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    【緑高】おもちゃ 母さんが毎朝準備してくれている、弁当と洗いたてのタオルやら練習着やらをカバンにせっせと詰め込みながら、おは朝占いを流し聞く。すっかりこれが日課になってしまってもうすぐ一年。
    「~位はさそり座のあなた!今日は何気ない行動で隠していた事がバレてしまいそう!ラッキーアイテムは……」
     まだ占いの発表が始まって半分の辺りでそんな声が聞こえてきて内心で「ふーん」と思う。さそり座は俺の星座だが順位も運勢もラッキーアイテムも興味は無い。……いや、順位に関して言えば余り低い日が続くと緑間がとんでもなく高価なラッキーアイテムを準備してくる場合があるので注意が必要だけど、確か昨日は一位だったらしいからまだ大丈夫だろう。
     制服の上にコートを着込み、マフラーを首に引っ掛けて学生カバンと部活用のエナメルバッグを持つ。
     その頃には占い結果は三位の発表になっている。ここまで来てもお目当ての星座は呼ばれないから今日の緑間はよほど運勢が良いか悪いかのどちらかだ。そんな事を思っている間にも、占いコーナーのお姉さんのはつらつとした声が順位発表を進めていく。
    「第二位はかに座のあなた!ひょんな事から嬉しい知らせが聞けるかも!まずは自分から素直になって。ラッキーアイテムはおもちゃです!ではいよいよ一位と最下位の発表~……」
     二位か~。ラッキーアイテムも準備簡単そうだし今日は安泰かな。そんな事を思いつつ首に引っ掛けたままだったマフラーを軽く首に巻き、エナメルバッグを肩から提げる。
    「いってきま~す!」
     玄関に小走りで向かいつつ台所のかあさんに声をかけると「いってらっしゃい!気をつけてね」といつもの明るい声が返って来た。
     靴を履き玄関を開ければビュウと冷たい風が吹いて思わず身をすくめる。あと少しすれば日が昇るからそうすれば暖かくなってくる、はず!自分にそんな風に言い聞かせて軽く屈伸をしてから駆け出した。緑間の家までは軽いランニングペースで15分位。部活の朝練前には丁度良い体慣らしだ。
     それにしてもおもちゃとか、緑間はどんな物持って来るんだろうな~。俺だったらガキの頃に遊んだライダーベルトとか今でも遊んでるDS……はゲームになるかな、ゲームもおもちゃか?
     おもちゃの定義について考えてる間に目的の場所が見えてきた。今日はラッキーアイテムの準備にさほど時間がかからなかったからか、玄関の門の前に既に緑頭の大男が立っている。
    「おっはよー、真ちゃん!」
    「おはよう、高尾」
     普段通りの挨拶を交わして駆け寄って、手元を見れば緑間は30cm四方位の平べったい木箱を持っている。おもちゃと言うには微妙なような。
    「今日のラッキーアイテム、これ?」
     木箱の中を覗くと5cmあるかないか位のサイズの四角い積み木のような物が整然と並んでいて、それぞれにアルファベットが書いてある。
    「……積み木?」
    「分類としてはパズルだ。知育玩具の一種だな」
    「ちーくがんぐ」
     聞いても漢字がぱっと頭の中に思い描けず、どうにも頭の悪い発音をしてしまった。「くっ」と緑間が笑いを噛み殺す声が聞こえて思わず睨んでしまったが、恥ずかしさで顔が赤くなっているだろうから何の効き目も無いだろう。
    「知識の知に、教育の育、で知育、だ」
    「あー、なるほどね」
     説明されればそりゃそうだとすんなり頭に入ってきて、だからパズルか、と納得がいった。
     アルファベットを組み合わせて単語や文字を作ったりしながら楽しく英語を覚えましょう!みたいな事なんだろう。良く見ればアルファベットの他にも数字が0~9までと、+-×÷の所謂加減乗除も入っていて、英語だけじゃなく算数もカバーするらしい。
     ふんふんと納得しながらパズルを眺めている俺に、緑間は「行くぞ」と声をかけて歩き出す。
    「あ、待ってよ真ちゃ~ん」
     急いで隣に並んで歩き出すと、ほんのちょっとだけ緑間が歩く速度を緩めた事に気づいてちょっとだけこそばゆい気持ちになる。身長差の所為でそもそもの歩幅が違う事が原因だけど、緑間が俺と一緒に歩こうと気を使ってくれているのだと思うと、最初の頃に比べて随分変わったなあと嬉しくなるのだ。

