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    道なき未知を拓く者たち⑦ 冬が近づく中で始まった旅。それはリックが考えていた以上に困難なものだった。
     農場に着く前の旅とは異なり、しっかりした準備ができないまま旅に出たため食料や物資の何もかもが不足していた。日ごとに朝晩の冷え込みが厳しくなっていくため服や毛布が足りず、食料に関しては森の恵みを探しても冬が近いせいでなかなか見つからない。武器も少ないのでウォーカーへの対応に不安が残る。
     物資調達をしたくても都市部ではないので建物を見つけられる機会は少ない。運良く見つけることができても空振りで終わることもあった。
     しかし、物資不足以上に頭を悩ませるのは定住することに慣れた自分たちの体だ。ずっと農場で暮らしていたグリーン親子はもちろん、長旅を経験したはずのリックたちも常に移動し続けなければならない状況にひどく疲れを感じていた。しっかりと体を休めることが難しいため疲れが溜まりやすく、少しでも多く休息時間を確保しようと野営の準備を始めるのは夕方よりも早い時間帯にしている。一日の移動距離は短くなるが、無理をして体調を崩す者が続出することは避けたかった。
     困難ばかりではあっても全員で知恵や案を出し合ったり励まし合っているので今のところは何とかなっている。悲劇を乗り越えてきたグループには互いを労る空気が自然と生まれていた。これを維持していかなければならない、とリックは考えている。
     そんな状況の中、リックはローリとシェーンの三人で話をする機会を設けた。


    *****


     暗闇の中で小さな焚き火を囲むのはリック、ローリ、シェーンの三人だけ。他の仲間たちは車の中で眠っている。夜間の見張りを担当するリックはローリとシェーンに「三人で話したい」と頼み、就寝前の時間を少しだけ貰うことになったのだ。
     リックは焚き火の明かりに照らされた二人の顔を見ながら「無理を言ってすまないな」と話し始める。
    「前から三人でゆっくり話したいと思っていたんだが、こんな状況だから余裕がなくて。そんなに時間は取らせないから少し付き合ってくれ。」
     その言葉にシェーンが「気にするなよ」と明るく笑う。
    「それで、話したいことって?」
    「俺たちの関係についてだ。改めて話をするべきだと思う。」
     リックの言葉にローリとシェーンはハッとした顔をして、次に互いに視線を向ける。それも一瞬のことで、二人はリックの方に顔を向けるとしっかりと頷いた。
     リックは緊張を解すために軽く息を吐いた。
    「俺たち三人の関係はとても複雑なものになってしまった。何もなかったように振る舞うことはできないし、前と同じ関係に戻ることもできない。全てが変わる前の……夫婦や親友には戻れない。俺には無理だ。」
     その言葉にローリは何かを堪えるように目を閉じて頷き、シェーンも唇を噛みながら首を縦に振った。彼女たちも同じように考えていたのだろう。
     リックは「誤解しないでくれ」と微かに苦笑を滲ませる。
    「二人を嫌いになったわけじゃない。今でも大切に思っているし、大好きだ。それでも以前のような関係に戻ることを俺の心が受け入れない。それを許してほしい。」
     リックにとってローリとシェーンは今でも大切な人だ。もし二人に危険が迫れば命懸けで助けに行く。
     しかし、夫としてローリに触れることはできない。親友としてシェーンと関わることはできない。以前と全く同じようにはいかない。三人の間に起きた出来事はそれほどにリックの心の在り方に強く影響したのだ。
     器から零れ落ちてしまった水は元に戻らない。それでも新たに水を注ぐことはできる。リックは三人の関係に新しい水を注ぎたかった。
    「元に戻ることはできなくても新しい関係を築くことはできると思う。俺はローリとシェーンと友人としてやり直したい。本当に二人のことが大好きだから。だめか?」
     リックの願いはローリとシェーンにとって意外なものだったらしく、二人とも目を丸くしてこちらを見つめている。
     やがて二人の顔から驚きの色が消えて安堵が浮かんだ。そして、穏やかに微笑むローリが頷いた。
