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    【刀剣】『鬼丸さんがバグった話』『ロリ丸国綱リターンズ』『鬼丸さんがバグった話』『ロリ丸国綱リターンズ』『鬼丸さんがバグった話』「落ち着いて聞いてほしい。鬼丸がバグった」
     大真面目な顔で審神者から告げられた内容に、大典太は「……大丈夫か? あんたの方がバグってないか?」と返してしまったのだが、実際に鬼丸を前にして、その言葉は正しかった、と内心で審神者に詫びた。
     あの鬼丸が、満面の笑みを浮かべて大典太を出迎えるなど、天地がひっくり返ろうとも太陽が西から昇ろうとも、起こりうるわけがないのだから。
     それどころか、そっ、と手を伸ばしてきたかと思えば、大典太の内番着の裾を指先で、きゅっ、と掴んで後ろをついてきたり、振り返って声を掛けようとすれば、期待に満ちたキラキラとした眼差しで見つめてきたりと、とてもではないが大典太の脳が処理しきれない行動に出られ、隙を見てダッシュで逃げ出したのが十分前だ。
     蔵に飛び込んで荷物の隙間に大きな身体を無理矢理にねじ込み膝を抱えた状態で、これは夢だ、と呪文のように繰り返す。いや、仮にこれが夢だとしても、それはそれでダメージを受けるな、と冷静になってしまう辺り、やはりこれは夢ではないのだろう。
     なにがどうなっているんだ、と頭を抱えれば、微かにだが己の名を呼んでいる声が聞こえた気がして、重い鎧戸をほんの少し押し開いて外を窺った。
    「大典太さーん」
     こちらへ近づいてきているのか今度はハッキリと声が聞こえ、息を殺して見える範囲に眼を走らせれば、乱藤四郎が「おーでんたさーん、どこー?」と声を上げながら歩いている。乱だけならば所在を知らせてもよかったのだが、彼の半歩後ろに鬼丸の姿を認め、大典太は思わず息を止めてしまった。
     乱に手を引かれ俯いている鬼丸の表情は眼帯のせいで掴めないが、右手で目元を擦る仕草や、時々振り返っては「すぐ見つかるからね」と慰めている乱の様子から察するに……
    「……泣いてるのか……?」
     いやまさかそんなばかな、と目の前の状況に大典太の方がバグりそうだ。
     ふたりの背が遠ざかっていくのを確認し、大典太は素早く蔵から飛び出すと一目散に審神者の元へと向かった。余りの事に動揺しこうなった原因を聞いていなかったと、今更ながらに気づいたからだ。
     部屋へと飛び込んできた大典太の剣幕に審神者は何事かと慌てるも、険しい顔で「鬼丸の事だ……」と言われ、あぁはいはい、とどこか拍子抜けした声を上げる。まったく深刻さを感じない審神者に、大典太は隠す事なく眉間に深いしわを刻む。
    「どうしてあぁなった」
    「いやぁ、鬼丸がもうちょっとみんなとうまくおしゃべり出来るようになればいいなぁー、なんて思いながら手入れしてたら、なんか影響しちゃったみたいで」
     ごっめーん☆とまったく悪びれた様子のない審神者に、びきり、と大典太のこめかみに青筋が立つ。
    「……他には?」
    「その時に思い描いていたのが幼女でした!」
     大典太の様子から、あっこれガチでお怒りだ、とようやく気づいた審神者は、間髪入れず叫ぶや躊躇なく完璧なまでの土下座を披露した。
     見た目はあのままで言動がロリ丸国綱ときた。
     大典太が遠征から戻る何時間も前にこの事件は起こっていたので、ロリ丸は当然のことながらなにかしらやらかしていると容易に想像がついた。

    【太刀と打刀の証言】
    「うん、手入れ後に厨に来たから珍しいなって思って。どうしたのかと思ったら『おなかすいた』って。ちょっと恥ずかしそうにはにかみながら言われたら、我慢してって突っぱねるのはちょっとかわいそうになるよね」
    「まぁちゃんと『おねがいします』と『ありがとう』が言えたから今回は大目に見たけど、次はないからね」

