イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    TO麺×$ 17「ととトレイ氏! どいて!?」
    「おわ!?」
    立ち上がった俺を突き飛ばすようにして半個室に駆け込んで来たイデアに思わず声を上げ、押された拍子によろめく。そのまま尻もちをつくように椅子に座って、ぽかんとイデアを見上げた。
    「遅かったな」
    「いやなんかそこで絡まれて……そんな事よりっ」
    悠々とジョッキを傾けながら声をかけたレオナをあしらったイデアが落ち着きなくスマホを操作し、覚束ない指先でワイヤレスイヤフォンを装着する。まにあった、と小さく呟いてからようやく腰を下ろし、目の前の皿をどかしたそこへスマホを置いた。何事かと画面を覗き込んだレオナが思い切り顔を顰める。
    「んだこれ?」
    「それが! ゲリラ配信やるってマジカメにメッセージが来まして! あっ、ファンクラブ向けのメッセージでござるが! それを見て慌てて戻って来たでござる~~」
    「ゲリラ配信……」
    ふと俺も自分のスマホを取り出してメッセージを確認してみた。確かに、リドル達のユニットが運営しているマジカメアカウントからゲリラ配信の告知メッセージが届いている。
    さっきイデアは「絡まれてた」と言っていなかったか。例えばガラの悪い連中に絡まれていたとなれば急いで逃げ出すか、スマホを持っていたようだしSOSを出すかするだろうけれど、それがなかった。と言う事は、店に入って暫くしてから俺たちを追いかけるように入って来た二人組か。ちらちらとこちらの様子を伺っていたのは気付いていたけれど、イデア狙いだったのか。
    「はー……リドルに助けられた」
    机に伏せるようにして呟く。いや、この場合はアズールか。どっちだっていいか。額がスマホに触れた拍子に、俺の携帯でもリドル達のゲリラ配信の画面が表示された。
    『こんばんはー! 初めてのゲリラ配信だぞー! ちゃんとできてるかー?』
    カリムのドアップから開始された配信画面に、コメントが流れる。視聴数を示す数字がどんどんと上がって行くのと比例して、挨拶コメントも増えて行った。
    『改めてこんばんは、カリムです!』
    『リドルです』
    『アズールです』
    「ぶふぉっ!」
    アズールが映った途端、正面でイデアが噴き出す。何も飲んだり食べたりしてなくてよかったと思うくらいの勢いで噴き出すものだから、レオナが反射的に身体を引いた。俺も引いた。そしてスマホを確認した。よかった、汚れてない。
    「んだよ」
    「ちょ、ここ、これ、あああ」
    語彙力の消失、と言うらしい。いつかイデアが言っていた。画面の中の三人は、ハウススタジオなのか本当に誰かの部屋なのか分からないけれど、薄紫のローテーブルが置かれた白いマットの上に座り込み、それぞれパジャマを着ている。
    『夜のゲリラだから、パジャマパーティー風で~す』
    少し恥ずかしそうにしているリドルを見ると、恐らくこれは私物だろう。あいつが買いそうなデザインだし。何だかこれをどんな気持ちで観ればいいのか分からずに、感情をシャットダウンしてみる。それと反比例するかの如く、イデアのテンションはどんどん上がっていた。
    「こ、これは私物……いや、流石に衣装ですかな……! フヒヒ、似合う~~天使~~」
    「お前本当に気持ち悪いな」
    レオナの冷静なツッコミが丸で耳に入っていないイデアは小さな画面にかじりつくようにして彼女らを(恐らくアズールのみを)凝視している。リドルのは私物っぽいから私物じゃないか、なんて口に出したらどうなるかわかったものじゃないから、取り敢えず黙ってジョッキに残ったビールを傾けた。
    リドルは赤ベースに白い水玉がプリントされた上下セットの前合わせ、長袖長ズボンのオーソドックスなパジャマ。カリムは黄色地の半袖がひらひらとした、胸元にリボンがついたショートパンツタイプ。アズールは白いもこもこの長袖パーカーに、膝より少し短いボトム。それぞれ好みが反映されていてわかりやすいと思う。何より、新品ぽさが私物か衣装かを分からなくさせていて上手い。恐らく、アズール発端の企画だろう。
    滅多に見る事のないパジャマ姿は中々ファンの心を掴んでいるらしく、画面がコメントで溢れていた。ついでに俺の前のイデアも最早いっぱいいっぱいになっていた。
    『今日は機能を色々試したいので、投げ銭? もやってみます』
    『上位3位にランクインした方には放送後に撮った僕らの3ショットをメッセージでお送りします』
    『参加待ってるぞ~!』
    投げ銭、と聞いた途端にイデアの眼の色が変わる。こいつめちゃくちゃ投げる気でいるな。しかし、配信と言うのは中々いい手だ。投げ銭で小銭稼ぎができるし、上位ランカーへのリターンが画像一枚なんて、手間もコストも不要だ。なるほどなあ、と感心している間に、投げ銭タイムが開始されたらしい。せっかくだから配信を見つつ、機能を研究しておくか、とイデアの止まらない手元を視界の端に入れながら画面の色んな所を触ってみた。
    レオナは既に飽きていて、何杯目かのビールを注文していた。

