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    【緑高】お布団 大学に進学してからこっち、緑間とは高校の時ほどでは無いにしろそれなりに親友ポジションでつかず離れずの関係でやってきたと思う。
     大学進学を機に一人暮らしを始めた緑間の様子をちょくちょく見に行って二人で四苦八苦しながら家事をした春、先輩達やキセキの奴らとバスケしまくった夏、大学生生活にも慣れてきて人生で初めてのバイトを始めた秋、少しずつ直接会う時間は減っていたけれどラインやメールで連絡はほぼ毎日のように取り合っていたし、特にその内容におかしなところも無かった。
     だと言うのに正月も終わって約一月、久し振りに皆でバスケしようぜと集まった土曜日の帰りしな、緑間がおかしな事を言い出した。
    「布団が冷たいのだよ」
    「は?」
     今現在俺達がいるところは乗降者数でギネス世界記録認定なんてされちゃってるような駅の側で、一応ストバスコートでお開きにはなったけどある程度の人数が駅に向かって歩いてきてたから『皆で飯に行くか』なんて話が出始めたところである。
     特に食いたい物も無かったので話が決まってから乗るなり帰るなり選べば良いやと傍観を決め込んだ俺の隣に立っていた緑間が、おもむろに口を開いたと思ったらコレである。
     俺がろくな返事も返せなかったとしても仕方ないだろう。けれど緑間は俺の返事がお気に召さなかったようで「だから、布団が冷たいのだよ!」と同じ言葉を噛んで含めるように言い直した。
     だから何だとしか感想は無いんだけど、多分そう返したら緑間は余計不機嫌になるに違いない。理由も意味も分からないけど長い付き合いだからその辺はさすがに空気で分かる。
    「あー……っと、真ちゃんの布団、確か羽毛布団だった筈だけどやっぱ冬は寒いんだ?今年は特に寒波すっごいもんな」
     なので取り敢えず時事ネタを入れつつ無難な路線で返事をしてみると、微かに機嫌が上向いたのが分かった。ほんのちょっとだけだけど、口の端が上がって目尻の険が緩んだからだ。他人ならまず気づかない程度の変化だけれど、緑間の相棒を始めてそろそろ四年が経つ俺にとっては実に分かりやすいサインである。
    「そうなのだよ、寒くてよく眠れなくて困っている」
     俺の答えに気を良くした緑間は言葉を継いだが、結局のところ言ってる内容は寝る時寒いで変わらない。解決方法が欲しいのかとも思うが、何事にも人事を尽くす緑間が自らで何の手立ても打たずに他人に相談するとも思えない。
    「電気毛布とか湯たんぽとか使っても駄目だった?」
     緑間ならば少なくともこの辺りは試してるだろうと思い聞いてみると、ぶっきらぼうに「どちらも持ってないのだよ」と返事が返って来た。
    「あ、そーなんだ?んじゃこの後秋葉原でも寄って見てくる?他にも何かしら対策グッズとか取り扱って……」
    「そう言う事ではないのだよ!!」
     時間が無くて見繕いに行けなかったのかもと対案を出すが、緑間は声を荒げて拒否してきた。余りの声のデカさに飯の場所を話し合っていた黄瀬や裕也さん、黒子達と言ったストバス参加の面々が不思議そうな顔をしてこっちを見ている。
    「どうしたんっスか?緑間っち。ファミレスより別の店の方が良いとか?」
    「こんな街中でデケェ声出してんじゃねえ!!○◆×△するぞこの野郎!!」
    「緑間君の為を思ってデザートもあるお店をチョイスしたのにまったく……」
     皆それぞれに緑間に向かって声をかけてくるけれど、当の緑間は不貞腐れた顔でぷいとそっぽを向いてしまった。これはこのまま放置しておくと裕也さんの怒りがマッハで空気を悪くしてしまう。
    「あ~、すんません。俺がちょっと真ちゃん怒らせちゃって!ほら、真ちゃん!この間おしるこの美味い店見つけたから、そこで奢ってやるから機嫌直して!って訳で俺達お先に失礼しま~す!」
     緑間が口を開いたら更に揉め事が拡大するので有無を言わせぬ早口で一気にまくし立て、緑間の腕を引っ掴んで駅へと小走りに駆け出した。
     抵抗もあるかもと思ったけれど思いの他素直に緑間がついてきたので、そのまま改札口を通り抜ける。ちらりと振り返った時に裕也さんが何やら文句を言っているっぽかったけれど、今吉さんと伊月さんもいたから多分上手い事宥めてくれるだろう。
     さてこれからどうしたものかと壁際に寄って立ち止まると、大人しく後をついてきた緑間がやたらそわそわしている。
    「どした真ちゃん?トイレ?」
    「そんな訳が無いだろう!その……この後どうする気なのだよ」
     そう問われて、ああさっきのおしるこの美味い店の話かと合点がいった。
    「あー、あれ浅草の店なんだよな。今からだと多分閉まっちゃってるから又今度な」
     ゼミで女子から仕入れた話によると美味いけど閉まるのが早い隠れ家的な甘味処と言う話だったから、すっかり暗くなったこの時間では無理だろう。けれど俺の返答に緑間は不審そうな顔をした。
    「……何の話なのだよ」
    「え……おしるこ食べに行く話じゃねぇの?」
    「おしるこの話など俺はしてないのだよ!」
     じゃあ何なんだとさっきまでのやりとりを頭の中で反芻する。
    「……アキバに電気毛布買いに行くかって事?」
    「そんな話でもない」
     緑間の眉間の皺はますます深くなり、声は地を這うように低い。どう見ても不機嫌である。けれどこれ以上はどうして良いやら皆目見当がつかない。あれもこれも違うと言う事はどうやら緑間はそもそもの『布団が寒い』と言う話に拘っているらしい。何故その話に拘るのかはさっぱり分からないけれどそう言う事なんだろう。
    「あーもう、わっかんねぇよ!!真ちゃんの布団がどの位寒いのかも知らねぇし!こうなったら今日真ちゃんち泊まって確かめてやっから、そっから対策立てようぜ!明日日曜だし、何か必要なら買い物も行けるだろ」
    「む、それならば良い。泊めてやるからこの間の卵チャーハンを又作るのだよ」
    「えー、今から飯作んのかったりぃし!どっかで食べてこうぜー」
    「卵チャーハンじゃないと嫌なのだよ」
     布団を確認して貰えると話が纏まった途端に緑間は上機嫌だ。一体どれほど寒い布団で寝ているんだか。
    「真ちゃんちご飯炊くとこからじゃん。そんなの待ってたら腹減って死ぬって」
    「ご飯ならあるのだよ」
    「レンジでチンするイトーのご飯だろ!?あれ真ちゃんの非常食なんだからほいほい消費すんなよな」
    「無くなったら買えば良いのだよ」
    「そもそも炊けよ!!」
     緑間の機嫌が一気に上向いたお陰で軽口を叩きながらホームへと向かう。何だかんだ言いながら結局卵チャーハン作っちゃうんだろうなあと思いながら。



