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    かわいいひと。「そうね……、麻布温泉とか都内なら」

     夏の嵐のあと、朝日が燦燦と照る関越道で、日帰り温泉への誘いに対してそんな風に返答したときの後藤の、あからさまにがっかりした顔を思い出すたび、しのぶは何とも言えないむずがゆさと、同時にちょっとした優越感を覚える。
     全く眠れなかったのだと素直に告白してきたことと言い、普段の人を食った言動や、避難という名目で入ったラブホテルで時折見せた、あのいかがわしい雑誌を毎週愛読しているに相応しいオヤジそのものの態度とは裏腹に、中身は臆病で、遠慮がちで、ナイーブで、驚くことになによりも愛すべき紳士なのだ、後藤という男は。
     もしあの夜、電気を消してベッドとソファでそれぞれが身体を横たえた後。相手が寝ていないと悟っていながら、互いが様子を伺いに行ったとき、どちらかが思い切って振り返ったら、そして相手の身体に手を伸ばしていたら。恐らくは一夜の情熱は手に入ったであろう。ただし、それは本当に一夜だけのもので、その後二人はそれぞれに相手の熱を振り返ったとしても、二度となにも口に出さなかったはずだ。それこそ自覚した思いでさえも。
    「なに思い出し笑いしてるの」
     そう声を掛けられてほっぺに缶が当てられる。ヒャっと小さく悲鳴を上げると、後藤は小さく喉で笑いながら、自分もしのぶの横に胡坐をかいた。
     夜の熱海は沖を行く船の灯りがはっきりと見えるほどに暗く、たまに走る車のエンジン音が響くほどには静かで、そしてこの宿が位置する山の中腹では、残念ながら不定期に揺れているはずの波の音は聞こえない。
     また熱海に来ることがあるなら、次はもう少し海沿いの宿にしよう。しのぶは内心そう決めた。
     温泉に入る前、月明りの下、整えられた浜辺を二人で散歩して、足に付く砂の感触に眉をしかめてから、互いに笑って腕を組み合うような浮かれ方を、バカが付くほど真面目だと言われている自分だって時にはしてみたい。
     後藤はしのぶに軽くもたれかかりながら、ビールのプルタブを開ける前に携帯を開き素早くメールをチェックする。先ほどしのぶも確認したように、隊長職代理からの、二十時の定時連絡をチェックしているのだろう。
     ネットワーク網の急速な発達と携帯電話の普及と、そして待ち望んだ末にようやく実現した第三小隊の発足は、激務に追われていた両隊の隊員たちとともに、同じく多忙な日々をこなしていた隊長職の二人にもちょっとした革命をもたらした。例えば次期小隊長を狙ってると公言する五味丘か熊耳のどちらかが準待機に入れば、丸一日二日ぐらいなら、後藤もしのぶも東京にいなくてもまったく問題ないぐらいには。
     後藤はざっとメールに目を通すと、満足気に携帯を閉じた。それも先ほどの自分と同じだ。五味丘も熊耳も、上司が期待する以上に日々成長をしている。この分だと、自分達のいずれかが異動することになったとき、安心して次の小隊長職に推挙できることだろう。そしてその瞬間は決して遠くではないはずだ。
     正確には遠くはないはずだった、通例に従えば。
     四月の一日にそれぞれが自分の隊に大きな決断を伝えてから三か月。いま警視庁人事部が抱えている問題は、後藤あるいはしのぶを引き受けようという豪放な部署がここにきても見つからず、さらにいうならこれからも出てこなさそうな雲行きであることで、後藤としのぶの心配事は、本庁からお目付け役として第三小隊長が落下傘よろしく異動してきたことにより、五味丘と熊耳両名の出世がやや難しくなり、かつ、――ある意味では誇らしいことに――、いつか小隊長に就くことが出来るなら、出来ればこの特車二課がいいと、二人とも強く希望していることだった。
     まず互いの部下に話を通し、ざわつく二課全体に気恥ずかしさを感じながら二人揃って課長室で今後のことを報告した後、想像以上の時間を置いてから、福島が苦虫を頬張るだけ頬張ってから噛み潰したような顔と声で、警視庁における女性のキャリアや、婚姻後の家庭の在り方についてのモデルケースとしての役割を振られることになるかもしれない、と言ってきたのはひと月ほど前のことだったか。
     つまり、通例や慣例でしか動かないお役所の一つである警視庁において、それをあえて破ってでも、これからも出来るだけ長く、どちらといわず二人とも埋立地に閉じこめておきたいという、ありがたい内示というやつだ。
     だが、いまはまだそのことに頭を悩ませる必要はない。それこそ、身内だけのささやかな式を挙げて、そして婚姻届けを提出する予定であるこの冬が近づいてからでいいだろう。
    「終わった?」
    「うん、同じくすべて順調だって。では」