    「何もなかったことにはできないって私も思っていたの。友人にさえ戻れないと……覚悟はしてた。でも、リックが望んでくれるなら私は友人としてあなたを支える。ぜひ、やり直させて。」
     ローリに続いてシェーンも「俺もだ」と笑みを浮かべる。
    「親友でいられなくなったのは自業自得だ。それでも友人としてやり直せるなら俺もそうしたい。俺だってリックが大事だ。……それにローリもな。君とも友人になりたい。」
     シェーンはそう言ってローリを見る。ローリもシェーンに視線を返して「喜んで」と快諾した。
     元々はローリとシェーンも友人同士だったのだ。二人が屈託なく笑い合う姿を今でも覚えている。再びあの幸せな光景を見られるようになれば嬉しい。
     リックは「ありがとう」と感謝の言葉を口にしながらローリとシェーンそれぞれに手を差し出した。
    「俺たちの友情をここから築き上げて大切に守っていこう。よろしくな、ローリ、シェーン。」
     リックがそのように告げればローリとシェーンは心から嬉しそうに笑った。そして二人はリックが差し出した手を握り、二人も互いの手を握った。
     三人で手を繋ぐことにより生まれた輪を見てリックは笑顔になった。それに釣られるようにローリとシェーンも笑顔を浮かべる。
     その時、シェーンが「誓うよ」と穏やかな声で告げた。
    「二人の友人として、生まれてくる赤ん坊もお前たちも絶対に守る。」
     その誓いにリックはローリと顔を見合わせる。驚いたように目を瞠る彼女を見て、きっと自分も同じ表情をしているのだろうと思った。そのローリの顔に笑みが広がるのと同時にリックも笑みを浮かべながらシェーンの方に振り返る。
    「ありがとう、シェーン。本当に心強い。」
    「私も。心から感謝するわ。」
    「やめろって。大げさだ。」
     そう言って肩を竦めるシェーンをローリが「照れてるの?」とからかった。その光景にリックは自然と微笑む。
     リックは二人の顔を見ながら「自分たちは今度こそ大丈夫だ」と確信した。
     これから先、どれだけ苦しいことや辛いことがあっても三人の間に新たに生まれた友情は壊れない。今の自分たちなら何があっても乗り越えていける。そして、その確信に慢心して友情を手荒に扱うことは絶対にしないと誓う。今更ではあるが、友情とは慈しみ育んでいくべきものだと理解したのだから。
     リックは「この友情を守り抜く」と自身に誓い、二人の手を握る己の手に力を込めた。


     友人としてやり直すと誓い合った日を境に、リックはローリとシェーンとの間に漂う空気が変わったのを感じた。
     農場を出た頃から気まずさはなくなっていたのだが、改めて話をしたことで最後の杭が抜けたのか、穏やかな雰囲気が自然と生まれるようになったのだ。それはリックにとって嬉しいことだった。
     そして、大人たちの間に漂う空気が変わった影響を大きく受けたのがカールだ。両親の間に漂うぎこちなさや父とその親友との対立による緊張を感じ取って荒んでいた少年は、以前のように陰りのない笑みを見せるようになった。それだけでなくリーダーとして仲間たちをまとめる父の手伝いを進んで行い、身重の母を支えるために手を差し伸べることも多くなった。その成長ぶりを両親だけでなく大人たち全員が誇らしげに見守る。
     変化はそれだけに留まらない。リックたち三人の関係が改善しただけでグループを薄っすらと覆っていた重苦しさが氷が溶けるように消えていったのだ。リックはその理由を自分の精神状態が安定したからだと考え、自分が仲間たちに与える影響の大きさを思い知らされたような気がした。
     リーダーの精神状態は全体に影響する。安定していれば全体が落ち着き、不安定になれば全体が荒れ出す。極端なことを言えばリーダーの精神状態がグループの行く末を左右するのだろう。
     例え、どんなことがあっても自分が揺らいではならない。
     それは非常に困難なことではあるが、リックは仲間たちのためにその戒めを胸に刻んだ。


    *****


     季節は本格的な冬を迎えた。冬の空気が容赦なく体を冷やそうとしてくる。
