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    道なき未知を拓く者たち⑩ ウッドベリーからの襲撃を受けた翌日、次の襲撃への備えを急ぐリックたちの前に思いがけない人物が現れた。その知らせを持ってきたのは外で見張りを行っていたキャロルだ。
     監房棟内で襲撃への対策を話し合っていたリックは駆け込んできたキャロルを見て目を丸くした。そのリックに向かって彼女は叫ぶ。
    「ゲートの前に車が一台停まったわ!すぐに来て!」
     血相を変えて飛んできたキャロルの報告に誰もが顔を引きつらせる。刑務所を訪ねてくる者がいるとすればウッドベリーの人間しかいない。
     リックは銃を手に取り、ニーガン、シェーン、ダリル、メルルを連れてゲートへ急ぐ。ゲートは昨日の襲撃時に破壊されたため仮設のものを設置してあった。人手があれば車や重機を使わずとも撤去できるほど簡易的なゲートであっても取り除かれては困る。
     リックたちは周辺に敵が潜んでいないか警戒しながらゲートまで進み、車の運転席に座っている人物を見て目を瞠った。
    「アンドレア?なぜ彼女がここに……?」
     思わず漏れたリックの疑問に答えられる者は誰もいない。皆も困惑した様子でアンドレアを見つめていた。
     そのアンドレア本人は車に群がってくるウォーカーを気にしながらも、こちらに向かって大声で呼びかけてくる。
    「リック、来たのは私だけ!あなたたちと話がしたいの!だから中に入れて!」
     必死に呼びかけてくるアンドレアを見つめるリックの耳にシェーンの「どうする?」と問う声が届いた。
    「ざっと周辺を見てみたが、本当にアンドレアしか来てないみたいだぞ。彼女を中へ入れるか?」
    「……彼女の立場は微妙なものだが、俺たちを騙すような人間じゃない。話を聞くだけ聞いてみよう。」
     リックはシェーンに対してそのように返してから仮設のゲートに手を掛けて開ける準備をした。皆にはウォーカーへの対処を頼み、それからアンドレアへ顔を向ける。
    「アンドレア、準備ができたら教えてくれ。すぐにゲートを開ける。」
     リックの指示にアンドレアは頷き、すぐに車のエンジンを掛ける。それから間もなく「準備できた!」という声が聞こえたため、リックは躊躇うことなくゲートを開けた。ゲートが開くと同時にアンドレアの車が前進して中に入り、車が完全に刑務所の敷地内に入った時点でゲートを閉じる。
     リックはアンドレアの車をグラウンド内へ誘導してから車を停めさせた。そして、車から降りた彼女に拳銃を向ける。銃口を向けられたアンドレアは目を見開いた。
    「リック、どうして⁉」
     取り乱しながら両手を上げるアンドレアのボディーチェックを行ったのはシェーンだ。険しい表情でアンドレアから武器を取り上げるシェーンの近くに立つニーガンも彼女に銃口を向けており、ダリルとメルルは銃を向けはしないものの厳しい眼差しをアンドレアに投げかけている。
     シェーンの「武器は全部取り上げたぞ」との報告にリックは小さく頷き、改めてアンドレアを見据えた。それに対して返されるアンドレアの眼差しは困惑に満ちている。
     リックは自身の中にある困惑を軽くしようと息を吐き、それからアンドレアに話しかける。
    「……よく来たな。とりあえず中に案内する。」
    「リック、私はみんなの仲間として──」
    「話は後だ。」
     リックは言い募るアンドレアを無視して建物の方に歩き出す。
     アンドレアとの再会を純粋に喜び、嘗てのような仲間として接することはできなかった。アンドレアの人柄は信用しているが、彼女は敵対するコミュニティーの一員。気安くするべきではない。
     リックは背後にアンドレアの気配を感じながら、笑顔のない再会に対する複雑な感情に眉を寄せた。


     アンドレアを連れて監房棟に足を踏み入れると、オスカー以外の全員が驚愕を顔に浮かべた。その誰もがアンドレアに釘付けになっている。
     アンドレアが仲間たちの無事な姿に感極まって目を潤ませれば、キャロルが近づいて彼女を抱きしめた。キャロルからの温かな抱擁を受けたアンドレアも抱きしめ返す。
    「キャロル……!無事でよかった!」
    「私、あなたが死んでしまったかと……会えて嬉しいわ、アンドレア。」
     キャロルとの抱擁を終えたアンドレアは周囲を見渡して、一人ひとりの名前を呼びながら視線を合わせていく。そのアンドレアの視線がベスの腕に抱かれているジュディスに縫い止められた。ローリが産んだ赤ん坊だと察したらしく、彼女の顔に安堵の笑みが広がる。
    「よかった、無事に生まれたのね。リック、あの子の名前は?」
     穏やかに微笑みながら問いかけてくるアンドレアにリックは「ジュディスだ」と答えた。
    「良い名前。ローリは?彼女はどこ?」
     リックはローリの居場所を尋ねるアンドレアの真っ直ぐな眼差しを受け止めきれずに俯く。それにより彼女はローリの死を悟ったのだろう。「まさか、ローリは……」と震える声が響いた。
     リックは喪失感に痛む胸を無視してアンドレアにローリの死を伝える。
    「ローリは出産後に死んだ。長旅で体が弱っていたせいだと思う。君のことを気にしていたから、会わせてやれなくて残念だ。」
    「ああ、そんな……ローリが死んだなんて。リック、本当に残念だわ。」
     アンドレアはローリの死にショックを受けたらしく、肩を震わせて泣き始めた。その彼女にキャロルとマギーが寄り添う。
     リックはアンドレアが泣き止むまで待ち、彼女が落ち着きを取り戻したと判断したところで質問を始める。
    「アンドレア、今日は何の用事でここへ来たんだ?総督が刑務所を襲撃したことは知っているんだろう?」
     そのように尋ねればアンドレアは驚いたように目を丸くした。
    「攻撃されたから反撃したとしか聞いてない。本当に?フィリップが──総督がここを襲ったの?」
    「そうだ。君の恋人が俺たちを銃撃してきた。それだけじゃない。車でフェンスをなぎ倒してグラウンドに大量のウォーカーを放った。本来はゲートもきちんとしたものだったんだが、奴に壊されたんだ。」
     リックの言葉を聞いたアンドレアの顔が青ざめる。刑務所への襲撃のことは本当に知らなかったようだ。
     アンドレアは辛そうな表情と共に自身を抱きしめる。
    「ごめんなさい、それは本当に知らなかった。町にグレンとマギーがいたことも。本当にごめんなさい。……今日はあなたたちにフィリップとの話し合いを頼みに来たの。平和的に解決してほしいから。でも、そんなことが起きていたなんて……」
    「話し合い?」
    「リーダー同士の会談よ。リックとフィリップで話し合ってほしい。このことはフィリップにも提案してあって、彼はこれを受け入れた。だからあなたも応じて、リック。」
     アンドレアはそこまで話すと胸ポケットから折りたたまれたメモ用紙を取り出した。そして、それをリックに差し出す。
    「これは会談場所の地図を描いたもの。明後日の正午、刑務所から少し離れた場所にある農場に来て。」
     リックは差し出されたメモ用紙を受け取って中身を確認する。刑務所から農場までの道のりが簡単に描かれてあり、その他には特に情報はない。
     リックはメモ用紙から視線を上げて、緊張した様子でこちらを見るアンドレアを見つめ返した。
    「俺たちの意思はダリルが伝えたはずだ。俺たちは放っておいてもらえればそれでいい。ウッドベリーとは二度と関わりたくない。だから会談には応じられない。」
     リックは溜め息を吐きたい気持ちを堪えながら回答した。
     仕掛けてきたのはウッドベリーであり、「これ以上は関わる気がないので放っておいてほしい」とも伝えた。それなのに会談を持ちかけてくるだなんて、一体どういうつもりなのだろうか?
     しかし、リックの回答をアンドレアは受け入れない。焦った様子で「リック、お願い」と言い募る。
    「リックたちが町に侵入した時にこちらの人間が何人も死んだわ。だから示しを付けるためにもリーダー同士の話し合いが必要なの。そうしないと事態は収まらない。」
     アンドレアの言葉により仲間たちの怒りが膨れ上がった。「これは不味い」と感じたリックが口を開くよりも先にグレンがアンドレアに対して怒りをぶつける。
    「冗談じゃない。そっちが俺とマギーを誘拐したからリックたちが救出のために侵入しなきゃならなくなったんだ。問題の原因はウッドベリー側にある。」
     グレンに続き、マギーも険しい表情で意見を述べる。
    「昨日の襲撃で私たちも仲間を失った。良い人だったわ。付き合いが短くても大切な仲間だった。そっちだけ被害を受けたような言い方はやめて。」
     他の者たちも二人に同意するように頷いた。アクセルが死んで日が浅いため、誰もが彼の死から立ち直ることができていない。それだけにアンドレアの言葉は皆を怒らせたのだ。
     仲間たちの怒りを感じ取ったアンドレアは「ごめんなさい」と項垂れた。だが、彼女はすぐに顔を上げて必死に訴える。
    「私はどちらにもこれ以上の犠牲を出してほしくない。そのためには会談が必要よ。話し合って和解しなければ戦いは避けられない。戦いに突入したら今以上に犠牲者が増えてしまう。だから、お願い。」
     アンドレアの必死の訴えに対して誰も何も答えなかった。難しい顔で考え込んでいる。
     アンドレアは仲間から反応が返ってこないことに悔しそうに唇を噛み、次はリックに顔を向けた。
    「リック、町では『人殺し』のあなたたちを殺すために戦争の準備を始めた。今度は町全体が相手なのよ。勝ち目はない。みんなを守るために会談に応じて。」
     リックは即座に返事することができなかった。
     ウッドベリーとの関わりは望まないが、あちらが町全体を巻き込んで戦争を起こすつもりでいる以上は無視できない。戦いが避けられない場合に備えて敵のリーダーの人となりを知っておくことも悪くないだろう。可能ならば落としどころを見つけて相互不干渉の約束を取り付けたいところではあるが。
     しかし、先日のような襲撃を仕掛けてくる人間が会談をする気になるだろうか?アンドレアには会談に応じると答えておいて、本当はこちらを罠に嵌めるつもりなのではないか?それが気がかりだ。
     リックはアンドレアに鋭い眼差しを向けて問う。
    「アンドレア、総督は会談に応じると言ったんだな?それは確かなんだな?」
     その問いに対してアンドレアは深く頷いた。
    「ええ、『刑務所側のリーダーと話をする』と言ってくれた。」
    「そうか。……わかった、明後日の正午だな。総督に会って話をしてみよう。」
     リックがそのように告げると、皆が驚いたように「リック!」と呼んだ。リックは仲間たちの顔を見回しながら自分の考えを述べる。
    「成功する可能性が低いとしても総督と交渉してみようと思う。戦わずに済むならそれが一番だ。戦争になるとしても向こうの情報が欲しいしな。」
     リックは皆に向けてそのように話してから、もう一度アンドレアを見る。
    「当日は俺以外にも数人を連れて行く。君には悪いが、総督を信用できない。それは承知しておいてくれ。」
    「わかった。彼にも伝える。」
    「……もう話すことはない。暗くなる前に町へ帰れ。」
     リックはアンドレアから視線を外しながら帰宅を促し、監房棟の出入り口へ向かって歩き出す。
     嘗ては助け合った仲間であっても今は敵対する者同士。余計な情をかければ戦いになった時に辛い思いをする。長く一緒に過ごすのは互いのためにならない。
     リックの素っ気ない態度にアンドレアが悲しげに俯く姿が視界の端に映ったが、リックは敢えてそれを無視して外へ続く扉を開けた。