     これだけでもうお腹いっぱいだと、大典太は審神者の話を遮った。
    「……ちゃんと元に戻るんだろうな」
    「自慢じゃないけど俺の力はそこまで強くないんで、寝て起きたら元通りかな? もっと早いかな?」
     情けない事を言いながら胸を張る審神者を疑わしい目で見るも今はそれを信じるしかなく、大典太は嘆息一つでこの話を終わらせたのだった。
     そのまま審神者の部屋を辞し自室へ戻ろうとした大典太だが、背後から大きく踏み込む音がしたと思った時には既に、ずどん、と背中に衝撃が走っていた。
     おふっ!? と珍妙な声が出た事など今は些細な出来事だ。胴体に絡みつき腹の前で組まれた腕は、どう見ても太刀のそれだ。
    「おおでんた……」
     髪を鼻先で掻き分けるようにして顔を寄せ耳元で名を呼んできたのは、やはりとしかいいようのない鬼丸その人であった。
     ぎゅう、と懸命にしがみつき、おおでんた、と掠れた声で名前を呼ぶ。その声音は力なく悲しげで、満面の笑みで大典太を迎えた男とは思えないほどに儚げだ。
    「おおでんたは、おれのこと、きらい?」
     微かに震える声は泣くのをこらえているように思えた。背に押しつけられた鬼丸の胸は早鐘のように鳴っており、これが意を決しての問いであると全身で伝えてくる。
    「そんなことは、ない……」
     相手が好きか嫌いかの二択を投げかけている事を承知で、大典太は敢えてどちらでもない答えを返した。
    「ほんと?」
    「あぁ」
     ロリ丸的には「自分の事が嫌いだから大典太は一緒に居たくないのだ」と思ったのだろう。
    「おれは、おおでんた好き。大好き」
     組まれていた腕が大典太を抱きしめる形に変わり、耳の裏に鬼丸の鼻先が擦り寄せられた。必死に気持ちを伝えてくる鬼丸にどう返したものかと、大典太は身動ぎひとつ出来ずに、うんうん、と懸命に脳みそをフル回転させる。
     ここは直球で「好きだ」と言えば丸く収まるのであろうが、はたして鬼丸の言う「好き」と大典太の「好き」は同じ物であるのか? と言った疑問が浮かび、おいそれと口に出来ないのだった。
     だが、いつまでもこうしているわけにはいかず、背に腹は代えられぬと、大典太が覚悟を決めたその時。
     一瞬ではあったが、鬼丸の腕が、ひくり、と不自然な動きを見せた。
    「……鬼丸?」
     大典太の問うような声に再度鬼丸の腕が微かに震え、心なしか身体が熱くなってきた気がする。背中を叩く心の臓も先ほどとは比べものにならないくらい、大きく派手に暴れている。
    「あんた、もしかして……」
     核心を突こうとした大典太が全てを言い切る前に鬼丸は、くるり、と踵を返すや脱兎の如く駆け出し、あっという間に大典太の視界から消え失せたのだった。


     夕餉の席に姿を現した鬼丸は平素となにひとつ変わった様子はなく、ロリ丸に遭遇した者たちは「なんだ覚えていないのか」と少々残念そうではあったが、何事もなくバグが解消されたことに安堵した。
     だが、大典太だけは知っている。彼は全て覚えているのだと。
     今晩、酒を持って鬼丸の元を訪ね、あの言葉はどういった類いの物であったのかを聞いたらどのような顔をするだろう? と少々、意地の悪い事を考え、くつり、と喉を鳴らしたのだった。

