演練日和 1注意事項
【ATTENTION!!】読む前に確認お願いします
・「刀剣乱舞」の二次創作作品です。
・原作登場刀剣男士の女体化があります。
・カップリングとして「くりんば」が含まれます。
・オリジナル主人公がかなり話します
・創作設定が多くでてきます
・文章は拙いです
・ご都合主義です
・書いたのが数年前なので極が実装していないことになっている表記があります。ご了承ください。
上記の点確認の上、自己回避よろしくお願いします
なんでも許せる方のみお楽しみくださいませ!
side 山姥切国広
それは五虎退の言葉がきっかけだった。
「あ、あの。最初の第一部隊で久しぶりにた、戦いたいです!」
本日の出陣において百個目の誉をとった五虎退。
そんな彼へ「ご褒美は何が良いか」と尋ねた主への答えは、なんとも思いがけないものだった。
「最初のって、初期第一部隊のことよね?うーん、今の戦場だとなんとも手応えないって言いそうだしなぁ……」
初期の第一部隊といえば、俺や五虎退を含め大倶利伽羅、乱藤四郎、骨喰藤四郎、獅子王の六振りだ。この六振りで孤立した本丸を乗り切ったのだから、他の奴らと比べれば結束は固いし付き合いも長い。しかし、獅子王はカンストして久しいし、他の五振りは極修行を終えているのでそれぞれの部隊で出陣している。全員で戦う機会は確かになくなってしまっていた。
「それなら演練に行けば良いんじゃないか?」
「演練か……確かにそれならちょうど良いかも。終わった後万屋に行って久しぶりにみんなで過ごすのも悪くない、かな」
「それに、ちょうど政府の方に直接持ち込んで出さなければならない書類もあるからな。都合がいいといえばいいし。俺も久しぶりにみんなで共に戦いたい」
一番苦労した時を共有した仲間だ。五虎退の提案とはいえ俺自身も実現してほしいと思った。
そんな空気を感じ取ったのか主は持っていた書類を置いて、にっこりと笑った。
「もう、私が反対すると思ったの?行きましょう演練!伽羅は苦手だって言ってたけど、今回は五虎退の誉のご褒美だもの。文句は言わないと思うし」
「あ、ああ。俺もそう思う。あいつはなんだかんだ短刀達に弱いから」
そう言って今は内番に精を出しているだろう恋刀を思うと自然と口角が上がった。
我が恋は顕現したのが初期ということを差し引いても優しい刀だ。子は優しい人に懐くと言うが、短刀たちにもそれは当てはまるのか大倶利伽羅を慕う刀が多い。
「な、なら僕、乱兄さんや骨喰兄さんに伝えてきます!」
「ええ、行ってらっしゃい。ああ、でもいつ行けるかな。出陣の予定も組み替えないといけないし」
「それなら明後日がいいんじゃないか?俺と伽羅はもともと出陣だったが、代わりは兄弟に頼もう。伽羅も伊達組の奴らが誰か休みだったはずだから頼めると思う。短刀達は夜戦の予定だが、練度上げ中の奴らと変わればいいし、獅子王は内番だったはずだ」
つらつらと皆の予定を話す俺に主は驚いたような顔を向ける。
——何か驚くようなことをした覚えはないが、どうしたのだろうか
「みんなの予定覚えてるの?伽羅のことはわかるけど」
「いや、流石にそれは無理だ。この前の非番の日、長谷部にぱそこんの使い方を教えてもらってな。主はすけじゅーりんぐとやらを使っているだろう?それを確認しただけだ」
「……なんだか、うちの妹がどんどんハイスペックになっていく気がするわ。これで、伽羅も電子機器は使いこなすんだから不思議よね……」
「ああ、伽羅はすごい。俺が部屋で長谷部の課題に悩んでいた時も助言してくれたからな」
「長谷部、課題なんか出したの。本格的なのね……」
呆れたような顔をしているが、長谷部が俺に教えられるほどぱそこんに慣れているのは、主こそが最も使いこなしているからだ。
元は人が開発し、使ってきたものなのだから当たり前のことではあるが、旦那の龍樹兄さんも得意な方なのだからあの主命厨が覚えないはずがないのだ。
「そんなことはどうでもいいだろう。今日の仕事もあらかた終えたし、夕餉を食べに行こう」