     昼休み、弁当を食い終わると緑間は大抵読書を始める。今も何やら難しげな本を読み始めたので手持ち無沙汰な俺は机の上に置いてある知育玩具とやらで知識を育てる事にした……訳なんだけど。
    「真ちゃん、これ、意外とムズいな」
    「……何なのだよ」
     カチャカチャと木造りのパズルを並べ替えている俺に意識が引かれていたようで、期待していなかった緑間からの返事は比較的早くに返って来た。
    「いや、適当な文章作ろうと思ったんだけどさ、それぞれ一文字ずつしかないから意外と上手い事できねーんだわ」
    「ふむ」
     作ろうとしていた文章は『I LIKE BASKETBALL』つまりバスケが好きって言う単純な一文だけど、三文字目で既にIが足りない。無理やり-(マイナス)を縦にして代用して進めてみたけど、結局KもEもその他諸々後になればなるほど足りなくて断念してしまった。
    「別の文章にしてみたらどうだ」
    「別のって……あ、これならどーよ」
     アイが足りないって何だ、恋愛漫画かなんて下らないツッコミを脳内で入れているところに緑間から提案されて、時節柄最近良く目にする英文に置き換えてみる。
    「I LOVE ゆ……あー、駄目だわ真ちゃん、今度はオーが足りねぇわ」
    「……何故その文章なのだよ」
     ゼロで代用すれば行けるか?と手に取った俺に、やたらと眼鏡をカチャカチャ言わせながら緑間が聞いてくる。
    「え、何となく?」
     俺が答えるのと五限目開始のチャイムが鳴って中谷監督が入ってくるのがほぼ同時だった。
    「うお、早っ!」
     慌てて前を向いて机から教科書とノートを取り出す。既に机の端に準備済みの緑間は開くだけで良かったようでパタパタと軽い音が後ろから聞こえてくる。その少し後に木と木の当たるカチャリと言う小さな音が数回鳴って、何だか満足げな「ふん」と言う緑間の声が聞こえた。
     何をしたのか気になってしょうがなかったけれど、午後の中谷監督の授業で目をつけられると宿題だけでなく部活でも外周が足されたりするので振り向く訳にも行かない。
     多分さっきのパズルに何かしたんだろうと思いつつ、俺だったらどうやって足りない文字を補いつつ無理やり感無い文章を作るかを考えていたら、あっという間に授業が終わっていた。
    「真ちゃん、何やってたの?」
     授業が終わると同時に身体ごと後ろを向くと、緑間がパズルをとんとんと指で弾いた。目をやると『M LOVE T』と並べられている。
    「何これ」
    「あなた、私、と代名詞にせずとも、それぞれのイニシャルを用いれば問題は解決するのだよ」
    「あ、なるほどね。イニシャルМさんはイニシャルTさんが好き、と。俺もさー、さっきの授業中に考えてたんだけどさ」
     ドヤ顔の緑間に頷きつつ、МとTのパズルを手に取って除ける。その代わりに数字のパズルを空いた場所に並べなおした。
    「10 LOVE 6……?」
     首を傾げる緑間に、さっき緑間がしたのと同じようにパズルをとんとんと指で弾きながら説明する。
    「俺らとかバレー部とかサッカー部とか限定になっちゃうけどさあ、背番号あんじゃん?それで代用出来るかなーって」
    「ほう……」
     馬鹿にされるかとも思ったけれど、緑間は感心したような声を上げたので俺の発想も中々良い所を行っているらしい。よっしゃと心の中で小さくガッツポーズをする俺に、カチャリと眼鏡を上げなおした緑間が声をかけてくる。
    「つまり、先ほどの俺の文章への答えがこれだと思って良いのだな?」
    「へ……?」
     さっきの真ちゃんのって……イニシャルМさんはイニシャルTさんが好……き……で、俺のは背番号10さんが背番号6さんを好き……って待て、俺はこの両方に当てはまる奴らに心当たりがある。て言うか物凄く良く知ってる。
    「なっ……なし!!これ無し!!」
     真っ赤な顔で慌ててパズルをガシャガシャと手でかき混ぜて崩す俺に「知った事ではないのだよ」と呟く緑間の頬もほんのり赤かった。
    みたき Link Message Mute
    2018/09/24 22:47:13

    【緑高】おもちゃ

    20180210
    お題がおもちゃだからエッチだと思った? 残念付き合ってませんでしたー!!
    ああいつも通り付き合ってないさ……。

    ※ぷらいべったーに掲載しているものの転載になります。キャプションも当時のものです。

    #二次創作 #小説 #緑高 #腐向け #黒バス

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