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    オメガバース習作 綺麗な子だな、と言うのが第一印象。この学園は整った顔の生徒が多いけれど、その中でも少し異質な綺麗さがあるなと感じたのは、それもそのはず。彼はΩだったから。
     この学園は優秀な生徒を集めた学校なだけあって、世間の比率よりもαが多く、Ωはほぼいない。それでも彼はその事実を隠そうともせずに堂々とこの学園へやって来た。
    「狂気の沙汰だね」
     学園内を映し出すモニター越しに呟く。入学式で既に話題になっていたアズール・アーシェングロットは、Ωであるのにこのナイトレイブンカレッジに入学してきた、と言う他にも、試験で学年主席とまでは行かずとも上位5名の中に入ったとか、錬金術は既に1年生の後半レベルが使えるとか、話題に事欠かない生徒だった。
    「クレイジーだとしか思えない」
     もう一度呟いてゲーミングチェアから立ち上がる。そろそろ部活の時間だ。先刻、部室に向かう廊下のカメラにアズールが映っていた。もうすぐ部室に到着をして、書物を読みながら他の部員の到着を待つのだろう。幽霊部員とすら言えない、名前だけの部員達を。

     部室のドアを開けると、それがわかっていたかのようにアズールがゆったりとイデアを見た。この前読んだ百合漫画だったら、ここで来るのは「ごきげんよう」だ。
    「遅かったですね」
    「まあ……」
     残念、違った。それはそうだと内心笑って、彼の目の前に腰を下ろす。読んでいたのは小説らしい。ブックカバーのついた文庫本を脇に置いてあった鞄に戻して、ブルーグレーの瞳が正面からイデアを見据えた。

     イデアは、生まれつきαとしてのフェロモンが強い。普通のΩなら立っていられなくなるし、βにすら影響を与えてしまう。それが嫌で嫌で、苦痛で仕方がなかったから部屋から出なくなった。この学園に在籍するのも、いっそ死んでやろうかと思うくらいに嫌だったけれど、オルトが言うから仕方がない。学校へ行ってみたいと呟いたのを聞いてしまったから、仕方がなかったのだ。とは言え、結局この学園でも引き籠っているのだけれど。オルトと二人の部屋は居心地が良かったし、発明品を献上すれば部屋の中は改造し放題だったから今となっては来てよかったかなと思わないこともない。但し、体力育成の授業を除けば。

     そんなイデアだから、部活動を一緒にやれる相手ができるなど露ほども思っていなかった。部活動への加入は必須、運動部は有り得ない、ならば文化部と物色した中で、一番人が少なかったのがボードゲーム部だった。単純にゲームが好きだったし、幽霊部員ばかりであるなら影響も少ないだろうと言う判断だったのだけれど。一年前の自分にすら、今この状況を信じてもらえないだろう。
     Ωの後輩と二人きり、部室で向かい合ってボードゲーム。有り得ないということは有り得ない、とは、誰の言葉だったか。
    「先日はあと一歩及びませんでしたからね」
     あの時こう出れば、ここでそうすれば。前回の反省点をずらりと並べて、対策を打ち出していく。淡々と説明をするアズールを眺めながら、イデアはふるりと身震いした。優秀。秀才。努力の天才。彼のこういうところが好ましい。しかも彼は、イデアにとって害をなさない。ヒートだとか何とか言って、獣のような欲求を、誘惑を突き付けて来ない。そう。絶対に。なぜなら、

     彼のうなじには既に、αの歯形がくっきりと刻まれているから。

    KazRyusaki Link Message Mute
    2021/07/07 10:52:15

    オメガバース習作

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