    「改めて、お疲れ様」
     後藤と二人でビールを煽ると、梅雨明け直後のまとわりつくような暑さが払えた心地になり、二人で同時に満足したようなため息が出た。
     今週は強盗や立てこもりといった凶悪犯罪はなかったものの、残り梅雨によってもたらされたぬかるみがレイバーをつぎつぎとこけさせて、週半ばまで三小隊フル回転の忙しさだった。しかし、それも梅雨前線の北上と共におしまいとなり、二課はまた忙しいのか忙しくないのかが曖昧な通常運転に戻るはずだ、希望的観測では。
     期待が裏切られ、東京中を走り回る夏が来るその前に一泊二日、心行くまで自分を甘やかす時間があってもいいはずだ。そしてこんな風に肩の力を抜く方法を覚えたのもこの男と出会ってからだと、しのぶはしみじみと感じ入る。
    「で、さっき、なに思い出してたの」
     しのぶよりも早いペースでビールを煽りながら、後藤は改めて問うてきた。スーツにネクタイがよほど窮屈だったのか、宿についたらまずネクタイを取り、食事が済んだら風呂に入る前にさっさと浴衣に着替えてしまい、今はだらしなく胸をはだけさせている。疲れた身体にアルコールが入り始めた肌はほのかに赤く、さりげなく鍛えられ、きれいについた筋肉の形を一層映えさせて、まったくもっていかがわしい限りだ。
    「そんなに気になるの?」
    「だってさ、得意げというか、嬉しそうだったから。なにかいいことがあったんなら、よかったなって思って」
     後藤は彼なりに爽やかに笑いかけてきた。
     彼が異動してきてからしばらくの間、特に第二小隊にようやく人員が揃った頃こそ、後藤はその鳴らした剛腕とそれにより高まった悪評に相応しく、散々人を利用したり裏を描いたりしていたものだ。やがて後藤も後藤なりに肩の力を抜くようになったのか、天上天下唯我独尊としか形容できなかった仮面の下を、しのぶも稀に覗き込めるようになり、実は人の幸せについて素直に喜ぶような優しさを持ち合わせた男なのだと気が付いたのはいつのころだったか。そして人の憤りを理解し、落ち着かせようとはしても嗜めようとはしない。必要な限り放っておいてくれても、決して一人にすることはない人間だと理解したときには、自覚することなく恋に落ちていたのかもしれない。
     もっともそのことを伝えたことはないし、そしてこれからも伝えることはないだろうが。
    「そうね」、しのぶも温かく後藤の目を覗き込んだ。「いいことは、急だったのにそこそこのお宿が取れたことかしら。貸し切り露天風呂は嬉しいけど、それにしても全く案外思い付きで動く人よね、ほんと」。
    「そこは臨機応変って言ってよ。だってせっかくの健保の割引、使わない手はないじゃない。不況に強いことと福利厚生の厚さぐらいしか公務員でよかったって思えないんだからさ」
    「臨機応変、まったく物は言いようよね」
    「そ、何事も臨機応変、四十八手の裏表、ってね」
     後藤はそっと顔を寄せて、しのぶの首筋に息をそっと吹きかけた。
    「ったくなによ、お風呂に入る前からいやらしい」
     顔を赤くして軽く押し返すと、今度はにやにやとからかうように、
    「四十八手って、ただの四文字熟語だって」
     でもしのぶさんの期待に応えるのはやぶさかではないなあ、とへらへらと笑う後藤に、しのぶは少し意地を張りたくなった。最後は後藤のペースに持ち込まれてさんざん翻弄されるだけだとしても、最初からというのは、なぜかしゃくにさわるのだ。
     しのぶは後藤の顔を覗き込むようにかがんで、少しだけ上目を使って、
    「でも、さっき笑ってたのは違うことよ」
     そう、思わせぶりな口調を作ってみれば、後藤は興味をそそられたと言わんばかりにしのぶの顔を見返してきた。
    「そうなの?」
    「知りたい?」
    「そりゃあね」
    「ただね」、しのぶは目をきらりと光らせて、「結局都内の温泉には誘われなかったな、思い出しただけよ」。
     そう言って、意識して口の端を上げると、後藤は一瞬だけ間をおいて、一気に顔が赤くなった。
     かわいい。
     想像したとおりの後藤の表情に、しのぶは思わず顔をほころばせた。

     軽井沢での一夜のあと、後藤が日帰りできる温泉のパンフレットを集めたものの、一体どう誘うべきなのかわからず一人悩んでいると知ったのは偶然だ。
     そう、あれは、自分は帰宅前、後藤は遅番で書類と格闘する前に、習性で一服をしに行こうと部屋を空けていたのだった。
