争乱 後日談 3注意事項
【ATTENTION!!】読む前に確認お願いします
・「刀剣乱舞」の二次創作作品です。
・原作登場刀剣男士の女体化があります。
・カップリングとして「くりんば」が含まれます。
・モブ(オリジナル主人公及び登場人物)がかなり話します
・創作設定が多くでてきます
・文章は拙いです
・ご都合主義です
上記の点確認の上、自己回避よろしくお願いします
なんでも許せる方のみお楽しみくださいませ!
後日談 後編
「そうですね…。話を振られておいて何も言わない訳にはいかないのですが、正直私は白蓮さんに言われた通り救護所の設置と、傷ついた審神者と刀剣の治療をしていただけですね」
「そうですか。いえ、こちらこそ役人がするべき仕事の一つを担っていただいていたのです。こちらとしては十分の働き、いえ助力でしたよ。……そう言えば、救護所結界の中心にありましたよね?彩綾さんはどうですか?」
困ったように眉根を寄せる露璃さんに龍樹くんは優しく声をかける。そしてすぐ彩綾さんへと話題を振るが、龍樹くんは一体どうやってここまで情報を集めたのだろうか。流石にひろの報告書にも保健所の場所などは書かれていなかったはずなのだけれど。
「私?そうねぇ、ホールの結界と建物自体の結界くらいしか張ってないわよ?だからそんなに働いてないかも」
「…前言を撤回いたしますわ。私にもまだ話せることがあったようです。彩綾さんが結界を張ったのは事実ですが、あんな軽い口調で言って良いものではございません。まず、第一に張られたホールの結界。これは他の審神者の皆様に手伝ってもらったようですが、力の調整などは彩綾さんが一人で行っていたようです。それと……」
「ちょっ、霞ちゃん!そんなことは言わなくて良いの!それに貴方別に視る素養なかったわよね?何でそれがわかってるのよ!」
あ、今墓穴掘ったような。まわりの人間がそう思っている中、露璃さんは冷静に言葉を並べた。
「結界術士も倒れると私の元へ運ばれました。そして、患者の話を聞くのは癒し手の役目です」
「彩綾さん、諦めてください。自分は彼女の話を聞くと決めましたので」
「そんなぁ」
「さて、話が逸れましたが続けましょう」
「ええ、わかりました。建物の結界は五重だったそうです。術士の皆さんが彩綾さんが要だからできることだとおっしゃっていました。後は建物自体の結界ですね。これは術士たちの力は使われずに彩綾さんが独自で張ったものらしいので、術士の皆さんも驚いたそうですよ。途中で神様の助力もありなんとかなりましたが、検非違使が出現し最後の戦いが中盤に差し掛かる時にはそれも切れかけ、最後はご自身の力全てを使って張ってらしたので…。嶺染本丸様がいらっしゃらなければ止められませんでしたわ。近侍も負傷しておりましたし、こちらの声は聞こえてなかったようなので」
「ああ、最後は自分も確認しています。丈留さんが彩綾さんを抱き上げて運んだんですよね?」
『んあ?ああ、運んだぞ。立ててなかったからな』
「あの時は助かったわ、嶺染の」
『気にすんな』
普段通りのやりとりだが、私はふと疑問に思って横に座る龍樹くんの方を見上げた。
(もしかしてだけど、抱き上げたのって…)
(もしかしなくてもお姫様抱っこと言われるやつでした)
(やっぱり…)
私と龍樹くんはここに来ても例の無意識の行動を認識してしまい、ため息をつきたくなったが、戦闘系審神者の方々は聞こえていなかったのか口々に感謝の言葉が溢れる。
「ってことは智蕾のが拠点を守ってくれてたってことだよな。大変だったろうけどありがとうな!」
「全くだ。我ら戦闘系審神者が戦場に出られるのは、背後に守るものがあってこそ。それを懸命に守ってくれた貴殿の行動は素晴らしい」
「それほどでも……なんて、ちゃかしたいとこだけど、あれは私の仕事よ。貴方達に戦場という役目を果たす場所があったように、私たち後方支援系の術士達には拠点防衛という戦場があった。それだけのことで、それこそが私や霞ちゃんのあの場での役目だった。それに、私や嶺染のを生かすことを目指すって言ってくれた蓮ちゃんが私に頼んだことだもの。かっこいいとこ見せたいじゃない?」
真摯に自身の役割を語る彩綾さんは、最後にこちらへ向けてウインクをして話を纏めた。
私はそれに小さく頷くことしかできなかったけれど、その行動以上に伝わったと信じている。さすが上位者として認められている審神者だ、そう感じていた次の瞬間、空気が変わった。