     冬に入ると食料の入手が格段に難しくなった。機会が少なくなったとはいえ、秋までは森に入れば木の実や小ぶりな果実を見かけたり、遭遇した動物を捕らえることもできた。それが冬になった途端に実りはなくなり動物も姿を消した。だからといって川に入って魚を獲るには水温が低すぎて試す気にもなれない。
     今は秋の間に集めた食料で凌いでいるが、それが尽きるのも時間の問題だ。ある程度まとまった食料を手に入れなければ全員が飢え死にしてしまう。
     そのような状況のある日、リックは昼食の時に仲間たちに次のように告げた。
    「今日の移動は終わりにしようと思う。疲れが溜まってきているから体を休めてくれ。本当はどこかの家で休めるといいんだが、今日中に家が見つかるとは限らない。今日はここでキャンプしよう。」
     車での旅。食糧不足。ウォーカーの脅威。それらは皆の肉体と精神を疲弊させる。
     寒さの影響なのかウォーカーを見かけることは少なくなったが、一箇所に長く留まれば寄ってくることに変わりはなく、空き家を見つけても留まることができるのは三日程度だ。旅慣れていないグリーン親子は定住できない状況への疲れが他の者より大きく、三人とも顔色の良くない日が多くなってきた。グリーン親子以外の者たちの顔にも疲労の色が濃い。
     風邪一つが命取りになる旅の中で疲労の蓄積は対処すべき課題だ。そのため、リックは今日の移動を昼でやめて残り半日を休息に当てようと考えたのだ。リックの思いは仲間たちにも伝わり、全員が賛同を示して頷いた。
     昼食が終わると皆は野営の準備を始める。リックが特に指示しなくても各自で判断して動いてくれるので頼もしい。
     リックは仲間と共に野営の準備をしてから調達用のリュックサックを背負った。
    「森に入って食料を探してくる。夕方までには戻るから後を頼むぞ。」
     リックはグループ全体に向けて告げてから返事を聞く前に足早に森へ向かう。返ってくるのが一人で調達に行くことを反対する言葉なのはわかりきっていたので、その前に出発してしまおうというのだ。
     決して仲間を頼りなく思っているのではない。煩わしいわけでもない。リックの中にあるのは「疲れている仲間たちを休ませたい」という気持ちだけだ。
     リックが周囲に視線を向けながら歩いていると後方から足音が追いかけてくる。振り返った先には呆れ顔のニーガンがいた。
    「リィーック?一人だけで行くなんて俺が許すと思うのか?」
     不満を滲ませるニーガンの声にリックは苦笑して、足を止めると体を彼の方に向けた。
    「あんたにも休んでもらいたいんだが、無理か?」
     その問いに返ってきたのは「無理だね」という答えだ。
    「お前の仲間を守りたいって気持ちはわかるが、俺やあいつらだってお前を守りたいんだぞ。全員で協力し合って生き延びると言ったのは誰だったかな?」
    「……俺だ。」
    「その通り。リック、お前だ。だったら一人だけで動く癖は直せ。何かしようとする時にお前が言うべき言葉は一つ、『ニーガン、お願い』。それだけさ。」
     そう言ってニヤリと笑うニーガンに釣られてリックは短く笑い声を漏らした。
     こんな風にニーガンは肩に力の入ったリックを解そうとしてくれる。そのおかげで凝り固まらずにいられるのだ。
     リックは微笑みながら「一緒に来てくれ」とニーガンの腕を軽く叩いて歩き出す。そうすると隣にニーガンが並んだ。
    「おい、リック。たまにはハーシェルにも付き合ってもらえ。あの爺さんは食用キノコについてそれなりに知ってるみたいだぞ。」
     その提案にリックは頷いた。
    「それもそうだな。教えてもらいながら調達するのもいいだろう。」
    「よし、今の言葉を忘れるなよ。」
     満足げに笑いながら言葉を返したニーガンを見てリックは心が温かくなった。
     相変わらず気温は低く、傍らを駆け抜ける風は冷たい。それでもニーガンから与えられた思いやりが心を温めてくれる。それがとても幸せなことなのだと噛みしめるリックは胸の奥が甘く疼いたような気がした。


     天から雫が降り注ぐ。それは食料を探しているリックとニーガンを逃してはくれなかった。
