成就しなかったはなし超特価とでかでかと書かれたそれを食い入るように見詰めていたのは数日前。その場で色んな計算をして、購入に至り、本日無事入荷した。ただでさえ狭い部屋に入れるにはかなり大掛かりな装置で、それでもどうしてもここに置きたかったから気に入っていた同人誌もお世話になったエロ本もまとめて捨てた。
設置したものを満足気に眺めたのもまた数日前。鎮座したそれはううんと小さく音を立てて、部屋の中のパソコン達と同じように呼吸をしている。時々ごほんと音を立てるのは、性質上仕方がない。今日も今日とて鼻歌交じりでプログラミングを始めた。
「ご機嫌なんですね」
「まあね」
大好きな人が問う。
鼻歌ついでに調子をつけて、微笑んだまま頷いた。
「それはそれは」
ふふと笑った声がする。以前なら振り向きもしないで会話をするなと叱られていたけれど、もう諦めたらしい。宝物がまたごほんと音を立てた。
「そちらはご機嫌いかがですかな?」
「ふふ、そうですねえ。聞きたいですか?」
柔らかく笑った声にようやく振り向いて、美しいその人の顔を眺める。否、美しい人魚を眺めた。
「最低ですよ、お陰様で」
怒りを湛えた瞳が凄惨で、それが美しさを引き立てる。屈辱、怒り、恨み、そんなものが彼をより飾り立てて僕好みへと変化させた。
ああ、やっぱりキミには負の感情が良く似合う。
一目見た時から君にピッタリだと思ったんだ。この大きな水槽。丁度君一人が入ってピッタリのサイズ。大丈夫、誰にも気付かれないようにプロテクトをかけてあるし、キミのアンドロイドも置いてきた。どちらも僕の渾身の作品だ。だから安心して、僕だけを見ていて。
両想いにならなかったイデアズ。