     夏が行き、秋も過ぎ、年末の足音が聞こえ始める直前のころ。イチョウが色付き、木枯らしが渦を巻く晩秋の夕暮れはあっという間に日が落ちる。着替え終わって部屋を覗けば、そこに後藤の姿はなかった。音がしないと思ってはいたが、どうやらニコチンを摂取しに行ったらしい。帰りの挨拶をするため彼を待つかと一瞬だけ思ったが、しかしすぐに別にいいか、と思い直す。引継ぎも終わり、事務連絡も済ませた以上、後藤に特に用はない。ただの同僚なのだから、必要以上に気を砕くこともあるまい。
     そう、ただの同僚なのだ。
     この数か月の間、幾度となくつぶやいてるフレーズを心の中で繰り返しながらしのぶは鞄を手にした。
     そのようなわけで、しのぶが薄暗い廊下の向こうの影に気付かないままドアを開け、その時にばったり戻ってきた後藤と鉢合わせたのは、言ったようにただの偶然にすぎない。
     だから、後藤が煙草の友にと、昨日びゅうプラザから持ってきた、『特急で行く日帰り温泉』のパンフレットを持って出ていたことも、結局煙草を吸うでもなくただ茫洋と眺めていたパンフレットをその時うっかり落としたことも、後藤が慌ててしゃがんで拾う前に、しのぶが素早くしゃがみそれを拾ったことも、もちろん全部偶然だ。
    「日帰り温泉……」、そう何気なく読み上げたあと、しのぶは思わず目を丸くして、まじまじと後藤を見上げてしまった。
    「まさか、日帰り温泉って……?」
     しのぶの問いかけに、後藤はみるみる赤くなり、酸素が足りない鯉のように口を微かにぱくぱくとさせてから、仕舞いには珍しいことに、何を言うべきかわからないという風に口を噤んで、弱弱しく目を逸らしてしまった。
     この男を知っている。
     しのぶははたとそう感じた。この男は、あの日軽井沢で、自分の傍のソファで横になっていたとき、一度だけ顔をのぞかせた素の後藤喜一という男だ。
     夏の台風の夜が明けて、東京に帰ってきた途端にまた被った、あのふてぶてしく人を翻弄する悪い男の仮面は一瞬の隙によって脆くも剥がれ落ち、目の前には、自分より五歳も上だというのに、純情を絵に描いたような男が立ちすくんでいる。
     ――かわいい。
     咄嗟に浮かんだのは、この一言だった。
     二人で呆けていたのはたぶん十秒にも満たないだろう。頬を赤らめたまま、だんだんと情けない眉になっていく後藤の様子に、しのぶは、正直なところを口にした。
    「てっきり、あの場だけのことかと……」
     立ち上がり、後藤にパンフレットを差し出しながらいうと、彼はそれを受け取ることもなく、困り果てたような声で一言だけこうこぼした。
    「……わからないんだよね」
    「なにが」
    「なんて言ったらいいのか」
     そう言って大きくため息をつく。
    「だって、見当もつかなくてさ。たぶんなかったことにしたいんだろうって、わかってはいるよ、わかってるんだけど。……でも、どうしても、可能性がちょっとでもあるなら、って思う程度には、男だし」
     話しながらどんどん小さくなっていって、最後は蚊の鳴くような声で、後藤は告げた。「でも俺はこんなで、しのぶさんはしのぶさんで、だから、もうずっとわからなくって」。
     振り返れば、後藤とは、普段から制服か、たまにスーツを着た姿でしか付き合ってはいない。つまり社会的な仮面を身に着けている後藤しか知らないわけで、それは後藤から見た自分も同様だろう。
     そんな関係の中、唯一の逸脱があの台風の日であった。
     双方ともにイレギュラーな出来事に引きずられたハイテンションが落ち着いたあと、後藤の、あのいつもの人を煙に巻く態度も人を食ったような言動はなりを潜め、代わりに彼はどこまでも思いやりを持って、慎重にしのぶに接してきた。余りに慎重すぎたものだから、緊張しているのかそれとも無理をしているのか、さっぱり推察できなかったほどに、だ。
     ただ一つ。普段人に見せている、知性と理性で作り上げた「後藤喜一」像をめくった先にある、いわば彼の素に触れてしまったそのとき、しのぶは、自分がこの男に強く惹きつけられたことを自覚せざるを得なかった。
     本音を見せないことと、本音を見せられないことのはざまで、せいぜい飄々と生きていこうとする。そんな後藤が生きるために作り上げた仮面と、奥に隠している”自分”という存在と。なんでも卒なくこなせる振りをして、蓋を開ければなによりも己に冷淡で、人と社会に真摯すぎるがゆえに、どこまでも不器用だと、そんな彼の姿を他の誰が知っているというのだろう。
     今だって、周りからそう思われているように、いや、そう思わせているように、ただ一言「あのとき日帰りならいいって言ったからさあ」とことさら軽く言って、すべてを冗談に流せばいいだけの話のはずなのだ。実際、しのぶも、夏が過ぎ秋も、そしてこの一年も終わろうかという今この瞬間まで、いつも通りに自分や部下たちを翻弄し、総てはどこ吹く風とばかりに超然とした後藤の態度に、すべてをなしにしようとしているのだと勝手に思っていたのだから。