『ん?ってゆーことは、智蕾の。あんた、嬢ちゃんの号令聞いてねぇんじゃねぇか?』
ボソッと落とされた疑問に、彩綾さんの耳がピクリと動いた気がした。
「はい?今、嶺染の、なんて言った?」
『だから、智蕾のは嬢ちゃんが検非違使との戦いの前に言った号令、聞いてないんじゃないかって言ったんだよ。検非違使が来るってわかった頃には結界に集中してたんだろ?だったら聞こえてないんじゃねーかなって』
静かになった部屋では丈留さんの語る声のみが聞こえる。私は話終わった後も静かな彩綾さんの方を思わず確認した。
「さ、彩綾さん?」
「……んで」
「え?」
「なんで蓮ちゃんのそんな大事な場面を私は逃してるのよ!ああ、もう最悪じゃない!ねぇ、蓮ちゃん。後でいいの。もう一回それ言ってくれないかしら」
「え、ええ。うろ覚えなので、全て正しく、とは言えないかもしれませんが」
「それでも良いわ、ありがとう!もう、なんでそんなタイミング逃すかしら私!」
……私が内心さっきの感動を返して欲しいと思ったのも無理はないだろう。顔にも出ていたのか、露璃さんが何度も頷くのが見えて、私はため息をついた。
「えーっと。話を戻しますよ?内部の状況はわかりました。戦場の方の動きはどうなっていましたか?」
『それは俺んとこ集まった奴らはすぐさま戦場に出たぜ?お前らが言うのが本当なら、システム障害が起こる前に自前の武器が手元にあった奴らなんだろうと思うがな』
「俺は軍師の命令で、短刀や脇差を連れて各方面の戦闘の助力と情報集めだな。まあ、俺は刀達に命令を出したら、もう一回馬小屋に行ったんだけどな。警報が鳴ったのもあって、何もせずにホールに戻って来てたし、足も欲しかったってのもあるし」
「俺の方も似たような感じだな。指揮官殿に命じられた通り、打刀以上の刀達を均等に配分して、各方面の戦闘の補助をしていた」
鷹泰さん、弥勒さんと続く報告に龍樹くんもわかっていた情報と同じだったのか頷きながら聞いていた。あと、しれっと人のことを軍師とか指揮官とか大層な名前で呼ばないでほしい……。
『ま、途中でこんえもんに聞いたら武器受け取れるってわかったから、武器なかったやつも参戦できたみたいだけどな!』
「そういえば、あん時短刀たちが走ってきたことで、こんのすけの機能が復活しているのを知ることができた。千木のところの働きだろう?感謝する」
「いいっていいって!あれが俺の役目だったんだからさ」
弥勒さんにお礼を言われて、鷹泰さんは少し照れながらほおを掻いた。
「そこらへんは、貰っていた資料通りですね。では白蓮さんはその指示をしていた、と言うことでよろしいですか?」
「はい。途中で、彩綾さんのところに行くと蛟様がやってきて助力していただいたりはしましたが、概ねその通りです」
「その後、丈留さんの伝令と偽った者がきて、最前線へ行く、と」
「そうですね」
まあ、あの場にいたのは彼の護衛刀であるなきだ。状況の説明は必要ないだろう。
「ふむ。ではこれで検非違使出現前までの見直しは終わりましたね。次は検非違使との衝突、そしてこの戦いの終わりまでを聞いていきたいと思います。あと少しお付き合いください」
座りながらではあるが軽く頭を下げた龍樹くんにみんな軽く頷く。確かに、ここからはこれまで以上に濃い内容だった。私は心の中で、最後の戦いを思い起こしていた。
「検非違使が出現する予兆である青に近い光を発する時空の歪みが出た時、この中でどれくらいの人が認識していたのですか?」
『俺と嬢ちゃんはさっきも言った通り一緒にいたから近くで確認したぜ。ほかのも戦場にいたなら見れたんじゃねぇか?」
「俺も見えたぞ。移動してると向かってた先に見えたからな」
「俺も確認した。少し遠くだったが、その場の戦いが落ち着いてきたのもあって、審神者を集めて歪みの方へ行こうとしたのだ」
「私たちは実際には見てないわ。結界の中にいたから。でも、短刀たちが伝えてくれたから検非違使がくるっていうのは知ってたわよ?そうだったわよね、霞ちゃん」
「ええ」
私以外の人が口々にあの時の状況を話していく。やはり、結界内では外の状況を見て確認することは難しかったようだ。始めに短刀たちでの情報網を作っていて良かったと実感する。すると、次に口を開いたのは丈留さんだった。
『んで、嬢ちゃんが龍王と取引して疲れがとれるようにしてもらった後、検非違使とぶつかったってわけだ。その後、なんとかあいつらを倒した俺らは最終的に死亡者なしという結果で襲撃を乗り越えたってわけだ』
