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    先生パロ 化学のアーシェングロット先生は、男性であるよりも前に何とも綺麗なひとで、男子校であるこの学校でもこっそりファンが多かった。とは言え、同性であるし教師と生徒であるから、付き合いたいとか告白したいとかそう言った人物はおらず、ただ目の保養として皆の憧れを一身に受けている。
     かく言う僕もそのひとりだ。けれどほかの生徒と違うのは、今日、僕は先生に告白をしようと思っている。先生は放課後を大体化学準備室で過ごすことは既に調査済みだ。
     北の校舎の一番端。この先に、先生がいる化学準備室がある。僕は全身が心臓になったみたいにドキドキとうるさい自分の鼓動を聞きながら、一歩一歩ゆっくりと歩み進んだ。

     古びた引き戸の前に立つ。ドアにはめられた小さな窓は、これまた古い摺りガラスで、古すぎて濁ってしまっていて中が見えない。先生がいるかどうか確認ができなくて不便だとクラス委員が愚痴っていたのをふと思い出して、これでは確かに中の様子が見えないなと納得した。けれど、ドアを隔てたその中には確かに人の気配がする。間違いなくアーシェングロット先生はこの中にいるはずだ。何度か深呼吸をしてから、思い切り息を吸い込んでぴたりと止める。ふー、と細く長く吐き出しながら、そっとドアをノックした。
     ……返事がない。おかしいな、人の気配はするのに。聞こえていないのか。
     僕はもう一度、今度は少し強めにノックをする。それでも中からの応答はなくて、また首を傾げた。ふと、左側にある同じようなドアが目に付く。隣は科学準備室だ。この教室は一見独立した教室に見えるけれど、実は部屋の中で繋がっている。元々は一部屋だったものを無理矢理分けたらしいと聞いた。
     もしかして、気配があるのは科学準備室の方にいるのかも知れない。シュラウド先生とアーシェングロット先生が一緒にいるところをあまり見たことはないけれど、もしかしたら仲がいいのかも。と思うけれど、すぐに否定する。人嫌いの変人で有名なシュラウド先生に仲がいいなんて呼べる他人がいるとは思えなかった。とは言え、万が一という事もある。何せアーシェングロット先生は慈悲深い、優しい人だから。常に一人でいる可哀想なシュラウド先生を放っておけなかったとか、全然有り得る。
     勝手に誇らしい気持ちになって、今度は科学準備室のドアを小さくノックした。堂々と叩けばいいんだけど、シュラウド先生が出て来たらちょっと嫌だなと言う心の表れ。如何せん僕はあの先生が苦手なんだ。
     しかし、こちらも待てど暮らせど反応がない。人の気配と言うのは気のせいで、本当に留守なんだろうか。ドアに手を掛けてみると、鍵が開いている。思ったよりも建付けが悪くないらしい古びたそれは、案外静かに隙間を作り出した。

     入口付近は、参考書や実験道具が散乱していて視界が悪い。どうにか奥の方まで視線を走らせると、中庭に面した大きな窓で、カーテンが揺れていた。その手前で、シュラウド先生の青く長い髪が同じように揺れている。
     どきりとした。否、どきりなんて生易しいものではなくて、ばくんと心臓が鳴った。破裂したかと思った。
     こちら側を向いて、窓際の机に腰を下ろしたシュラウド先生の顔を、銀色の美しい髪が隠している。その銀糸に、骨ばった細い指が後頭部を支えるように絡められていた。

     何をしているのか。
     そんな事を考えなくてもすぐにわかる。知識だけは豊富な、健康な高校生男子だ。けれど、でも。シュラウド先生と、アーシェングロット先生が。
     キスをしている。
     認識してしまうと、足元から頭の先まで一気に熱が駆け上がり、今まで感じたことがないくらいに頬が熱くなって目の前がぐらりと揺れた。思わずふらつくのを必死で堪え、混乱した頭で、どうしよう、と考える。このままそっとドアを閉めたら、気付かれないだろうか。何をしているのかと乗り込んで行こうか。平常ではない頭は常なら思い付かないようなことも思い付く。一層混乱するままそこに留まっていると、ふと視線を感じて顔を上げた。

     逆光になっているシュラウド先生の、満月を思わせるその金色の瞳が僕を見ている。
     右の眼だけ、角度をつけてアーシェングロット先生を避けるようにして、入口で呆然と立ちすくむ僕を射貫くようなそれで見ていた。
     やがてそれがふと弧を描き、アーシェングロット先生から離れる。途端、はあ、と小さく息継ぎをする音がして、下腹部を直撃した。普段は凛とした艶やかな声のアーシェングロット先生の、掠れた、けれど濡れたその声は僕の耳の奥深くに潜り込んでくる。
     思わず腰を屈めた僕を蔑むように見下したシュラウド先生の金色が鈍く光った。
    「…………アズール」
     ぽつんと落としたそれは。僕の知っているシュラウド先生の声ではなかった。何かを、獲物を渇望する、大人の男の低い声。同時に、蛇のような舌がちらりと覗いて、シュラウド先生の血色の悪い唇をぬらりと湿らせた。

     どうやってここまで来たのかはわからない。ただ気付いたら準備室から一番遠いトイレの個室に閉じこもっていた。アーシェングロット先生の顔は僅かも見えなかったから、どんな風にあの気味の悪い先生を受け入れていたのかはわからない。もしかしたら無理矢理、とも過るけれど、とてもそんな風ではなかった。
     失恋したのか。まさか、こんな形で。よりによって、一番苦手なあの教師に、美しいあの人は囚われてしまったのか。
     悔しい。悲しい。僕はその場で少しだけ泣いた。







     くぐもった小さな声に目をやると、よそ見をしていたことに気付かれていたらしい。尖らせた唇が先刻までの接吻けで濡れて光っている。校庭から響く、運動部の健康的な掛け声から隠れたところでこんなにいやらしい顔をしているなんて。
    「いや~、アズールは正に存在自体が18禁ですな」
    「何言ってるんですか」
     呆れ果てたその表情に小さく笑った。知らないならそれでいい。広まるなら広まればいい。毒のような魅力を持つこの綺麗なひとは、もう僕の腕の中だ。頭の形を確かめるように髪を梳いてやると、猫がするように目を閉じて掌にすり寄って来る。それから。
    「ねえ……イデアさん。こんなんじゃ足りません」
     薄桃の唇を開けて来るものだから。ちらつかされたその舌に吸いついた。
    KazRyusaki Link Message Mute
    2021/07/07 11:06:59

    先生パロ

    先生×先生と、モブ生徒。

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