     天候が崩れる予兆はあった。黒い雨雲が近づいていたので、そのうちに雨が降るだろうと思っていた。その前に野営地に戻るはずが、予想よりも早く降り始めた雨にリックとニーガンは慌てて仲間のところへ戻ろうとする。
     ポツポツと降り出した雨は少しずつ勢いを増していった。そのうちに激しい降りになるだろう。そうなった時にずぶ濡れになった全身を乾かす手段はなく、冷え切った体が体調不良に陥るのは目に見えている。そのため、偶然見つけた小屋に避難して雨が止むのを待つことに決めた。
     リックたちが避難した小屋は休憩所として使われていたようで、二人掛けの小さなソファーとそれに合わせたテーブルが置いてあり、テーブルの上には電池式のランタンが用意されていた。ランタンの電池は十分に残っており予備の電池も備え付けてあったので有り難く使わせてもらうことにする。その他の家具は小型のキャビネットが部屋の片隅にあるだけだ。
     それら以外にも毛布が二枚と大きなダンボールが一箱あった。ダンボールの中を確認すると缶詰が箱いっぱいに詰められていたので、二人は思わず歓声を上げる。これだけの缶詰があればしばらくは食料の心配をしなくて済むだろう。
     リックは笑顔でニーガンと顔を見合わせた。
    「やったな!これを持って帰ったらみんなが喜ぶ!」
    「おう、あいつらのはしゃぐ姿が目に浮かぶぞ!」
     リックはニーガンと喜び合ってから視線を窓の外に向ける。雨は小屋に駆け込んだ時よりも勢いを増していた。そのためリックは窓に近づいて外の様子を確認することにする。
     窓から外を覗いてみれば、雨雲が広範囲に広がっているせいで夕方でもないのに薄暗かった。打ち付けるようにして降る雨の勢いは弱まる気配がなく、外に出た途端にずぶ濡れになるのは考えずともわかる。激しい雨のせいで視界も悪く、この中を移動するのは自殺行為としか思えなかった。これでは仲間たちのところに帰れない。
     リックは窓の外を見つめながら「みんなのところへ帰れなさそうだな」と呟いた。
    「雨の勢いが強い。止むまでにかかる時間は二時間か、三時間か……。雨が止むとしても暗くなった頃だろう。暗い中を移動するのは危険だから、それは避けたい。」
     リックが考えを述べると、ソファーに座って缶詰の状態を確認し始めたニーガンが同意を示すように頷いた。
    「今夜はここに泊まると腹を括るべきだな。あいつらは俺たちを心配するだろうが、この雨じゃ捜索を諦めて俺たちが帰るのを待つだろう。リック、あいつらなら大丈夫だ。」
    「ああ、そうだな。」
     リックはそのように返事をしながらも、自分たちを心配する仲間たちを思って胸を痛めた。
     戻らない自分たちを待つことしかできないのは苦痛だろう。子どもたちを不安にさせてしまうのも心苦しかった。だからといって真冬に激しい雨の中を歩くのは得策ではなく、雨が止んだとしても夕方以降の移動は視界が悪くて危険だ。リックたちには「小屋で夜明けを待つ」という選択肢しか残されていない。
     リックは視線を窓から無理やり引き剥がすと二枚の毛布を持ってソファーに近づいた。
    「ニーガン、缶詰より先にジャケットを脱ぐのが先だ。体が冷えるぞ。ほら、毛布。」
     リックはソファーの上に毛布を置いてから自分のジャケットを脱ぎ、壁に設置されている上着掛けに掛けた。ニーガンもお馴染みの革ジャケットを脱いだのでそれを受け取り、自分のジャケットの隣に掛けてからソファーに腰を下ろして毛布を肩から被る。毛布を被ると温もりを感じてホッとした。
     リックは外の様子を気にしながら、ニーガンと共に缶詰の状態や賞味期限を確認したり雑談をして過ごした。激しく降り続いた雨は数時間後に小降りに変わったものの、その頃には外は暗闇に包まれていた。月明かりさえない状態だが、ランタンがあるおかげで真っ暗闇の中で過ごすことは免れる。
     明かりが漏れないように窓のカーテンを閉めてからランタンを点けると、部屋の中がぼんやりと明るくなった。そうすることでニーガンのいつもと変わらない笑みがよく見えるようになった。
    「さーて、ディナータイムといくか。」
     ニーガンはそう言ってダンボールから缶詰を一つ取り出した。そのラベルを見てリックは顔を綻ばせる。
    「ラビオリか。そんな洒落たものを食べるのは久しぶりだ。」
