るのはそこまで得意ではないし、新しい環境に馴染むのもそうだ。だから入学式の日は俯きがちだった。
     式を終えて、教室に戻って。簡単なホームルームが始まる前のざわめいた空気。同じ小学校だった友達に声を掛けようかと思ったが、不運なことに席が離れていた。どうしようと中途半端に腰を上げ、結局座る。普通に話すくらいはできるはず、友達になるのも時間をかければ。そんな風に思いながら机の天板を見ていたとき、声をかけてくれたのが前の席に座っていた清光だった。
    「可愛いペンケースじゃん、どこで買ったの?」
     明るくて、愛想もいい清光はきっと俯いていた私を気にしてくれただけだ。けれど明るい春の日の教室で、笑ってこちらを見た清光の顔が忘れられなかった。それだけだ。それだけだと、思おうとした。
     高校生になって、清光に初めて彼女ができたときに。
    「清光、勘がいいから。私の気持ち、きっとあのときに気づいちゃったと思う」
     馬鹿だった、もうちょっと、隠す努力をすればよかったと思った。すぐにおめでとうと言えなかったのだ。凍り付いてしまった。ほんの一瞬だったけれど、清光が目を見開いたときに「しまった」と、心の底から後悔した。
    「でも、私がそれでもおめでとうって言ったから……彼女ができても、たまには私と遊んでねなんて言ったから。たぶん、清光ずっとそれ、気にして。だから私のせいなの、ちゃんと、言えばよかったのに。傷つくのが怖くて、言えなかった」
     はっきり言うのなら、私なんて、眼中になかったのだ。清光にとって私はそういう対象じゃなかった。それがとても悲しかった。そんなの仕方のないことだと、それに何もしなかった自分が悪いことも、全部わかっている。それで結局、清光の隣にいる居心地の良さに甘えてしまったことも。
    「……そっか、だから君、僕が誘ったのにも来てくれたんだね」
     静かな声で源君が言う。私は頷くことも首を振ることもできずにただ肩を竦める。
     どうしてうまくいかなかったんだろうと、あれからずっと思う。けれどその答えは簡単なのだ。何もしなかった後悔。忘れられないのも、ずっとこうして、胸の奥が痛むことも。
    「でも本当なの、清光とずっと、こういう友達でいられたらって思うのも。それも本当なんだ。たくさん友達はいるけど、それでも、清光は最初からずっと仲のいい友達だったから。大事な友達なのも、本当なの」
     今の清光の恋だって、応援している気持ちは確かにある。それは恋をしていたのと同じくらい、清光と「友達」の時間があるからだ。ケーキを食べながら清光の話を聞いて売るのは楽しい。一人暮らしだって、不安は多くても清光が傍にいると思えば気楽だった。それだけ信頼できる友達だった。
     だからまだ、清光の優しさに甘え続けている。きっと時間が経てばと、いつまでもそう思って。いつか心からただ友達として笑えると、そうしようとして。
     本当は、それがどれほど清光に対して勝手なことか理解しているのに。
     絨毯の上を源君のスニーカーが擦る音が聞こえた。上背のある源君は、ミーティングスペースの机に入れられた椅子の背に寄りかかって私の視線に合わせた。
    「ね、君さ」
    「……っ何、源君、手離して」
     みっともない顔をしている自覚はあった。もう洗いざらい話したので、終わりにしてほしい。そんな投げやりな気持ちでいると、源君は私の顔を覗き込む。
    「せふれでいいから、僕と付き合ってくれない?」
    「……は?」
     一瞬で頭が冷えた。
     何を言っているのだ、この人。
    「ありゃ、もしかして間違った? 僕よくこう言われるんだけど」
     にっこりして源君が言う。さっと血の気が引いたのがわかった。よく言われる? 今そんな冗談今だけは勘弁してほしい。
    「なっ、何言って、いやもう、離して」
    「だって、都合がいいじゃない。僕は君のことが好きなんだし、君もそろそろ疲れたんじゃない? そういうの」
     ぱちぱちと、瞬きをする蜂蜜色のビー玉の瞳。
    「ね、物は試しでやってみようよ、僕とせふれ。君の嫌がることはするつもりはないから。そういうの、好みじゃないし」
    「い、言ってることめちゃくちゃだよ、源君」
     破綻している、色んなものが。これは不思議な人だなで済まない。倫理観だとか常識だとかそういうものが抜け落ちている。
     けれど逃げることも手を振り払うこともできたはずなのに、私はそれができなかった。
     事実だったのだ。私が疲れていることも、都合がいいということも。
    「いいんだよ、僕も君の気持ちに付け込んでるんだから。おあいこさ、それでいいだろう?」
     ね、と源君は可愛らしく小首を傾げた。キンコンとチャイムが鳴る。もう講義が始まるのに、源君はそんなの全然気にしていないようだった。
    「そんなの、めちゃくちゃだよ……」
     やっとこさ私は、それだけ振り絞った。源君は瞳を細めて微笑む。結局、手を払うことはできなかった。
    「じゃあ、今度から源君じゃなくて名前にしてね」
     何も変わらない穏やかな笑みを浮かべた源君は、するりと手首から指を滑らせ私の手を握る。
    「……もう授業始まってるよ、髭切君」
    「ありゃ、じゃあ急いで行ってこっそり入ろうかな、授業」
     にんまりと髭切君は唇を緩めた。それからああとトートバッグを探り、クリアファイルを私に差し出した。この間貸した、火曜と水曜のレジュメとルーズリーフだ。
    「明日は一緒に受けようね、講義。じゃあ行ってきます」
     バタンとミーティングルームのドアが閉まる。
     とんでもない、ことになった。そう思って私はへたり込んだけれど、心のどこかがふっと楽になったのも、確かだった。
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    2024/08/13 20:10:10

    きみはすきなこ

    人気作品アーカイブ入り (2024/08/14)

    #髭さに #現代パロディ #刀剣乱夢
    振られた髭切とセフレ(セックスはなし)になった女子大生の話。

    お盆なので既刊の再録をします。
    2020年10月に発行した髭さに本です。全5編です。
    素敵な表紙を書いてくださったこずし様、お手に取ってくださった皆様、ありがとうございました。

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