     ――そう、私と同じように。
     しのぶは手元のパンフレットにもう一度視線を向けてから、すべてが晒された形になり、心底居たたまれなさそうに佇む後藤に、不器用に笑い掛けた。
    「とりあえず、中に入らない? ……熱いコーヒーでも、入れてあげるわよ」
    「帰るところじゃなかったの」
    「別に、コーヒー一杯ぐらいロスのうちにも入らないわよ。それに」
    「それに?」
    「今話さないと、明日にはまた全部なかったことになってしまいそうだから」
     しのぶは早口でそう告げて、さっさと踵を返して出てきた部屋に舞い戻り、最後に振り向いて後藤を促した。
    「それとも、違うプランでもある?」
    「いや……」、後藤は一瞬だけ呆けたが、すぐに穏やかに口の端を上げた。「じゃあ、お言葉に甘えて入れてもらうわ。もう夜だから、ちょっとだけ薄目でお願い」。
     金縛りが解けたかのように、ぎこちなく後藤も隊長室へと戻っていく。そのとき、彼が小さな声でつぶやいた言葉にしのぶは内心で同意した。
     ――ひょっとして、もっと、シンプルに考えてもいいのかな。
     そうだ。二人とも大人と呼ばれるようになってからが長く、さらに後藤は性分で、しのぶは経験から、物事を無意識のうち、煩雑に見立てたがる。たとえば、尻込みすることを、手堅いと思い込むように。

    「失礼します、隊長、夕飯ができましたが……」
     コーヒーメーカーが勢いよく湯を沸かす様子を所在なしに見ていると、律儀なノックとともにドアが開けられ、山崎が顔をのぞかせた。そしてしのぶとコーヒーメーカーを交互に見た後、「ミーティングでしたか、すみません気付きませんで」と大きい体を小さくしながら謝ってくる。
    「そなのよ。だから今日はいいわ、帰るときにラーメンでもすすってくから。ありがとうね」
     後藤がそう労わると、山崎は了解です、と返事をしたあと、もう一度しのぶの顔を見て、「南雲隊長もお疲れ様です」とあたたかな敬意を示し、そして静かに去っていった。いかにも気が弱く優しい巨人といった風情だが、己をわきまえており慎重で物覚えもよく、そして勘もいい。自分の隊にいても十分に働ける才がある男だと、しのぶは山崎を内心高く評価している。
     それにしてもミーティングとは。確かにこれから行われることは緊急のミーティングに違いない。ただ、議題は隊のことでも課のことでもなく、自分たちの人生についてというとことが、重要だが場違いなものなだけで。
     やがてコーヒーが蒸された香ばしい匂いが部屋中に漂ったころ、しのぶは後藤愛用のマグカップにコーヒーを注いて、表情なく呆けている男の机にそっと置いた。
    「ありがとう」
    「いえいえ、お構いなく」
     しのぶは自分の席に戻ることなく、後藤の机の端に腰を掛ける体制で落ち着いた。そしてしばらく無言のまま、淹れたてのコーヒーの薫りを楽しむでもなく、ただ時間を埋めて、口の渇きを忘れたいかのように、二人とも少しずつ口に運ぶ。
    「……なかったことに、したかった?」
     五分ほど経ったころ、先に問いかけてきたのは後藤のほうだ。
    「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。……正直に言えば、よくわからないし」、しのぶはふと力なく笑った。
    「あまり考えないようにしていたの、だってあまりに」
    「イレギュラーだったから?」
    「そう。的確な表現ね」
     しのぶは口の中でもう一度繰り返した。イレギュラー。日常の中の非日常、靴の中の小石。人間として尊重し合い、同僚として尊敬し合い、友人として信頼し合える、システマティックに整えられたこの理想的な関係に現れたバグ。エラーをたたき出してすべてが台無しになるぐらいなら、脆弱性になるものはすべて排除して、そしてまた日常を過ごしていったほうがいい。
     決して私生活を軽視しているわけではない。ただ、恋愛のために割く時間があるなら、それをすべて仕事に割り振りたい程度にはこの職と今の立場を重んじ、そして全力を傾けている。仕事が恋人なんてキャッチコピー的な意気込みではなく、この仕事こそ望み、手を伸ばし、そしてようやく掴んだ、人生の中心なのだ。だから、なにも壊したくなかった。なにも加えたくないし、なにも変えたくなかった。
     しかし、先ほどの、図らずも自分をさらけ出してしまい、困り果てた同僚の様子を見たとき、しのぶの中で、まるで別の方向から、急に光が当たったように感じたのだ。
