arouse suspicion注意事項
【ATTENTION!!】読む前に確認お願いします
・「ワールドトリガー」の二次創作作品です
・カップリングとして「諏訪荒(諏訪洸太郎×荒船哲次)」が前提として話が進みます
・視点がコロコロ変わります
・文章は拙いです
・ご都合主義です
上記の点確認の上、自己回避よろしくお願いします
なんでも許せる方のみお楽しみくださいませ!
case1 21歳組「諏訪、『これ荒船が好きそうだ』という話、もう五万回は聴いたんだが」
いつものメンツでいつもの飲み屋。来店から時は経ち、それぞれ潰れていないというだけでそれなりの酒量を重ねたころ。唐突に、されどそれなりの重みを持ってその話題は提供された。提供者は木崎レイジ。顔には出ていないがこの男もそれなりの酔っ払いである。
「それは大袈裟だろー!俺そんな言ってるか?
まだ中身の残ったジョッキを抱えながら、腹を抱えて笑い出す。話題を振られた諏訪もまた、酔っ払いだ。笑いの沸点はもちろん下がっている。
「言ってるぞ。そろそろ聞き飽きた」
「しかも当然あげる気でいるじゃない……付き合ってるの?」
諏訪と木崎のやりとりを尻目に、テーブルの上で僅かになりつつあるツマミに手を伸ばすのは、風間と寺島だった。いまだ笑い続ける諏訪へのツッコミも忘れない姿は、慣れを感じさせる。
「あー腹いてぇ」
「勝手に笑い出したのはお前だろう。で、どうなんだ」
「んぁ?何が?」
「荒船に対するお前の態度だよ」
んーと唇を尖らせる姿に、照れや焦りなどという、いわゆる交際がバレた時のような反応は見られない。追及する側である三人は、諏訪の一方的なお気に入りへの可愛がりかと内心あたりをつけた。そしてそれを裏付けるように、諏訪は少々崩れた顔で語り始めた。
「あいつ、好きな飲み物渋くてよぉ。なんか頭に残ってたんだよな。最初はそれがきっかけ。で、順位ちけぇし、模擬戦とかよくやるわけ。その反省会とかで差し入れしてやると、ちょっとソワソワすんの。それがみょーにかわいいんだわ。なんつーの、なかなか懐かない野良猫が近寄ってきた時みたいな?」
「ああ。お前はいつも荒船に呆れられてかるからな。よく口喧嘩をしているだろう」
「あれはあっちが喧嘩売ってくんだから俺のせいじゃねーよ!」
「そうか」
うがっと噛みつく諏訪だが風間はどこ吹く風だ。ポリポリと骨煎餅を齧り、どこを見ているかわからない赤い瞳は次なる獲物を探し机の上を彷徨う。寺島がウイスキーをあおり、カツンと氷がグラスに触れる音がした。
「ま、しょーじきな話、俺の趣味は小説であいつの趣味は映画で。原作とそれを元にした映画を貸し借りするときに礼として渡してるだけだぜ?なんか習慣化してるから」
「まぁ、習慣化してるなら日常でも使える品を探す、か」
「そーゆーこと。でも、気になるくらい言ってるならちょっときーつけるわ」
「いや、少し気になっただけのことだ。礼のためだったなら納得がいく」
そろそろ机いっぱいにあった皿も、殆どが空になっている。先ほどから静かな寺島や風間が片付けたのだろう。その驚くべき胃袋の収容量は一旦横に置いておくとして、お開きにはちょうどいい時間だ。皆考えることは同じなのか手早く割り勘を済ませると、代表して払いに行った木崎を除く三人は店を後にする。混んでいなかったのか、さほど時間をかけずに木崎も外に出てくる。
「じゃ、俺タバコ買って帰るからこっち行くわ」
「ああ」
「また本部でな」
「お前は菓子食べ過ぎんなよ。それ以上はやべーだろ」
「諏訪のタバコもほどほどにね」
「うっせ!」
住む家のある方向が同じ木崎と風間、そしてコンビニへ向かう諏訪と別れた寺島は自宅への帰り道を歩く。酒の入った体に夜風が涼しく、程よく酔いが覚めてくる。そして酔いが覚めていくと同時に鈍っていた脳も動き出すことで思考に冴えが戻ってきた。気づかなくてもいいことに気づいてしまうほどに。
「あれ、そう言えば諏訪って荒船と付き合ってるかどうかって否定してたっけ……?」
case2 諏訪隊
とある日の諏訪隊隊室。大きな雀卓がトレードマークなこの部屋で、最近とある光景が日常となっている。
「お、笹森。悪いが邪魔してるぜ」
たった今、部屋に入ってきた笹森に声をかけたのは、笹森の隊長の隣に座っていた人物だった。黒地に青のラインが差し色の隊服を身に纏う男は、諏訪隊と順位を争う常連である荒船隊の隊長だ。笹森にとって、尊敬する先輩の一人である。