    2021.05.12
    『ロリ丸国綱リターンズ』 畳に額を擦り付けている審神者と、その隣で神妙な面持ちで正座をしている兄弟刀を前に、大典太は漏れ出そうになった陰鬱な溜息を無理矢理に飲み込んだ。
     畑当番を終えひとっ風呂浴びてさっぱりした後、さぁ自室へ戻るか、とややご陽気に脱衣所から一歩踏み出した大典太であったが、通りすがりの男士から審神者がお呼びだと告げられたのだった。
     一瞬にして萎んでしまった気持ちを胸に審神者の元を訪れれば、大典太を待っていたのは三人──ひとりと二振りだった。そのメンツを見た瞬間に駆け抜けたものは決して良いモノではなく、明らかに厄介事を孕んでいると直感した。
     その証拠に大典太が審神者の前へと腰を下ろせば、待ってましたとばかりに、いそいそ、と隣へ腰を下ろした一振りは「明日には顔の筋肉が筋肉痛を起こすぞ」と言ってやりたくなるほどに笑み綻んでいたのだった。
    「……手短に説明を頼む」
     一向に口を開かぬ相手を大典太が促せば、部屋に入った時から変わらぬ姿勢のまま審神者は口を開いた。
    「ロリ丸国綱リターンズです」
     促しておいてなんだが聞きたくなかった、と顔にありありと書かれている大典太が見えていない審神者はそのまま説明を続ける。
    「おねショタたまらんな俺もおぎゃりたいだがおにショタもあり寄りのありなんだかおにショタって鬼丸がショタみたいだなとか思ってたらこうなりましたごめんなさい!」
     息継ぎなしで一気に捲し立て、FA●ZAERな審神者でごめんねごめんね! とよくわからない詫びの言葉を連ねる審神者を前に戸惑う大典太を見やり、ソハヤが申し訳なさそうに眉尻を下げる。
    「ふぁん●ーってのは俺もよくわからないが、要は手入れの直前まで見てたモノに影響されたって事だ」
    「原因は理解した。だがそれなら以前のように、放っておいてもすぐ戻るんじゃないのか?」
    『自慢じゃないけど俺の力はそこまで強くない』との審神者の言葉通り、前回のロリ丸国綱騒動の時は半日と経たずに終息したのだ。それでもわざわざ呼ばれたと言う事は、厄介事の真髄はこれからだとの予感に、大典太は隠す事無く眉根を寄せる。
    「あー……それなんだがな兄弟」
     もご、と言いにくそうに口ごもったのは、審神者ではなく意外にもソハヤの方であった。
    「俺が近侍だったせいか霊力が増幅されたらしくて……」
    「実は丸一日ロリ丸のままですぅ……」
    「………………は?」
     ふたりの告白に絶句した後、大典太は思わず間の抜けた声を上げてしまった。
    「皆を混乱させても良くないと、昨日一日は主の部屋で過ごして貰ったけど、さすがにずっと閉じこもったままって訳にもいかないし」
     なるほどそれで昨日は姿が見えなかったわけだ、とソハヤの説明に大典太は内心で納得する。
    「時間稼ぎと一日おとなしくしててくれたご褒美を兼ねて、鬼丸は大典太と一緒にお出掛けしてもらおうかなーって」
     続いた審神者の言葉に大典太の表情が凍り付いた。
    「あっ、ちゃんとした現代遠征だから安心して欲しい」
     身を起こしたかと思えば、キリッ、と無駄に苛つく決め顔の審神者に、拳を叩き込まなかった自分を褒めて欲しいと、大典太は膝上で固めた拳を小刻みに震わせる。
     しかも原因の一端を担っているソハヤではなくなんで俺が、と言いかけた大典太だが、これまで一言も発していない鬼丸に気づき、そろり、と隣の様子を窺った。
     てっきり、キラキラ、と期待に満ち溢れた目で見ているかと思いきや、常ならばキリリと凜々しく上がった眉は力なく垂れ、純粋なその瞳は真っ直ぐに向けられてはいるが、不安の色を滲ませゆらゆらと揺れている。
    「おおでんたがいやなら、いい……」
     前回の言動から察するに、我が儘を言って嫌われたくないと思っているのが手に取るようにわかってしまい、大典太は、ぐぅ、と喉奥で低く呻いた。普段は表情も声音も最小限の変化しか見せない男に、こうも素直な感情をぶつけられては正直反応に困るのだ。
    「……嫌、では……ない」
     僅かに前屈みになりながら絞り出すように大典太が口にすれば、ぱぁっ、と瞬時に鬼丸の表情が明るくなる。こうもコロコロと表情が変わるのはやはり慣れない、と大典太が内心で漏らしているなど知るよしもない鬼丸は、途端にそわそわと落ち着きがなくなった。
    「行き先は二〇一〇年代の、三日月達が居るところな。まぁ、要は持ち回りでやってる定期巡回だな。なにかしら仕込まれたりしてないかの確認。それが済めばあとは自由にしていいから」
     審神者の説明をきちんと理解しているのか疑わしいが、うんうん、と僅かに上下する角を横目に、大典太は漏れ出そうになった溜息を無理矢理に押し留めたのだった。


