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    退治屋たち、あるいは“騎士”たち 冬の森は静かだ。念の為見回りには来たものの、モンスターについては空振りに終わりそうである。冬はモンスターたちも眠りにつくのが通常ではあるが、目覚めが明確に何月何日と決まっているわけではないし、まれに冬眠しそびれるものもいるためこうして見回りをすることは無駄ではない。……と、少なくともトラヴィスは思っている。
     しんとした冬の森には雪こそ積もっていないが木々も草花も静かに項垂れており、春や夏の賑やかさとは見せる表情が違う。背に感じる剣の重みを忘れないようにしながら進むトラヴィスは、周囲の気配を探るのと同時に木々の茂みにも気を配っていた。見回りのついでではあるが、件の依頼、ワイルド・アッシュベリーの入手についても忘れてはいないのだ。
     実りの気配はない。モンスターの気配もない。長身を屈めて張り出した木の枝を潜ったトラヴィスは、ふと物音が聞こえた気がして足を止めた。すぐに茂みの影へ身を隠す。背の剣へ手を伸ばしたところで、その表情はほっとしたように緩んだ。無造作に茂みの影から歩み出て、音の主が身構えるのを気にした風もなく片手を挙げる。
    「ダレンさん! 奇遇ですね!」
     屈託のない声で呼ばれ、相手は肩の力を抜いた様子で眉を下げた。その男……ダレンの深い緑色の目は森に似ているが、今の森とは少し季節が違う。
    「ハロー、トラヴィス。この季節にこんな場所で会うとはまったく奇遇だね、どうしたんだい? 町に慣れなくて森まで迷い込んだ……ってわけじゃなさそうだけど、ふふ」
    「ええ、“冬知らず”の見回りがてら、野生のアッシュベリーを探しているんです」
     トラヴィスは礼儀正しい口振りで男に接したが、けして距離を置いているとかそういうわけではなく、その態度は友好的である。ダレンもまたトラヴィスを警戒している様子はなく、にこやかに対応している。
    「アッシュベリー? この季節じゃ量は採れないだろうし、君には足りないんじゃない?」
    「それはそうなのですが、ラタトスクに依頼が出ていたので。ラァララさん……ご存知かは知りませんが……彼がワイルド・アッシュベリーを探しているそうなんです」
     なるほど、と頷いたダレンは少し考えるような素振りを見せてから僅かに首を傾げながらトラヴィスを見た。穏やかな眼差し。
    「ベリーを探すついでと言ってはなんだけど、僕からもひとつお願いをしていいかい?」
    「はい、俺に出来ることなら!」
    「無理はしなくていいんだよ。……実はね、とても元気で愛らしいお嬢さんの帽子が迷子になって、もしかすると森にまで来てしまっているかもしれないんだ。見かけたら連れて帰ってもらえると嬉しいんだけど」
     こういう、と帽子の特徴を説明するダレンに、トラヴィスはきょとんと瞬きをした。
    「それ、もしかしてロザリーンさんの帽子ですか? そういえば村外れでなくしたと仰ってましたが……」
    「知っているなら話は早い」
     事情を説明するダレンに、トラヴィスは少しだけ眉を下げた。彼は根っから真面目な気質で、少女がそちらへ帽子を飛ばされるほど森の近くにいたということをあまり好ましく思っていないのだ。その気持ちに気付いているのだろう、ダレンは軽くトラヴィスを窘めると苦笑した。トラヴィスよりも年嵩であり、妻帯者でもある彼はずいぶんトラヴィスより落ち着いている。
     そうして情報交換をする二人だったが、不意にその会話が途切れる。ダレンが腰の剣を抜くと同時に、木々の影から何かが素早く滑空し男へと襲いかかった。その一撃を弾かれたそれはまた空へと舞い上がり、木々の間に消える。
    「見えたかい?」
    「一瞬ですが」
     羽音のしない鳥。静かな暗殺者。大型のフクロウに似たそのモンスターを、殺人梟キラーオウルと呼ぶ者もいる。
    「もう起きているものがいたんですね」
     背の剣の柄に手をかけながら身構えるトラヴィスに、ダレンもまた剣を構えながら周囲に警戒の糸を張り巡らせる。先ほどまでの柔らかな態度は消え、そこにいるのは二人の“退治屋”であった。キラーオウルは音もなく飛び、一撃で仕留め損なうと離脱する、至近の間合いでの戦闘を得手とする人間にとってあまり相性がいい相手とは言えない。
     だが、ここにいるのは二人である。
     再びの襲来の標的となったのはダレンで、あえてその一撃を深めの位置で受けて少しつば競るようにしてから攻撃を逸らした。低い位置に流されたキラーオウルがまた舞い上がるべく翼を打つ。
    「トラヴィス!」
     舞い上がるより先に。トラヴィスが抜いた剣が、キラーオウルを地面へと斬り落とした。ばっと羽根と血が飛び散る。地へと落ち動かないそれの絶命を慎重に確認してから、布で血を拭い鞘へと剣を戻すトラヴィス。ダレンの方も同じように戦闘態勢を解いており、トラヴィスと目を合わせると軽く頷いてから少し笑った。
    「早起きさんがいるようだね」
    「この調子だと他にもいるかもしれませんね」
     表情を引き締めたトラヴィスの碧眼が静かに光る。考えるような仕草をしてから、再び口を開いたその声はいつもより少し低い。穏やかではあるがどこか深刻げで冷静だ。
    「念のためもう少し奥まで見回りしてきます、ダレンさんは……」
     その時、北の方から何かの咆哮が聞こえた。顔を見合わせた二人は、そちらの方向へと足を向けた。