「そろそろそんな時間か…。そうね、今日のご飯は何か知ってる?」
「当番は堀川の兄弟がいたはずだが……」
そうして俺と主は広間へと歩いて行った。
side 大倶利伽羅
「いやー久しぶりに来たな演練場!」
「確かに。最近は来てなかったし」
獅子王を先頭に久しぶりに演練場の地に足を踏み入れた俺たちは、戦場とは違うがやはりどこか落ち着かない空気を肌で感じていた。
とはいえ、今は他の部隊が赴くことが多いとはいえ未知の場所ではない。そのうち慣れるだろう。
「主、まずは政府のところへ行かなければならないのでは?」
「そうだった、ありがとう。蜻蛉」
今日の主の護衛はうちに最初に来た槍でもある蜻蛉切だ。普段なら、俺やひろが護衛につくのだが今日は戦う側なので変わってもらったのだ。
かの槍もうちの本丸に来た初めての槍ということで、練度上限を迎えて久しい。その護衛姿はどうにも威厳がありすぎる、と思うのは俺の欲目だろうか。
「お、なら俺が先に受付しといてやろうか?その方が用事終わったらすぐ戦えるだろ!」
久しぶりの古参での出陣ということもあって、気分がいいのか獅子王が提案する。獅子王についていくと言った骨喰もその場に残し、提案に甘えた俺たち一行は政府の建物へ向かう。
「じゃあ、これから私とひろ、それに蜻蛉は用事を済ませに行ってくるから少し待っていてもらえる?」
そう言って書類やら何やらを持って一人と二振りは建物の中に入って行った。待つことになった俺たちは暇をつぶす場所を探して建物の前にある広場に向かった。
「うわぁ。すっごい綺麗!ねぇ、伽羅兄、あそこ花畑だよ!」
「ほ、ほんとだ。あ、待って乱にいさん!」
前方に広がる美しい花畑に引き寄せられるように短刀二振りが走って行った。二振りとも極のためすぐにその姿は見えなくなってしまった。あっけにとられて立ち止まっていると、足に何かが絡まる感触がある。
グルゥ
そこで俺を見つめるのは五虎退の虎だった。絡まっていたのはこいつの尻尾のようで、その目はまるで行かないのかと尋ねているようだった。俺は頭をひと撫でしてやってから花畑に向かって虎と共に歩き始めた。
「確かにすごいな」
思わず感嘆の言葉が出るほど、その花畑は素晴らしかった。その花畑の中央で何やら座って作業をしている二振りを見つけた俺はできるだけ花を踏まないようにそこへ近づいた。
「あ、伽羅兄来たんだね!ねぇ、これどう?うまくできてると思わない?」
乱が見せてくるのは白詰草を編んだと思われるものだった。まだ途中なのか少し先がほつれたようになっている。
「……花冠でも作るのか」
「そう!ここの花は花の精みたいなのが管理してるみたいで、さっき話しかけたらいくらでも採っていいって言ってくれたんだ〜!まぁ、帰るときに神力をちょっと分けてくれたら嬉しいとは言ってたけどね」
だから虎くんも座って大丈夫だよ!と言う乱の言葉に安心したのか、先ほどまで立ったままだった虎もゆっくりと伏せた。俺はその腹にもたれかかるように座り、しばし休むことにした。
「乱にいさん!こ、ここってどうすれば……」
「ん?ああ、それはね、ここをこうすれば……」
「あ、わかりました!」
「よかった。じゃあ、あとすこし!」
二振りの兄弟は楽しそうに冠を完成させようと奮闘している。それを眺めているだけでも、心が休まる気がした。背もたれにしている虎も気持ちよさそうに寝息を立てている。
——だが、あいつに似合うのは白い花ではなく、
ふと、そう思って周りを見渡すと生き生きと花開くそれに俺は目を奪われていた。
「乱、ごこ、伽羅〜!用事終わったぞ〜!」
呼びかける声に顔を建物の方向へ向けると、駆けてくるのは俺の大事な刀。その声で気付いたのか乱と五虎退もすぐさま駆け出す。先ほどまでまどろんでいた虎はいささか動作が鈍く、その体に付いた葉をとってやると同じく駆けて行った。それについて行こうとしたとき、あの花の前にうっすらと人型をとったものが見えた。少し考えて俺はその花の前に膝をついた。
「……一輪もらっていいか」
シャラン