     確認した緑間の布団はすこぶる暖かく心地よい眠りに俺達を誘ってくれた。
     と言うかそもそも今緑間の住んでいるマンションには布団は緑間の物しかなく、泊めてもらう時は一緒に寝るかソファで寝るかが常だった。この真冬の最中にソファでなんか寝られる訳も無く、当たり前のように二人同じ布団に潜り込んだけれど、相変わらず高級羽毛布団は柔らかくふんわりと俺と緑間を包み込んでくれたし、緑間が抱き枕宜しく俺の身体をぎゅうぎゅうと抱き込んで寝ていたのでいっそ暑い位だった。
    「すんげーあったかかったんだけど、布団」
    「暖かくて良く眠れたのだよ」
     寝起きすぐの俺の言葉に、緑間も満足げに頷いている。
    「どうしても寒いようなら薄手の毛布とか足したら解決じゃね?」
    「……そんな物買う気は無いのだよ」
     嬉しそうだった緑間の眉間に即座に皺が寄る。どうにもこの問題、最適解が分からない。何も買い足す事無く暖かく過ごしたいと言う事なんだろうかとも思うけど、体調から何から取り敢えず人事を尽くしてから始める緑間の行動としてはどうにも腑に落ちない。
     緑間の部屋にある手持ちの物で代案を立ててもお気に召さないらしく、結局日曜日は浅草までおしるこを飲みに行ってぶらぶらと観光まがいの散策をして終わってしまった。
     解決しなかった布団問題のお陰で、その冬の間中、緑間からはしょっちゅう『布団が寒い』と連絡が来て、その都度都合をつけては泊まりに行った。

     その原因が「気になる相手がいるが、その相手が最近そっけない」などと緑間から相談を持ちかけられた黄瀬が「部屋に遊びに来たり一緒に寝る位の仲なんだったら、寒いからあっためて、とか、一人で寝るのが寂しいとか言えば大丈夫っすよ!」などとアドバイスした事だった、と言うのを俺が知るのは、春になって、高校時代から秘め続けていた恋心が実って暫くした頃だった。
    みたき Link Message Mute
    2018/09/22 2:58:51

    【緑高】お布団

    20180131
    大学1年、つきあってません。
    ちょこちょこ皆既月食見に行きながら打ってたので繋がりがおかしいかも。
    気づいたらこっそり直していきます。

    ※ぷらいべったーに掲載しているものの転載になります。キャプションも当時のものです。

    #二次創作 #小説 #緑高 #腐向け #黒バス

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