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    【番外】Hello,shining!5キスの日ネタお姫様抱っこおんぶ暴走する話逆鱗キスの日ネタ
    「よっしゃ」
    「クリア!」

     目線は画面に据え付けたまま、隣に座る水希とハイタッチ。手のひらが離れたらすかさずゲーム機を握り直す。
     水希とお互いの家に遊びに行って、ゲームしたり映画観賞したりと時間を過ごすことが、だいぶ増えたなと思う。
     色気があるとは言えないが、所謂お家デートだ。
     どちらも明確に口にしたことはないけれど、それに近しい言葉は交わしたことがある。ちゃんとはっきり言おうとしたことはあったが、水希に拒否られた。曰く、しばらく顔が見れなくなると。ザップの真っピンクな思考を読んでも平然としているくせに、レオがちょっとでも手を握れば顔を真っ赤にしてそっぽを向く、そういう子なのだ。実に複雑な精神構造をしている。
     中途半端で曖昧。けれどどちらにも確かな感情があることを、わかっている。そんな関係だ。
     たぶん。
     縁のぎりぎりまで水を溜めたコップのように。
     なにか些細なことで、簡単にあふれると思う。

    「あ、レオ」
    「うん?」

     一瞬だけ目線を上げて。
     画面に戻そうとした視線が固定される。
     二人とも座って、おまけにゲームに集中して猫背気味で、いつもより顔の位置が近いことに気づいたのだ。遅れて水希もレオを見て、はたと止まった。
     無言。聞こえるのはゲームのBGMだけ。
     動いたのはレオ。水希はぴくりとも動かなかった。縮めた距離が離れるまで、瞬きすらしない。

    「…………」

     あんなに夢中になっていた筈のBGMが、すっと意識から遠ざかる。代わりに心臓の鼓動が喧しくなってきた。

    「……もう一回、いい?」

     囁くように問うと。水希は口を固く閉じ、けれど小さく頷いた。
     繊細な作業をしているかのように、密やかな呼吸を繰り返す唇は、震えていた。それはレオも同じ。一回、二回、三回。震えを抑えるように、押し付け合う。
     何回目なのかもわからなくなったところで、不意に水希が顔を逸らした。背もたれにしていたベッドに突っ伏してしまう。

    「もうダメ……これ以上は心臓持たない」

     耳まで真っ赤にした彼女を見たら、レオもなにも言えなくなった。
     自分でもびっくりするぐらい、大胆なことをした。
    お姫様抱っこ
    「オラ足止めるな陰毛!」
    「はいいいい!!」

     超人揃いのライブラ面々と比べれば、レオはそりゃもう貧弱だが。
     これでも成人手前の男である。脚の悪い妹をおぶったり抱き上げることもあったし、腕力はそれなりにあるつもりだ。
     だから、同年代の女の子を抱えて全力疾走だって、できないことはない。
     簡単に折れてしまいそうな細さにしょっちゅう心配していたが、今ばかりは水希が痩せ型でよかったと思う。これで身長に見合った体重だったら、ちょっとレオの体力が持たなかった。

    「うわうわうわうわ」

     レオたちの逃走経路を守るために背後で血刃を振り回しているザップだが、相手もそれなりの手練れたちだ。ツェッドと二人がかりでも手こずっているらしく、時折足元や顔の横を銃弾がよぎり、ひやっとする。
     腕の中の水希は、まだ目を覚ます気配がない。
     情報を聞き出すため、ザップたちととっつかまえた密売人の思考を読んでいる最中に、密売人がどこからか狙撃された。そのショックまで感応してしまった水希が、ばったり倒れたのだ。
     精神感応力者が持つリスク。
     上司たちから聞いたことがある。戦えないレオが彼女と組むことは少ないが、ライブラ内では一番近しい関係だ。だから上司たちはレオにも注意しておくように伝えたのだろう。
     幸い、今回は気絶しただけだが。最悪の場合、自分がダメージを受けたものと脳が誤解して、ショック死することもありうるらしい。