    「でも、本当はね」、しのぶはもう一口コーヒーを飲んでから、徐に語り始めた。防熱に乏しく、焚いている暖房では到底温めきれない部屋においては、コーヒーも瞬く間に冷めてしまう。そう決めたわけじゃないのに、この一杯を飲み終わるまでが期限のようになぜか思えて、適温を過ぎつつあるマグカップを、しのぶは守るように両手で包み込んだ。目線を下にすれば、後藤のカップにもまだそこそこの量のブラックが残っている。
    「たぶん、想像もできなかったのよ。あの夜が突飛だったぶん、一層。だってあなたって普段そんなだし」
    「それって、褒められてはないよね」
    「そうね、褒めてはいないわね」
     しのぶはリノリウムの床に目を落として微かに笑った。
    「この部屋でなら、どんなあなただろうがいつまででも上手くやっていく自信はあるのよ。……不本意だけど」
    「どんな俺でも、ね」、後藤はどこか冷淡にも聞こえる声で繰り返した。と思ったらすぐに情けない調子で、「それにしてもさ、その、不本意ってなに」
    「わかってるでしょ?」
     しのぶがすげなく返すと、後藤は大げさに口をへの字にして、誤魔化すように温くなり始めたコーヒーをすすった。
    「人が思っている以上に、協調性はあるつもりなんだけどね」
    「それに職務に対して、実は真面目だし?」
    「そうそう」
    「私が知ってるのはそれだけ」
     しのぶの一言に、後藤は顔を上げて、机に座る同僚の横顔を見つめた。しのぶはあえて視線を合わせず、今度は窓へと目を向ける。ただ外と中を区切るためだけに降ろされたブラインドの向こうには、うっすらとした東京の夜景があるはずだ。しかし、もう日が落ち切ったこの時刻では、窓は鏡のようにこの部屋を反射して、二人の姿しか映さないだろう。
     後藤が赴任してきてからそれほど長い時間が経っているわけではない。しかし、閉じられたこの空間は、時間など関係ないとばかりに、密度だけを濃くしてきた。ただ仕事だけを共有しながら。
    「いまみたいに制服を着ているか、仕事への義理でスーツを着てるか。その姿しか知らないから、さっきまで、全くわからなかったのよ」
     遠くの方で、船の汽笛が低く鳴り響いた。
     時刻は夜の七時半、窓の外の月は南中し、刷毛で塗ったような薄い雲の合間から、太陽を反射する半身で、草むらを、そして沖合の水面を照らしていることだろう。星月を頼りに大洋を渡るように、先にある微かな光を頼りに先に行こうと望むのは、欲望なのだろうか、それとも勇気なのだろうか。
     しばらくは二人とも、針の音に耳を傾けながら、微かなぬくもりのみを残すマグカップを手のひらで包み込んでいた。砂時計代わりのコーヒーは、そろそろ少なくなっている。しのぶは戸惑いをこれ以上口に出すべきかわからず、後藤はまるで修行僧のような表情をしながら、果たしてなにを打ち明け、なにを奥底に沈めるのかを考えているかのようだった。
    「あのさ」
     やがて、後藤が意を決したように、こう問いかけてきた。ただ、視線は前に向けたままで、いつも通りの曖昧な声も、どこか所在なく手探りをしているように感じた。
    「研修所出た後、下仁田行く前に食べたソフトクリーム、美味しかった?」
    「あ、あのソフトクリーム。ええ、ミルクが強くて美味しかったわね」
     まだ天気が荒れてなくて、雲がやや厚いぐらいしか思ってなかったときだ。とりあえず冷たいものを食べて頭冷やしなよ、と子供をあやすように言われてまたむっとしたものの、山の緑を眺めながら味わう、冷たく甘く、そして優しいアイスクリームは、確かにささくれてたしのぶの心をすっと落ち着かせてくれた。
    「下仁田でこんにゃく売り切れてたとき、代わりにはいった店の蕎麦は?」
    「あのあたりだけあって、蕎麦も美味しかったけど。小鉢の下仁田ネギの煮物がいいお味だったわよね……」
     言いながら思い出して、少しだけうっとりとしてしまう。大きめに切られた太いネギの甘さと、北関東特有の濃いめの醤油が効いたあの煮物は、しのぶの好みによく合う味だった。
    「そう、あのネギがまた美味いんだよ。で、どっちもさ、軽井沢で接待ゴルフに引っ張り出された時に食べてね。あと下仁田のこんにゃく」
    「あのとっくに売り切れてたこんにゃく」
    「そ、すぐに売り切れてたこんにゃく」
     後藤のことならよく知っている。しかし、本当に後藤のことを知らないとしのぶは改めて思った。それこそ、この情熱すら感じるこんにゃく好きなところとか。
    「そんな怪訝な顔しないでよ、本当に美味しいんだって、あの店のこんにゃく。……その時にさ」
     後藤はここであえて言葉を切り、いったん深くため息をつく。まるで棒高跳びの前に助走をするかのように。そして、頬杖をつくと、柔らかい目でしのぶの方を見上げた。