     リックが喜ぶとニーガンも「そうだろ」と声を弾ませた。
    「一つの缶詰を野郎二人で分け合うと量が足りないが……まあ、仕方ないよな。それでも久しぶりのパスタだ!」
     ニーガンは上機嫌な様子で缶詰を開け始める。蓋が開くのに併せて漏れ始めたトマトソースの香りが鼻をくすぐり、リックは思わず唾を飲み込んだ。
     やがてトマトソースの絡んだラビオリが姿を現す。ニーガンはキャビネットに収納してあった食器を二人分用意して、それに缶詰の中身を均等に盛り付けた。そしてラビオリの乗った皿をリックに差し出して微笑む。
    「食おうぜ。旨いワインはないが、最高のディナーだ。」
     リックは差し出された皿を受け取って笑みを返した。
    「ああ、本当に最高のディナーだな。頂こう。」
     ランタンの小さな明かりが部屋を照らす中でリックは夕食を食べ始める。温めていないので冷たいが、久しぶりのパスタはとても美味しかった。美味しいと思う度に残してきた仲間たちの顔が浮かんで「早く食べさせてやりたい」という思いが強くなる。
     量の少ない夕食はすぐに終わってしまったが他にやることもないので眠るしかない。リックはランタンの明かりの強さを最小にして、ニーガンと「おやすみ」と挨拶を交わしてから目を閉じた。
     目を閉じると雨音が一際大きく聞こえるようになった気がする。穏やかに降り続ける雨は確実に気温を下げて、暖を取る手段のない小屋の中を冷やす。雨に濡れたジャケットを脱いだリックが上に着ているのはシャツと肌着、そして薄手のカーディガンだけ。寒いのは当然だ。衣類が不足しているので薄着なのは仕方ないのだが、この格好だと毛布一枚では足りない。
     リックが寒さに体を震わせた時、不意に体を抱き寄せられた。驚いたリックが目を開けて隣を見ると、ニーガンが穏やかな表情でこちらを見ていた。
    「雨で気温が下がってる。くっついてる方が温かいぞ。」
     ニーガンはそのように言ってから座り直した。それにより二人の間にあった隙間がなくなったので彼の体温を感じやすくなる。
     抱き寄せる腕のたくましさと自分より少し高めの体温にリックは大きな安心感を得た。寒さと一緒に漠然とした不安まで溶けていくような気がして、自分の中でのニーガンの存在の大きさを改めて実感する。
    「……ニーガンは温かいな。」
     ポツリと零れた言葉に反応してニーガンが小さく笑った。笑ったことによる振動さえ愛おしい。
    「これだけしっかりと引っ付いてりゃ温かいさ。」
    「そういう意味じゃない。あんたが傍にいてくれるから、どれだけ辛くても苦しくても俺はそれを乗り越えて前に進める。」
     リックはニーガンと目を合わせたまま素直な思いを伝える。
    「いつも支えてくれてありがとう。ニーガンには出会った時から助けられてばかりだ。それなのに大変な旅に連れ回して本当にすまない。こんな状況でも傍にいてくれることに心から感謝している。……俺がどれだけ感謝してるのか伝わらないのがもどかしいな、本当に。」
     ニーガンにはこれまでに何度も感謝を伝えてきたが、それでも足りない。どれだけ感謝の言葉を捧げても足りないほどに深く感謝している。
     自分の感謝の気持ちが目に見える形になればいいのに、とリックは微かに苦笑する。この気持ちのほんの一部しか彼には伝わっていないように思えて、それがいつも悔しいのだ。
    「──本当にお前はバカだなぁ、リック。」
     呆れ混じりの優しい声が降ってくると同時にニーガンが額に己の額を押し付けてきた。リックは触れ合う額からじんわりと伝わる熱を感じながら目の前の彼を見つめる。
     「遠慮なんかするな」と笑うニーガンの目はキラキラと輝き、彼は目を輝かせたまま甘く囁く。
    「この世界で生きてきた中でお前と出会って初めて、俺は自分が生きていることを実感できた。心が死にかけてたのさ。そんな俺の心を救ったのはお前だ、リック。だから感謝も謝罪もいらない。俺はお前がいればいい。」
     まるで恋人に囁くような声だ、とリックは頬が熱くなるのを感じた。顔が赤くなっているのではないかと心配になるが、薄暗い中では気づかれないと信じるしかないだろう。
     リックは照れくささと誇らしさを感じながら言葉を返す。