なぜ彼がここにいるのか。その疑問は隣り合って座る二人の会話を聞いていればわかる。
「ここ。小説での描写が細かいところだったからどうなるかと思ったけど、映像綺麗だったな!」
「だから言ったろ、あの監督CGの表現は定評あるんだって」
——あーまた一緒に見に行ったんだ……
そう。映画の感想会である。
~***~
ことの発端は、荒船が諏訪隊に本を借りに来たことから始まった。自他共に認める映画好きの荒船。そんな男が当時公開を楽しみにしていた作品は小説が原作のもので、直前に原作読了を推奨されたらしい。そしてこちらもまた、自他共に認める本の虫が集まる諏訪隊。映画化されるという話題作、ないわけがなかった。
該当する本の持ち主は隊長である諏訪だった。内容にミステリー要素があったので購入していたようだ。購入した後すぐ読み終わっていたし、諏訪自身本の貸し借りに忌憚があるわけでもなし、荒船とのやりとりはスムーズに終わった。はずだったのだが。
「いや、わかりますけどね?同じ本読んだら感想を聞きたくなるのも、話が盛り上がって映画も一緒に見に行こうってなるのも。でもなぁ……」
そうぼやいていたのは堤だっただろうか。笹森は隊室の冷蔵庫にあった自分の水を取りながら、会話を続ける二人をそっと覗った。二人の距離は先ほどより縮まって見えた。
あれから諏訪と荒船の距離は見違えるように近くなった。どうやら思いの外、波長が合うことに気づいたらしい。普段は戦術面や任務のことで言い争うことも多いというのに、一旦スイッチがオフになると楽しそうに会話をする姿を目にするようになった。
それどころかあれ以来、荒船の映画鑑賞に時間が合えば諏訪も一緒に行っているらしい。そして、その後の感想会はもっぱら諏訪隊隊室で行われるわけで。これこそが最近日常となりつつある光景である。
「それにしたって、あれは近すぎでしょ」
「やっぱりおサノ先輩もそう思います?」
「思う思う。だってもはや近いというより、もたれてるよね?」
笹森の後にやってきた小佐野と会話する。隠れる必要はないが、なんとなく声をひそめた。小佐野の手には荒船からの差し入れであるエクレアが収まっていた。
冷蔵庫からもう一つ取り出し、二人黙って口を動かす。目の前では荒船が諏訪に耳打ちして笑わせている。さっきは諏訪が荒船に同じことをしていた。二人でクスクス笑う姿は正直男女だったら付き合っていると感じるほど柔らかい雰囲気だ。何より距離が近い。二人のパーソナルスペースはどこに行ったんだろうかと心配になる。
最終的に二人の脳内は同じ答えに行きついていた。
「「いや、あれ付き合ってるよね?」」
後日、お互いもたれてうたた寝している二人を収めた写真を堤から見せられ、疑いを濃くする諏訪隊年少組だった。
case3 荒船隊
「最近一緒にいるな、諏訪さんと」
今の今まで筋トレに精を出していた穂刈からの一言は、隊室の心地よい静寂に小さなさざなみを立てた。そのさざなみは、問いかけられた荒船はもちろん、ゲームに集中していた半崎も、粘土をこねくり回していた加賀美も顔を上げるものだったようだ。一気に隊員の視線を集めることになった穂刈だったが、気にすることなく右手に持っていた鉄アレイを左手に持ち替えた。
「それ、最近よく言われるんだが言うほどか?」
「していなかったのか、自覚を。多いと思うぞ、以前と比べると」
「そっすね。俺もよく見かけますもん。模擬戦後は相変わらずの言い合いっすけど」
やはり当の本人に自覚はなかったのか、自隊の隊員二人に肯定され、荒船は眉間に皺を寄せた。その反応に穂刈は内心首を傾げる。
「嫌なのか、こういうふうに言われるのは」
「嫌、と言うより困惑の方だな。俺としては普通に接してるだけだし。ちょっと趣味があって話すようになっただけだぞ?それなのになんでここまで注目されるんだ」
——ああ、そう言うことか
少し不機嫌の混じる表情に、穂刈はそこそこ諏訪との関係を口にされてきたらしいと推測する。元々荒船は人見知りをするわけでもないし、人付き合いもいいほうだ。だからこそ、単純によく話すようになったぐらいで注目されている現状が理解できないのだ。とはいえ、本当に注目されている理由を教えてもいいものか。そう穂苅が悩んでいると、いつの間にか粘土を片づけ、全員の飲み物を用意しに行っていたらしい加賀美が小さく首を傾げながら口を開いた。
