恋の火種は燃えあがる注意事項
【ATTENTION!!】読む前に確認お願いします
・「鬼滅の刃」二次創作作品です。
・原作登場人物の女体化があります。
・カップリングとして「煉炭」が含まれます。(宇善がにおいます)
・モブがかなり話します
・現代パロです
・文章は拙いです
・ご都合主義です
上記の点確認の上、自己回避よろしくお願いします
なんでも許せる方のみお楽しみくださいませ!
『あ、先輩方こんなところにいたんですか!』
「うわっ、みんな来てくれたの?」
「え、部活のみんな揃ってるじゃない!なんで?」
先生方に車で送ってもらうというちょっとした事件があった日から一月。季節柄曇りが続いていた最近だったが、今日は狙いすましたかのような青空が広がっていた。そんな空の下、キメツ学園では普段以上に様々な色のネクタイをした生徒たちや、きっちりと着飾った保護者たちで溢れかえっていた。それもそのはず。何故なら今日は…
「そりゃ、集まりますよ!ほらみんな、さんはいっ!」
『『先輩方、ご卒業おめでとうございます!!』』
キメツ学園高等部の卒業式なのだから。
恋の火種は燃えあがる
「うわぁ、思った以上におっきい…。」
「すごい立派な花束だな。とてもいい香りがする。」
「でも、炭子にはちょっときついんじゃない?」
「まあな。でも、みんなの気持ちがこもってるものだし。うれしいよ。」
「そうだよね。」
部活の後輩たちからもらった花束はとても綺麗で、俺たちは自然と口角が上がってしまうのを自覚していた。
それに、そんな目立つものを抱えていれば周りも話しかけてきやすいのか至る所から声をかけられた。かたやその長女力を発揮して様々なところで手伝いをしていた炭子と風紀委員として皆を取り締まりながらも、何だかんだで冨岡の鉄拳の餌食になることも多かった善子は学校の有名人でもあった。あっという間に2人の周りには人が集まり、俺たちは対応に追われることになってしまった。
みんな祝ってくれているのだからと、そんな人々を丁寧に対応していると、人混みを抜ける頃には2人とも少々疲れてしまった。
「は、はぁ。やっと終わった…!」
「凄かったなあ。ありがたいことではあるんだけど。」
「俺なんか、冨岡先生から逃げれるぞ!っていうのが一番多かったんですけど!確かにもう追いかけられなくて済むけど!いうにおいてそれかな!?」
「まあまあ、落ち着け。それに善子もそれはうれしいんだろ?」
「まあ、そうだけどさー。でも、冨岡先生にもいいとこあるから複雑…。」
「善子は優しいなぁ。ところでこの後どうす、」『竈門さん!』
人が集まっているところから少し離れた階段のところで善子と2人座りながら喋っていると、誰かが声をかけてきた。名前を呼んでいるから、俺に用事があるんだろうと振り向くとそこに立っていたのは今日一緒に卒業したクラスメートの男子だった。
『い、今ちょっといいか!』
「いいけど、どうしたんだ?」
『…話したいことがあるんだ。ちょっと付いてきてくれないか?』
「話したいこと?でも、花束があるからなぁ…。」
「それくらい俺がみといてあげるよ。」
「いいのか?」
「構わないよ。だから行っといでー。」
「わかった。どこに付いていけばいい?」
『あ、俺が連れていくからついてきてくれないか?』
「わかった。善子、頼むな。」
「りょーかい!」
『ありがとな、我妻さん!』
手に抱えていた花束は善子に預けて、俺はクラスメートについていった。
(こんな日に何を話すことがあるのだろうか。まさか悩み事とか?でもなぁ…)
彼について歩くこと数分。たどり着いたのはいつもは生徒の立ち入りが禁止されている屋上だった。普段なら鍵がかかっているはずの扉は予想に反し、するりとその重い身を動かしてしまった。
「なんで開いてるんだろう?」
『今日は特別に理事長が許可したらしいよ。まあ、みんな下で写真を撮ったりしてるから今は誰もいないさ。』
「そっか。」