    「上手く言葉にできないんだが、その……ニーガンに出会えて嬉しい。本当に、そう思う。」
     その言葉にニーガンは嬉しそうに目を細めて「ああ、俺もだ」と答えた。
     それ以降は言葉がなかったが、ニーガンは自分の肩にリックの頭をもたれさせると改めて肩を抱いてくれた。その行為はリックをとても満ち足りた気分にさせてくれる。
     外では相変わらず雨が降っていて気温も低いままだ。きっと雨は一晩中降り続き、夜明けが近づく頃には今よりもっと冷え込むのだろう。
     しかし、小屋の中には思いやりと温もりが満ちている。だからリックは少しも寒くない。
     リックは大きな幸福感に包まれながら傍らにある温もりに頬を寄せた。


     ニーガンと二人だけで迎えた朝は快晴だった。リックは昨日の大雨が嘘のような空を見て笑みを浮かべる。
     小屋で見つけた缶詰を一つだけ取り出して朝食を済ませてから、大量の缶詰を各自のリュックサックに詰めて出発の準備をする。ランタンまで詰めることはできなかったので手で持っていくことにして、乾電池をリュックサックに放り込んだ。
     荷造りを終えたリックが小屋を出ると、先に準備を終えて外に出ていたニーガンがこちらを振り返った。ニーガンは毛布二枚を肩に担いでいる。
    「待たせてすまない。行こう。」
     その呼びかけにニーガンは頷いて応えて歩き出した。
     地面は昨日の雨を含んで泥状になっており、歩くとグチャッという音がする。
    「天気は最高に良いが、足元がクソ過ぎる。泥でグチャグチャだ。」
     顔をしかめながらのニーガンの発言にリックは苦笑を返す。
    「泥が跳ね返ってジーンズが汚れそうだな。」
    「……もう汚れちまったよ。」
     そう答えてガックリと肩を落とすニーガンを見たリックは声を上げて笑った。
     このようなやり取りを続けながら歩くうちに見慣れた車や人々の姿が見えてきた。「おーい」と呼びかけて手を振れば、仲間たちはこちらの存在に気づいて駆け寄ってくる。
    「父さーん!」
     真っ先に近づいてきたのはカールで、彼は顔中に喜びを浮かべながら飛びついてきた。リックは空いた方の手で我が子の体を抱いて再会を喜ぶ。
     そして仲間たち全員が口々に労いの言葉をかけてくれた。ニーガンに対しては無事を喜ぶだけで終わったが、リックは「一人だけで行くな」と全員から叱られてしまった。単独で調達に出かけたことは昨日のニーガンとの会話でしっかりと反省したので心を込めて謝るしかない。
     十分に再会を喜び合ったところでリックとニーガンはリュックサックの中身を仲間たちに披露した。中から出てきたたくさんの缶詰を見て誰もが目を丸くする。
     グレン、マギー、ベスの若者たちは缶詰を手に取りながら「すごい!」と興奮気味に話し、ローリとキャロルは「これなんて美味しそうね」と笑い合ってから子どもたちに缶詰を渡し、母親から缶詰を手渡されたカールとソフィアは一緒にはしゃいだ。シェーンとTドッグは熱心に缶詰の数を数えて、ハーシェルは穏やかな笑みを浮かべながら缶詰に喜ぶ皆を見守っていた。
     久しぶりに仲間たちの弾けるような笑顔を見るリックの心に幸福感が広がっていく。どんな疲れも仲間たちの笑顔を見れば吹き飛んでしまう。この瞬間があるから踏ん張ることができるのだ。
     リックが皆の様子を眺めているとニーガンが隣に立った。彼も仲間たちを見つめながら嬉しそうに笑っている。
    「まったく、最高の光景だ。これを絶対に壊したくないって思う。」
     ニーガンの感想にリックは「俺もだ」と同意する。
    「みんなの笑顔を見たら、まだまだ頑張れると思えた。これからも全力で頑張るから……俺を支えてほしい。」
     素直に願いを口にすれば「当たり前だ」という頼もしい言葉が返ってきた。
    「ずっと一緒にいてやる。」
     ニーガンはそのように宣言してからリックの肩に手を置いた。その手の力強さが頼もしい。
     リックはニーガンの掌に意識を向けながら、目の前に広がる幸せな光景を見守り続けた。
     先を走るリックたちの車が停まるのに合わせてニーガンは車を停車させた。リックが車を停めた理由はすぐにわかった。前方に家が見えたからだ。