    「食べたときふっと思ったんだよね、しのぶさん、どんな顔するのかなって。こんにゃくとか、ソフトクリームとか、蕎麦とか」
     しのぶは彼の口調につられて、上から覗き込むように後藤の目を見た。後藤は、その言葉の響きと同じく、いままで見たこともない、素朴な笑みをしのぶに寄越す。そして記憶をなぞるように遠くへと視線を投げて、
    「こんな美味いアイスをこんな大自然の中で口にしたら、あの人はどんな風に笑うんだろうな、って。いい年したおっさんが言うにしては子供っぽい想像なんだろうけど。きっと、この前みたいにさ、眉間にしわがよってても、一口食べたら、いい笑顔になるんだろうな、思ったわけよ。
     だから、食べさせたい、食べてもらいたいって、ただ、そういうことからで、どうかなって。……で、あとは同じ」
    「同じって?」
    「俺も、なにも知らないでしょ。知ってるのは、外に泊まるときに律儀にパジャマを持ってくることと、……案外、信頼されてるってこと」
     最後の一言は、わざと茶化すように付け加えられたが、しのぶはくすりともせず、かわりに納得したとばかりに少し微笑んで見せた。
    「そして、欲望に忠実な露悪的な行動をとる振りをするくせに、策士どころか紳士よね」
    「いやだなあ、フェミニストって呼んでよ」
    「はっ、どの口がフェミニストですって?」
     あまりのごまかしようにさすがに鼻であしらうと、後藤はだよね、と苦笑したあと、一口だけ残していたコーヒーを飲み干す。と、席を立って、しのぶへとなにかを催促するように、静かに手を差し出した。
    「なに?」
    「カップ。もう一杯だけ、付き合ってくれない? 今度は俺がいれるからさ」
    「夜だから薄目の?」
    「そう、すきっ腹に優しいように、さっきと同じぐらい薄いやつ」
     すきっ腹、と言われて、しのぶは不意に空腹を覚え、思わず胃の辺りを抑えた。母は娘の勤務内容によってでたらめになる帰宅時間をよく承知していて、いつでも七時半になったらさっさとご飯を食べ始め、八時半を過ぎたら小鉢に分けた娘のおかずにラップをかけて、冷蔵庫にしまってくれる。今日はわさび菜の胡麻あえにさつまいもと鶏肉の煮物だったか。ほんの少しだけ考えるように目を上に向けてから、しのぶは黙って残りのコーヒーを煽り、後藤へと差し出した。男は両手にカップを持って、いつもと変わらぬようにコーヒーメーカーへと向かう。猫背の背中をさらに屈めて、馴れた手つきでドリッパーを片付けながら、ふと表情のうかがえぬ声で静かに独り言ちた。
    「別に、紳士なんかじゃないよ」
     もしかしたら、自嘲がこぼれたことすら後藤は気付いていないのかもしれない。だからしのぶは少し悴んできた両指の先をこすり合わせて、再びコーヒーが蒸される音をただ黙って聞いた。
     私だって。ひとつため息をつく。私も、決してあなたが見ているような淑女ではない。
     コーヒーの出来上がりを待って、もう一度深く息を吸ってから、しのぶはあえて澄ました顔を作った。
    「あのね」
    「はい?」
    「うちから一本だから、よく母と箱根に行くのだけど、なじみの宿にいく道にね、美味しいお豆腐屋さんがあるのよ」
    「豆腐? 湯葉とか?」
     後藤がコーヒーを入れながら、首だけで振り向いてそう問い返してくる。
    「早雲豆腐っていって、とろろにお豆腐が入っているんだけど」
    「へぇ、あいにくグルメなほうじゃないから、初耳だわ」
    「母も私も好きで、毎回じゃないけど、箱根に行くとよく食べに行くの」。しのぶは取り澄ましたまま、彼からコーヒーを受け取って、そうして後藤の目をしっかりと見据えた。「でね、いま思ったの、あなたが食べたら、どんな顔をするのかしら、って……。そうね、きっと気に入ると思う」
     後藤が椅子に座るのも忘れて、目が少しずつ見開いていくのを見て、自然と口角が上がっていく。
     そろそろ天津丼も重いんだよなあ、とたまに年齢を嘆いては、肉じゃがやさといもの煮っ転がしへの恋慕をこぼす様子から想像するに、あのふわふわとした食べ物は、この男の口に合うに違いない。そして、相当の酒飲みのくせに、お茶の時間と言い訳をしては、やたらおいしそうにみたらしやマドレーヌを口にする後藤のことだ、富士屋ホテルのアップルパイとコーヒーも恐らくは気に入ることだろう。
     しのぶは先ほどよりさらに薄めのコーヒーを飲みながら、徐々に心が高揚していくのを感じた。森の中に佇むクラシカルなホテルのラウンジで、紅茶の色が付くのを待ちながらパイを器用に切り分けて、フィリングがこぼれぬよう慎重にフォークで運んで一口、あ、これ美味いね、と素直に笑みがこぼれる。そんな後藤の様子がありありと見えるようだった。