     リックはアンドレアの見送りについてはニーガンとシェーンにだけ同行を許した。彼女を追跡してきたウッドベリー側の人間がいる可能性を捨てきれなかったというのもあるが、見送りをすれば離れ難くなるからだ。だから見送りの人数は少ないほうが良い。
     アンドレアがシートベルトを締め終わったタイミングでリックは車に近づいた。
    「アンドレア、君が俺たちを心配して動いてくれたことは理解しているし、感謝もしている。だが、俺たちは敵対するコミュニティー同士の人間だ。俺たちへの情は君を苦しめる。町へ戻ったら俺たちのことは忘れろ。いいな?」
     その言葉にアンドレアは目を見開き、続けて悲しそうに顔を歪めて頭を振った。
    「そんなこと言わないで。みんなは今でも私の大切な仲間なのよ。」
    「それでもだ。それが君のためだ。」
     リックがアンドレアの目を真っ直ぐに見つめながら言うと、彼女は拒むように目を伏せる。それを見てリックは車から一歩遠ざかった。これ以上言葉を重ねても彼女を苦しめるだけだ。
     リックと入れ替わりに今度はニーガンが車に近づき、「アンドレア、聞け」と話しかける。
    「今回の行動で、総督は君が俺たちに情があると判断して警戒するはずだ。戻ったら監視されてると思って行動しろ。下手な動きを見せれば殺される。」
    「ニーガン……」
    「いいか、総督って野郎は君が考えるよりもかなり危険な男だ。それを忘れるな。」
     アンドレアは顔を強張らせたまま頷くこともできずにニーガンを凝視している。その目に宿るのは迷いだ。恋人を信じたい気持ちと、仲間からの忠告に心が揺れている。
     リックは後ろを振り返り、シェーンに向かって小さく頷いた。それを受けてシェーンがゲートの方へ走っていく。
     リックはニーガンと共にゲートから少し離れたフェンスの前に移動して、大声を上げたりフェンスを揺らして音を立ててウォーカーを引き寄せる。それによりゲート周辺のウォーカーの数が減り、その隙にシェーンがゲートを開けてアンドレアの車を外に出した。
     リックはゲートが閉まる音を耳にしながら、アンドレアの運転する車が遠ざかっていく様子を見守る。
     次にアンドレアと会うのは仲間としてではなく対立する者同士としてだろう。数奇な運命により大切な仲間と対立しなければならなくなったことがひどく悲しかった。


    *****


     会談の当日。刑務所が襲撃を受けた際の備えを十分に進めたリックたちは必要最低限の武器を車に載せて、会談場所である農場へ行くための準備を整えた。そろそろ出発の時間だ。
     リックは愛用の拳銃を取り出して装填されている弾薬の数を確かめる。上限いっぱいに弾は込めた。予備も携帯しているので、もし戦いになったとしても対応可能だ。何も問題はないはず。
     リックは軽く息を吐いてから拳銃をホルスターに収めて「そろそろ車に乗ろう」と体の向きを変えた。振り向いた先にはニーガンがいた。こちらを真っ直ぐに見つめる彼は何か言いたげだ。
     ニーガンが自分に言いたいことを察したリックは苦笑いを浮かべて彼に近づいていく。
    「ニーガン、その顔はやめろ。」
     苦笑混じりに言えばニーガンも苦笑して肩を竦める。
    「顔の良さは生まれつきだから変えようがない。」
    「そういう意味じゃない。──俺も会談に同行したいって顔。それをやめてくれ、と頼んでるんだ。」
     リックがニーガンの目の前で足を止めると、ニーガンが珍しく困ったように眉を下げた。彼が困った顔をするのはなかなかに珍しい。
     ニーガンは溜め息を落としながら革ジャケットのポケットに両手を突っ込む。
    「奴らが罠を仕掛けてる可能性はゼロじゃない。そんな場所にお前を行かせて、俺は刑務所に残る。それが嫌なんだ。どうして俺を置いていく?いつも一緒だったろ、俺たち。」
    「理由なら説明したはずだ。ディクソン兄弟を揃って置いていくのも会談に同行させるのも難しい。だからダリルを同行させてメルルを残す。メルルが何か問題を起こした時、大柄な彼に対抗できるのはニーガンだから残ってもらう、と。」
    「それは理解できるが、それでも俺は待ってるだけなんて嫌だね。」
    「そんなに俺が心配か?」
    「ああ、心配だ。」
     一瞬の間も置かずに返ってきた答えにリックは目を瞠る。その反応を受けたニーガンがリックから目を逸らして溜め息を吐いた。いつも自信たっぷりな彼らしくない憂い顔からリックは目を離せない。
    「リック、お前のことは信用してる。きつい状況に対応する姿を見てきたし、交渉だって問題なくできるだろうさ。だが、総督は今まで相手にしてきた連中とはレベルが違う。厄介すぎる相手だ。──お前を失いたくない。」
     最後の一言を告げる時、ニーガンの声が微かに掠れた。そして今までに見たことがないほどに苦悩を顔に滲ませる。
     リックも総督との会談の危険性は承知している。ウッドベリーという町の運営に隠された秘密、グレンとマギーへの仕打ち、そして先日の襲撃などから見えてくるのは総督という人物の狡猾さだ。実際に会ったことがなくとも非常に狡猾な人間だということがわかる。そんな相手との会談であれば罠が仕掛けられている可能性を疑うのは当然のことであり、ニーガンがリックを心配して同行したがるのも無理はない。
     しかし、リックはこれが最善なのだと心の底から思っている。
    「ニーガン、俺の目を見てくれ。」
     リックがそのように頼むと、ニーガンが視線をこちらに戻した。
    「危険だというのはわかってるが俺は行かなきゃならない。そして、あんたを連れて行く気はない。だが、それはあんたを危険な場所に連れて行きたくないという意味じゃない。ニーガンには刑務所に残るみんなを守って、会談に行った俺たちが帰る場所を守ってほしい。だから連れて行かない。」
     そのように告げればニーガンの目が驚きに見開かれた。リックはその目を見つめながら思いを紡ぎ続ける。
    「総督が罠を仕掛けて待ち構えている可能性はある。それと同じくらいに刑務所への襲撃の可能性も考えられる。もし俺たちが無事だったとしても、ここが壊滅したら……残ったみんなが死んだら、何の意味もない。ここに残るあんたが俺たちを心配するように、俺は俺たちの帰りを待つみんなのことを心配しているんだ。」
    「……そうだな。確かに、お前だって俺たちを心配するよな。」
     リックは納得したように頷くニーガンに近づいて彼の胸に手を置いた。
     そして、間近で顔を見上げながら心を込めて告げる。
    「ニーガンなら何が起きてもみんなと刑務所を守ってくれると信じてる。だから俺のことも信じてほしい。俺は何があっても必ず帰ってくる。ニーガンのところに帰ってくるから。」
     リックが「お願いだ」と言うと、ニーガンの顔に微笑が浮かんだ。
     ニーガンは微笑んだままポケットから両手を出してリックの頬を包む。それと同時に額同士が触れ合わされたので、リックは思わず笑みを零した。
    「そこまで言われちゃ仕方ない。信じてやるよ。で、お前が帰る場所を絶対に守る。だから無事に帰ってこい。」
    「ああ、必ず帰る。」
     約束を交わし、ニーガンがリックから手を離して一歩後ろに下がった。
     ニーガンの顔に憂いはない。そこには普段と変わらない自信に満ちた笑みがあった。その笑みがリックの背中を押してくれる。
    「行け、リック。」
     それは力強い声だった。それに対してリックはしっかりと頷き、ニーガンの横を通って車へ向かう。
     共に会談場所に向かう仲間たちが待つ車に歩いていく最中、リックは背中に視線を感じた。それがニーガンのものなのだということは振り返らずともわかる。
     後ろは向かない。前だけを見て進む。会談を終えたら、真っ直ぐに前を見てニーガンのところへ帰るのだから。


