争乱 3注意事項
【ATTENTION!!】読む前に確認お願いします
・「刀剣乱舞」の二次創作作品です。
・原作登場刀剣男士の女体化があります。
・カップリングとして「くりんば」が含まれます。
・モブ(オリジナル主人公及び登場人物)がかなり話します
・創作設定が多くでてきます
・文章は拙いです
・ご都合主義です
上記の点確認の上、自己回避よろしくお願いします
なんでも許せる方のみお楽しみくださいませ!
第参章 荒ぶる会場
「や、やっと終わった……」
「今回は長かったわねー。いつもの倍くらいあったんじゃない?そ・れ・と、そろそろ起きろ!」
ゴンッ
『イテッ!なんだよ』
「なんだよじゃないわよ、せっかく会議が終わったから起こしてあげたのに。その態度は何かしら?」
『悪かった、悪かった』
途中からほんとに寝ていた丈留さんは、彩綾さんに起こされていた。
——今彩綾さん素手で叩いたはずなのにスゴイ音してたよね……
流石に音からしてただでは済まないだろうと、彩綾さんの手を取ってみるが赤くなるどころか怪我一つない。
「あれ?」
「どうしたの、蓮ちゃん?あ、手のこと心配してくれたのかな。それなら大丈夫よ。ちゃんと薄い障壁張ってたから」
「これがあの!彩綾さんは、結界術の巧みな使い手って聞いてましたがここまで薄くできるものなんですね……」
「あら、今日は“視える”ようにしてるの?」
「はい。色々な人の霊力を感じることも練習になるだろうからって。一応軽く抑えてはいますけど」
封印が緩められた目には、彩綾さんの手を覆う霊力がちゃんと視えている。普通の人はここまで霊力をコントロールできないのだそうだ。しかし、彩綾さんはこれをいとも簡単に成し遂げられる技量を持つ。丈留を攻撃の要である戦闘系審神者と言うならば、守りの要である結界術師系審神者として彩綾は一目置かれているトップランカーなのだ。
『へえ、お前さんもこの手のが視えるのか。それはいいことだな。俺も最初は慣れるのに苦労したぜ。まぁ、戦ってたら気にしなくなったけどな!』
「嶺染のらしいわね……」
彩綾さんに起こされた丈留さんはようやく席を立ったのか、軽く腕を伸ばしてストレッチをしている。しかし言っていることはさすが戦闘系審神者の物言いで、彩綾さんは呆れていた。二人と共に席を離れると、人混みを抜けたからか空気が少し冷えている気がする。
「そう言えば、お二人はこれからどうするんですか?」
「そうねぇ。あ、そうだ!嶺染の、この子ならあの集まりに連れて行ってもいいんじゃない?」
『あ〜、今日もあったか?』
二人はなにやら話し合ってるが、あの集まりとは一体何の事だろうか?
「蓮ちゃんは将棋が得意だったよね?」
「ええ、まぁ。幼い時からしてたのもありますし」
「じゃあ、兵法書に興味は?」
「審神者になる前は訳本を何冊か読んだぐらいで、最近は暇な子たちに原本の読み方を教わりながら、実際の動きを踏まえて読んでいってるとこです」
「それなら十分よ!実は、いつもこういう会議が終わったあとの時間は、審神者たちの交流の時間として会場が開放されてるの。そこでみんな色々なグループを作ってるんだけど、私と嶺染のが参加している集まりがあるの。今からそれに行ってみない?」
「それはどんなことをする集まりなんですか?」
「戦闘における戦術や戦略を考えるって思えばいいと思うわ。時間遡行軍はもちろん、検非違使となるとさらに動きが読みにくい時があるのよね。それに対する対策を立てるって意味合いもあるわ。まぁ、私たちみたいな政府に協力することもある審神者は、ブラック本丸や堕ちてしまった神様、祟り神討伐に関して話すこともあるけどね」
「そうなんですか。でもそれって、私みたいなのが行ってもいいんですか?なんだか場違いなような……」
一応私は今日初めて上位者会議に参加した、上位者といっても新参者だ。それなのに、歴戦の審神者たちが意見交換する場所に行ってもいいのだろうか。
「いいのよ。むしろ、そういう場だからこそ行くべきだわ。色々な戦い方を知っておいた方が審神者としての指示もバリエーションも広がるし!」
『おい、相談は終わったか?ならもう行くぞ。もう始まってる時間だ』
「ちょっと、待ちなさいよ。嶺染の、まだ近侍を顕現してないでしょ。会議の会場は出るんだから呼ばないと」
『ああ、そうだったな』
パァン!