    「レオくん、危ない!」

     顔は前に向けてても、義眼で前方と後方を捉えていたので、背後で起きたことを視認できた。
     銃弾一つ一つでも見分けることのできる動体視力はあっても、身体は追いつかない。
     絶望的な気持ちで、背後から迫る小型ミサイルを見つめる。
     避けられない。
     せめて、水希だけでも守れないか。
     無駄なのはわかりながらも、抱える腕に力を込める。

    「えっ」

     真っ直ぐ飛んでいたミサイルが、上方向に軌道を変えた。
     そのまま旋回し、後ろへ向きを変えて飛んでいく。遠隔操作されたような動きだ。
     ミサイルは斗流の二人の間も通り過ぎ、戸惑う敵中へと着弾した。爆風が背を押し、粉塵が頬を叩く。

    「ビックリした」

     耳元で中性的な声が呟く。

    「アタシ、気絶してた?」
    おんぶ
     瓦礫に埋め尽くされた道路の隅で、水希は蹲っていた。

     ──痛って。

     戦闘中に瓦礫につまずき、足を捻った。間抜けな怪我の仕方である。
     相手の動きを先読みできる水希は、他の戦闘員よりも負傷する頻度が少ない。そもそも彼らと違って裏稼業とは無縁の生活を送っていたのもあって、怪我には慣れていなかった。先輩や上司たちは血を大量に流したり身体に穴が開いても走り回れるが、水希はちょっとした足首の捻挫でも歩ける気がしない。比較対象がおかしいとは思いつつ、彼らと比べたら根性がないなと肩を落とす。
     長年押し隠してきた力を、活かす方法へ舵を切ってみたけど。
     きっと、覚悟が足りないのだろう。
     命の危険があることを承知で加入したつもりだが、実際のところ、本当に危機的状況に陥ったときに自身がなにを思うのか想像できない。

    「う……っ」

     このままこの場に座り込んでても無意味だ。焦れるほどゆっくりだが、それでもなんとか瓦礫に手をつき立ち上がる。
     捻った足に体重をかけ過ぎないように。足元に注意して。
     念力で自分の身体を浮かすことも考えたけど、足どころか胴体を捻ったときが怖いのでやめておく。他人の身体ならともかく、自分に試したことはない。

    「水希!」

     瓦礫の向こうから、レオナルドが顔を出した。ゴーグルから漏れる青い燐光が、砂塵に汚れた顔を薄っすら照らす。
     遠視で負傷した水希を見つけたのだろう。

    「折れたのか?」
    「捻っただけ」

     レオナルドが背を向け、しゃがみこんだ。

    「乗って」
    「え」

     後ずさろうとして、うっかり体重をかけた足に痛みが走り、呻く。

    「ほら、早く。皆と合流しないと」
    「いや……」
    「水希ぐらい、余裕余裕。クラウスさんだったら、無理だけど」

     そりゃそうだ。あんな筋肉の塊のような男が乗っかれば、潰れるに決まってる。
     レオナルドの肩に乗ったソニックまでもが「早よせい」と言わんばかりに背中を叩いてるのを見て、観念した。肩に手を置き、怖々と身を寄せる。脚に手が回って持ち上げられた。視点が若干低いが、思ったより安定している。

    「そんなガッチガチにならなくても。力抜いて良いんだよ」

     そうカラカラと笑って言うが。
     水希は慣れていないのだ。
    暴走する話
     年中霧に包まれたHLは、「乾燥」という言葉と無縁だ。癖っ毛のレオは、この街の湿度の高さにはいつも苦労している。
     今日は一段と霧が深い。人気のないフェイク・マンハッタンに立ち尽くす水希の髪は、しっとりと水気を帯びて艶を増していた。

    「今はそれ以上近づかないほうがいいよ」

     義眼だけが捉えることのできるオーラを頼りに水希を追ってきたレオは、足を止める。
     周囲に立ち並ぶ石像たちが震えていた。まるで地震のようだが、足元の地面が揺れている気配はない。

    「ああなりたくなかったらね」

     そう言って彼女が顎で示した先には。
     真っ二つに折れた人間の石像。
     その威力を想像すると、さすがにゾッとする。彼女の念力にかかれば、人物大の石の塊だって、砂糖菓子と変わらないのだろう。