    *****


     リックたちが会談を行う場所として指定された農場に到着した時、見える範囲に相手の車はなかった。
     リックは車を降りる前に上着のポケットに地図が入っていることを確認する。交渉の時に使うために持ってきたものだ。その確認が済んだ後、周囲を警戒しながら車を降りる。
     リックに同行したのはシェーン、ハーシェル、ダリルの三人。リックはハーシェルを車に残して他の二人と共に農場の周辺を見回る。罠が仕掛けられていないか確認するためだ。
     人の手が入らずに寂れてしまった農場の中を拳銃を構えながら進んでいくと、地面に一体のウォーカーが転がっているのを見つけた。そのウォーカーは頭部を銃で撃ち抜かれており、まだ傷口の血が乾いていなかった。血が乾いていないということはウォーカーが倒されてから三十分も経っていないはず。どこかにウッドベリー側の者が潜んでいる可能性が出てきた。
     緊張感の増したリックたちが更に先へ進めば、いくつかの小屋が現れた。リックはシェーンとダリルに視線を送り、少し離れた場所に建つ小屋を指差して「向こうの小屋を探れ」と無言で指示を出す。それに対して二人も無言で頷いてから散っていった。
     仲間たちが小屋に入る姿を見届けたリックは近くにある小屋の扉を慎重に開けて中に体を滑り込ませる。小屋の中は明かり取り用の窓のおかげで予想していたよりも明るかった。その反面、日差しの届かない範囲が暗い。
     農業用の器具や備品が保管されている中で異彩を放つのが中央に置かれたテーブルと椅子だ。椅子は二脚あり、テーブルを挟んで向かい合うように設置されている。まるで今回の会談のために用意されたようだ。
     リックが訝しみながらテーブルと椅子に近づいていくと、暗闇の中で何者かが動く気配がした。リックは瞬時に銃口を人影に向ける。
     姿を現したのは長身で右目に眼帯を着けた男だった。男はリックから視線を外さないまま両手を上げて笑う。その笑みの白々しさに不快感を覚える。
     少しの間、リックは無言で男と視線を交わらせていたが、やがて男の方が顔を逸らして両手を下ろした。男は小さく笑みを零すと再び顔をこちらに向けて悠然と微笑む。
    「じっくり話そう。」
     この男が総督だ。
     そのように思っただけでリックの掌に汗がじわりと滲んだ。
     少し言葉を交わしただけで、総督が予想以上に厄介な相手だということをリックは嫌というほど実感する。
     現れた総督に対して「先にそちらが自分たちを攻撃してきた」と牽制すると、彼は「皆殺しにすることもできたが、そうしなかった」と涼し気な顔で返してきた。他人の命を己の手で握ることについての重みも責任も感じられない男にリックは強い不快感を抱く。
     リックが不快感と警戒心を隠さず睨みつけた時、総督は「互いに武器を外して落ち着いて話をしよう」と提案し、己の腰に下げている拳銃をホルスターごと取り外した。見せつけるように拳銃をこちらに向けて掲げてからそれを柱に掛けて、流れるような動作で椅子に座る。
     その次にはリックに向かって「ほら、座れ」と促してきた。その態度からは余裕が漂う。あくまでも主導権は自分にあると主張したいのだろう。
     リックは笑みを浮かべる男を睨みつつも拳銃をホルスターに戻した。だが、総督の勧めには従わず、椅子には座らなかった。「お前に主導権を渡すつもりはない」という意思表示のためだ。
     目の前の男に対して油断は禁物だ、とリックは警戒心を強める。総督は他人を自分のペースに巻き込むのが得意なようだ。少しでも気を抜けば主導権を握られて相手の思うように話が進んでしまうだろう。保安官として多くの人間と接してきた経験があり、会話の主導権を握ることに慣れているリックであっても総督は非常に厄介な相手だった。
     リックが総督と睨み合っているところへアンドレアが現れる。彼女は微かに怒気を漂わせながら総督に鋭い眼差しを向けた。
    「何をしてるの?」
     アンドレアの問いに総督は「何も」と短く答えた。その答えに彼女は不満げな様子で男を軽く睨んだ。
     リックは視線を総督からアンドレアに移す。
    「この男は先に来ていたようだ。それより、そっちは本当に話をする気があるのか?」
     リックの言葉にアンドレアは「もちろん」と力強く頷き、テーブルに両手をついて話し始める。
    「二人ともわかってるだろうけど、戦いになったら大勢が死ぬ。それを黙って受け入れる理由なんてない。きちんと話し合えば平和に問題を解決することができる。そのための会談よ。」
    「そんなに簡単な話じゃない。俺はこの男がグレンとマギーにしたことを知ってる。とりあえず来てみたが、どうにも信用する気になれない。」
     リックがはっきりと告げれば、総督がおどけたように肩を竦める。
    「お前の仲間の件についてはメルルのしたことだ。」
    「違う。あんたはメルルのしたことを全て知ってるし、関わってもいる。俺はそのことを知ってるぞ。」
     責任から逃れようとする総督の発言にリックは反論した。それに対して当の本人は一瞬だけ煩わしげに眉根を寄せる。
    「俺やお前が互いについて何を知ってるかなんて今はどうでもいい。俺たちは前へ進むためにここに居るはずだ。そうだろう、リック。」
     そのように言って笑う総督を前にして、リックは口を閉じるしかなかった。
     総督は自分たちがグレンとマギーを誘拐して暴力を奮い、殺そうとしたことなどどうでもいいのだ。それについて謝罪する気もなければ弁明する気もない。本当にどうでもいいと思っている。そのような相手にこれ以上食い下がっても無駄だろう。
     リックがそう判断した時、アンドレアが気を取り直したように口を開く。
    「私は今の世界になってからあなたたちに出会った。二人とも仲間を守ってきた素晴らしい人たちだと思ってる。そんな二人が争う理由なんてない。そうでしょ?」
     アンドレアは熱弁を奮うが、総督はそれには興味がないようだ。必死に二人を説得しようとする彼女には目も暮れず、リックが持参した地図に視線を向けて「それを寄越せ」と言った。
     リックは総督の言葉に従って地図を差し出す。その地図には川を境界線と定めて線が引いてあった。
    「川の西側はウッドベリーの領域で、東側は俺たちの領域だ。互いに境界線を越えず、絶対に関わらない。これなら問題ないはずだ。」
     リックの説明を聞いたアンドレアが納得したように頷く。
    「彼の言う通り。境界線を決めて互いに干渉しないようにすれば──」
    「これは何だ?」
     総督はアンドレアの言葉を遮り、地図から視線を上げて訝しげに問いかけてきた。その問いにアンドレアが「解決策よ」と答える。
     しかし、それを聞いた総督は失笑と共に地図をテーブルの上に放り出した。
    「有り得ない。」
     たった一言で解決策を蹴った男にリックだけでなくアンドレアも顔を強張らせる。
     リックは腹の底から込み上げる怒りのままに、アンドレアに向かって「どういうことだ!」と声を荒らげた。
    「この男が話をすることに応じたと聞いたから俺はここに来たんだぞ?君はどんな話をしたんだ⁉」
     リックから怒りをぶつけられたアンドレアが言葉に詰まると、緊迫した状況には不似合いな微笑を浮かべる総督が片手を軽く上げた。
    「刑務所側のリーダーと話をするとは言ったが、交渉するだなんて一言も言ってない。そもそも彼女は交渉や条件を決める立場にない。リック、俺が来たのはお前たちを降伏させるためだ。」
     総督から返された答えに、リックは指先まで怒りが流れ込んでいくような気がした。
     チラリと視線を移せばアンドレアの青ざめた横顔が目に映る。彼女は総督の言葉に大きなショックを受けていた。総督が先ほど言ったようなことを考えていたとは想像もしていなかったのだろう。
     総督はアンドレアを利用してリックとの会談の場を用意させたのだ。その目的が降伏だけとは思えない。遠回りなことをしてまでリックとの会談を望んだのは彼にとって利益になる何かを引き出したいからだ。
     リックは笑みを浮かべたままの男を睨みつけながら口を開く。
    「ウッドベリーに乗り込んだ俺たちが簡単に降伏するなんて思っていないはずだ。違うか?」
     リックがそのように問うと、総督は小さく笑って「その通り」と一つ手を叩いた。そして、視線をリックからアンドレアに移して彼女に声をかける。
    「君は外に出てくれ。リックと二人で話したい。」
     その言葉はアンドレアにとって思いがけないものだったらしく、零れ落ちそうなほどに目を大きく見開いて総督を見つめる。彼女はすぐに衝撃から立ち直ると首を横に振って「嫌よ」と拒否した。
     会談を企画して、その実現のために奔走したアンドレアが会談の場に立ち会いたいと望む気持ちは理解できる。総督から「交渉や条件を決める立場にない」と言われたことにショックを受けていたようなので、重要な決定が行われる場にいたいという意地も感じる。
     しかし、総督は彼女の前では真の狙いを話そうとしない。仲間たちを置いて自分だけ先に来たのもリックと二人だけで話すためだったのかもしれない。それならば彼女には外に出てもらう必要がある。
     リックはアンドレアに申し訳なく思いながらも「外に出てくれ」と告げた。
    「リック!私は──」
    「俺は彼と話をするために来た。頼む、アンドレア。」
     縋るような眼差しを向けてきたアンドレアの言葉を遮って退出を促せば、彼女は悲しそうに俯いた。
     そして、アンドレアは何も言わずに扉の方へ歩いていく。肩を落として歩く後ろ姿に胸が痛んだ。
     リックはアンドレアが小屋の外に出たのを見届けてから総督に視線を戻した。相手から視線を逸らさずに椅子に座ると扉の閉まる音が耳に届く。総督の仲間が扉を閉めたらしい。
     リックが皮肉混じりに「総督、だそうだな」と投げかけた言葉に男が苦笑いを浮かべる。
    「俺が名乗ったわけじゃない。周りが勝手にそう呼ぶ。」
    「だが、あんたは住人たちを守っている。」
    「そうだ。」
     一つ頷いて答えた総督にリックは鋭い眼差しを向けた。
    「人々を守って総督と呼ばれることを受け入れているなら、あんたには彼らに対する責任がある。」
     リーダーとして人々を導くのであれば、己が導く人々を守る責任だけでなく人々の行動に対する責任も負うことになる。人々の上に立って指揮を執るというのはそういうことだ。総督にはそれを理解していてもらわなければ困る。
     リックはメルルがグレンとマギーを誘拐した件について総督の責任を問いただすために話を切り出す。
    「ディクソン兄弟が俺たちのところに来たのは知ってるな?」
    「ああ、もちろん。ダリルはお前たちに肩入れしていたからな。メルルはもう少し現実的な奴だと思っていたんだが、俺の見込み違いだったらしい。」
     そのように話す総督からは怒りも悔しさも感じられなかった。部下に裏切られたことを何とも思っていないように見える。
     ダリルは総督との関わりが多くなかったそうだが、ミショーンの話ではメルルは総督の腹心の部下と呼べる存在だったらしい。メルルは他の部下への指揮を任せられるほどに総督からの信頼が厚かったと聞いた。だが、総督の口振りからはメルルに対する特別な思い入れは感じられない。
     リックは総督の態度を訝しみながら質問を重ねる。
    「話に聞いただけだが、メルルはあんたの右腕だったんだろう?」
     その質問に総督は「ああ、頼りにしていた」とあっさり首を縦に振った。その姿からも、やはり思い入れは感じられない。
     リックは総督に対する違和感を拭えないまま問いかける。
    「だが、あんたは彼が厄介な男だと知っていた。暴力的な一面があるとな。それを利用して、グレンとマギーの誘拐をメルルの責任にしたんじゃないか?」
    「お前の言う通り、あいつが厄介な人間だということは理解していたよ。理解した上で奴を使ってた。お前の仲間の誘拐についてはメルルが出先でやったことだ。事後報告さ。事態を収めようとした時にお前たちが襲撃してきたんだ。」
    「つまり、全てメルルの責任だと言いたいのか?」
     リックは眉間に寄るしわが深くなったことを自覚した。
     総督はメルルに全ての責任を押し付けようとしている。言外に「メルルが勝手にやったことだから自分に非はない」と言っているのだ。リーダーとしての責任を放棄しようとする男に不快感が込み上げる。
     リックに睨まれた総督は口元に微笑を浮かべながら言い放つ。
    「あいつは代わりのきく人間だが、役に立つ。汚れ仕事をやってくれた。」
     仲間であった人間に対する余りにもひどい言い方に怒りが込み上げる。
     しかし、冷静さを失うわけにはいかない。リックは喉元まで上がってきた怒りをどうにか飲み込んだ。
    「手を汚したのがあんた自身じゃなくても彼はあんたの部下だった。彼の行いの責任はあんたにもある。」
     リックがそのように告げると総督は無表情でこちらを見つめてきた。何の感情も感じられない目が不気味だが、視線を逸らさずに睨み返す。
     やがて、総督は小さく笑って肩を竦めた。その笑みには呆れが滲む。
    「お前の職業を当ててやろう。警察官か、そうじゃなきゃ弁護士だ。違うか?」
    「教える義理はないな。どちらにしろ、総督気取りじゃないことは確かだ。」
     総督から投げられた皮肉に対してリックも皮肉を言えば「俺はただのリーダーだ」と返された。
     自分の責任から逃れようとする人間のどこがリーダーだ、という反発心がリックの中に芽生えた。その反発心をリックは素直に口にする。
    「違うな。あんたは俺たちの住処を襲撃したイカれ野郎でしかない。」
     リックの反発に対して総督は少し黙り込んだ後、微かに嘲笑を浮かべながらこちらを真っ直ぐに見た。
    「リーダーの在り方についてご立派な意見を持ってるようだが、お前は判断を誤ったことはないのか?ただの一度も?」
     その質問への答えを返すことはできなかった。
     判断を誤ったことが一度もないとは言えない。その結果、今までに何人もの仲間を失ってきたのだから。
     総督の言葉によって思考の淵に沈みそうになったリックだったが、咄嗟に膝の上で拳を握り、目の前の問題に意識を戻す。
    (だめだ。気をしっかり持て。目の前のことに集中しないと相手に流される)
     リックが気持ちを立て直した時、総督がリズミカルにテーブルを叩いた。男の唐突な行動にリックは目を瞬かせる。
     総督は驚くリックを見つめ返しながら笑った。
    「ウィスキーを持ってきた。そいつを飲みながら話そう。」
     総督はそのように告げて席を立つ。まるでリックが意識を切り替えたのを察したかのようなタイミングだ。その行動は相手に流れを掴ませないための対策のように思える。
     リックは敵の動きを目で追いながら、この会談の難しさを改めて実感していた。


