瞳に映るは番の心_5「透…、起きたのか。」
堂島さんの寝顔を眺め続けていると、堂島さんが声をかけてきた。
寝起きの堂島さんに微笑みかけると、顔中ぺたぺたと触られた。
「よかった。俺たち、想いの強さ、同じだったんだな。」
「えぇ。嬉しいです。」
「力は…どうなっちまったのかな。」
どうやら堂島さんの晴眼も、完全に消えたのかはわからない様子だった。
そうであれば、少なくとも弱くはなっていると言えるだろう。
「らびりすってやつなら、
僕らの力の影響は受けないですが力の強さはわかるので、
そいつを呼んでみましょう。」
「あぁ。でもその前に…。」
そういうと、堂島さんは僕の体を抱き込んだ。
とくん、とくんとゆっくり脈打つ鼓動を感じる。
それだけで僕の鼓動は少しずつ早くなっていく。
「もう少し二人だけの時間、噛み締めようや。」
「…!は、はい。」
そんなことをしていると、らびりすが僕を探しにきてしまい、
堂島さんと半裸状態で眠っていたことがバレしまった。
「へぇ…足立さんも案外大胆やなぁ。」
「煩い。」
「ほう、君がらびりすか。」
「はい。堂島さんやな。噂はかねがね!」
らびりすはニコニコ笑いながら堂島さんに自己紹介をした。
「らびりす。それより、僕らのあの力はどう見える。」
「足立さんの邪眼のこと?堂島さんも何かの力持ちなん?」
「うん。僕の対となる力の『晴眼』の持ち主なんだ。」
「えぇっ?!見つかったん!」
らびりすの驚きも無理がない。
早々同じ時代に二つの力が存在すること自体稀なのだ。
「ふぅん…でも二人とも力弱なってるな。」
「「ほんとうに?!」」
「うん。あたしの測定に嘘はないで。」
らびりすの言葉を聞いて僕らは顔を見合わせ、にこりと笑い合った。
「多分足立さん、堂島さんが隣にいるときは街に出られそうやで。」
「そうなのか。」
「うん。今は発現しとらへんで、足立さんの邪眼。
だけど、消えたわけじゃないから気をつけてぇな。」
「街に…出られる。」
予想以上にうまく行ってしまったことに驚きが隠せないが、
堂島さんは静かに僕の手を握り、堂島さんも喜んでくれているのを感じた。
僕はとうとう手に入れたのだ。
諦めていた誰でも手に入れられるとされていた幸せを。
大好きな人の隣で。
いついつときも
あなたと過ごす
あなたと同じ目線で
あなたと同じものをみて
視覚含めた全ての感覚で
あなたを包む世界を感じられるのだ
「嗚呼。世界はこうも変わるのか。こうも綺麗に色づくことが出来るのか。」
おまけ。
「お前の赤い目もきれいで好きだったがな。もう見られねぇのか。」
らびりすが帰ったあと、堂島さんはふと呟いた。
「でも、力が完全になくなったわけではないということは、
意識的に力を発動したら赤目になるでしょうね。」
「確かにな。じゃあ、俺の前だけ、たまに発動してくれよ。」
「そ、そんなに赤目、好きですか…?」
あの意味嫌われた目が好きなんて言われたことがなく、
恐る恐る尋ねてみたが、堂島さんはにっこり微笑んで肯定の返事を返した。
「じゃ、じゃあ僕も、たまにでいいので、金色の目、見せてくださいね。」
「おう。二人だけのときに互いに見せあって、愛でような。」
「…はい。」