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    【番外】Hello,shining!12誤解守る話先輩後輩逆ナンうたた寝誤解
     邪神召還を寸でのところで食い止め、今日も世界滅亡を回避することができた。とうに遅い時間のため、スティーブンは現地解散を言い渡した。
     昼間でもなにかと危険の多い街だが、夜はさらに生還率が低くなる。こういうときは誰かがレオを家まで送ることが多く、今日は水希が一緒に帰路についた。女の子に送られるなんて情けない話だが、彼女の方がぶっちぎりで戦闘力が高いのだから仕方ない。

    「腹減ったな。どっか寄る?」

     今夜も派手に暴れたので疲れている。帰ってから自分で夕飯を作る気力も体力もない。

    「今の時間、開いてるとこあったっけ」
    「俺ん家の近くにラーメン屋が――」
    「お兄さんたち、今晩どう?」

     暗がりから声をかけられてぎょっとした。遅れて、道端からレオたちを誘った女性二人が情婦であることに気づき、硬直する。街灯からやや離れてたって、義眼はその豊満な胸やまろい曲線を描く臀部をばっちり捉えることができる。ザップの愛人トラップで娼婦と多少お喋りしたことはあるが、まったく無関係の女性からその気で声をかけられたのは初めてだった。
     はっと見回せば、周辺には客を探す情婦がちらほら立っていた。仕事でもなければこんな時間帯にこんな通りを歩くことはないので、意識していなかった。

    「ねえ」

     ルージュのひかれた赤い唇が弧を描き、白い手があろうことか水希の首に回ろうとした。レオは仰天し、咄嗟に水希を引き寄せる。

    「きょっ、今日はこの子と過ごすので! ごめんなさい!」

     思いっきり声が裏返った。水希の手を引き、早足でその場を退散する。情婦たちは追いかけてこなかった。たぶん、彼女らは次の客候補を探すのだろう。
     やがて大通りに出た。ここまで来れば、情婦の姿はない。ほっとし、歩みの速度を緩める。

    「手、痛い」
    「あっ、ごめん」

     ぱっと手を離す。水希は横を向く。

    「……てんぱりすぎでしょ」
    「う、だって」

     思い返すと、情婦たちに誤解されるような言い回しをしてしまった。俯くと、ひっそり笑う気配がした。

    「あの人たち、アタシらのことゲイだって勘違いしてたよ」
    「そこは怒れよ……」
    守る話
     レオは元々田舎町に住む平凡な青年だった。足の悪い妹がいることがやや平均から外れているものの、それ以外は特に突出したとこのない、どこにでもいる一般人A。不運にも常識はずれな視力を得てからも、変わらない。霧に閉ざされた魔窟の街においては、自分の身を守ることすらままならない、非力な人類。
     レオは己の非力さを心得ている。だから危機を前にすればまず逃げることを考えるし、どうにもならなくなったら頼れる仲間たちにヘルプを要請する。自分のために仲間たちが戦い、時には傷つくことがあっても躊躇ってはいけない。戦う力のない人類は、この街ではあまりにも無力なのだ。
     それでも、退くわけにはいかないときがある。
     腕の中に、守らなければいけない人がいる。
     異界技術を取り入れたサイボーグ人間でも、人類より遥かに屈強な異界人でも、指先すら動かさずに屠れる能力。そんな力を持った超能力者でも、当たり前だが気絶してしまえば無力化する。頭を強打し、額から血を流す水希は、ぐったりと胸に凭れて力を失っていた。
     肩に回した腕に力を込める。服越しに伝わる体躯は細く、こんな華奢な女の子にいつも守られているのだと実感する。
     気絶する前に、水希は言った。「逃げろ」と。
     彼女の言っていることはわかる。ライブラにとって義眼保有者は貴重な人材だし、レオだって妹の視力を取り戻すためには簡単に死ねない。己の本来の目的を思えば、逃げた方が良い。