その言葉に答えたのかはわからない。だが、己からほんのわずか神力が奪われたのがわかると、手には求めていた花がのっていた。
「感謝する」
その言葉を最後に、俺もひろの元へ向かう。内心、今度は二人で来ようと思いながら。
〜***〜
少し歩くと、そこにはふた振りに捕まったひろとすぐ後ろで微笑む主と蜻蛉切の姿があった。
「でねっ!この花冠を作ったの!だから頭下げてよ、主さん!あ、でも今日は和服だから座るのは難しいかも……」
そう言うと少し曇ったふた振りの表情を見てしまった俺は思わずため息をついて、まずは乱を抱え上げた。
「えっ!伽羅兄?」
「…これなら届くだろう」
「えっ!」
「早くしろ」
「うん!ありがとう、伽羅兄!」
そのまま主の正面にまで連れて行けば、ちょうどいい位置に来た頭にそうっと花冠を乗せた。
乱の器用な手で編まれた花冠は非常に良い出来で、母親譲りの美しい金の髪に映えている。
「ふふ、蜻蛉どうかしら?」
「はっ、よくお似合いです」
「ありがとう。とっても嬉しいわ、乱。作ってくれてありがとう。それで、ごこはそれどうしたいの?」
主から問われた五虎退は、その視線を手の中の花冠と俺とひろの間できょろきょろさせる。
これはそういうことなのだろう、俺は乱をおろし五虎退を抱えた。
「伽羅兄、あ、ありがとうございます!」
「ほら、渡すんだろう。ひろ」
「あ、ああ」
そう言って恐る恐る近づいてきたひろの頭に冠を乗せた五虎退はぱあっと嬉しそうに笑った。
「ひ、ひろ姉さんの分は僕が一人で作ったんです!だから、渡せて嬉しいです…!」
「そうだったのか。ありがとう、ごこ。とても嬉しい」
そう言ってほのかに頬を染め笑うのだから俺の恋刀は愛らしい。だからこそ、それをさらに着飾りたくなるのは当たり前のことだろう。そう内心でひとりごちる。
俺は五虎退を抱えていない方の手に持っていたあの花を、ひろの陽だまりのように美しい髪に差し入れた。
「え?伽羅、これは……」
「ひろに似合うと思ったから、もらってきた」
ひろの金糸と共に揺れる名も知らぬ花は、その橙色の花弁を生き生きと伸ばし、戦装束の鉢巻の色と相まって我ながらよく似合っていると思った。
「ふふっ。オレンジのガーベラって伽羅もいい花を贈るのね」
ひろの髪に差し込まれた花を見て主がくすくすと笑いながら近づいてくる。ひろはなぜそんなことを言うのかわからないようで、首を傾げている。かく言う俺も花の名前さえ知らなかったのだ。意味がわからず主の言葉を待つ。
「いい花?」
「どういうことだ」
「この花の花言葉は我慢強さ。もともと花自体に前向きって言う意味があるから、ひろにぴったりだなって思ったの」
そう言われてようやく腑に落ちる。確かにひろは自分の中でいろいろなことを背負いこんで我慢することが多い。それはときには悪い影響を出すこともあるが、どんな境遇でも自分の中で消化して、前を向いて進み続けているひろにはぴったりだと思った。みな同様に感じたのかうんうんと頷いている。そんな中、当事者であるひろが俺の方に近づいて上着の裾を引いた。
「なんだ?」
「花、嬉しかった。ありがとうな、広光」
「……俺が似合うと思って勝手にしたことだ」
「ふふっ。うん」
そんなやり取りをしているうちに、演練の時間も迫ってきていた。蜻蛉切に演練場に向かおうと促され、そのままついて行こうとすると、後ろから何やら主と話していたはずのひろが早足でやってくる。顔は先ほどよりもだいぶ赤くなっていて、どうしたのか聞いても「なんでもない」と言い張る。まぁ、主は笑っているから、また何かからかわれでもしたのだろうが。結局ひろの赤面は演練場に着くまで治らなかった。
〈あの時の内緒話〉
——ねぇ、ひろ。実はね、あの花には別の花言葉もあるの
——?どんなやつなんだ
——外つ国の花言葉なんだけどね?「あなたは私の太陽」って言うの。なかなか情熱的な愛の言葉だと思わない?
——あいっ⁈
——無意識でもこんな言葉を持つ花を選んじゃうんだから、さすが伊達男と呼ばれる刀。…愛されてるわね、ひろ
——〜〜〜〜〜〜〜っ!