「それ、荒船くんと諏訪さんの距離が他の人より近いからだと思うけど」
——言ってしまったな、全て
穂刈は思わず半崎に視線を向けた。案の定今にもいつもの口癖を言いそうな顔だ。半崎も注目を集めていた理由を知っていたようだ。
「近いか?穂刈たちと変わらないだろ?」
「そりゃ、穂刈くんや村上くんたちとだって近いけど、それは同い年の男子だし納得できるの。それが諏訪さんとってなると……」
「なると?」
「なんで諏訪さんとあの距離?ってなる。年上だし、ポジションだって違うし」
「なるほど」
——納得するのか、その説明で
もはや穂刈と半崎は傍観者と化して隊長とオペの会話を聞いている。半崎などさっさと自分用のアイスまで食べ始めている始末だ。穂刈も静かに筋トレ道具を片付けようと腰を上げようとした。しかしそこで一つ疑問が湧いた。上げようとした腰を再び下ろし、荒船の方を向いた。
「とりあえず、なんで諏訪さんとの仲をよく聞かれるかの理由はわかった」
「……あるのか」
「ん?なんて言ったんだ、穂刈」
「あるのかと聞いたんだ、何か理由が。やっぱり珍しいだろう、俺たちレベルの近さというのは」
「あ、それは自覚あったんすね」
穂刈は半崎が小さく突っ込んだことは気にしないことにして、荒船の答えを待った。荒船は眉をハの字に下げていつも通りかぶっている帽子越しに頭をかいた。これがいわゆる照れ隠しのような行動であることを長い付き合いである隊員たちは知っていた。
「あーなんというか。諏訪さんと一緒だと落ち着くというか安心するというか。お前たちといる時や隊でいるのとはまた別の居心地のよさなんだよな……」
穂刈と加賀美は、自分たちといる時が居心地の良さの比較対象になっていることに喜べばいいのか、そこまでの安心感を覚える対象に諏訪さんが選ばれていることに驚けばいいのかわからず妙な顔になっていた。半崎はいつも通り「ダリィっすね……」と言いつつも耳を赤く染めていた。
case4 18歳組
「結局、諏訪さんと荒船って付き合ってるってことでいいのか?」
「急にどうしたの、当真」
ボーダーのラウンジ。いわゆる共有スペースとして使われるここは隊員たちの溜まり場である。それは一高校生である当真・穂刈・犬飼にとっても同様だった。いつもだったら共にいる荒船は、隊長会議のため今は不在だ。それを見越しての話題、ということだろう。
「どうだろうな、それは」
「同じ隊の穂刈でもわからないんだ、なんか意外」
「わからないぞ、意外と。隠すのが上手いんだ、荒船は」
「確かに、荒船ってそういう話自分からしないしね」
うんうんと大袈裟に犬飼がうなづく。しかし他人事のようにしている犬飼は、荒船と同じ高校に通っているはずだ。何か気づくことがないのかと当真がからかいまじりにちょっかいを掛ける。
「お前こそなんか知らねーの?」
「そりゃ俺だって気になったから聞いてみたよ?でも、荒船は普通だろって取り合ってくれないし、諏訪さんの方も、無自覚っぽいよ」
「嘘だろ、あれ無自覚なんか。ん?ってことはこの前のも、か?」
「この前って何かあったの?」
「聞いてないぞ、何も」
何か気になることがあったのか、急に渋面を作る当真。犬飼と穂刈の追及にちょっと前のことなんだけどな、と前置いて話し始めた。
「俺と隊長で昼飯食ってたんだよ、食堂で。んで、食べ終わったし、そろそろ行くかーって考えてたところに、諏訪さんと荒船が来たわけ。二人とも一緒に飯食うみたいで並んで座ったとこまではいいんだよ、普通だろ?」
「普通だね。俺らもよくするし」
「普通だな」
「問題はそこからなんだよ。なんか諏訪さん苦手なもんがあったみたいでげって顔してよ。それをそのまま何も言わずに荒船の口まで持っていったんだよ。そしたら荒船どうしたと思う?」
もうそこまで言われれば後の光景が予測できてしまった。犬飼と穂刈は顔をみあわせ、お互い同じことを考えていると確信した。そんな二人を気にせず、当真は会話を続ける。
「あいつ呆れた顔しながらだったけど、そのまま食べたんだよそれ。俺はなんで友人のアーンを見せられてんだろうって思ったね!」
「「やっぱりね/か」」