「取引ですって⁈蓮ちゃんそれ大丈夫なの!」
『俺が隣にいたんだぞ?やばい取引なんてさせるわけないだろーが』
「……それもそうね。悪かったわ。続けて、嶺染の」
『おう。それから、龍王に一度料理を作るって条件で加護を得たわけだが、みんな聞いたろ?嬢ちゃんの声」
丈留さんの呼びかけに彩綾さん以外がうなづく。再び己のみ聞いてないと実感したのか少し膨れているが何も言わないところを見ると、これ以上丈留さんの話を邪魔するつもりはないのだろう。
『でもよ?あん時、嬢ちゃんは少しでも安全を確保するのと、声を届けるために高台に行ってたと俺は思ったんだが、なーんで帰ってきたら怪我してたのか教えてくれるよな?』
そう言ってこちらを見やる丈留さんの顔は笑ってはいるのだが、目は全く笑っていなかった。
『ついでに、愛し子の怪我も関係してんだろ?ちゃんと話しやがれ』
周りもどういうことだと言わんばかりに龍樹くんを見ている。かくいう私も怪我のことを丈留さんが知っていたとは思わず、龍樹くんを見るがその顔には諦めの表情が浮かんでいた。
「……はぁ。わかりました、お話ししましょう。白蓮さんも話してくれて構いません」
「いいの?」
「ええ。どうせ、明日には公開される情報です。まぁ、今から話す内容ほど細かいところまでは知らせませんがここにいる方々なら大丈夫でしょう」
龍樹くんはそう言い切ると1つため息をついて話を始めた。
「自分は襲撃が起きてから密かに首謀者を探していました。なぜなら、こんのすけ及び各種システムの復旧をしていた際に、この空間にいる審神者からのアクセスによって結界へわずかなほころびが作られていたことがわかったからです。そのため、復旧が終わり次第自分は戦場や救護所様々なところで関与の疑いがある審神者を探していました。というもの、アクセスがわかりやすすぎて、あまり頭が回るタイプの犯人ではないと感じましたので、見つけられるだろう、と」
「「「「「は?」」」」」
「それで、何人かに絞れたものの候補は意外と多くてですね。どうにかして絞れないものかと考えていたところ、白蓮さんが一人離れました。指揮官を潰すのは戦の定石。自分だったらこんなチャンス逃しません。それは白蓮さんだって考えているはず。それなのに動いたということは、これは罠なのだろうな、と」
「「「「「え?」」」」」
「なので、自分も彼女を追うように高台に行き、失敗した時用に集まっていた奴らを後ろから締め上げた、ということです。途中からは鳴狐が手伝ってくれたのですが、それまでは一人で二十人弱を相手に林で奮闘していたので、少々怪我をしてしまいましたが」
「あれは、少々とは言わないですからね!目を覚ましたら、龍樹くんが血で汚れた包帯をつけてるからほんっとうに驚いたんですから!」
そう、私は龍樹くんが怪我をしているなんて思ってもいなかった。なのに朝目を覚ましたら、身体中に血が滲んだ包帯を巻いた彼が寝ているのだ。そのせいで、朝一番からショックで悲鳴をあげてしまい、すぐさま寝乱れたままの格好でひろと伽羅が部屋に駆け込んできたのは本当に申し訳なかったと思う。
「その件は、すみませんでした。でも、あれで障害物の多い場所での戦いに不慣れということがわかったので、新しく武器を使えるようになろうかと。刀や弓だと当たってしまうので」
『だから、太ももに短刀があるのか……』
「ほんと、よく気がつきますよね。ええ、今護衛刀に教えてもらっているんです。最初は微妙な顔をされましたが」
『そりゃされるだろうよ!ったく。それで、嬢ちゃんの怪我はなんでだ』
丈留さんは、頭をがしがしと掻きながら私に質問をふる。心なしか疲れたような表情なのは気のせいだろうか。
「ええっと。号令を出した後戦場の様子を見ていると、一人の男性が来られまして。安全なところへ移ろうと言っていただいたのですが、私はあの場で全てを見届けるつもりだったので断ったんです。そうしたら、いきなり斬りかかられまして」
「「「「「待て、何でそうなる/そうなるの⁈」」」」」
「なぜかと言われると、その人が首謀者の一人だったからですかね?丈留さんなら覚えていると思いますが、最初に時空の歪みを見て検非違使と断言された方ですよ?あの人、明らかに戦闘系という体つきではなかったので目についていたのですが、やっぱり襲撃に関与していたんですよね」
「ちょっと嶺染の!何で、あなたは気づいてないのよ!」
『無茶言うな!あの時は戦場が一気にざわついたんだ、そんなのに構ってられるか!』