少しずつ早口になる口調にふわりと香る甘い匂い。それだけで、なんとなくここに呼ばれた用事とは何かがわかってきてしまった。こんな時は人より鋭い嗅覚がほんの少し嫌になる。向き直るクラスメートをよそに俺はそんなことを考えていた。そっと握りしめた手は少し冷たくなっていた。
『えーっと。まぁここまで露骨なとこ呼び出したらもうわかってると思うけど、さ。』
「うん。」
『竈門炭子さん。俺はあなたが好きです!付き合ってください!』
勢いよく折り曲げられた体と伸ばされた手はほんのりと赤く染まっている。それだけで緊張が伝わってきて俺はすぐには答えられなかった。それでも、ちゃんと答えなければいけない。そう思って頭を下げようとすると先に体を起こされてしまった。
「あ、あの。」
『…うん。答えはわかってるから言わなくていいよ。というか本当はわかってたんだ。俺の思いは届かないだろうなって。』
「なんで…。」
『だって竈門さん、好きな人いるでしょ?』
今度こそ俺は言葉を失ってしまった。なぜ、どうして。そんな言葉ばかりがぐるぐると目の前を通り過ぎる。動揺しているのがわかったのか少し笑われて俺は少し彼を睨めつけてしまった。
『ごめんって。なんでわかったか白状するからさ。…えっと、たぶん俺が竈門さんをよく見てたからなんだ。』
その言葉が意外すぎてますます頭が混乱してしまう。今度こそ頭にクエスチョンマークが浮かんでるのがわかったのか苦笑しながら彼は理由をちゃんと語ってくれた。
『そりゃ、俺だって好きな人のことぐらい見ちゃうよ。授業中や休み時間ふとした時に目に入っちゃうんだなぁ、これが。でも、そんな俺の好きな人はいつもある特定の人を見るたびとても悲しそうな顔をしていた。最初は、なんであんなに悲しそうな顔するんだろって思ってたよ。だけど、途中で気づいたんだ。』
想いが届かなかったというのに彼は今まで通り、なんなら少しからかうように話を続ける。俺が言うことでないのはわかっているけれど、振られた相手とこんなに和やかに話せるものなのだろうか。きっとそんなことはないんだろう。こうして話してくれているのは彼の優しさに他ならない。俺はそう察しをつけながらも彼の優しさに甘えて耳を傾けた。
『竈門さんってね、悲しい顔した後に笑うんだ。いつもの我妻さんとか妹さんと話している時とは違う、なんていうかな滲むような笑顔っていうか。俺はあの笑顔に気障かもしれないけど愛情を感じた気がしたんだ。あの顔見た時に俺、この恋は実らないんだろうなって思っちゃった。あの顔はきっとあの人を想っているからこその表情なんだろうなって。』
だから気にしなくていいんだ。これは俺の気持ちの整理をつけたいっていうのもあったから。そう言って彼は笑った。溌剌としたその笑みに嘘は感じられなくて、俺は涙が出そうになった。
「気持ちはわかった。でも、ちゃんと答えるよ。ごめんなさい。俺はあなたの気持ちに応えることはできない。言われた通り俺には好きな人がいるから。」
『…こちらこそちゃんと答えてくれてありがとう。俺はそんな竈門さんが好きだった。最後に一つ聞いてもいいか?』
「もちろん。」
『言わないの?』
何を、とは聞かなくてもわかる。この前善子にも言われたことだ。そして答えもこの前と同じ。
「言わないよ。」
『どうしてなんだ?今ならもう生徒と教師の関係も終わった。気にすることはないはずだろ?』
「ほんとにバレてるんだなぁ、俺の好きな人。でも、俺が告白しないのはその関係を気にしてたからじゃないんだ。」
前世のことを言うつもりはない。だけど、彼の誠意に対して嘘も言いたくない。俺はそう思って、気づくと今まで誰にも言ってこなかった気持ちを口に出していた。
「怖いんだ。今の関係が壊れるのが。どうしても。他の人ならそれでも覚悟して告白とかできたかもしれない。でも、あの人だけは。あの人だけは無理なんだ。」
初めて口にした本音はとても小さな声になってしまった。けれど、2人しかいないこの屋上では確かに聞こえてしまっただろう。申し訳なさもあって口をつぐむ俺に彼は1つため息をついた。
「ご、ごめん。こんなこと聞かせて…。」
『え、ああ!そうじゃないんだ。ただ、羨ましいなと思って。』
「え?」
