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    いお響小ネタログ1■140字


    そこにいるだけで華がある。世の中には確かに「そういう人間」が存在する。それは自身の父であり、現在の同僚たちであり、今、向かい合って舞台に立つ男のことだ。榛色の瞳と視線がぶつかる。その存在感に食われず、そしてまたその輝きを食い潰すことがないように、伊織は今日も役者の本能に従う。
    ふたりへのお題ったー/『本能に従え』)

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    「このプリン美味しいんだよなぁ。明日のぶんも買おう」「……お前、確かさっき年上らしいことをしたいとか言っていなかったか」「なんだよ、味覚に年齢なんて関係ないだろ?」「そうか……?」「そう!それで、伊織の羊羹とまんじゅうは俺の奢り。これだよ」「……まあ、お前がそれでいいなら構わないが」「でも、帰ったら伊織に紅茶を淹れてほしいな」「……なら代わりに、お前が俺の緑茶を用意しろ」

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    「ゴールなんて見えなくていいんだ」組み上がったセットを客席側で眺めながら、男は歌うように言った。熱に浮かされた、あるいは気に入りの絵本に夢中になる子どものような瞳。「みんながいて、彼女のホンがあって――お前がいて。終わりなんて、見えないよ」ただ前を見るその姿が、ひどくまぶしい。
    ふたりへのお題ったー/『終わりなんて見えなくていい』)

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    寝室の薄明かりを汲んで、男の金糸が淡く透ける。ゆるくかぶりを振った拍子に揺れた前髪からはしばみ色の眸が覗き、伊織は数時間前に見上げた月を思い出した。月のひかりを集めたような髪と目だ。美しいと当たり前に思わされているのが悔しくて少し強く耳朶を噛むと、ささやかな不服の声が上がった。

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    今日こそお前を大人にしてやる。そんな宣言とともに彼が整えた食卓には、秋刀魚の塩焼きが上っていた。醤油で染まった大根おろしと、ひとくちぶん取り崩された身が、箸に載せられて口元に迫る。「……本当にひと口だけでいいんだな?」「そうだ」コバルトブルーの瞳に見据えられれば、逃げられない。
    創作お題/「お前を、大人にしてやろうか…?」)

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    吐き出した熱の余韻に身を震わせて、深い息をひとつ吐く。素肌をつたって落ちる幾筋かの汗の感触が生々しい。強く跳ねる心臓を宥めつけながら、相手の体内へうずめていた自身を引こうとすると、かたちの良い脚が離れることを阻むように腰に絡んだ。なんだ、と問う代わりに視線を向ければ、濡れたはしばみが緩慢に瞬いて伊織を射る。「もう一回、って言ったらどうする?」男の金糸がシーツと擦れるちいさな音が、いやに大きく頭に響いた。

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    自分のそれよりも少しだけ細く感じる、あたたかな肩に額を預け、響也はゆるりと目を閉じる。まったく、お前はもう少し年上らしくできないのか。呆れ声で呟く伊織の肩は、言葉とは裏腹に離れていく気配がない。喉を鳴らして応えともつかない音を返すと、まったく、と繰り返す彼の声がかすかに聞こえた。
    腐女子のパーフェクトBL作文教室/『伊織、響也』『繰り返す』『肩』『裏腹に』)

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    背中の下で寝台が小さく軋む。腹を跨いだきり黙り込んだ男を見上げ視線で問えば、はしばみ色の瞳が苦笑のかたちに細まった。「……困ったな」男の手のひらがするり、首筋を撫でる。あつい。「好きにされたい気分なんだけど」乗り気じゃないなら、と珍しく下手な言い訳で逃げかけた手を、掴み取った。


     朝日奈響也というのは存外不器用な男だ。
     たとえば、伊織が男の自宅をあとにするとき。たとえば、ふたりぶんの温度でぬくもった布団からひとりさきに抜け出すとき。はしばみ色の双眸に薄雲の翳りのように掠めた寂寞へ手を伸ばそうとすると、きまって男は見栄を張ってか気丈に振る舞ってみせる。
     少なからず負けず嫌いなところのある男のことだから、それは相手が己れだからこそなのかもしれないと、思わなくもない。
     ただ、負けず嫌いなところのあるのは己れもまた同じことで――斯様な生半な演技で誤魔化されてやるのは御免だった。
     男が隠し果せようとした寂寞の裾を、どうにか掴んで引き寄せる。
     掴みほどかれ、落葉のように足元へとすべり落ちたその翳りの下にあった痛みにそっとふれれば男のひとみが柔くほころぶことを、伊織はすでに知っていた。



    ***
    20180206Tue.

    ■海について


     藤村伊織という役者は海に似ている。
     寡黙に日々の研鑽を積み、自らの役を真摯に練って落とし込む。読み合わせ、稽古、本番と、数を重ねるにつれて深みを増していく演技を肌で感じるたび、響也は海の浅瀬から深く深くへと徐々に潜っていくような感覚を覚えた。蒼星の、がらりと世界を塗り替えるようなそれとはまた異なる演技のありようが、藤村伊織には息づいている。そんなふうに日頃から捉えているからだろうか、――こんなときにまで、海のようだと思うのは。
     暗順応を起こした視界に、カーテンの裾から漏れた月明かりがぼんやりと彼の輪郭を写し取る。響也よりもいくらか華奢な体躯が、敷布団の上で響也の腹を跨いでいた。
     軽く身じろぐと布団の下にある畳がかすかに軋む。自宅では嗅ぎ慣れない藺草の青い匂いがほんのりと鼻先を掠めることにも、いまではすっかり慣れてしまった。ゆるく息を吐いて、なめらかな頬とつややかな黒髪に指先を伸ばせば、薄い唇がもの言いたげにへの字に曲がる。
     普段は彼が自分からふれてくることなどほとんどないというのに、こうして体を重ねるときだけは意地になってリードを取ろうとしてくる。もの言いたげにしながら口を閉じてみせるちぐはぐなしぐさが拗ねた子どものようで、どうにもかわいい。思わず肩を揺らして笑うと、彼の青の双眸が怪訝そうにわずかに眇まる。
    「伊織」
     コバルトブルーは暗い部屋に満ちた夜を吸って、深い海の色に変わっていた。小さな夜の箱のなかで、彼の感情に潜っていく。多くは語らず、けれどもたしかな熱が流れる彼の海を泳ぐのは心地好い。わけもなく名前を呼ぶと、応えの代わりに、乾いたシーツの衣擦れの音が返ってくる。スプリングが撓むベッドとは違ったひそやかなそれは、打ち寄せる波の音に似ていた。
    「……いい加減、目を瞑れ」
     ああ、なるほど、さきほどからそれを言いたかったのか。潮騒に紛れて届いた呆れ声に、響也はちいさく笑いながらそっと目を閉じた。


    ***
    20170515Mon.
    なっぱ(ふたば)▪️通販BOOTH Link Message Mute
    2018/07/08 16:25:58

    いお響小ネタログ1

    #BLキャスト #いお響

    140字・きれはしログと、2017年のいお誕に書いた小ネタ。いお響のアツさについて考えるといつもくらくらします。

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    ##腐向け ##二次創作  ##Iori*Kyoya

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