『 こい、陸奥。…俺の信頼する相棒、陸奥守吉行だ。嬢ちゃんには会わせてなかったよな。ま、よろしく頼む』
「おう、わしがこやつの初期刀、陸奥守吉行じゃ。よろしゅうたのむぜよ!」
柏手を打ち、丈留さんが名を呼ぶ。そして吹き荒れた桜吹雪が見えなくなると、そこにいたのは極姿の陸奥守吉行。その姿は丈留さんが相棒と称しただけあって主人への信頼と自信に満ち溢れた姿だった。
「あ、それなら私も」
ぱちんっ
ざあっ
「呼んだか、主。ん?そこにいるのはこの前の審神者か。確か白蓮といったな。それに嶺染本丸の審神者もいるのか……」
こちらは、以前もお会いした彩綾さんのところの山姥切国広。相変わらずの登場の仕方だが、流石に二度目だから前よりは驚かなかった。
「やっぱり、二回目だとインパクト欠けちゃうわよね。」
「いえいえ、驚いてるのは変わりませんよ!でも、先に丈留さんがいましたから。」
「それもそうね。蓮ちゃんは呼ばないの?」
「じゃあ呼ばせていただきますね。まだ練習中なのであまり綺麗ではないのかもしれませんが……」
「え?どういうこと?」
私は彩綾さんが何か言っていたが、気にせず両手を目の前に掲げた。
「私の一の刀よ、我が身のそばに!」
ぶわっ
刀から舞出た桜の花弁はふわふわと形を消してゆく。そこに、私と両手を合わせながら目の前に舞い降りたのは私の山姥切国広。私の一の刀。
「呼んだか?主。顔色が悪そうだが、疲れてないか?」
そういって、まず私の心配をしてくれるとこは本当に愛おしい。大丈夫、と答えようとした私の言葉を遮ったのは何やら興奮している彩綾さんだった。
「ちょ、ちょっと待って!何それ、めちゃくちゃ綺麗なんだけど!桜の中から降り立ったまんばちゃんもだけど、最後に微笑み合うところとか最高!それにあの呼び方とかすごくいい!」
「そうですか?あれ以上は言葉を短くできなくて…。それに、私の両手で繋ぐ意識を持たないと降ろせないのでまだまだですね。やっぱり、呼び声一つですぐそばに呼べないと緊急時の備えとはいえませんよね……」
そう伝えると、なぜか彩綾さんは固まり、その近侍は頭を抱えていた。
そんな彼女をよそに、笑いをこらえたような顔をした丈留さんがコソコソと話しかけてくる。
『なあ、嬢ちゃんは緊急時にはさっきみたいな指パッチンとかの一動作で呼び出すことも、審神者として習得する技術と思ったのか?』
「いいえ。ただ単に彩綾さんのが綺麗だからやってみたかっただけですよ。さっき言ったのは、ああ言えば彩綾さんはどうするのかなって思っただけなんですけど……」
『見事に混乱してるな。こりゃおもしれぇ』
流石にもう訂正に行くべきだろうかと考えていると、丈留さんの陸奥守がひろに近づいてきた。
「おんしは、おなごの身で生まれたんにゃ?」
「そうだ。悪いか」
「…いんや?悪いなんてほがなこと思っちょらんぜよ。わしの主が、唯一の相棒殿が迷惑かけることもあっつろーが、ま、よろしゅう頼むぜよ」
「こちらこそ、主共々よろしく頼む」
こちらはこちらで、仲良くしてくれているようで良かった。
「ね、ねえ、蓮ちゃん。あの呼び方は私が面白がって考えただけでね……?」
「ふふっ。わかってますよ。ちょっと彩綾さんをからかってみたくて」
「な⁈そ、そうだったの。良かった〜」
「主、座るな。移動するんだろう?」
私が冗談と明かし安心したのか、座り込もうとした彩綾さんを近侍の山姥切が無理やり立たせている。
『そろそろ行くか。付いて来いよ』
「あ、置いてかないでよ!」
なんだか、会議前のかっこよさが少し何処かに行ってしまった彩綾さんだが、私としては親しみやすい。そう考えながら、私は前を歩く二人の後について歩き始めた。
この時は……
いや、この場合はこっちから攻めなければ……
でも、そうすると……
