ワンライ「ゲーム」広げたのは僕の得意な経営ゲーム。イデアさんもあまりやり慣れていないそれを前にふふんと胸を張ったドヤ顔に小さく笑った。
「今日はこちらで勝負です」
簡単にルールを説明し、僕の分と、イデアさんの分の頭金をそれぞれの前に配分して駒を置く。より利益を産んだ側の勝負という単純さではあるものの、経営となると当然頭を使う仕組みになっていた。
「僕が勝ったら、イデアさんの秘密をひとつ教えてください」
平静を装ったつもりだったけれど、いつも通りに言えていただろうか。内心ばくばくと音を立てている心臓を咳払いで誤魔化した。
この勝負、絶対に勝って告白させてやる。だって、誰から見たってイデアさんは僕の事が好きだ。他の人には見せない顔で笑うし、オルトさんを除く誰より一番一緒に過ごしている。だから、『貴方の好きな人は?』と訊いて、誤魔化さずに答えさせれば、その蒼い唇から僕の名前が出るに違いないのだ。
今日こそ告白させてやると息巻いて、カードをスタンバイした。
秘密をひとつ、だって? やたらとそわそわしていたのはそのせいかと開始の合図代わりの宣言に顔を上げる。何が訊きたくてそんな事を言い出したのか。本当の目的は何なのか。アズール氏の質問は気になったけれど、勝負事で負ける訳には行かなかった。
「受けて立ちますぞ〜、その代わり、拙者が勝ったらアズール氏の秘密教えてもらうでござる」
「秘密だなんて! そんなものありませんよ」
「どーだか」
挑発するように笑った空の瞳がにんまりと歪んで、その場を煙に巻くように先行を決めるコインが投げられる。拙者が勝った暁には、『好きな人』を吐かせてやるんだ。だってアズール氏絶対僕のこと好きだから。
友達が少ないお互いだけど、正直アズール氏は僕以上だと思う。双子には恋愛感情など丸でないと言い切ったのは信じるとして、そしたらもう、好きになる可能性がある人なんて僕しかいないでしょ。
今日こそ告白させてやると息巻いて、カードをスタンバイした。
さあ、はじめよう、僕らのシーソーゲーム。