     緊迫した会談の場において乾杯は不要だ。持参したウィスキーを美味しそうに飲む総督とは対照的に、リックはウィスキーの注がれたグラスをテーブルの上に置いたままでいる。
     リックは斜め前に座る総督を見つめながら沈黙を貫く。総督が椅子を移動させて斜め前に座ったことにより二人の距離が近くなった。その距離の近さは不快だったが、移動しようとは思わない。怯えていると受け取られるのは嫌だった。
     総督はグラスを手にしたまま話し始める。
    「俺もお前も仲間の死は見過ごせない。リーダーという観点から見れば、この戦いは失敗だからな。統率力に影響する。」
    「それなら俺たちに構わなければいい。そちらから仕掛けてきたんだから、あんたらが俺たちに関わるのをやめれば戦いは終わる。」
    「そうはいかない。問題はもっと大きくなってる。お前たちは町に侵入して大通りで発砲した。お前たちは俺たちにとってとんでもない脅威だ。それを放置すれば俺は弱い人間だと見做されて、リーダーとしての信用が崩れる。」
    「それはあんたの問題だ。こうなることを選んだのもあんただろう。」
    「いや、俺だけの問題じゃない。だからお前も選択するためにここに来た。」
     総督はウィスキーを一口飲むと口角を微かに上げる。その笑みの冷たさにリックは背筋が寒くなった。
    「もし俺が戦って全てを破壊することを選んだら、俺たちは刑務所の人間を皆殺しにする。お前が愛し、お前を愛する仲間たちをな。」
     笑みと同様に総督の目もひどく冷たかった。誰かの命を奪うことに何も感じていない人間の目だ。この男は決断すれば刑務所側の者たちを躊躇いなく殺すだろう。
     リックの頬を冷や汗が伝い落ちた時、総督が「そういえば」と話し始めた。
    「お前には生まれたばかりの赤ん坊がいるんだって?その母親は出産して間もなく亡くなったとか。」
     総督からローリとジュディスの話を切り出されて、リックは顔が引きつるのを感じた。敵の口から彼女たちの名前が出てくるとは予想もしていなかったのだ。
     リックが動揺したまま総督を睨むと感情の読めない笑みが返される。
    「アンドレアから聞いた。妻を亡くしたばかりなのにリーダーとして働かなきゃならないなんてな。……俺の妻は俺が仕事をしてる最中に死んだよ。」
     思いがけない打ち明け話にリックは目を瞠る。目の前の敵に家族がいる可能性も、その家族に先立たれている可能性にも全く思い至らなかったのだ。
     「この話をこれ以上聞くべきではない」と心で思っていてもリックの体は凍りついたように動いてくれなかった。そのリックの視線の先では総督が過去に思いを馳せるように視線を遠くへ向ける。
    「年齢もIQも俺より下の上司の仕事を片付けていた時に電話がかかってきた。妻が交通事故に遭ったという知らせだ。『本当に残念です、ブレイクさん。我々も最善を尽くしたんです』と言われたよ。電話を切った後、彼女に二度と会えないんだと悟った。」
     総督はそこまで話してから「死んだんだ」と言って指を鳴らした。
    「あれは事故だった。誰も悪くない。」
     そのように話しながらも総督の顔にはやり切れなさが滲んでるように見えた。
     なぜ妻が死ななければならなかったのだろう?
     なぜ自分は妻に二度と会えないのだろう?
     全てを理解して受け入れたつもりでいても、消化しきれない感情が未だに男の心の底で澱んでいる。リックにはそのように思えた。
     そして、その感情はリックの中にもある。ローリの死について割り切れない何かが心の奥底に眠っていることは自身が一番よく理解していた。だからこそ、目の前の男に同情してしまいそうで恐ろしい。それが嫌で、リックは総督から視線を外した。
     総督はリックに構うことなく独り言のように過去について語り続ける。
    「妻は事故の前に俺の携帯電話に『後でかけ直して』とメッセージを残していたんだが、その機会は永遠に失われてしまった。椅子に座って、携帯電話を握りしめながら考えたよ。彼女は何をしたかったのか、とね。声が聞きたかっただけなのか、夕食の買い物を頼みたかったのか。──彼女は何をしたかったんだろうな?」
     最後の問いは総督自身に向けられたものともリックに向けられたものとも判断がつかなかった。いずれにしろ、リックには答えられない。
     リックは苦い感情を洗い流したくて近くにあるグラスに手を伸ばした。そして、水や湯で薄められずに原液のままのウィスキーを喉に流し込んでいく。
     その様子を総督が探るような目付きで観察していることにリックは気づかなかった。