    「ふざけんな」

     呟く。
     過去のトラウマのために、すぐレオを守ろうと血を流す女の子を放って逃げれるわけがない。
     今は、レオが水希を守る番だ。
     瞼を開き、義眼の能力を解放する。
     血界の眷属を前に、スマホで仲間たちに危機を知らせる余裕はない。けれど先ほどまで襟の中に隠れていたソニックの姿がないので、彼が代わりに助けを呼びに行っているはずだ。ものを喋ることはできないが、彼は賢い。きっと皆には伝わるはず。
     助けは絶対に来る。ミシェーラを守るために戦ったときのように。だからそれまでは、義眼の力を駆使して水希を守り抜くのだ。
    先輩後輩
     なんたる失態。目が覚めたツェッドは、現状を悟り奥歯を噛み締める。
     師匠にライブラへ預けられ――置き去りにされたともいう――他者と連携して闘うことを覚えた。この世で唯一の個体であるツェッドだが、主に人類で構成される組織にも馴染めたと思う。戦力として認められるようになり、今回、ツェッドより少し後に加入した後輩の面倒を任されていた。人の社会と関わることのなかったツェッドにとって後輩指導は初めてのことであるから緊張する一方で、与えられた仕事を全うしなければと意気込んでいた。
     だというのに、後輩揃って敵に捕まるという体たらく。まったくもって情けない。
     不死者を相手に長年闘ってきた血法使いですら一瞬で黙らせる念力であっても、通じないものはある。基本的に、念力で捉えられる物は固体だ。気体は対象外で、催眠ガスは防げるものではなかった。風を操るツェッドが対処するべきだったのだが、異臭に気づくのが遅れてしまった。意識が刈り取られ、気がつけば二人とも縛られた状態で床に転がされていた。

    「起きたか」

     頭に足が乗る。ブーツの踵がこめかみを抉るように擦られる。
     ガスには筋弛緩の作用もあったのか、身体に力が入らない。ツェッドは大人しく踏まれるしかない。

    「さーて、どこの組織が俺たちを探りに来たのか、吐いてもらおうか」

     幸い、自白剤は打たれていないらしい。頭痛はするものの、意識は明瞭。体内に流れる血液もツェッドの思いのままだ。循環を促進させ、一秒でも早く身体に残る毒素を排出しようと試みる。血液を自在に操って戦う者など、この街でも数えるほどしかいない。よほど注意深い人間でもなければ、こちらの目論見など気づけないはずだ。
     ツェッドが簡単に口を割らないことぐらいは想定内らしい。ナイフが取り出された。これといった魔術的な仕掛けは見当たらない、ごく普通のナイフ。その鋭利な切っ先が、ツェッド――ではなく、水希に向けられた。ぐいと髪を掴み、晒された喉に突きつけられる。白い首筋は頼りない細さで、小さなナイフであっても簡単に深い傷を負わせるだろう。
     ナイフが振り上げられる。ツェッドは息を呑む。

    「ぎゃっ!」

     ナイフは水希の首ではなく、男の足に刺さった。悲鳴をあげて男は床を転がる。

    「うるさい、喚くな」

     ナイフが宙を浮き、今度は男の喉にぴたりと吸いつけられた。男は声なき悲鳴をあげる。

    「み……水希くん。起きてたんですか」

     青い目が力なくツェッドを見返した。

    「たった今ね……ああくそ、頭痛い」

     手足を縛る縄が緩む。彼女が念力で解いてくれたのだろう。

    「動けそうにないな。どうする?」
    「あと一分ほど待ってもらえますか。僕は直に動けますので」

     すでに手足の感覚は戻りつつある。動けるようになったら、彼女をおぶればいい。

    「血法ってそんなこともできるんだ……便利だね」

     水希の念力も大概だ。
    逆ナン
     渡りに船とはまさにこのこと。

    「水希くん!」

     事務所の入り口から近い通りで幸いした。路地から出てきた水希を見止め、ツェッドは声を上げる。詳細を語らずとも、心を読める彼女はすぐにツェッドのヘルプを感じ取った。こちらに歩み寄り、傍らに立っていた人類の女性に声をかける。