     助手席に座るTドッグが「久しぶりに車中泊から解放だな」と声を弾ませると、後部座席に座っているシェーンが「さっさと降りるぞ」と言って後ろのドアを開けた。ニーガンも運転席のドアを開けて外へ出る。
     先頭を走っていたリックたちは既に車を降りていた。リックが家の周辺を見回っている中、車の傍らに立つローリにはカールとソフィアがボディーガードのように寄り添い、キャロルは拳銃を手にしながら周囲を警戒している。
     ニーガンが家の正面に向かって歩いていると、ニーガンたちの後ろを付いてきた車に乗っていた者たちが追いついてきてグレンが隣に並んだ。
    「他に家はなさそうだね。そうなるとウォーカーも少ないかな?」
    「そう考えたいところだが、他の地域から流れてきてないとは言えないな。グレン、油断するなよ。」
    「わかった。」
     グレンはニーガンの忠告に頷くと、後ろを振り返ってグリーン親子にローリの近くへ行くよう声をかけた。ニーガンはそれを見遣ってから家の玄関ドアの前に立って中の様子を探るリックに近づく。
    「物音は聞こえるか?」
    「何も聞こえてこない。とりあえずドアを叩いてみよう。」
     リックは問いに答えてからドアを強めに叩いた。しばらく待ってみても中からは何の音も聞こえてこない。
     ニーガンはこちらを見たリックに頷き、それから仲間たちに顔を向けて「中に入る準備をしろ」という意味を込めて手招きした。
     最初に家の中に入るリックがナイフを構えてドアの前に立ち、その後ろにシェーンとグレンが控える。ドアを開ける役目を引き受けたニーガンの傍らにはTドッグが立った。車の近くにいるローリと子どもたち、そしてハーシェルを守るのはマギーとベスの姉妹だ。キャロルは家の周辺を警戒して予期せぬ事態が生じた場合に対処する役割を担っている。
     このように各自の役割が決まってから随分と経つ。個別に指示を出さなくとも各自で考えて動けるようになったのは全員が努力した結果だが、リックがしっかりと指揮を執ったことも大きい。弱い者たちが集まったグループは優しさと厳しさを併せ持った彼でなければまとめられなかっただろう。
     そのような感慨にふける時間は数秒のこと。瞬時に己の役目に意識を切り替えたニーガンはリックの瞬きでの合図を受けてドアを開けた。


    *****


     家の中の安全を確保したニーガンたちはこの家に滞在するための準備を進めることになった。
     寝泊まりに適した家屋を見つけられたのは久しぶりで、全員が長期の車中泊で疲れ切っていた。それを心配したリックが三日ほど滞在して疲れを癒やすことを提案したのだ。
     ニーガンが「裏口の封鎖を強化しておくか」と考えていた時、ローリが「私はキッチンを担当する」と申し出た。
    「食料や使えそうな物がないか探してみる。カールはリックを手伝ってあげて。」
     その言葉にカールが戸惑った顔をする。
    「母さん一人でキッチンを見るの?僕が一緒にいた方がいいんじゃない?」
    「大丈夫。この前、『父さんを手伝えることを増やしたい』って言ってたでしょう?たまには父さんを手伝ってあげなさい。」
    「うん、それはそうだけど……」
     カールは肯定しながらも心配そうにローリを見つめている。身重の母を心配する少年のためにニーガンは手を挙げた。
    「俺がローリと一緒にキッチンを見る。だからカールはリックを手伝って裏口の封鎖を強化してこい。これも覚えておかなきゃならない仕事だぞ。だろ、リック。」
     ニーガンがそう言ってリックに話を振ると彼は「その通りだ」と答えて頷いた。そして、カールの肩に手を置いて微笑みかける。
    「母さんの手伝いはニーガンに任せて俺を手伝ってくれ。母さんを手伝ってくれる人がいれば問題ないだろう?」
    「うん、それなら大丈夫。じゃあ、今日は父さんを手伝うね。」
    「よろしく。じゃあ、みんなも頼むぞ。」
     リックの号令により各自が自分の仕事に取り掛かるために散っていった。
     ニーガンはローリに近づいて手を差し出す。その手をキョトンと見下ろしてから顔を上げた彼女にウインクを飛ばしながら告げる。
    「お手をどうぞ、お姫様。」