    *****


     緊張感の漂う刑務所ではちょっとした問題が発生していた。皆が刑務所の防衛強化の作業を進める中、メルルが「今から総督を襲撃すべきだ」と言い始めたのだ。
     ニーガンが「面倒なことになった」と溜め息を吐く視線の先ではメルルが皆の説得を試みている。
    「どうせ話し合いなんて上手くいきっこない。あいつらは殺される。そうなる前にこっちから出向いてやればいい。殺られる前に殺るんだ。」
     その提案にミショーンが顔をしかめた。
    「リックは私たちに刑務所で待つように言ってたし、それを受け入れたのはあんたも同じでしょ?」
     メルルはミショーンに視線を返しながら「気が変わった」と答えた。そして、忌々しげに顔を歪めながら思いを吐き出す。
    「弟が危ない状況だってのに、こんなところで大人しく待ってられるわけないだろ。見殺しになんてできない。」
     ニーガンは兄としての顔を覗かせるメルルに僅かな驚きと好感を抱いた。彼は意外にも弟思いで根性もある。
     しかし、メルルに対する印象を変化させたのはニーガンだけのようだ。他の者たちは渋い表情で彼を見ている。
     事態を収拾するためにニーガンが口を開こうとしたが、それよりも先にグレンが「だめだ」とメルルの提案を却下した。
    「俺たちが総督を襲撃したらリックたちが人質にされるか殺されるかのどっちかだ。下手なことはすべきじゃない。勝手に動くなよ。」
     グレンはそれだけを一方的に告げてから工具を持って監房棟の外に出ていった。他の者たちも話は終わったとばかりに自分の仕事に戻っていく。不満げな表情のメルルだけがその場に取り残された。
     ニーガンはメルルをこのまま放置するのは得策ではないと判断し、苦い顔で立ち尽くす男に近づいて「おい」と声をかけた。
    「少し付き合え。話がある。」
     メルルは訝しげにこちらを見たが、ニーガンはそれには構わずさっさと歩き出した。
     外で見張りをしながら話すのが良いだろう、と外へ続く扉に手を掛けたところで振り返る。メルルはのろのろと歩いており、ニーガンとの距離はまだ離れていた。その顔には「小言かよ、面倒くせぇ」と書かれている。
     歩みが遅いことに焦れたニーガンは男をジロリと睨んだ。
    「歩くのが遅い。説教するわけじゃないから早く来い。」
     そのように急かせば、メルルは嫌そうに顔をしかめながらも歩幅を大きくした。ニーガンはそれを見遣ってから扉を開けて監房棟の外へ出る。
     外へ出ると、監房棟側とグラウンドを隔てるフェンスの前まで移動して、そこから刑務所周辺へ視線を向けた。今のところ怪しいものは見えない。刑務所周辺へ視線を巡らせるニーガンの隣にメルルが隣に並んだ。
     メルルはジーンズのポケットから煙草を取り出して口に咥えた。それを見たニーガンは彼に向かって手を差し出す。その手を見てメルルが目を丸くした。
    「何だよ?寄越せってのか?」
    「俺も久しぶりに吸いたくなった。寄越せ。減るもんじゃないからいいだろ。」
    「ふざけんな、減るだろうが。……仕方ねーな。」
     メルルは呆れたように言いながらも楽しそうに笑った。その皮肉混じりではない笑みに釣られてニーガンの唇も緩く弧を描く。
     ニーガンが差し出された煙草を受け取って口に咥えると、すぐさまライターの火が差し出された。ニーガンが目線だけをメルルに向ければ面白がるような眼差しが返される。煙草の先端から微かに煙が立ち上ると同時にライターが離れていき、メルルは自分の煙草に火を着けてからそれをしまい込んだ。
     ニーガンはその動作を見届けて、煙を燻らせながら話を切り出す。
    「さて、総督を襲撃する件について話そうじゃないか。弟が心配なのは理解できるが、今は大人しく待つのがお前の仕事だ。下手に奴らのところに突っ込んだら俺たち全員が死ぬぞ。お前一人で勝手に自滅するなら放っておくが、これは他の奴らも巻き込む。もし勝手に動くならお前の両脚を折ってでも止めるから、そのつもりでいろよ。」
     正直なところを言えば出会ったばかりのメルルに特別な思い入れはないので、彼が単独行動によって一人で勝手に死ぬのなら「お好きにどうぞ」という気持ちでいる。いい歳をした大人なのだから己の行動の責任は自身にあると理解しているはずだ。
     しかし、総督を襲撃すればメルル一人の問題では済まない。その計画の実行は刑務所側の人間全員に影響する。だから放置せずに「刑務所に留まれ」と忠告し、もし単独で動こうとするならば手荒なことをしてでも止める。
     ニーガンはそれ以上は何も言わずにメルルの返事を待った。だが、メルルからは「わかった」という言葉も頷くという無言の返事もない。メルルの顔は正面に向けられたままだ。
     「理解したなら返事がなくてもいいか」とニーガンが考えていた時、メルルはゆっくりと煙を吐き出した後にニーガンを見た。そして、彼の目が何かを探るように細められる。
    「ニーガン、あんたはリックの野郎が心配じゃないのか?俺があいつに触った時は噛みつきそうな勢いだったぞ。大事な大事なリックを敵の目の前に放り出して平気でいられるのか?」
     その問いかけにニーガンは思わず眉間にしわを寄せる。
    (余計なことを言いやがって……)
     舌打ちでもしたい気分だが、余裕のなさを露呈するような気がする。それは嫌だったので舌打ちを堪えた。
     ニーガンはメルルを横目で睨みながら「心配に決まってるだろ」と答えた。
    「今すぐにでも行ってやりたいさ。だが、何があっても帰ってくると約束されたら信じて待つしかないだろ。だから俺はここでリックを待つ。」
     ニーガンの答えを聞いたメルルが目を丸くした。ニーガンが返した答えは彼にとって意外なものだったのかもしれない。
     メルルの顔に浮かんだ驚愕は一瞬にして消え失せて、今度は興味深そうな眼差しを送ってくる。
    「たぶん、あんたが考えてる以上に総督は危険な男だぜ。それでも待つのか?」
    「お前たちやミショーン、それからアンドレアの話を聞いて、総督が想像以上にぶっ飛んでそうな奴だとは思った。それでもリックは簡単にやられるような弱っちい奴じゃないことを俺は知ってる。だから待つ。それに──」
     ニーガンはそこで言葉を切り、煙を吐き出してから言葉の続きを紡ぐ。
    「総督には何か狙いがある。奴が会談に応じたのはそのためだと思ってる。」
    「狙い?」
     ニーガンは訝しげなメルルに頷いてみせた。
    「もし俺たちを殺すつもりなら、わざわざ誘き出して殺すなんて手間はかけない。この前の襲撃で全滅させた方が楽だ。そうしないのは今は俺たちを生かしておく必要があるってことだ。だからお前の心配は外れるさ。まあ、いずれは殺しに来るだろうが。」
    「……なるほどねぇ。」
     メルルは苦笑しながらも納得したように何度も頷いた。
    「あんたがそこまで言うなら大人しく待機しておくぜ。脚は大事だしな。」
     そのように言ってニヤリと笑うメルルにニーガンも同じような笑みを返す。
     その後しばらくは互いに黙って煙草を楽しんでいたが、不意に「おい、ニーガン」と話しかけられた。
    「どうしてあんたじゃなくてリックがリーダーをやってる?どう考えてもあんたはトップ向きだろ。」
     ニーガンは「意外な質問だ」と思ったものの、すぐに「妥当な質問だ」と思い直して笑みを零した。
     付き合いの長い仲間内では「リックがリーダーを務めて当然」という雰囲気があるが、仲間に加わったばかりの人間はそのように思えないのかもしれない。外見の雰囲気だけでなく性格から判断してもリックよりニーガンの方がリーダータイプに見えるはずなので、メルルが疑問を抱くのも当然と言えた。
     ニーガンは笑みを浮かべたままメルルに問いかける。
    「お前から見てリックはどんな人間だ?」
    「質問に質問で返すのかよ?まあ、いいか。……あいつはお人好しだな。とんでもないお人好しだ。あのダリルが懐くぐらいのな。リーダーになるには優しすぎると思うね。」
    「俺もそう思うし、リック自身も自分がリーダーに向いてないことは自覚してる。だが、このグループはリックが仕切る方がまとまるんだよ。」
     その答えがメルルには理解できないらしく、彼は首を傾げている。
     ニーガンは「仕方ねぇな」と言いながら煙草を足下に落とし、それを踏みつけて火を消した。それからメルルに顔を向けて答えを告げる。
    「確かに、俺はリーダーの適正があるだろうな。軍隊を作って指揮を執ることができるだろうし、上手くやる自信もある。だが、俺たちは軍隊じゃない。単なる一般市民の寄せ集めで、そして家族だ。家族を守るなら俺よりもリックの方が向いてる。」
     それは紛れもなくニーガンの本心だった。
     軍隊ではなく家族であれば厳しさだけでなく優しさもなければ上手くいかない。それには少々お人好しなくらいが良い。そして、誰よりも愛情深い人間であることも重要だろう。リックは優しさと愛情によって家族である皆を守り、導いていく。それが自分たちにとって一番良い形なのだ。
     ニーガンの答えを聞いたメルルは目を瞠った。その目付きが穏やかなものに変わり、口元は微かに緩み始める。どうやらニーガンの答えが気に入ったらしい。
    「意外と甘っちょろいことを言うんだな。まあ、悪かねぇさ。あんたらに協力してやる。」
     メルルは足下に捨てた吸い殻を踏み潰しながらそのように宣言した。
     そして、思い出したように「そういえば」と次の話題を口にする。
    「あんたとリックはどのくらいまで進んでる?もう抱いたか?」
     遠慮の欠片もない踏み込んだ質問にニーガンは顔をしかめた。メルルのことを少し見直していたのだが、やはり認識を改めた方が良いかもしれない。
     ニーガンがうんざりと溜め息を吐きながら「何もしてない」と答えると、メルルは大げさなくらいに目を見開いて驚きを表した。
    「冗談だろ?あんたってどう見ても手が早そうなのに?」
    「お前は俺を何だと思ってるんだ?下半身で生きてるとでも思ってるのか?」
    「それもあるけど──っと、口が滑った。冗談だ、冗談。どう見てもリックの野郎に惚れ込んでるから、とっくの昔に手を出してると思ってたんだよ。」
     ニーガンはメルルを軽く睨んでから視線を刑務所周辺に向けた。今のところは敵の姿もリックたちの車も見えない。その事実に溜め息を吐きたくなった。
     ニーガンは視線を正面に固定したままメルルの疑問に答える。
    「俺とリックは恋人ってわけじゃない。良い相棒さ。俺があいつに惚れてるのは否定しないがな。」
    「関係を変える気は?」
    「無理に変えるつもりはない。今以上に深い関係になれたら嬉しいが、俺にとって重要なのはどんな形でもリックにとっての一番でいることだ。あいつにとっての一番でいられるなら肩書きは何でもいい。」
    「熱烈だねぇ。」
     感想を述べたメルルの声には呆れと感嘆の響きがあった。
     他人からすれば呆れてしまう考え方なのかもしれないが、ニーガンはこれでいいと思っている。人間性だけでなく恋愛感情としてもリックに惚れているので、彼の恋人になりたいという気持ちを消すことはできないが、そうであっても積極的に迫ろうとは思わなかった。
     リックから誰よりも一番信頼されているという自覚はある。それで満たされているというのは嘘ではない。結局のところ、どの種類の感情であってもリックの心が自分に傾いていればいいのだ。
     その時、ニーガンはメルルに警告しておかなければならないことを思い出した。
    「警告しておく。リックに手を出そうとしたら、お前の手足を潰してウォーカーの群れに放り込むからな。」
     少し威圧的に言い放つと、メルルはニヤニヤと笑いながら自身の腕を擦って「おお、怖い」とふざけた。その次には両手を上げて深く頷く。
    「心配しなくても手は出さねぇよ。野郎に興味はないし、あんたを敵に回したら自分で自分の首を絞めることになる。俺はマゾじゃねぇ。」
    「そいつは賢い判断だ。よかったな、長生きできるぞ。」
    「俺が長生きできるかどうかはニーガン次第ってか?そりゃ退屈しないで済みそうだ。」
     気安いのかそうでないのか判断のつかないやり取りを交わした後は二人揃って笑みを浮かべる。
     その時、監視塔からマギーが慌てた様子で下りてきた。ニーガンは急いでマギーに近づいて何があったのか尋ねる。
    「マギー、どうした?」
    「リックたちの車が見えた!すぐにゲートを開けなくちゃ!」
     返ってきた答えにニーガンは目を瞠り、瞬間的に呼吸を忘れた。リックが戻ってきたという喜びが一瞬にして全身を駆け巡ったせいだ。
     しかし、すぐに冷静になるとマギーに「俺たちがゲートを開けるから他の奴らに知らせに行け」と促す。マギーはその指示に頷いて監房棟を目指して走っていった。メルルを振り返れば彼は心得たように頷き、ゲートに向かって移動し始める。その後を追いかけるようにニーガンは走り出した。
     一秒でも早くリックの無事な姿を見たい。その一心でニーガンは力強く地面を蹴った。