当真が言うには、その後も何回かそのやりとりをして二人は食事をしていたらしい。その間二人に照れはなく、ごく普通のやりとりをしていたというのだから、当真が付き合ってると思ってもしょうがない。いや、付き合っていてもそこまでオープンにするのは珍しいが。
「なーほんとに付き合ってねぇの?実は隠れて付き合ってても俺驚かねぇぜ?」
「やっぱり男同士だし遠慮してるとか?」
「おかしいだろう、遠慮しているならこんなに堂々としているのは」
結局、諏訪と荒船の関係に対する正解は見つからず、会議終わりの荒船が合流するまで三人は揃って頭を抱えることになるのだった。
The truth of the suspicion「そろそろ言ったほうがいいか?」
「んぅ、なにが……」
昼寝明けの寝ぼけた頭と口はよく回らない。元々そこまで寝起きはよくないのだと、目の前の男は知っているはずなのに。どうにか会話を理解しようしている俺を尻目に、自分以外の大きな手が、頭をゆっくりと撫でる感触がした。輪郭をなぞるように髪先をいじられると、こそばゆくて首をすくめてしまう。
「んー俺たちの関係。最近聞かれること増えたろ?」
「……ああ、たしかによくきかれる。ボーダーではふつうにしゃべってるだけなのになぁ」
今度は髪をいじるのに飽きたのか、悪戯な指は俺の唇をそっとなぞる。それを合図に瞼を落とせばチュッといかにもな音を立てて一つキスを贈られた。その後も顔の至る所に落とされる口づけに思わず笑ってしまう。軽く触れるそれはくすぐったいのだ。
「風間たちに言わせれば、俺はお前を気にかけすぎだってよ」
「そんなにだったか?俺の方はやたら距離が近いって言われる。同い年の奴らと集まってる時と、そう変わらねぇと思うんだけどな」
「俺としてはむしろそっちの方が近すぎると思うんですけどねー」
不貞腐れた顔をしていた目の前の男—諏訪洸太郎は、両手で俺の顔を挟むようにして額を合わせた。ぐりぐりと寄せられるそれを受け入れつつ、頬に添えられた手に自分の手も寄り添わせ擦り寄ってみせる。それだけで眉間に寄った皺がなくなるのだから、可愛い人だと思う。相手を可愛いと思ったら逃れられないのだと、そう謳っていたのはどこの書物だったか。
「ふふ、なに諏訪さん妬いた?」
「おー妬いた妬いた」
「めちゃくちゃ笑ってるじゃねーか。本当に妬いてたのか?」
「うっせーよ。お前があいつらと仲良くしてるのも好きだから複雑なの!」
そうやっていちゃいちゃしながらベットで過ごしていたけど、俺たちの関係についての公表はまた考えるとして、そろそろ晩御飯の時間だ。諏訪さんも考えは同じなのかさっさとベッドを降りてしまう。俺は未だ眠気が残っていて温もりの残る布団を抱きしめている。
そもそも、二人とも課題を終わらせるためずっと机に向かっていて、休憩の一環で一緒に昼寝と言うより夕寝?をしていたのだ。つまり脳はまだ睡眠を必要としているはず。
「ほら、そろそろ起きろ」
「もうちょっと……」
「お前ほんと寝汚いよな。でもだめだ。哲、起きろ」
「洸太郎さんって意地悪だ」
「そんなこと言う奴には買ってきた豆腐ださねぇぞ」
「それは嫌だ。起きる」
まさか俺の好物を人質に取られるとは。残念ながら洸太郎さんの方が一枚上手だったらしい。俺は渋々布団とおさらばし、あくびをしながらベッドから降りた。
「俺は飯の用意始めてるから、机の上の課題とか片付けといてくれ」
「荒船了解」
きょうの料理は諏訪さんがしてくれるみたいだ。何が出てくるか楽しみにしながら、資料の散乱した机の上を片付けていく。きっと、洸太郎さんらしい男料理なのだろうけど、俺はそんなご飯が好きだから文句はない。
さあ、ここまでくればお分かりだろう。俺と洸太郎さん、いや諏訪さんはいわゆるお付き合いをしている関係だ。ただ、公表はしていない。というか最初は隠すつもりはなかったのだが、付き合った時期がボーダーとして色々あった時期と重なってしまいタイミングを逃してしまったのだ。
元々隠すつもりのない交際だから、と普通に過ごしていたら何やら噂で広まってしまったと言うわけだ。途中、あまりにも気づかれないものだからわざと明言しないようにしたのも悪かったのかもしれないが……過ぎたことを言っても仕方がないだろう。
つまり何を言いたいかと言うと、
『諏訪洸太郎と荒船哲次は付き合ってる』