    **********

    三十分。ぴぴ、と小さく音を立てたアラームを確認して、トークを締めに向かわせる。同時視聴数はそこそこ。投げ銭もいい感じ。
    「今日はありがとうございました! またやる時は遊びに来てね」
    リドルさんが綺麗に締めてくれたので、それに乗っかるようにちらとカリムさんに視線を送った。それを受け取った彼女がにかりと笑って、またな~、と手を振る。
    「それじゃあ、……おやすみなさい」
    できるだけ静かに。柔らかく告げたそれに、コメント欄が反応した。狙い通り、と心の中でほくそ笑んでから、配信終了ボタンを押す。終了させたと思ったのにしていなかった、なんて事故がないように、配信専用に用意した端末の電源ごと落とした。
    「っはーーー! 楽しかったな!」
    「き、緊張感がすごいな」
    「テレビはすぐに出られずとも、配信はできますからね」
    早速ノートパソコンで最終チェックをする。且つ、上位ランカーへ送るための画像を撮らなければ。本当はチェキのプレゼントでもしてあげたいところだけれど、今回はテスト配信だ。コストは極力かけたくない。
    「一枚撮りますよ~、寄って寄って~」
    僕が一番後ろに回り、二人を抱えるようにして腕を伸ばした。
    「アズール胸当たってる」
    「我慢してください」
    「カリム変なこと言わないでくれ……」
    「リドルさんカメラ見て」
    あれこれと話ながら撮った一枚は随分と素の顔になってしまった気がする。可愛く撮れてはいるけれど、これは余りに普段の顔過ぎないかと不安になるレベルだ。アイドルとしてはもう少し作った方がいいのでは。
    「これいいじゃん。これで行こうぜ」
    「そうだね、ボクも賛成」
    物理プレゼントが送れない分、このくらいサービスがあってもいいか。じゃあこれで行きましょう、と画像をノートパソコンに移し、上位ランカーのIDをピックアップする。個別メッセージ画面に予め準備しておいた感謝メールをコピーペーストして、画像を貼り込んだ。
    「知ってる名前いるか?」
    「うーん……」
    一瞬、どれかの名前に目を止めたリドルさんが少し眉を寄せたところを見ると、知っているファンなのかも知れない。けれど、そんなのは関係ない。対価を払ってくれたのだから、きちんと返すべきだ。
    「知ってても知らなくても関係ありませんよ」
    そう言って、送信ボタンを押す。少しでも喜んでくれますように。そしてまた、次回たくさん投げ銭してくれますように。
    KazRyusaki Link Message Mute
    2021/04/07 8:26:50

    TO麺×$ 17

    ##君に夢中!

    more...
    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    NG
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品