『だってそれだけ想われてるってことだろ?俺からしたら羨ましいとしか言いようがないさ。』
そう言うと彼は屋上の入口へと歩みを進めた。そして、その扉に手をかけるとこちらを振り向き口を開いた。
『でも、竈門さんの気持ちもわかった。これ以上俺からは何も言わないよ。だけど、俺にとっては君が幸せになってくれることを祈ってるから!』
俺は先に下降りるね、そう告げて彼は屋上から去っていった。今すぐ俺も降りてしまおうと思うけれど、彼の気持ちを考えるとそれをすることは配慮に欠けると思った。それにまだ自分の心も整理できているとは言い難い。
俺は屋上のフェンスにもたれながら、晴れやかに広がる空を見上げた。
目の前には式の前と変わらず雲ひとつない青空が広がっている。式は昼を過ぎて終わったからもう少しで日が暮れるだろう。きっと下をのぞけば、今まで過ごしてきた教室とか廊下とかが見えるんだろうけれど、俺はなんとなく視線を上に向けたままだった。
「日暮れかぁ…。」
しばらく経つとふと、脳裏に「ここから夕焼けを見てみたい」と浮かんだ。唐突すぎるだろう、自分と思いながらスマホを取り出す。善子に誘いのメッセージを打つけれど、下で待っているはずの彼女から既読はつかない。もしかしたらまた誰かに捕まっているのかもしれない。それならば申し訳ないけど自分だけで待ってみようと思った。どうせ母さん達はもう家に帰っているし、メッセージを見れば善子もここまで上がってくるだろう。
少しすると徐々に空がオレンジ色に染まり始めた。ゆっくりと染め直される空を俺はどこか放心しながら見つめていた。実は俺にとって夕暮れは1日の中で最も好きな時間だったりする。赤く染まった色はあの人の瞳を思い起こさせて、あの色に照らされる帰り道はどうしようもなく満たされた気がしたものだ。
そんなことをつらつらと考えていたからだろうか、それとも立っていたところが偶然風上だったからだろうか。俺は背後に声をかけられるまで、その人の存在に気づかなかった。
「よもやよもや。ここにいたのか。」
「え…?」
はっと視線をドアの方に向けるとそこに立っていたのはたった今まで考えていたその人で。俺は思わず声をあげてしまった。
「煉獄先生、なんでここに…。」
「むぅ。来てはいけなかったか?」
「あ、いや、そういうわけじゃなくて!」
「そう慌てなくていい。君に悪気がないのはわかっている。」
そう言って煉獄先生は近づいてきて隣でさっき俺がしていたように空を見上げた。夕焼けの赤い光が先生の金色の髪に反射して思わず目で追ってしまう。
「…少女、竈門少女!」
「は、はい!なんでしょう!」
「どうしてここに残っていたのかと聞いたんだが、聞こえていなかったようだな。」
「す、すみません。」
さっきからぼうっとし過ぎだろ自分!と内心自分を責めながら夕焼けを見たかったのだと告げると、煉獄先生は得心したのかなるほど!と答えると再び空に目を向けた。その視線はさっきより下に向かい、その目には赤く染まった校庭や体育館が見えているだろう。記憶のことを思えばすぐにでも立ち去ったほうがいいのはわかっていた。でも、これが最後だと思うと足は動きそうになかった。
そうしてしばらくは2人とも無言だった。俺はそれに耐えられずに脳内で懸命に話題を探す。
そこでふと、疑問がわいた。
「煉獄先生はなぜここに?」
気づくとそれは口からぽろっと漏れていて、ハッと手で口を押さえるも彼には聞こえてしまったらしい。空を見つめていたその視線がこちらに向けられた。
「なぜだと思う?」
「っ!」
俺は言葉を失った。その瞳を、眼差しをずっと遠くから見てきた。前世以来で交わる視線。鬼にもまっすぐと向けられていたそれが今は自分に向けられている。それだけで心臓がばくばくと音を立てていた。
「ふむ。まぁ、俺はまどろっこしいのは好かんのでな!言わせてもらうことにしよう!」
ニッと口角を上げた煉獄先生はお世辞抜きにかっこよくて、俺は何もいえず煉獄先生の言葉を待った。
この後、自分の耳を疑うことになるとも知らずに。
「俺は君が好きだ、竈門少女。俺はそれを伝えにきた。」