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    TO麺×$ 番外編5 ここのところ何度か出演しているお昼の番組は、あちこちの街の商店街を歩いて食レポをするというもの。正直、カロリーコントロールが効かなくなるのであまり乗り気ではないのだけれど、まだ仕事を選べる立場でもない。ロケバスから降りたアズールが溜息混じりであったのにはカリムとリドルももう慣れたもので、あまり気にせずにさっさと先を歩いていく。
    「今日はおかしの街らしいよ」
    「へえ! このコーナー惣菜が多いのに珍しいな」
    「おかし……」
     ますます気が重いなと彼女らから一歩引いたところでお腹を摩った。おそろいのTシャツにショートパンツ。くるぶしソックスとスニーカーはあまり好きじゃないのだけれど、イデアはしきりに「新鮮でいい」と言っていたからきっとファン的には『あり』なんだろう。それでもやはり、露出はできるだけ避けたいのが本音だ。
     けれど、やりたくない、と思ってしまうと全てが気に入らなくなってしまう。これではダメだと思い切り息を吸い込んで胸を張った。
    「お、復活したな」
    「そうそう、僕たちはプロだからね」
    「わかっています」
     振り向いた二人が笑って、膨らませた頬から空気を抜く。そう、プロなのだから、嫌だとかやりたくないとかそんな私的な理由で手を抜いていいわけがないのだ。高い所で結ったポニーテールを揺らして、スタッフ達の待つロケ場所へと向かう。カロリーはあとで調整すればいい。仕事は仕事で一生懸命やるまでだ。

     色違いのバンダナを、アズールはポニーテールに、リドルはサイドテールに、カリムはカチューシャアレンジにしてカメラの前に立つ。おかしの街というだけあって、商店街のあちこちに定番から変わり種まで色んなお菓子があった。予め決められていた店だけではなく、美味しそうなものばかりで正直目移りしてしまう。少しずつつまみながら進んで行き、最後の店に辿り着いて店の人にインタビューをしていると、カメラの後ろにカンペが出された。
    「――今日11月11日はポッキーの日ということですが、知ってるかい?」
     海外からの輸入菓子を扱うその店先で、カンペを読み上げたリドルが振り向く。店員から赤い箱を手渡されたリドルがそれを器用に開けた。
    「知りませんね……」
    「実は僕もよく知らないんだけど」
    「あっ! 俺知ってる! この前漫画で読んだ!」
     はい、と元気よく手を挙げたのは意外にもカリムだった。箱から一本取り出したリドルの手からそれを奪い、アズールを見る。
    「アズールそっちくわえて」
    「? はい」
     言われるがままチョコレートのついた方をくわえると、そのままビスケットの方をカリムがくわえたものだから、余りの至近距離に驚いて思わず身を引きかけたのをカリムに手を引かれて制された。
    「そう、えっと、両側から食べ進めていって、どこまで耐えられるかっていうゲーム? らしい」
    「よーひ、いくぞー!」
    「!?」
     完全にカンペを読み上げているだけのリドルの横でやる気になったカリムがアズールの両手首を握ったままさくさくと食べ進めて来るものだから、どうしていいか分からずに硬直してしまう。目の前にカリムのカーディナルレッドの瞳が迫り、もう少しで触れてしまう、というところまで来て、ぱき、と小さく音を立てて菓子が折れた。
    「俺の勝ちだな!」
    「勝負だったのかい?」
    「あれ? 違ったのか?」
     うきうきと笑ったカリムと、全くの他人ごとのリドルの会話を聞きながら、アズールは初めてここまで他人の顔が近付いたことに驚きを隠せず、ばくばくと音を立てている心臓を胸の上から押さえながら、どうにかチョコレートの欠片を飲み込む。
    「大丈夫かい?」
    「大丈夫です……」
    「あはは! アズール顔が真っ赤だな!」
     うるさい、と言ってしまいたかったけれど、一応カメラの前だと我慢した。言われずとも頬が熱いのは自覚している。こんな情けないところ観られたくないなと思いながら、どうにか体勢を立て直した。



     デュースがバイトを終えてスマホを確認すると、メッセージアプリに未読の数が異常に溜まっていて、何事かとぎょっとした。まさか何か急ぎの用事でもあったのかと慌てて開いて、そのトークルームの様子にほっとする。
    『まっっっ何!? 昼間からこんなシーンいいの!?』
    『アズール近すぎませんか??』
    『いやカリム氏の方から近付いたよね?? にしても眼福……!』
    『それなんですよ』
    『ねえチューしてないよね? 寸止めだよね?』
    『していたとしてもノーカンですね。カリムは妖精なので』
    『はあ? それを言うならアズール氏も天使なのでノーカンですーてことは天使と妖精の戯れ…ってコト!?』
    『尊すぎるのでは……!?』
    『あーーーッ! ねえアズール氏顔が真っ赤なの超可愛いんだけど!?』
    『すみません、見てませんでした』
    『ナンデェ!?』
    『勝利に喜ぶカリムの姿を見ていました』
    『ぐぅ……』
     どうやら昼の情報番組のレポートコーナーでアズールとカリムの何がしかがあったらしい。残念ながら番組中はバイトをしていて内容は全く分からなかったけれど、イデアとジャミルの興奮っぷりは傍目から見ていて相当面白かった。ざっと読んでからスマホをポケットにしまう。帰ってから録画を観て、それからトークに参加しようと楽しみにして、愛車のバイクにまたがった。

    KazRyusaki Link Message Mute
    2022/11/13 17:22:48

    TO麺×$ 番外編5

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