ワンライ「ダンス」 あっ、ジャミルさん。
ちょっと何で立ち上がろうとするんですか? 人の顔を見るなり失礼な。用事があるから声をかけたんですが。
ねえ聞いてください、イデアさんに、明日一緒にダンスホールに行かない? って誘われたんです。ね、驚くでしょう。彼の方から外出の誘いというのもさることながら、あの人ダンスなんてできたのかって、僕も驚いたんですけど。でも話を聞くとちゃんと出来てそうなんですよ。僕が門外漢なせいで専門用語とか分からない言葉も多かったんですけど。やっぱりお家柄というのがあるんですかね。カリムさんもダンスはお手の物ですか?
まあ、ですよね。彼は元々運動神経もいいですし、舞踏会でもきっと恥ずかしくはない腕前なんでしょう。
そしてそこに僕を連れて行ってくれるだなんて! ふふ、羨ましがってもいいんですよジャミルさん。普段から一緒に「打って」るジャミルさんでなく、彼が僕を選んだことを!
あの、飛行術はおろか運動に関わる全てを遠ざけているイデアさんが、どんな風にステップを踏まれるのか、今から楽しみで楽しみで。やはりスーツですかね。式典服もお似合いですし、まあ顔がいいですから何でも似合うんでしょうけど。
あっ、うっかりしてましたけど確かに、スーツを見繕って差し上げなくて大丈夫ですかね…でもあれでこだわりがある方ですし、もう既に準備してるのかも。
ジャンル?ですか?さあ、そこまでは。会場は割と遠くて、まあでも鏡を通って行けばすぐです。授業研究論文のひとつとしてダンスをテーマに書くことになって、そのために鏡の使用許可も取ったらしいので。
ほんとですよ。随分と行動力がおありで。普段からこうならいいんですけどね。明日はもう僕は単なる付き添いで、マネジメントもしない予定です。イデアさんもそれでいいと言っていたので、気楽なものですよ。
ペアダンス? いえ、それはないそうです。ああ確かに、そしたら舞踏会というわけではないんでしょうか。ただ衣装は用意するから着て欲しい、と。
え? はい、持ち物は確か、懐中電灯のような光る棒と、ハチマキ? とかいう頭に巻くアイテムですね。場所の名前? いえ、聞いたことのないダンスホールでした。ていうかジャミルさんご存知なんですか? 何で――
「明日のマジカル☆みるるんのダンパ、寮長も来るらしいぜ」
「ああ、マジみるって三人目の追加戦士がアーシェングロットに似てるとか騒いで沼ってるやつ?」
「俺も行く予定だったから寮長観察して来るわ。楽しみ!」
「オタクのダンパは最近数減ったしな〜」
「マジで明日のイベは貴重……アニソンダンパ絶滅阻止……」
ピ、ピッ。
「あ、イデア先輩。お部屋ですか? 多分今すぐに逃げた方が身のためだと思います。あと数分で明日のマジみるダンパの件をデートと勘違いした羞恥に激怒したアズールがそっちに着きます」