目の前では何人かごとに分かれた審神者達で、激しい討論が行われている。今おこなわれているのは、比較的若い人たちによる討論のようだ。戦局は審神者達の手元にある盤上のコマを動かすことで表している。そこを頭上から撮影した映像が壁掛けテレビに映されることで、誰からも観れるようになっている。
しかし、正直言って……
「あれは何してるのかしら?」
『だな。あれはどう動こうが最終的に、追いつかれる。殿を担う刀の練度によっては危ういな』
二人は、テレビを見ながら短く言い捨てる。確かに、今の盤上で議論されている動きではどちらにせよ追っ手に追いつかれることは自明だ。だが、何故彼らは”止まらない“のだろうか。
「どういうこと?」
「そうですね。ずっと動き続けると体力がなくなるのはわかりますよね。だったら一度立ち止まるのも手だと思うんです。森の中に逃げ込めば、短刀達に上から攻撃してもらって混乱させてもいいし、大太刀がいるあの敵の構成ならばその動きも阻めますから」
『ああ、俺でもそうするな。まあ、迎え撃つのも面白そうだが』
「それができるのはあなただけじゃない?」
しかし、そういう彩綾さんも同じ意見のようでもう盤上は見ず、私たちはテレビの前から少し離れ、ホールの中心で他の状況での戦略や戦術について語り始めた。
ちらりと目線を動かせば、盤上の討論は一応の終わりを見せ、側にいた年配の審神者がそれぞれ助言をしているようだ。こうやって若手を育てているのだと思うと、実に有意義な場所だと思った。
……………だからこそ何事も起こらないのが望ましかった
だがあれだけ予兆があったのだ
何事も起こらないわけがなかった
ドンッ
ビーッビーッ 緊急事態発生!緊急事態発生!時間遡行軍の襲撃を確認!速やかに対処を!繰り返しま……
は?襲撃だと?どうすんだよ!
おい、お前ら現場の状況はどうなってんだ!
も、もしかしてここに遡行軍が来ちゃうの……?
ホールは人々の喧騒で収集が取れなくなっている。
審神者だけではない、ホールにいた役人達も質問ぜめで対応が追いついていない。
ドンッ ガシャーン
そして、外からは何かが崩れたり割れるような音が続いている。
「蓮ちゃん、落ち着いてる?」
「一応は。会場を出るときから何か空気がおかしいとは思ってましたから」
『ほんと、お嬢ちゃんはよく気づいたな。たいしたもんだ』
「そんなことはありませんよ。だって、他の大勢の古参審神者様達も気づいて今行動していらっしゃるじゃないですか』
今、目の前では少しでも対処しようと動く審神者が大勢いる。残念ながら、各自がバラバラに動きすぎてもたついているが。
『嬢ちゃんだってわかってるだろ。上位者会議に集まってはいるものの今動けているのは経験がある古参ばかり。そのほかはむしろパニックを起こして使い物にならん。だが、嬢ちゃんはあいつらとは違う。その事実だけでもすごいんだぜ?』
「でも、今それを話している余裕はないわ。嶺染のこの場を収められる?」
『収めるのはなんとかなるだろうが、そのあとどうすんだ。俺は戦いに行くことしかできんぞ?』
「私だって、結界張らないといけないし……」
「何を言っちゅうがか。そこにおるじゃろ、適任者が」
そう言って陸奥守が指差したのは、なんと私だった。
「え?」
「確かにできるかもしれないけど、まだ蓮ちゃんは今日来たばっかりの、古参達にとったら新参者よ?」
『いや、いいんじゃないか。嬢ちゃんになら俺は命預けてもいい』
驚いて声も出ない私をよそに、彩綾さんは懸念の声をあげた。しかし、それを吹き飛ばす丈留さんの言葉に声を失った。
「な、何言って……」
『……あぁ!もうまどろっこしいな!智蕾のに任せられねぇなら、俺が今信用できるのは嬢ちゃんだけだ。嬢ちゃんに俺の全部預けるから、俺を、その頭で使ってみせろ。俺の相棒が認めたんだ。嬢ちゃんならできる!』
「……そうね。国広、あなたは嶺染のと一緒に動きなさい」
「な!あんたの守りはどうするんだ!」