     そして、その様子はきっと、先ほどと同様に、間違いなくかわいいのだ。
    「こういうこと、でしょ?」
     確かに中学生のようなやり取りを自分たちはしているのかもしれない。しかし、相手をかけがえのない、愛おしいものだと気付くそのきっかけに、年による違いなどないのだ、たぶん。少なくとも、しのぶにとってはチルチルとミチルが鳥かごをみたときのような、大いなる発見だったのだ。
     後藤は、あどけなくそして柔らかくなっていくしのぶの笑みに応えるように、彼が常日頃浮かべているものとは全く違う笑みを浮かべた。
    「……だったら、箱根の名門ほどではないんだけどさ、環七から環八に抜ける手前に、醤油ラーメンの店があってね。食べていかない?」
    「今日? この後?」
    「いや、明日でもいいんだけど。鶏だしにネギといい感じのメンマと、チャーシューが豚と鶏肉の二枚が乗っててさ。……おなか、空かない?」
    「そりゃあもちろん空いてるけど」
    「そういうときに食べるそばってうまいでしょ。……特に、好きな人と食べるやつは」
     そう言って、しのぶを見つめる後藤の目には、覚悟を決めたような穏やかさが宿っていて、一方目のふちは照れと恥ずかしさで飾られていて、彼の気持ちを余すことなく伝えていた。
     そう、あの日、背中を向けながらも神経を研ぎ澄まし、全身で見ていたのはたぶんきっと。
     しのぶは机から立ち上がり、いつもの調子で後藤の顔を仰ぎ見る。
    「そうね、好きな人と食べるものなら、なおさら」
     言いながら、しのぶはバレリーナがプリマに触れようとするような動きで目の前の男へと右手を伸ばし、指の節でそっと、ひげが生えてきて、ざらざらとしてきた頬に触れる。
     これが。
     こんな微笑みをする男こそが、後藤喜一という人なのか。
     二度、手の甲側で頬をなぞってから、最後に手を返して指先でそっと頬を撫でると、なすがままにさせていた後藤が離れようとする右手を、左手で羽を包むようにそっと掴んだ。
    「公私混同は、俺の規範からは外れるんだけどね……」
     自分にそう言い訳をしながら、後藤はびいどろガラスを扱うような繊細さで、右手でしのぶの頬にそっと触れる。
     しのぶは返事をする代わりに静かに目を閉じて、近づいてくる体温、息、そして覆いかぶさる影を、静かに受け止めた。三十路と四十路のキスにしては、あまりにも純朴でささやかなものだと思いながら。
     結局、しのぶはコーヒーを飲み終わったあとも隊長室に留まり続け、すぐには帰らなかった。互いがこれまで食べてきた各地の美味しい食べ物についてああだこうだと話しながら、後藤が書類仕事を終えて、遅番の定時を迎え、そして駐車スペースでもう一度、今度は大人同士に相応しく、奪い合うよなキスをするそのときまで。

    「そうやって人の純情をからかうんだから。実は性格悪いよね」
     後藤はすねるような目つきになって、やってられないとばかりにビールを一気に煽った。
    「あら、性格美人と付き合える人格だと思ってるの」
     しのぶには理解しがたいことだが、あの時、一人悶々と悩んでいたことが露呈したことは後藤にとって男の沽券に関わることだったらしく、今でも小さなトラウマになっているようだ。
     しのぶにしてみれば、二人で二課棟を出た次の日に、自分のリクエストに応えて松の内が過ぎたころに泊まれる箱根の宿を探してきたのだから、別に気にしなくてもいいようにも思えるのだが、それはそれというやつなのだろうか。あるいは、自信がない自分を思い出させるトリガーなのかもしれない。
     いずれにしても、お互いに築き上げた心地良い関係を大事にして、厄介を避けるため互いに対して気を使い、相手を思って一歩引いているうち、二人揃って驚くほど遠回りをしていたわけだ。言い換えるなら、大人ゆえの臆病というよりも、口に出さないところで互いに誠実でありすぎただけだった。それこそまるで、中世の騎士と姫君の間の忠誠のように。
     幸いにも今は二十一世紀であり、立場に気を使いすぎ、ランスロットとグィネヴィアのようなひねくれたプラトニックに酔う必要もない。
     だから、一見四十不惑なふりをして、人の前ではひどい男の仮面をかぶって、人を翻弄し、惑わすようにふるまうくせに、自分の前でだけはごく普通に拗ねて、悩んで、照れる隣の男に、いつでも触れて、抱きしめて、唇を合わせてもかまわないわけだ。さすがにいい大人として、なにより責任ある立場として、職務中と職場の敷地内ではただの同僚としてのみ接することを互いに心掛けても、仕事上がりには外していた指輪をはめ直して、二人で品川まで出て新幹線に乗ることを、特に隠す必要もない。