    「大丈夫?」
    「制御が利かない……放っとけば収まると思うけど」

     彼女曰く、時々起こることらしい。超能力が暴走してしまうんだそうだ。以前、彼女の家が荒れていたときも、同じ原因だったとか。
     街中で暴発させるわけにはいかず、水希は人目のない場所へ避難したわけだ。
     独りで。

    「ここにいてもいいかな」
    「勝手にしなよ。でもそれ以上近づくのはおススメしない」

     本当は、生き物の気配が一切ない不気味な公園で一人になりたがる水希が心配だけど。
     もし万が一、彼女の念力でレオがちょっとでも怪我をするようなことがあれば、気に病んでしまう。大人しくその場に留まった。
     一分、二分。やがて、石像たちが静止した。

    「そっち行っていい?」
    「骨折られても文句言わないなら」

     ゆっくり足を踏み出す。
     なにか少しでも異変がないか、義眼でしっかり見極めながら。ゆっくり、でも着実に距離をつめていく。
     目の前で立ち止まったときには、お互い汗だくだった。

    「大丈夫だった」

     水希がぎこちなく口角を上げる。

    「強がるなよ」
    「そっちこそ」

     君だって、怖かったくせに。
    逆鱗 この街は大小様々な危険に溢れている。
     カツアゲどころか、命の危機ですら仕事柄日常と化してしまったレオだが。路地裏に引き込まれた途端ぶん殴られ、一瞬意識が飛んだ間にズボンを脱がされ、本気で焦った。
     街の外でも、男が被害者になるこの手の事件があることは、レオも知っている。治安が最低のHLでも、同様のことが起きないわけがない。ましてや相手は人類の性別の区別もつかない異界人だった。
     当然、レオは暴れた。
     カツアゲならまだ良い(いや、良くないけど)。ブラフの小銭だけ入れた財布を用意してるから、大した痛手にはならない。けれどこれはダメだ。命と比べたらそりゃ命を優先するが、かと言って簡単に諦めて「はいどうぞ」と差し出せるものではない。

     ──視界混交!

     出し惜しみなどしてられなかった。
     しかしもっと早く義眼を使用するべきだった。既にレオに圧し掛かっていた異界人の身体の下から這い出るのは楽じゃない。視界が支配されようと、レオが逃げようとしたのがわかったのだろう。頭を掴まれ、地面に叩きつけられた。
     それでも屈しない。必死にもがき、膝まで下ろされたズボンを全力で掴む。また頭を抑えつけようとしてきた手を、思いっきり噛んでやった。

    「ギャッ!」

     悲鳴をあげた異界人に、代わりに張り手を喰らった。目の奥で星が散る。

    「いい加減にしろよ、クソガ――」
    「死ね」

     レオが噛みついた手が、あらぬ方へ折れ曲がった。ぼきりと不気味な音に、異界人が「あ?」と間抜けな声を出す。唐突過ぎてなにが起こったかわからないと言った表情で、力なくぶら下がる手首を見る。

    「死ね」

     かすれた声が、路地裏の入り口から聞こえた。
     次に響き渡ったのは、悲鳴というより雄叫びだ。異界人が身を捩り、口から泡を吹き出し吠え続ける。無事な方の手が下半身を抑えてるのを見て、どこを攻撃されているのか察した。同じ男であるレオも、つい状況を忘れて引きつった声を出す。

    「死ね、死ね、死んじまえ」

     あまりの痛ましさに見ていられず、顔を背ける。その先で、水希が立っていた。青い瞳の中で、嵐の海のように激情が渦巻いているのが見て取れた。
     水希。震える声で呼ぶ。けれど彼女は異界人から視線を逸らさない。

    「わ、悪かった、俺が悪かったよう」
    「地獄に堕ちろ、この××」

     断末魔は短かった。
    ティウス(夢用) Link Message Mute
    2023/04/08 0:13:50

    【番外】Hello,shining!5

    レオ夢
    ツイッターで書き溜めていた番外SS
    ※オリ主/名前変換なし
    #夢界戦線 #夢小説 #オリ主

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