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    【緑高】とっておき 高尾から連絡が来たのは、数日前の事だった。
     『もしもし真ちゃ~ん?俺おれ』から始まったその電話は、高尾からではなかったら詐欺電話として切ってしまいたくなるものだった。
    「何だ」
    『あのさ、明後日って真ちゃん暇?』
     軽い調子でそう問われて壁のカレンダーに目を向ける。高尾が問うてきた日は十四日の水曜日だった。既に進学先の大学にも合格が決まり、高尾と計画している卒業旅行は月末で取り立てて急ぐ用事もない。
    「特に予定は無いが……どうした」
     どうせ又ストバスの誘いか何かだろうと当たりをつけて問い返す。
    「うんとさ~、真ちゃんその日付見て何か心当たりとかねぇの~?」
     いつもは何でもズバズバと切り出してくる高尾が、妙に歯切れの悪い言葉を投げかけてくる。
    「心当たり?」
     何なのだよと思いながらもう一度カレンダーを見るが、特に何の予定も書かれていない。何か高尾と約束していただろうかと首を捻りつつ考え込んでいると、電話の向こうから大きな溜息が聞こえてきた。
    「は~!!まったく真ちゃんはもー。三月十四日って言ったらホワイトデーだろ、ホワイトデー!!」
    「ああ」
     そう言えばそんな日もあったな、と思う。先月の俺ならば気になって仕方なかっただろうが、今ではただの平日でしかない。
     と言うのも、俺は先月のバレンタインデーに乗じて以前から憎からず想っていた高尾に告白をした。バレンタインだから、と言うよりは卒業までの良き日に告白しようと前々から決めていたところに、おは朝でかに座の順位が一位でラッキーアイテムはチョコレート、「人生で重要な選択をすると未来が開ける日。勇気を持って行動してみて!」と言うアドバイスのあった大安で登校日と言う、ここ以外のどこで告白をするというのかと言う日がたまたまバレンタインだったに過ぎない。
     その時にチョコと共に高尾に告白しホワイトデーまでに返事をくれと言おうとしたら、その場で箱入りのチロルチョコレートをバラバラと豆まきの豆のように投げつけられて「俺が言おうと思ってたんだよ!!ばーか!!」と怒鳴られた。
     余りの事に一瞬間髪入れずに振られたのかと勘違いしそうになったが、真っ赤になってわなわなと震えている高尾を見、言われた言葉を反芻して振られたのではなく承諾されたのだと気がついた。
     その日から俺達は晴れて恋人同士となった訳だが、だからと言って取り立てて何か変わった訳でもない。今までと同じに予定を合わせて1on1をしたり、ラッキーアイテム探しをしたり。高尾から日々何があったこれをしたとラインが入るのもいつもの事だし、蠍座の運勢が悪い日に俺がその日のラッキーアイテムを高尾にメールで教えるのもいつもの事だ。ただそこに、高尾にとって俺は特別の存在で、俺にとっても高尾は特別なのだと言う少しばかりの安心感と、居るかどうかすら定かではないライバルに対して優越感を抱く事が出来る。ただそれだけだった。
     邪な感情も抱かないではなかったが、まだ正式に付き合い始めて一ヶ月。以前黄瀬から自分のピンナップが載っているからと押し付けられた女性向け雑誌には性行為をガッツク男は嫌われると書いてあった。高尾もそう言った様子を見せない事だしここは慎重に行くべきだろう。そう思っていたと言うのに。
    「だからさ、空いてたら真ちゃんうちに泊まりに来ねぇ?」
    「!」
    「その日うちの家族皆泊まりで出かけててさ~俺一人なんだわ。それでさ、丁度良いから真ちゃんにバレンタインのお返しに高尾ちゃんの『とっておき』あげちゃおっかな~なんて」
    「な……何と言う事を言うのだよお前は!!」
     一人の家に、恋人を、泊まりで呼ぶ。しかも『とっておき』をくれるなどと……そんな物たった一つしかないではないか。
    「何と言うって……ごめん、都合悪かった?だったら別に……」
    「悪い訳がないだろう!!都合など何かあったとしてもつけてみせるのだよ!!」
     動揺した俺の返答にあっさり引こうとする高尾に慌てて食い下がる。別に俺は、高尾とそう言った行為がしたいから付き合っている訳ではない。だがしかし、高尾の方とて軽い調子を装ってはいるがきっと勇気を振り絞って俺に誘いをかけて来た事だろう。そんな健気な高尾の気持ちを無碍にするなど恋人としてあるまじき行為なのだよ。
    「え、あ、そ……そう?じゃあ色々準備があるから、夕方来てもらっても良いかな」
     俺の返答を聞いて高尾の声がややトーンダウンする。いざ予定が決まってしまったら尻込みする気持ちが出てきたのかもしれない。それは仕方の無い事だろう、高尾にとっても未経験の行為だ。自ら言い出した事とは言え勇気もいるに違いない。
    「了解したのだよ。……高尾、俺は決してお前に無体な真似を強いる気はない。お前も無理はしなくて良いのだよ」
    「ん、わかった。あんがとな真ちゃん。じゃあ十四日、家で待ってるから!」
     無体な真似はしないと言っても俺とて男。恋しい相手を目の前にどこまで据え膳を我慢出来るか想像もつかないが、高尾が怖気づいたりしたら出来る限りの善処はしよう。
     そんな思いを心に誓い、切れた電話を机の上に置くと急いでパソコンを立ち上げる。まだ先の事だと軽く調べる程度で居たが、十四日までに正しい手順や出来る限り相手に負担のかからない体位などを調べてイメージトレーニングを万全にしておかなければ。

