僕だけに掛けられた魔法(リーマンアイドル堂足より。)
少しでも可愛げのあるように。
うざったいあの人間たちのご機嫌をとるように。
「今日もレッスン頑張りますかね…。」
今日も嫌いなご機嫌取りのためにレッスンをして、踊りに磨きをかける。
「おう、足立、遅れたな。」
扉を勢いよく開いて入ってきたのは、僕の相方である堂島さん。
共に『リーマンアイドル・ヤソイナ刑事コンビ』としてコンビを組んでいる。
堂島さんとコンビを組むことになったのは、
僕が堂島さんのダンスに一目惚れして口説いたからなのだが、
堂島さんのダンスは本当に全てを魅了する力を持っていると思う。
僕の紛い物の適当なダンスとは大違いだ。
今日もキレッキレのダンスを見せてくれる。
「堂島さん、今日も調子いいですねぇ…。」
「…お前を十分補充したからな?」
にやりと笑いながら僕を見る堂島さんは、悪戯っ子のような表情だった。
そんなちょっとした表情も僕に向けられていると思うと、
全身爪の先まで林檎のように真っ赤になっているのではないかと錯覚するような火照りを感じる。
そう。
彼の眼差し、言葉、仕草。
彼の全てが僕を魅了しているのだ。
「そんな目で見ないでくださいよ…。興奮しちゃう。」
「まだ、『ご褒美』の時間じゃないだろう。もう一仕事あるじゃねぇか。」
ゆっくりと腰回りを撫でられ、最後の決めである絡みのポーズを取ると、
全身雷が走ったような電撃を感じた。
嗚呼。
この人はどうしてこんなにも僕を誘惑して離さないのだろう。
「あなたがほんとうの魔性のアイドルですよ…遼太郎さん。」
「お前限定だがな?…透。」