    *****


     総督との会談を終えたリックたちは全員で無事に刑務所に帰り着くことができた。そうは言っても揉め事がなかったわけではない。会談が終わった後、小屋の外に出た総督がダリルに「裏切り者が来ているとは思わなかった。大した度胸だな」と皮肉を言って、それに対してダリルが「今まで大勢を騙してきたお前ほどじゃない」と言い返した時には不穏な空気が漂った。それでも大事にならずに済んだのはハーシェルが双方を宥めてくれたおかげだ。
     刑務所に戻る車中、リックは仲間たちから会談内容を尋ねられたが、「戻ってから話す」と答えるに留めた。会談の中で総督から提示された「ある条件」の内容が余りにも重く、その時点ではリック自身も受け止めきれていなかったからだ。
     刑務所に戻ると一番始めにニーガンとメルルの出迎えを受け、その二人と共に監房棟に入れば仲間たちが無事の帰還を喜んでくれた。
     リックは仲間たちの輪から少し外れた場所に立つミショーンに視線を向ける。その顔は普段と変わらない無表情だったが、どこか柔らかな印象を受けるのは彼女がリックたちの帰りを喜んでくれているからなのだろう。そんな彼女に向かってリックは「ミショーン、頼みがある」と声をかけた。
    「誰も見張りに立っていないようだから君に頼んでもいいか?」
     それを聞いたマギーが慌てて「ごめんなさい」と謝る。
    「今の時間の見張り当番は私よ。リックたちの車が見えたから、みんなに知らせるために監視塔を離れて……すぐに戻る。」
     急いで監視塔へ戻ろうとするマギーを制したのはミショーンだ。彼女はマギーの肩を掴んで引き止める。
    「いいよ、私が行く。」
     淡々と告げたミショーンはそのまま監房棟を出ていった。
     ミショーンが出ていき、扉が閉まったことを確認してからリックは仲間たちに向かい合う。
    「ミショーン抜きで話したいことがある。総督から提示された条件についてだ。」
     皆は「総督から提示された条件」という言葉に不安そうな顔をしたり眉根を寄せるなどの反応を見せた。その条件が自分たちにとって良くないものだと察しているのだ。
     リックは仲間たちの顔を見ながら話し始める。
    「総督は刑務所そのものに興味はないと言った。町よりも環境の悪い場所を乗っ取る気はない、と。……奴はミショーンの引き渡しを要求してきた。彼女を引き渡せば俺たちとは一切関わらないが、拒否すれば皆殺しにすると言われた。」
     総督から出された恐ろしい条件を打ち明けた途端にその場の空気が一気に重くなった。それでもリックは話すことをやめるわけにいかない。
    「個人の戦闘能力で言えば俺たちの方がウッドベリーよりも上だ。そのことは総督も認めた。だが、向こうは人数が多い。寄せ集めの軍隊でも数で押し切ることはできる。ウッドベリーでは住人たちの訓練を行っているから、俺たちが奴の条件を蹴ればすぐにでも攻めてくるだろう。」
     リックは厳しい現実を隠さずに話した。それを聞いた皆の表情は暗い。
     ハーシェルは不安に瞳を潤ませるベスを落ち着かせるために肩を抱き、グレンとマギーは互いを励ますように抱きしめ合った。キャロルは怯えた様子で抱きついてきた娘の背中を撫でており、ニーガン、シェーン、Tドッグ、そしてオスカーは難しい顔で黙り込んでいる。カールは幼い妹を腕に抱きながら真っ直ぐにこちらを見つめていた。
     その時、メルルがこちらに顔を向けて「一応、言っておく」と意見を述べ始める。
    「引き渡したら総督はあの女を簡単には死なせない。拷問して散々苦しめてから殺す。あの野郎はそういう人間だ。」
     メルルの意見に同意するようにダリルが頷いた。
    「兄貴の言う通りだ。それにミショーンを引き渡しても総督が約束を守るとは思えない。あいつは今までにも相手を騙して殺してきた。信用できない。」
     総督に仕えていた二人の意見には信憑性がある。リック自身も総督に対する不信感は会談前より大きい。
     ディクソン兄弟に続き、今度はハーシェルが「引き渡すべきじゃない」と声を上げた。
    「ミショーンはグレンとマギーのことを知らせてくれた。救出も手伝ってくれた。今も私たちに協力してくれている。そんな彼女を犠牲にはできない。」
     その意見に数人の仲間たちが頷く。
     ミショーンはウッドベリーとの緊張が高まった状況になっても刑務所に留まり、見張りや襲撃への備えを手伝ってくれていた。表情にこそ出さないものの、皆を案じて気遣ってくれていることも知っている。彼女は既に仲間と呼べる存在になっていた。
     その時、Tドッグが顔色を窺うように皆に視線を向けながらおずおずと口を開く。
    「あー……、その、でもさ、向こうの要求を拒否したら皆殺しにされるんだろ?ミショーンを犠牲にしたくない気持ちは俺も同じだけど、『拒否したら殺す』って脅されてる今の状況は正直に言って怖い。」
     申し訳なさそうに本心を打ち明けたTドッグを責める声は誰からも上がらなかった。彼の恐れは誰もが心の中に抱いているものだからだ。
     リックたちの前にある選択肢は「ミショーンを差し出して自分たちの安全を確保する」と「総督の要求を拒否して殺される」の二つ。どちらも選びたくない。
     他に意見が出ないまま沈黙が続いたが、それをニーガンが破った。彼はリックに問いかけてくる。
    「リック、お前はどう考えてる?お前の中には答えがあるのか?」
     リックはニーガンを真っ直ぐに見つめながら自身に向き合う。
     己の心の中を探れば答えはすぐに見つかった。それは恐らく刑務所に帰り着くまでに出ていたのだろう。それでも口に出せなかったのは仲間たちがリーダーである自分の意見に流されてしまうことを恐れたからなのかもしれない。もし皆がそれぞれの道を行くことになったとしても、今回ばかりは全員が自分自身の意思に従わなければならないのだ。
     リックはニーガンに対して無言で頷いてから仲間たちに視線を向ける。
    「ミショーンを引き渡さずに攻めてくる奴らを迎え撃つ。そうすることに決めた。」
     リックの答えに皆が驚いた顔をする中でニーガンだけが心得たように頷いた。それを見て、リックは思わず笑みを零した。きっとニーガンはリックの答えを察していたに違いない。
     リックは瞬時に笑みを消して自分の思いを紡ぐ。
    「付き合いの長さは関係なく誰であっても犠牲にしたくない。俺たちは互いに守り合って生きてきたから。だが、逃げるのも嫌だ。ここは命懸けで手に入れて守ってきた俺たちの家だ。失いたくない。だから俺たちの家を守るために戦う。」
     皆はリックの宣言を黙って聞いていた。その表情は落ち着いており、混乱や動揺は見当たらない。
     リックは一つ息を吐いてから願いを言葉にする。
    「……俺と一緒に戦うことを強制するつもりはない。誰にも死んでほしくないんだ。だから、逃げていい。自分で考えて、自分で決めてくれ。」
     そして再び沈黙が落ちる。すぐに決められることではない。
     今までで最も長い沈黙を破ったのは今度もニーガンだった。
    「俺はとっくに答えが出てるぜ。」
     いつもと同じように明るい口調で言ったニーガンはニッと笑いながら皆を見回す。
    「俺はリックと一緒に戦う。ウッドベリーの悪い子たちにはきつーいお仕置きが必要だからな。ケツを叩くのは得意だ。」
     ニーガンの軽口によって緊張した空気が緩み、皆の顔に笑みが戻った。
     ニーガンの宣言を皮切りに仲間たちから「自分も戦う」との宣言が飛び出し、最終的に全員がウッドベリーからの侵攻を迎え撃つと決めた。これにはリックも驚いて目を丸くする。
     リックが感謝を伝えるための言葉を見つけられずにいると、近づいてきたニーガンに背中を叩かれた。その彼は頼もしげに笑って次のように言う。
    「全員で戦えば勝ち目はある。そうだろ、リック。」
     その言葉はリックの頭にじわじわと染み込んでいき、指の先にまで力が行き渡った。
     仲間たち全員が残って戦う道を選んでくれた。これで戦術に幅が広がり、「全員が共に戦う」という事実は大きな励みとなる。これは勝利へ近づくための第一歩だ。
     リックはニーガンに笑みを返してから仲間たちに顔を向けた。
    「みんな、ありがとう。俺たち全員が揃えば乗り越えられる。やってやろう。」
     リックの力強い言葉を聞いた皆の顔に笑みが広がっていく。
     そして、その場に歓声が響いた。