     しのぶはなんだかなあ、といつもの調子でぼやきながらビールを煽る後藤の喉に顔を寄せ、彼が反応する間もなく、いたずらにかすめる程度のキスをして見せた。後藤はしのぶが顔を引くときに、首筋をかすめた髪の感触にほんのりを顔を赤らめて、
    「しかもそうやってからかう」
    「あら、へそを曲げてるごとうくんに、小さな慰めをあげた優しさよ」
    「全く、一年前の純情なしのぶさんはどこにいっちゃったんだか」
    「本当に、果たして誰のせいなんだか」
     しのぶはわざとらしくため息をついてみせる。そしてしのぶと後藤は同時に互いの方を見て、そして同時に吹き出した。
     肩に力を入れて、人から本心を巧みに隠して。それは社会に向き合うための自分らしさという鎧だが、自分の前では脱いでもいいのだと囁き合ったのはそれぞれなのだから、いわばどちらに責任がある。
     後藤は自分の分のビールの残りを一気に飲み干して、まだ半分ほど残っているしのぶの缶をそっと取り上げて床に置いた。
    「じゃあさ責任、取ってもいい?」
     言いながら、お返しとばかりに後藤はしのぶのうなじに唇を寄せた。
    「あらなにについてかしら」
    「わかってるくせに」
     喉でクックと笑いながら、欲情を隠さない声で耳元にそっと息を吹きかけると、
    「そうね、わかってるけど」
     しのぶも似たような含み笑いをしながら、しかし後藤をそっと押しのけた。
    「いまは、お楽しみの露天風呂が先ね」
    「え、もう九時半なの」
     この宿自慢の、カップルと家族むけのサービス、貸し切り露天風呂の時間を予約時に決めたのは確かに後藤本人だ。品川から電車で移動して、チェックインして、予約した和食膳に舌鼓を打って、腹ごなしにホテル自慢の庭を散歩してから露天風呂に行って……。時間配分はいつもながら、考えた通り完璧だった。完璧すぎて、風呂を頂く前にうっかり盛り上がったときの余裕を入れ忘れていただけで。
    「あなたがシャワーでいいって言うなら、私一人で頂いてくるわよ」
    「行きますよもちろん行きますってば」
    「本当、あなたって」
    「俺って?」
    「案外かわいい人よね」
     しのぶがころころ笑いながらそう言うと、後藤は複雑そうな顔をした。
    「かわいいって言われてもさ、なんか褒められてる気がしないんだけど」
     その様子を見てしのぶはますます笑みを深くした。
    「ほら、そうやって複雑に考えない。ああ、それと」
    「それと?」、せかされたままに腰を浮かした後藤がオウム返しに聞いてくる。
     しのぶはわざと真面目な顔を作って、後藤の前で釘をさすべく人差し指を立てた。
    「貸し切りといえど公共の場所、分かってると思うけど、余計なことをしたら」
    「嫌だなあもちろんわかってますとも。……でもキスぐらいなら、いいでしょ」
    「どうせいやだって言っても、キスぐらいはするつもりなんでしょ。でも、アルコールが入ってるんだから」
    「のぼせるまえに出てくること。大丈夫だって、つまり気を付けないと」
     後藤は悪い笑みを浮かべて、しのぶの腰を抱く。
    「そのあとのお楽しみがおあずけってことでしょ」
    「……そういうこと」
    しのぶはあえてその手は払わず、替わりに後藤の頬を軽くつねった。
    「ほら、行きましょ。せっかくの露天風呂なんだから」
    「それにしてもさ。今日、ずっと楽しそうだよね」
    「当たり前じゃない」
     しのぶは機嫌の良いときにしか見せない、はじけるような声で返事をした。
    「だって露天風呂よ、しかも貸し切りで、フィアンセと入って、これ以上のことってある?」
     うきうきとした気持ちを隠さないまま鞄から風呂セット一式を取り出すべくしゃがんだとき、後ろで後藤が小さな声でぼやくようにつぶやくのが聞こえた。
    「確かに、かわいいっていうのは褒め言葉だけどさあ」
     しかし自分には似合わないと思っていることがありありとわかる後藤を、やはりかわいいと感じて、しのぶはますます楽しい気持ちになってきた。
     とりあえずは大切な人と二人、露天風呂で存分に疲れをいやして、少しぐらいのいたずらは許してあげて。そしてこのかわいい男と存分に夜を楽しめば、また休み明けから二人戦っていけるだろう。
     人はそれを、きっと幸せと呼ぶ。


    いずみのかな Link Message Mute
    2022/06/26 18:41:02

    かわいいひと。

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