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    イデアズ。と🐙のクラスメイトくん。1食堂で食事をしていたら、たまたま同じクラスのアーシェングロットが席を探しているのが見えた。普段なら面倒だから関わらないのだけれど、食堂はほぼ満席、珍しく双子が近くにいない、こんな些細なことでも恩を売ったら何かになるかも知れない。
    「アーシェングロット、ここ空いてるぞ」
    頭の中を打算でいっぱいにしながら手を挙げた。一列隣にいた彼が俺を見て、足早に隣の空席にやって来る。
    「助かりました。今日は何だってこんなに混んでるんですか」
    「限定メニューがあったからだろ。あのケーキ」
    「それでこの混雑ですか? くそ、出遅れた」
    こいつこれで案外口悪いよな。海街育ちは口が悪いのが多いって言うけど、海の中はどうなんだろ。にしてもこいつのトレー、サラダとササミって。ボクサーかなんかかよ。育ち盛りのくせにこんなのしか食べないからひょろひょろしてるんだ。
    「……何か」
    「お前これしか食べないの? だからそんなガリガリなんじゃない?」
    「はあ。でもきっと、僕は貴方より筋肉ありますよ」
    平然と言い返されて、口を噤む。ご尤もだ。体力測定はいつもこいつと並んで下の方、飛行術も大の苦手だし、この前廊下で転けた時、ポムフィオーレのちっさくて細っこい一年にひょいと抱き止められて「大丈夫……ですか?」とか聞かれた俺の気持ちも考えて欲しい。て言うかイグニハイドは頭脳勝負の寮だからガリでも何でもいいんだよ。不貞腐れたまま、最後の唐揚げを口に放り込んだ。
    「お席譲って頂いた分、何か対価をお支払いしますね」
    「は? 別にいいよ」
    「いえ。建前は結構です。恩を売れば何かになると思われているのは気持ちが悪いので。そうですね、来月発売の月刊魔導パーツ特別号はいかがですか?」
    「欲しい」
    「では成立ということで」
    あっ。咄嗟に本音が。ちぇ。もう少し引っ張ってもっといいもの出させようと思ってたのに。咀嚼した唐揚げを飲み込んで、紙パックのりんごジュースを持ち上げる。ふと、アーシェングロットのトレーの上に汁物がないことに気付いた。
    「お前水とか飲まんの?」
    「取ってくるのを忘れたんです。けどこの混雑なんで、もう面倒で」
    「へー……」
    でも、胸肉って結構パサパサするよな。サラダが瑞々しいったって、水分とはまた違うし。ううん、と少し考えてから、手にしていたジュースのパックを彼に傾けた。
    「飲む? 口ん中パサパサんなんね?」
    「結構です。僕ちょっと潔癖気味で」
    にっこりと笑った口元で艷ぼくろが持ち上がる。あまりに華麗なお断りに一瞬何と言われたのかわからなくて、きょとんとしてしまった。少しの間を置いて、あ、いらないと言われたのか、とやっと理解する。すごすごとジュースを引っ込めて、ついでに会話のネタも引っ込んでしまった。
    このまま隣にいても気まずいな。もう殆ど食べ終えたし、先に立つか。
    「あれ……めずらし……」
    ふと、アーシェングロットの向こう側から声が落ちた。物静かだけれど、どこか迫力のあるそれは。
    「りょ、寮長……」
    「イデアさん。珍しいですね」
    「ん……アズール氏こそ友達いたんだね」
    ちらと俺を見た目が何か値踏みをするような動きを見せている。寮長と会うのは初めてでは当然ないけれど、そもそもイグニハイド寮生はお互いあまり存在を大々的にアピールするタイプではないから、俺の事なんて
    「2406号室の輝石の国」
    「そうです。流石です寮長」
    知らないわけなかった。そうだ。寮長人が嫌い過ぎて寮生のことは全員把握してるんだった。
    「あっ、イデアさんこれどうでした?」
    会話の空気を読むつもりのないアーシェングロットが寮長のトレーに乗った半分のケーキを指さす。何だ、お前もこれ目当てだったのか。てか寮長もこれ目当てで珍しく寮から出てきたのかな。超意外。
    「別に、普通」
    「ラウンジの新メニューの参考にしようと思ってたんですけど、僕の目の前で売り切れてしまったんですよね」
    「へえ……」
    「だから食レポしてください」
    いや何言ってんの!? ただでさえ口下手な寮長に! ぴゃっと目を丸くしたのは寮長も一緒だった。
    「はあ? いや無理無理なんで拙者がそんなこと……て言うかこれあげるよ。もう食べらんないし、捨てようと思ってたから」
    「またそうやって食べるものを粗末にして。食べられる量だけよそってもらってください」
    「勝手に盛られるんだよ、細いからもっと食えって……」
    めちゃくちゃ嫌そうに顔を顰めながらアーシェングロットのトレーにケーキを移す。あ、でもそれ寮長の食べかけでは。こいつ潔癖で回し飲みとか無理らしいですって、言ってやろうかと思ったけれど。
    「ありがとうございます。助かります」
    「うん、じゃあね」
    「はい、また部活で」
    素直に礼を言って、サラダの途中にも関わらずケーキを一口くちに運んだ。部活。あ、そうか。部活が同じなのか。どこに接点があったっけ。寮長同士だからかなと思ってたけど、部活が一緒ならそりゃ仲良くもなるか。こいつら部活なんだったっけな。なんて、考えながら。
    何で寮長の残したケーキは平気で食べられるのかなってことは、わざと考えないようにした。
    KazRyusaki Link Message Mute
    2021/06/15 9:41:07

    イデアズ。と🐙のクラスメイトくん。1

    ##モブ太郎物語

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