wich?ぺらぺらと薄い紙をめくる音を耳の端に捉えながら、使い慣れたコントローラーを操作する。食後のまったりタイムはいつもこうして、同じ空間で互いに好きなことをして過ごすのが習慣になっていた。ベッドに座り、壁に凭れるアズールの立てた膝の上で、またぺらりと音がする。
「……イデアさん」
「んー」
「アイスクリームにトッピングするとしたら、イチゴジャムと抹茶シロップ、ナッツ&ドライフルーツ、チョコソースのどれにします?」
ゲームをしてる最中にそんな事を急に言われても、かろうじて質問だけは聞き取ったけれど、選択肢までは記憶できなかった。取り敢えず放っておいて、キリのいい所までゲームを進めてから、床に座ってベッドに預けていた背中を浮かせて振り向く。待たせたところで今更不機嫌になるような事もなく、一段落を終えてからの対応にも彼は当たり前のような顔をしていた。
「なに?」
「アイスクリームにトッピングするとしたら、イチゴジャムと抹茶シロップ、ナッツ&ドライフルーツ、チョコソース」
「ナッツ」
一言一句違わずに繰り返された質問に即答すると、アズールがまた安い紙をぺらりとめくる。
「ああ、なるほど」
「なに?」
モストロ・ラウンジの新メニューの話ではないのか。単なる好みの調査にしては前触れがなさすぎて首を傾げると、ちらと持ち上がったスカイブルーが楽しげに細められた。
「心理テストです」
「へえ……」
「今のは、恋人に求めるものがわかるそうで……ナッツ&ドライフルーツを選んだ方は恋人に知性を求めるそうですよ」
「ふーん……」
正直言って全然興味ない。この手のものが当たるとは思っていないし、心理テストなんかで解った気になられるのも面白くはない。生返事で流して再びコントローラーを手に取ると、背後でごそりと布擦れの音がした。
「じゃあ、言われて嬉しいのは? 『あなただけが好き』or『あなたが一番好き』」
俯せたアズールの銀色の細い髪がイデアの脇に転がって、見上げるようにして問い掛ける。
「……それもう心理テストじゃないじゃん」
単なる好みの選択なのでは。呆れてそう言って、どうも構って欲しいらしいと判断した。コントローラーをデスクに置いて、ベッドから落ちたアズールの長いサイドの髪を拾い上げる。
「アズールは絶対に『あなたが一番好き』でしょ」
「それを言うならイデアさんは『あなただけが好き』でしょう?」
内緒話をするようにくすくすと転がる喉仏を指先で擽ってやりながら、細い顎に口付けた。
「よくわかったね」
「わかりますよ」
頬に触れ、耳を食む。喉仏を弄っていた手で平たい胸元をまさぐって、心臓の上に手のひらを重ねた。彼の命の鼓動に安堵してその眼を覗き込む。
「お互い無い物ねだりですね」
窮屈そうに笑った瞼を閉ざすようにそこへ口付けて、ほんの少し滲んだ悔しさを誤魔化した。
─── だってキミは、絶対に僕だけにはならないでしょう。常に君の傍には双子がいて、海に帰れば愛してくれる両親がいる。
─── だって貴方は、絶対に僕が一番にはならないでしょう。何より大切なオルトさんがいる限り、僕は常に二番目だ。
けれど、互いにそれでいいと思っているし、それがいいと思っている。満たされてしまったらそこで終えてしまう事を知っているから。
「いつか僕だけにしてね」
「いつか僕を一番にしてくださいね」
この胸の鼓動がやんで、魂ひとつになった時には。誰も知らない処でふたり、互いのエゴを満たし合おう。契るように接吻けた。