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    【緑高】くすぐる 薄いカーテンから零れる日差しに鳥の鳴き声。とても懐かしいふんわりと暖かい匂い。普段通りのようでいてまるでいつもと違う状況にうっすらと浮上した意識でシーツを弄る。そこにあるのは少し荒れてはいるけれどさらりとしたシーツの手触りのみで、昨夜の事は夢だったのかと思うと同時にもう一度ぎゅっと目を閉じた。夢だったならもう一度寝直せば続きが見られるのではないだろうか。プレイオフも終わり昨日からオフシーズンに入ったのだから、多少の寝坊は許される筈だ。
     常には無い欺瞞を自らに言い聞かせうつらうつらとしかけたところに、耳をくすぐる柔らかい声が降ってきた。
    「―――んちゃん?しんちゃーん?飯出来たけど……まだ寝てる?」
     声と共に子猫でも撫で回すかのようにふんわりと髪を撫でる感触がする。初めて出会った頃は、よく喋りよく通るこの声を煩いと思っていた。何度「煩い」「黙れ」と言ったか知れない。それで黙るような奴ではなかったけれど。
     少し手持ち無沙汰になったのか頭を撫でていた手がさらりと髪を持ち上げてくるくると回して弄び始める。つん、と引っ張られる感触にもぞもぞと上掛けに潜り込もうとすると密やかな笑い声が耳をくすぐる。
    「真太郎クンはまだおねむかなぁ?」
     きしりとベッドが沈む感触がして、上掛けをそろりと引き降ろされる。それでも目を開けずにじっとしていると「まだ眠い?」と静かな声で問いかけられた。
     眠い。と言うか俺はさっき寝たのではなかっただろうか。それではこれは夢の続きか。そもそもあの喧しい男がこんなに静かな訳が無いのだ。そうか夢か。そう思うと途端に体が布団に沈みこむように重くなった気がする。せっかく夢の続きならそんな離れた場所にいずに俺の腕の中に居れば良いものを。揺らぐ意識の中そんな事を思っていると引き降ろされた上掛けが戻されてぽんぽんと撫でるように優しく頭を叩かれた。
    「ま、寝かせときますか」
     小さな呟きが聞こえて、頭から手が離れていく。せっかく会えたと言うのに、何故。そう思ったら瞬間的にその手をがしりと掴んで引っ張っていた。
    「うお!?」
     加減を考えないその行動に、バランスを崩した身体が俺の上に倒れ込んでくる。
    「って!真ちゃん起きて……」
     とっさに身体を離そうとするその様子が苛立ちを誘って、もう片方の手で腰を抱きこみ力ずくで布団の中に引きずり込んだ。「うわ」だか「ほわ」だかよく分からない情けない悲鳴を上げて俺の腕の中に納まったそれは少しの間もぞもぞと動いていたけれど、収まりの良い姿勢に落ち着いたのか抵抗を止めて大人しくなった。
    「……狸寝入りめ」
     背中から抱き込んだので腹にがっちりと回した腕をぺちぺちと叩きながら笑っている。笑っている振動が腕から伝わってくるけれど、身体に纏ったシャツ一枚すら邪魔に感じる。裾から手を潜り込ませて素肌を弄ると「あ、こら」と窘められた。
     背後から肩に顎を乗せるとこちらを振り返った橙色の瞳と目が合う。叱られるかと思ったけれど、その瞳は柔らかく細められていた。その視線に誘われるように肩口に顔を埋めてぐりぐりと頭を擦り付けるとくすくすと笑い声が聞こえる。
    「まだ眠い?」
     少し前にかけられたのと同じ言葉を繰り返される。眠いか眠くないかで言えば眠い。けれどこの腕に感じる鼓動も、身体全体に伝わる温もりも、優しく耳をくすぐる声も、甘やかな匂いも、感じる全てがこれは夢ではないと訴えているのに勿体無くて眠れるはずが無い。
    「……眠くない」
     言いながら確かめるように首筋に噛み付いてみる。一瞬びくりと震えて、すぐに自分から差し出すように力を抜くその身体が、腹に回した腕に絡めるようにそっと添えてくる手が、愛おしくて堪らなくなる。
     ほぼ一年振りに昨日再会して、逢えなかった時間を埋めるように身体を重ねた。その時に散々愛おしさを曝け出し尽くしたと思っていたのに、今尚心の奥底から溢れ出して来て尽きる気がしない。
    「今回は十日も休み取ったから、寝てもいーよ。ホワイト企業万歳ってな」
     すりすりと頭を擦り付けてくるけれど、そんな誘惑に流される訳には行かない。
    「……たった十日しかないのだよ」
     眠さも相まってついうっかり拗ねたような口調になってしまった俺に「ぶはっ」とムードの欠片も無い笑い声が返って来る。
    「その分たぁっぷり満足させてやっから。ほら、一緒に寝よ」
     大人しく腕の中に納まっていた身体がもぞもぞと動いて反転する。悪戯っぽい笑顔と目が合って『ああ、本当に高尾だ』と今更ながらに思った。軽い口付けの後にぎゅっと抱きつかれて、改めてその身体を抱き締めなおす。
    「寝たくないのだよ……お前の声が、聞いていたい……」
     出会った頃は煩いとばかり思っていた、優しくて愛おしいその声を。
    「んじゃ子守唄でも歌ってやろっか?」
     そう言って小さな声で歌い始めたそれは、耳と心をくすぐる懐かしい三年間を思い出させる歌だった。
    みたき Link Message Mute
    2018/12/16 1:11:32

    【緑高】くすぐる

    20180404。NBAに行った真ちゃんと会社員高尾のつもり。雰囲気エロ。くすぐるという単語は入ってるので私は無罪です。

    ※ぷらいべったーに掲載しているものの転載になります。キャプションも当時のものです。

    #二次創作 #緑高 #腐向け #黒バス #小説

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