     ……モンスターには様々な種類がいる。既存の獣を少し大きくしただけのものや、既存の獣とは似ても似つかないもの。咆哮の元を探して進んだ二人が目にしたのは、その両方に当てはまり、両方に当てはまらない生き物だった。トラヴィスは怪訝そうに眉を寄せ、ダレンは少し深刻げに表情を引き締めた。
     オオカミに似ているがサイズは大型のウマほど、その太い四肢と胴体はトカゲのような鱗に覆われまるで鎧を身に着けているようだ。鎧狼アーマーウルフ。本来であればもっと森の奥深くにいるべきそれが、森の少し開けた場所で毛を逆立て攻撃体勢になっている。そして、それに相対する人影があった。鮮やかな夕暮れと夜空、二色の目が相手を見詰めている。片手には抜き放たれた剣があり、油断なく構えられている。その青年は新たにやってきた二人に気付いてはいるがそちらに目線をくれることはなく、ただ軽く頷いた。
     青年へと襲いかかろうとしたアーマーウルフの後ろ足へダレンが斬りかかるが鱗に阻まれ、浅い。繰り出された攻撃をいなす青年の体捌きに危なげはないが、いかんせん体格差がありすぎる。一方のトラヴィスは二人に比べて大型の剣を扱うため攻撃のタイミングを計らねばならず、じりじりと後ろへと回り込もうとしていた。
     青年とダレンは二人で立ち回りながらアーマーウルフの相手をする。お互い似た攻撃範囲の武器であるため、間合いは問題なく共存していた。どちらも力と技で言うなら技寄りの戦い方であり、相手に細かな傷を蓄積させ体力を奪っていく。その鎧に決定打を与えかねているようだった。
     膠着状態の最中、トラヴィスがアーマーウルフの背後で剣の柄を握ったのを視認した青年が、ダレンと目配せをして一旦攻撃の手を緩める。前足の爪で地面を掴んで体勢を立て直そうとした獣の尻尾がバランスを取るため大きく揺れる。
    「……!」
     そこへ、トラヴィスの剣が思い切り振り下ろされた。尻尾が斬り落とされ地面へと落ちる。大きく叫び血走った目で仰け反ったその隙を、二人は見逃さなかった。晒された無防備な喉へ、剣が二本交差するように吸い込まれる。そのまま左右へ切り裂き、アーマーウルフの目が光を失う。どう、と地面へと倒れた巨体はもう二度と動きはしなかった。
    「やあ、ダレンにトラヴィス。助かったよ」
     そこでようやく青年は二人の方をまっすぐ見やり、微笑んだ。一見優男風のその青年がただの優男ではないことは先の戦いを見れば明らかであるが、二人はそれを気にした風もなく戦闘態勢を解くとそれぞれに伸びをしたり溜め息を吐いたりした。
    「ルナクさんも見回りですか?」
    「うーん、少し探し物をね」
     そう言った青年、ルナクはふと顎を上げ視線を廻らせると西の方角を見た。それにつられて二人もそちらを見る。そっと武器へと手が伸ばされるが、必要ないよとルナクが頭を振った。木々の向こうから現れたのは果たしてモンスターではなく一人の青年で、三人と倒れているモンスターとを見て怪訝そうに眉を寄せた。深く被っているフードに触れる指の爪は黒い。そしてどこか呆れたような、諦めたような、何ともいえない調子で口を開く。
    「……ルナク、これ、どういう状況だ?」
    新矢 晋 Link Message Mute
    Feb 26, 2021 2:44:50 PM

    退治屋たち、あるいは“騎士”たち

    #小説 #Twitter企画 ##企画_ハロサム
    トラヴィスと帽子探しの話、その2。
    ダレンさん@てらやまさん
    ルナクさん@芹緒さん
    最後の青年(ブレンデンツさん)@まいさん

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