     皆との話し合いが終わった後、リックは監視塔に上った。ミショーンに自分たちの決断を伝えるためだ。
     ミショーンはリックが姿を見せると不思議そうにしていたが、特に何も尋ねてこなかった。数秒だけこちらに向いた彼女の視線は刑務所の周辺へ戻り、狭い空間に沈黙が落ちる。
     リックはミショーンの横顔を見つめながら一つ深呼吸した。
    「……ミショーン、総督から君の身柄を差し出すように要求された。そうすれば俺たちには二度と関わらないと言われた。」
     そのように告げた瞬間にミショーンの横顔に緊張が走る。そして、何かを堪えるように唇を噛むのが見えた。
     リックたちとミショーンの付き合いは短い。長く助け合ってきた仲間と出会ったばかりのよそ者の命を天秤にかけた時、どちらが重くなるかというのは彼女にもわかるだろう。だから彼女が「自分は切り捨てられる」と覚悟したことは容易に想像できた。
     不意に、リックの脳裏に総督から投げかけられた「仲間全員の命を懸ける価値がミショーンにあるのか?」という問いが蘇った。その問いを投げかけてきた時の値踏みするような冷たい目が印象に残っている。きっと、あのような目をする人間にリックたちの考えは理解できない。価値があるかどうかではなく「死なせたくない」と思うから守るのだ、と。
     リックは強張ったままのミショーンの横顔に向けて静かに語りかける。
    「誤解しないでくれ。ミショーンを犠牲にするのは俺たち全員が嫌だと思ってる。」
     リックはそのように言って微笑した。
    「俺たちは総督の要求を拒否して、奴らを迎え撃つことにした。全員が自分の意思でその選択をしたんだ。君一人を犠牲にするなんてことは絶対にないから安心してくれ。」
     それを聞き、ミショーンは体ごとこちらに向き直った。
     驚きを隠せずに目を丸くする彼女に向かってリックはしっかりと頷く。
    「俺たちは今までずっと仲間同士で助け合って生きてきた。だから仲間を犠牲にはしない。」
    「仲間……」
     その言葉を噛みしめるように呟いたミショーンの目は潤んでいた。
     ミショーンは片手で目元を拭うと深呼吸を繰り返す。気持ちを落ち着けてから返事をしようとしているのだろう。
     やがて、ミショーンは力強い眼差しを寄越しながら口を開いた。
    「私も一緒に戦うよ。──仲間を守るために。」
     その頼もしい言葉にリックは頷いて応えた。その次にはミショーンに向かって手を差し出す。
     ミショーンはリックの差し出した手を見下ろしてから戸惑ったように視線を上げた。
    「リック?」
    「改めて挨拶したいと思って。……これからもよろしく。仲間としてな。」
     その言葉にミショーンは一瞬だけ目を瞠り、すぐに笑顔を見せた。それは彼女が初めて見せてくれた心からの笑顔だった。
     ミショーンは嬉しそうに笑いながらリックの差し出した手を握り返してくれた。しっかりと握手を交わせば彼女が本当の意味で仲間になったという実感が湧いてくる。
     リックは握手を解くと監視塔の外へ視線を向けた。その目は眼前に広がる森を捉えているわけではない。リックが見ているのは視界の範囲外にいる男──総督だ。
    (どれほどの強敵でも負けるつもりはない。攻めてくるなら迎え撃つ。そして──必ず勝つ)
     リックは胸の内で決意を固めながら、会談の時に見た総督の目を思い出した。底の見えない暗い目だった。見つめていると底なしの闇に囚われてしまいそうな感覚に背筋がゾッとしたことを覚えている。
     しかし、今はあの目を恐ろしいとは思わない。もう二度とあの男を恐れはしない。自分には頼もしい仲間たちがいるのだから。
     リックは遥か彼方にいる男を睨みながら、決戦の時が近づいてくる足音を聞いた。

    To be continued.
    ♢だんご♢ Link Message Mute
    2021/01/24 8:41:08

    道なき未知を拓く者たち⑩

    #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


    pixivに投稿した作品と同じものです。
    「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
    総督の襲撃後、思わぬ人物が刑務所を訪れたことにより事態が大きく動くこととなる。


    総督ががっつりと登場します。ドラマのような緊張感が少しでも表現できていれば嬉しいです。
    ニガリクの仲も少しずつ…。
    よかったら、どうぞ。

    more...
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    • リック受まとめ #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      ♢だんご♢
    • 飽きたなら、さようなら #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      ニーガンに素っ気なくされるようになったリックが徴収の前日に調達に出かけるお話。


      ニーガンに素っ気なくされるリックを書いてみたかったので挑戦してみましたが、あんまり素っ気ない感じがしないかもしれません。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • リック受けまとめ2 ##TWD ##ニガリク ##ダリリク ##メルリク

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      ほぼニガリクでした。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • スコット受まとめ #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      ♢だんご♢
    • スコット受け他まとめ ##アントマン ##蜘蛛蟻 ##スコット ##ロケット ##トニー

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      CPあり・なしの話がごちゃまぜ。CPありは蜘蛛蟻のみ。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ある寒い日のこと #ウースコ  #アントマン  #腐向け ##ウースコ ##アントマン