「私はここで結界を張る。だから、外から一人たりとも敵を連れてくるんじゃないわよ?」
「っ承知した!」
「彩綾さん……」
「ゴメンね、蓮ちゃん。でもこれが多分最良の選択。ここからは、私の友達として一緒に戦ってくれない?あなたの安全は私の誇りにかけて守るわ。だから、白蓮。あなたに私たちを率いてほしい」
ああ、覚悟を決めた人の姿はどうしてこんなにも美しいのだろうか。何度か見に行った弓道の試合。大将の最後の一射に向かう彼のような顔をしている二人を見て、私も覚悟を決めた。
……正直、まだ私が言ったところで何人の人が話を聞いてくれるかわからない。でも、命を預けようとしてくれる二人、それに今もずっと力強い瞳で私を見つめているひろに見合う働きを返したいと思った。
「わかりました。私がお二人の命お預かりします!」
『よく言った!そうと決まれば……陸奥!』
「わかっちゅう!」
バンッバンッバン
丈留さんの合図で空に拳銃を撃ったことで、周りの注目は一気にこちらに集まった。
『落ち着け、お前ら!俺は嶺染本丸の丈留だ。一応戦闘系として名が通ってるはずだ。このまま各自で動いていても埒があかねぇ。とりあえず戦える奴は俺のところに集まりやがれ!』
「智蕾本丸の審神者彩綾と申します。今から一分後にこのホール一帯に結界を張り安全地帯を確保します。結界術が得意な者は私の元へ」
流石に有名な二人だ。その声に従って審神者たちが動き始めた。
「それ以外の審神者達、それに全体の指揮は誰がやるつもりなんだ?まさか、嶺染のがやるわけないだろ?」
『んなわけないだろ。こいつにやらせる』
丈瑠さんがそう言って私を前に出すと、また周りがざわついた。
「は、正気か?この子にやらせるって」
「だから、」
「丈留さん。ここからは私が」
信じられなかったのか、丈留さんを疑惑の目で見る彼に返そうとしたのを私は止めた。今からこの人たちも私の指揮下に置くのだ。すべて任せてはいられない。
「信じられないなら、それでも構いません。ですが、千木本丸の審神者様、あなたがどう動こうが私はどうでもいい。ただ、この二人に私が指示を出すことは決まっていますから、そのつもりで」
にっこり笑ってそう言うと、本丸名を知っているのに驚いたのか口を閉じたのを見て、私も周りに呼びかける。
「私は、今日来ている審神者の簡単な特性に関してはすべて把握しております。だからこそ、指揮をとるよう頼まれました。…あなた達が私を信じられなくても、私は二人を生かし自分も生き残るために動きます。ともに生きる気持ちがある人は私の元へ来てください。一分待ちます、それを過ぎたら行動を開始します!」
思いっきり啖呵を切ってみたはいいものの、不安で目をつぶって俯いた私には1分が長く感じた。
「主、一分だ。」
ひろの声に顔を上げると、目の前には多くの審神者達がいた。
「うそ……」
「何言ってんだ、嬢ちゃん。あんたが言ったんだろ。生きるために動くって。俺たちだって死にたいわけないからな!」
先ほど声をかけてきた千木本丸の審神者が代表して答えた言葉に、後ろからいくつも賛同の声が上がる。
私は思わず目尻に滲んだ涙をぬぐい、大きく頷いた。
「はい。絶対に生きて帰りましょう、私たちの本丸へ!」
「「おおぉ!!!」」
その時私たちは、やっと一つにまとまった。
〜もう1つの戦場〜
「あちらはなんとかなったようですね」
私は声を揃えて団結した審神者達をみて1つ息をはいた。こちらは襲撃によってやられたシステム復旧で手を取られていたから、もし審神者達がパニックなど起こしていたらと思うと恐ろしい。しかし、審神者達は自ら敵に迎え討とうと動き出し、こちらのシステムも今できる限りで復旧させた。
「さて、ここからは私たちも動かなければ。なき、前田頼むぞ」
「…まかせて」
「お任せください、主君」
私の愛する人も頑張っているんだ。あの人を本丸に無事返すためにも、絶対にやり遂げる。