何やら二人が言い争っているが、私は気にせず話を続けた。
「でも、斬りかかられたのは彩綾さんの五虎退が止めてくれて。私も危うく崖の方にバランスを崩したんですけど、虎さんが支えてくださったので無事でした。ですが、その時変に足を動かしてしまったのか、捻挫してしまって。それで、高台に迎えにきてくれたひろと丈留さんたちのところへ帰った時支えてもらっていた、ということです」
全て話し終わって周りを見ると、私と龍樹くん以外なぜかみんな机に突っ伏していた。
「み、みなさん?どうかしましたか?」
「いや、どうかしたとかそういう問題じゃねぇだろ!なんで、あんたらそんな危険なことになってて何も言わなかったんだ!」
「そうだぞ。まさか俺たちより若い貴殿達がそのような危険な目にあっていたとは……」
「そうですわね。愛し子さんはお会いもしてませんでしたからしょうがないですけれど、白蓮さんに関しては、私も帰った後でしたから怪我のことなど知りもしませんでしたわ」
「そんなの私もよ。ごこが救いに間に合ったとはいえ、ちゃんと命の危機じゃない……」
どうやら、先輩方には大分驚きと心配を与えてしまったようだ。あの時は最善のことをしたと思っていたが、こうして自分より経験のある審神者達に嘆かれては、もう少しやりようがあったかと思ってしまう。
『まぁ、おめぇらの考えもわかるし、あん時の動きとしては一理あったんだろうよ。でもな、こうして俺らは後で聞いて後悔してんだ。だから、もうちょっと先輩にも頼ってくれ、な?』
丈留さんに困ったような顔で言われてしまえば嫌とは言いにくい。龍樹くんもそう感じたのか、眉を下げながら口を開いた。
「そうですね、なかなか自分の立場では難しいですが努力はすることにしましょう。…ああ、さっそくですが頼みごとがあるんです。聞いてくれますか、丈留さん」
『お?いいぜ、言ってみろよ!』
その時の龍樹くんの顔は過去で一番綺麗に作られた笑顔だったと、私は思った。
「それでは近日中にあの正体不明の刀剣男子お連れくださいね?ああ、お話を伺うのは自分なので、いつものように蛟様の仮殿に来ると連絡さえいただければ時間は合わせますので」
『うぇ⁈』
「しっっっっっかり吐いていただきましょう。ちゃんと説明考えておいてくださいね?」
『え?は?そんなこと急に言われても「ちゃんとあなたの相棒殿には連絡の上、許可をいただきましたので大丈夫です」って、あいつ知ってんのかよ。……わかった』
先ほどの頼りになる審神者といった威厳はどこにいってしまったのやら、今は肩を落としてしまった丈留さんは明らかにしょげている。しかし、そんなものはスルーして、龍樹くんはこの聞き取りの終りを告げる。
「これで、あらかたの経緯は聞くことができました。本日はご協力ありがとうございました。これの報酬として、この店自慢のディナービュッフェを今日は予約していますので、満足いくまで食べてお帰りください。女性陣のためにケーキビュッフェも、男性陣のためにお酒も各種揃えてあるはずですからご存分にお楽しみください」
そう言うや否や、先ほどまで沈んでいた丈留さんが勢いよく立ち上がった。
『なに!酒があるだと!よっしゃ、千木の、六合の、いくぞ!』
「うおっ!わかったから、首に腕かけるな!」
「ふむ、どのようなものがあるか楽しみだな」
それに女性陣も続いていく。
「うわー、政府も太っ腹ねぇ。ケーキ何種類あるのかしら、楽しみだわ!」
「そうですね、でも料理も楽しみです。ここの評判とても良いそうですし」
私たちも二人に続くように部屋を出る。ふと、思うことがあり龍樹くんを見上げると彼もこちらを見ていたのか目があった。
「なーに?」
「いえ。白蓮さんこそ、何か用があったのでは?」
「あー。あのね?今日、改めてみなさんの視点であの襲撃を見てみると、本当にみんながそれぞれの場所で自分の役割を果たせたから、あの勝利があったんだなって、なんかじーんときちゃって。先輩ってずるいなあって。私が急に名指しして頼んだことなのに誰も文句言わず役割を果たしてくれたんだもの」
そう言うと、龍樹くんは私をエスコートするように腰に腕を回し、より体を密着させた。
「わかります。俺も、あの人たちからしたらまだまだ若輩だと感じました。でも、不思議と悔しくはないんですから、ずるい大人達ですよ」
二人の視線の先には先に選び始めた先輩審神者達の姿がある。「彼らに劣らぬ人に」そう決意した二人は、待ちくたびれた彩綾達の声に応えるように彼らの方に歩き出した。