     そうして準備万端で迎えた本日、今現在俺は高尾の部屋で一人座っている。
     高尾の母が準備してくれた夕食を二人で済ませ、リビングでNBAのビデオを鑑賞して盛り上がり、順番に風呂に入った。そうして高尾の部屋に移動した後「じゃあ準備してくるから、真ちゃんはここで本でも読んで待ってて」と月バスを数冊手渡して高尾は部屋を出ていった。
    「……準備」
     確かに調べた限りでは、行為の前に洗浄などを行っておく事が推奨されていた。つまり高尾は今……と思わず想像してしまい下半身に熱が集まっていくのが分かる。落ち着くのだよ俺。自分ばかり先に劣情を催していてどうする。こんな姿を高尾に見られたらあの女性雑誌のインタビューにあったようにガッツク下半身直結男などと呆れられてしまうかもしれない。
     静まれ、静まるのだよ。確かこう言う時は素数か経文を唱えれば落ち着くのだと以前誰かが言っていた。2、3、5、7、11、13、17、19、23……必死になって素数を数えていると自己主張の激しかった下半身も落ち着いてきた。ちょうどそこにパタパタと階段を上ってくる軽い足音が聞こえてくる。
     いよいよ準備も整えた高尾が……っ!!
     一旦収まった物が又勢いを取り戻しそうで慌てて下を向いて落ち着け落ち着けと言い聞かせる。
    「お待たせ~真ちゃん!」
     明るい高尾の声と共にふわりと甘い堪らなく美味そうな匂いが部屋に立ち込める。まさかこれがフェロモンと言うものか!!
     そう思っている俺の目の前に「はいどーぞ!!」と言う声と共にずいっと椀の載った盆が差し出された。
    「む!?」
    「じゃじゃーん!!高尾ちゃんおとっときのおしるこ~!!」
     そんな言葉と共に高尾が椀の蓋を開けると甘やかで芳醇な匂いが更に強くなり、こんがりと焼き目のついた餅が入った汁粉が姿を現した。
    「これは……」
    「へへー、小豆から全部俺が煮て作ったんだぜ~。結構自信作だからあったかいうちに食べてみてよ!」
    「あ、ああ……」
     予想外の展開に心も身体も落ち着いてしまったので、言われるままに箸を手に取る。ひとくち口をつければ上品な甘さとふっくら煮られた小豆が絶妙な按配で口の中に広がる。
    「……美味い」
     ぽろりと無意識に口から出た感想に、緊張した面持ちで固唾を呑んで見守っていた高尾は「良かったぁ~」と息を吐いて笑顔を見せた。
     その無邪気な笑顔に、高尾が電話で言っていた『とっておき』と言うのはこれの事かと合点がいくと共に、邪な妄想を膨らませていた自分を恥じた。
    「とても美味しいのだよ」
     改めて感想を述べると照れくさそうに高尾が笑う。愚かな俺に高尾が頑張って作ってくれた心尽くしなのだからしっかりと味わって食べなくてはと気を取り直し、三杯も頂いてしまった。
    「はー、真ちゃんすげー食ったなぁ」
    「それだけ美味しかったのだよ」
     感心の溜息を漏らす高尾に、お世辞でも何でもなく素直な気持ちを述べる。実際これだけ美味ければ毎日だって食べたい位だ。……これをこのまま言ってしまったら、まるでプロポーズのようではないか。
     そんな自らの思考に内心で照れていると、高尾がズイッと身体ごと近づいてきた。
    「どうし……た!?」
     声をかける前に両肩をドンと押されて後ろに倒れこむ。体勢を崩して肘で身体を支えている俺の膝に乗りあがり、高尾がにやりと微笑んだ。
    「俺もさぁ……真ちゃんからホワイトデーのお返し、欲しいんだよねぇ」
    「な……」
     つつっと高尾の指が服の上から俺の腹から胸元までを撫で上げる。
    「たか……っ!!」
     何事が起こっているのかと慌てる俺を見下ろして着ていたパーカーを脱ぎ捨てながら高尾が言った。
    「真ちゃんの『とっておき』俺にちょーだい?代わりに俺のハジメテあげるから」
     今まで見た事もない妖艶な笑みを浮かべながら俺の下肢に手を這わせる高尾を目の前に、おしるこでもう腹いっぱいだと言うのに俺の喉がゴクリと鳴った。
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    2018/10/10 0:41:29

    【緑高】とっておき

    20180314。高校三年。付き合っています。割とポンコツな真ちゃんがいるので苦手な方はご注意を。

    ※ぷらいべったーに掲載しているものの転載になります。キャプションも当時のものです。

    #二次創作 #小説 #緑高 #腐向け #黒バス

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