    「悪いね、彼、これから一緒に仕事があるから」

     本当は、今日はオフだ。公園での大道芸を終えて、事務所の水槽に帰るところだった。しかし口裏を合わせてくれた彼女に従い、ツェッドは女性と別れた。

    「逆ナンは初めて?」

     逆ナン。女にだらしない兄弟子ならともかく、ツェッドとは縁のない言葉だ。

    「いえ、モデルになって欲しいと声をかけられまして」
    「モデル?」
    「画家だそうです」
    「はあ、画家ねえ……」

     水希はちらと振り返る。女性の姿はもうない。

    「嘘だったんですか?」

     ツェッドには、女性の言葉に裏があったかどうかわからない。

    「嘘ではないよ。でも下心はあったね」
    「下心、ですか」

     客観的に見て、ツェッドは金持ちに見えるなりをしていない。なにを狙って声をかけたのだろう。

    「たまにいるんだよね、同じ人類じゃなくて異界人がタイプって人。ツェッドさんは半分人類だから違うけど、知らない人からすれば異界人と変わらないだろうし」
    「何ですって?」

     耳を疑う。
     水希が最初に言った通り、本当に逆ナンだったのか。人類と魚類の混合種であり、外見は人とまったく異なるツェッド相手に。

    「太った人が好きとか、枯れ専とかあるでしょ。それと一緒」
    「はあ……」

     にわかには信じがたく、首を捻る。

    「ええと、例えば水希くんが小柄な人を好みなように……?」
    「今のツェッドさんじゃなきゃぶん殴ってるよ」
    「すみません」

     この場合、彼女の拳ではなく、念力でツェッドの手を操って自分に殴らせるという意味だ。
     飲みの場で突如始まった腕相撲大会に引っぱりだされ、みごと最弱王を勝ち取った彼女の腕力では何のダメージにもならないから。
    うたた寝
     とすん。肩にかかる軽い衝撃に、報告書に集中していたスティーブンはタブレットから横へと視線を移す。
     小さな頭が肩に乗っていた。

    「お嬢さん?」

     返事はない。代わりに静かな寝息が聞こえた。
     スティーブンたちが思っている以上に、超能力というものは体力を消耗するらしい。幼い頃から「使用しないこと」に比重をおいていたことで水希本人が限界を把握できていないこともあり、時折強制シャットダウンをしたように意識を失う。
     これがザップあたりなら脛を蹴って起こしているが、女の子相手にそんな乱暴なことはできない。彼女はさして重くないし、スティーブンは構わずタブレットに意識を戻した。ソファを彼女に譲ってデスクに移動しても良いが、動かすと起こしてしまうかもしれない。
     ドアが開く。

    「お疲れ様でー……す」

     入ってきたレオナルドの挨拶が萎む。スティーブンは口の前で指を立てた。

    「……寝てるんスか」

     足音を忍ばせ、近づいたレオが水希の寝顔をのぞき込む。

    「みたいだな」

     落ち着きなく水希とスティーブンを見比べるレオの反応に、吹き出しそうになる。

    「代わってくれるか? 起こすのも忍びないんでね」
    「あっ、はい」

     若者にしてはスローテンポすぎるのか、それとも最近の若者の傾向なのか。わかりやすすぎる水希に、最近ではレオも満更ではなさそうだが、一向に進展する気配を見せない。
     起こさないよう慎重に場所を代わってもらったが、レオは小さすぎた。首を傾ける水希の姿勢は苦しそうで、これではすぐに起きてしまうかもしれない。
     空になったマグを手に、給湯室に入る。
     悲鳴がした。
     給湯室から首を出すと、やはり水希は起きてしまったようだ。ソファの端に移動して蹲っている。髪から覗く耳は赤く染まっていた。
     起き抜けに至近距離でレオの顔を見るのだ。さぞ驚いたことだろう。

    「いつの間に来てたんだ……」

     水希は呻くように呟く。

    「ごめん、起こした?」
    「首が痛い」
    「だよな……」

     身長差を気にするレオは肩を落とした。
    ティウス(夢用) Link Message Mute
    2023/05/27 0:00:00

    【番外】Hello,shining!12

    レオ夢
    ツイッターで書き溜めていた番外SS
    ※オリ主/名前変換なし
    #夢界戦線 #夢小説 #オリ主

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