      自宅軟禁期間のウースコ。
      寒い日にスコットの自宅を訪ねるジミーのお話。

      寒い日は妄想がはかどるので書いてみました。ウースコというよりもウースコ未満かもしれません。
      いつも「ウーさん」と呼んでいるのでCP表記をウースコにしましたが、ジミスコの方がいいんでしょうか?
      とりあえずウースコでいこうと思います。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤ずきんとおばあさん #蜘蛛蟻  #ピタスコ  #腐向け  ##蜘蛛蟻


      小説投稿機能のお試し。
      ぷらいべったーで投稿したものを少し手直ししました。タイトルのセンスがないのはお許しください。
      ピーターが遊びに来るのを待つ心配性なスコットのお話。
      よかったらどうぞ〜。
      ♢だんご♢
    • 本能が「欲しい」と囁いた #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿した作品です。
      S7のニガリクで、オメガバース設定を使用しています。
      ネタバレになるので詳細は控えさせていただきます。

      好きなように設定を詰め込んでいますが、よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 小さなバースデーパーティー ##TWD ##リック ##カール

      アンディの誕生日にグライムズ親子の誕生日ネタで1つ。
      放浪中の親子の誕生日のお話。短いです。
      ♢だんご♢
    • さよなら、私のアルファ #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  #オリジナルキャラクター  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の続きになります。
      ニーガンが運命の番と出会ったため、サンクチュアリを出ていくことにしたリックのお話。


      オリジナルキャラクターが複数名登場します。出番が多く、ニガリクの子どもも登場するので苦手な方はご注意ください。
      詳細は1ページ目に案内がありますので、そちらをご覧ください。
      ニガモブ要素を少し含みますし、ニーガンがひどい男です。
      よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • ベッドひとつぶんの世界 #TWD #ダリリク #ニーガン #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿したものと同じ作品です。
      S7辺りのダリリク。
      ニーガンの部下になったダリリクと、二人を見つめるニーガンのお話。


      ダリリクが揃ってニーガンの部下になったら、互いだけを支えにして寄り添い合うのかなーと妄想したので書きました。
      寄り添い合うダリリクはとても美しいと思います。
      CPもののような、そうでないような、微妙な話ではありますが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ちょっとそこまで逃避行 #蜘蛛蟻 #ピタスコ #腐向け ##アントマン ##蜘蛛蟻


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンFFH後の蜘蛛蟻。
      FFHのネタバレを含むのでご注意ください。
      辛い状況にあるピーターがスコットの家に逃避行するお話。


      FFHが個人的に辛すぎたので自分を救済するために書きました。
      蜘蛛蟻というより蜘蛛蟻未満?
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 数値は愛を語る #蜘蛛蟻 #腐向け #Dom/SubAU ##蜘蛛蟻

      pixivに投稿したものと同じものです。
      Dom/Subユニバース設定で、Switch×Subの蜘蛛蟻。
      ピーターに惹かれながらも寄せられる想いに向き合うことができないスコットさんのお話。
      特にどの時間軸というのはなく、設定ゆるゆるです。


      突然降ってきたネタに萌えてしまったので勢いで書きました。スコットさんがヘタレです。
      特殊設定なので「大丈夫だよ!」という方は、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(前半) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク

      S7の頃。救世主として日々を過ごす主人公が偶然リックと関わり、それをきっかけにリックやニーガンと深く関わるようになるお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 家族写真 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      大切にしてる家族写真をニーガンに奪われたリックのお話。

      「ニーガンはグライムズ親子の写真を勝手に持って帰りそう」と思ったので書いてみました。
      特に盛り上がりのない私向けの話です。お暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち③ #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックは食料調達のためにシェーンとカールと共に森に入り、その最中に事件が起きる。それはグループの運命を変えるものだった。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      ニガリクタグを付けたら詐欺になりそうなくらいにニガリク要素が少ないです。ニガリクを探せ!という気持ちで読んでください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 僕はコーヒー豆を挽かない #TWD #ダリリク ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S5でアレクサンドリアに到着した後。
      「生きてきた世界が違う」という理由でリックや仲間と距離を置くダリルを心配するリックのお話。


      ほんのりダリリクの味がするお話です。
      アレクサンドリアに着いたばかりのダリリクの何とも言えない距離感も良いですね。
      タイトルについては深く考えずに読んでいたたければありがたいです。
      地味な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • Restart #蜘蛛蟻 #ピタスコ #最新作のネタバレあり ##蜘蛛蟻


      ※スパイダーマンNWHのネタバレを含むのでご注意ください。


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンNWH後。
      パトロール中のピーターがスコットに出会うお話。
      蜘蛛蟻未満だけど後々に蜘蛛蟻が成立するという解釈で書いているので蜘蛛蟻です。


      スパイダーマンNWHは面白い映画でしたね。
      でも個人的にとてもしんどい展開だったので自分を救済するために書きました。蜘蛛蟻は癒やし。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 侵入者との攻防 #ロケスコ #腐向け ##ロケスコ


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      アベンジャーズ・エンドゲームでのロケスコ。
      毎朝ロケットが自分の上で寝ていることに困惑するスコットのお話。


      エンドゲームを観て見事にロケスコにすっ転んだので書いてみました。
      口調が掴みきれてないので違和感があったら申し訳ないです。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 亡霊殺し #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S2終了後のダリリク。
      リックの傍にシェーンの亡霊が見えるダリルのお話。ほんのりシェンリク風味もあります。

      盛り上がりが特にない私得なダリリクです。ダリリク未満かもしれません。
      じんわりとリックへの執着を滲ませるダリルが好きなので書いてみました。
      本当に暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 雛の巣作り #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の番外編。
      ニガリクが番になって1年が経った頃のお話。
      よかったら、どうぞ〜。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 罪な味 #TWD #リック #シェーン #カール #ダリル #ニーガン ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      リックと誰かの食にまつわるお話。
      時期も長さもバラバラ。基本的にほのぼのですが、ニーガンとの話はほのぼのしてません。


      ・【ピザ】 リック&シェーン
       アポカリプス前。「ピザの魅力には抗えません」というお話。

      ・【ケーキ】 リック&カール
       アポカリプス前。「いつもと違う食べ方をすると楽しくて美味しい」というお話。

      ・【肉】 リック&ダリル
       平和な刑務所時代。「調味料は偉大だ」というお話。

      ・【フルーツティー】 リック&ニーガン
       S7辺り。「悔しいけれど美味しいものは美味しい」というお話。


      リックに美味しいものを食べてほしいと思ったので書いてみました。ニーガン以外はほのぼのしてます。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 特に何も始まっていない二人 #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿した作品と同じもです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      特に何も始まってないけれど仲よしなダリリクの詰め合わせ。

      CPというよりブロマンスなダリリクです。お互いに相手を大事に思ってることが滲み出るダリリクが好きです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち① #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックの家族を捜す旅に出たリックとニーガンだったが、過酷な世界での旅は簡単なものではなく……。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      長編なのでのんびり書いています。次の章を投稿できるのがいつになるのか不明です。
      完全に私得な話なのでお暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(後編) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク


      S7の頃。前作の続きで、ケガの治療のためにサンクチュアリに滞在するリックを世話する主人公がリックとニーガンの関係性を目の当たりにするお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      前編よりも主人公がリックに肩入れしています。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 恋しい、と獣は鳴いた #TWD #ダリリク #ニガリク #腐向け #オメガバース ##TWD ##ダリリク ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのダリリク・ニガリク。
      リックと番になっているダリルがリックと引き離されて情緒不安定な時にニーガンと話すお話。ダリルとニーガンのちょっとしたバトル。


      「αが番のΩに依存する」という設定で書きたくて書いてみました。会話してるだけなので特に盛り上がりのない地味な仕上がりです。
      気が向いた時にでもどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 彼らが愛したのは「   」です #TWD #セディリク #ゲイリク #ニガリク #妊夫 #腐向け ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S8終了後。
      ニーガンの子どもを妊娠したために孤立するリックを支えるセディク、ゲイブリエル、ニーガンのお話。セディクがメインです。

      ※注意
      ・男性の妊娠、出産、授乳の表現あり
      ・リックへの差別、迫害要素あり
      ・全体的に重苦しい展開


      CP要素があるような無いような微妙なところです。
      重苦しい雰囲気の話なのでご注意ください。
      本当に気が向いた時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 生まれ落ちた日 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S1初回。
      ニーガンが病院でリックを見つけるお話。
      S1初回にニーガンを放り込んだだけ。ニーガンの過去について原作の設定を使っているので未読の方はご注意ください。


      S1の時点でニガリクが出会っていたら最強コンビになったのでは?という妄想を形にしてみました。別人感が強いです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤い糸の憂鬱 #TWD #カルリク #ニガリク #腐向け ##TWD ##カルリク ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7のカルリク・ニガリク。
      リックとニーガンが赤い糸で繋がっているのが許せないカールのお話。
      特殊な設定がありますが、深く考えない方がいいかも?


      カルリクとニガリクで三角関係が読みたくて書きました。カールの前に立ち塞がるニーガン美味しいです。
      「カールは赤い糸が見える」という特殊設定がありますが、深く考えず雰囲気を味わって頂ければと思います。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 「大丈夫」の言葉 #TWD #ダリリク #腐向け #ケーキバース ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      リックが「ケーキ」であることを知ったダリルが思い悩むお話。
      ケーキバース設定を使っています。この話にグロテスクな要素はありませんが、ケーキバース設定自体がカニバリズム要素を含むので苦手な方はご注意ください。


      リックのことが好きすぎて思い詰めるダリルが大好物なので書いてみました。
      盛り上がりの少ない私得な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
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