     プリンターから次々と吐き出される写真を、大典太は無表情で見つめている。
    「せっかくおすすめのお店教えてあげたのに、大典太さんスルーしちゃうんだもん」
     ぷんぷん、と不満を露わにする乱の手によって卓上に並べられた写真はあきらかに隠し撮りであるが、悪びれた様子もなく「これ可愛くないー?」などと大はしゃぎだ。
     噴水の縁に腰掛けてソフトクリームを舐めている姿や、スワンボートにふたり並んでぎゅうぎゅうになっている様など、大典太からすれば客観視したくない己の姿に穴があったら入りたい……いや、蔵に籠もりたい心境だ。
    「こうして改めて見るとふたり共ほんと格好いいよね」
     言葉では褒めていながらもなにか思い出したか、あきらかに声音の変わった乱に大典太は首を傾げる。
    「黙って写真撮ろうとする人とか、結構いたんだよ。あと、大典太さんがソフトクリーム買いに行ってる間に、鬼丸さん何回声掛けられたと思う?」
     いつもの彼らならば醸し出す空気が近寄りがたく、どちらかと言えば遠巻きにされる事の方が多い。だが、今回に限って言えば鬼丸は見た目は顔とガタイの良い成人男性、中身はほわほわ幼女であったわけで。
    「終始にこにこしてる鬼丸さんなんて、周りが放っておく訳ないと思わない!?」
     ボクたち大変だったんだからね! とどうやら大典太の知らぬ所で短刀たちが虫除けに奔走していたらしい。
    「……ちょっと待て。鬼丸はお前達が一緒に来てる事を知っていたのか?」
    「うん。だって写真撮ってほしいって言ってきたの鬼丸さんだもん」
     寝耳に水。まさかの事実に大典太は言葉が出ない。
    「デートだって嬉しそうにしててね~。そんなの断れるわけないじゃん」
     可愛いよね~、と写真の中で笑う鬼丸に負けない笑顔で、うふふ、と笑う乱を前に、大典太は同意も否定も出来ず、ただただ、がっくり、と肩を落とすしかなかった。


     後日、元に戻った鬼丸は前回同様全てを覚えているにも関わらず、知らぬ存ぜぬで押し通し乱を大層がっかりさせたのだが、渡された写真は大事にしまい込んであり、時たまそれを引っ張り出して眺めている事を大典太だけは知っているのであった。


    2022.01.17
    茶田智吉 Link Message Mute
    2022/11/26 21:45:49

    【刀剣】『鬼丸さんがバグった話』『ロリ丸国綱リターンズ』

    #刀剣乱舞 #腐向け #典鬼 #大典太光世 #鬼丸国綱 ##刀剣
    ツイッターのハッシュタグ『 #いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く』で書いた阿呆ネタ『典鬼?』に続きを付け足したロリ丸国綱供養と『現代遠征+お子様ランチの話』のつもりで途中まで打ったはいいがリクエスト物で色物ネタはどうなんだ?と冷静になってお蔵入りした物にオチを付け足して持ってきた。

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