     恭しいお辞儀も追加してやればローリは堪え切れずに吹き出す。そして笑いながらもニーガンが差し出した手に己の手を乗せた。
    「あなたにエスコートしてもらえるなんて光栄ね。」
    「まあ、近場だけどな。」
     ニーガンは肩を竦めながら言葉を返すとローリを連れてキッチンに足を運ぶ。
     家全体を見ても荒らされた様子はなかったが、他の部屋と同様にキッチンも散らかっていなかった。周辺には特に建物がないので、この家には家主以外に誰も来ていないのだろう。
    「エスコートしてくれてありがとう。」
     ローリが感謝を告げてから手を離したのでニーガンも手を下ろし、「始めるとするか」と言って探索を開始する。
     ローリにはキッチンカウンターの引き出しの中を見るように頼み、自分は頭より高い位置にある収納スペースを漁った。全ての扉を開けてみたが、そこに収められているのは調理器具や食器ばかりだった。それらは既に十分な数が揃っているので新たに持っていく必要はない。
     ニーガンが落胆の息を吐いた時、しゃがんで物資を探していたローリが「あっ!」と声を上げた。何か見つけたようだ。
    「どうした?何か良いものでも見つけたのか?」
     ニーガンは尋ねながらローリの隣にしゃがみ込む。そうすると目を輝かせた彼女がこちらを見た。
    「塩と砂糖の袋があった。まだ開封してないみたい。」
     ローリはニーガンの問いに答えながら引き出しの中から二つの袋を引っ張り出した。
     姿を現したのは未開封の塩と砂糖の袋だ。塩と砂糖は味付けだけでなく健康を維持するためにも欠かせない。在庫が残り少なくなってきたので、このタイミングで未開封のものを手に入れられるのは有り難かった。
     ニーガンは発見を祝うために短く口笛を吹いた。
    「こいつは掘り出し物だな。他には何か見つけたか?」
     ローリはそれに対しては頭を振った。
    「目ぼしいものは何も。この家の住人は必要なものを持って逃げたんでしょうね。塩と砂糖を残してくれただけでも有り難いわ。」
    「やっぱりそうか。俺の方も特に必要なものは見つけられなかった。もうここに用はない。他の奴らを手伝おうぜ。」
     ニーガンはそのように告げて塩と砂糖の袋を抱えて立ち上がった。そのままキッチンを出ようと出入り口に体を向けた時、ローリから「待って」と呼び止められる。
     振り返ると立ち上がったローリが真っ直ぐに視線を寄越してきた。
    「話があるの。少しだけいい?」
    「ああ、いいぞ。それで、話ってのは何だ?」
     ニーガンは持っていた塩と砂糖の袋を床に下ろしてローリに向き合った。
     ローリは深呼吸をした後、緊張した様子で口を開く。
    「カールを出産した時は帝王切開だったから今回の出産でもそうなる。出産そのものが命懸けだけど、環境が整わない中での帝王切開は私の体への負担が更に大きくなると思う。……もし私が死んだらリックを支えてあげてほしい。それを頼みたかったの。」
     ローリの話は予想もしていなかった内容なので始めに驚きが来て、その次に抱いた感情は不快感だった。自分が死ぬことを前提に話してほしくない。
     ニーガンは不快感を隠さずに顔をしかめて「冗談じゃない」と首を横に振り、明確に拒絶を示した。
    「子どももリックも残して逝くつもりか?そんな頼みを聞けるわけないだろ。自分が死ぬことを前提に考えるような奴の話を聞くほど暇じゃない。」
     ニーガンはこれ以上の会話を拒むために厳しい言葉を吐き捨てた。
     ニーガンの言葉や態度に滲む怒りに触れたローリは「誤解しないで」と必死に言い募る。
    「私は生きたいと望んでるし、友人としてリックを支えていきたいとも思ってる。大事な人たちを残して死ぬのも嫌。でも、器具や環境が整わないだけじゃなくて私の体調も万全な状態を保てない。そんな状況での帝王切開はダメージが大きいの。ハッキリ言って、私が出産を乗り越えて生きられる可能性は高くない。」
     ニーガンはローリの主張に対する反論材料を持っていなかった。
     臨月を迎えた時に定住可能な場所を確保できている保証はない。過酷な旅を続けたままローリの体調を良好な状態に保つのは難しく、出産時に彼女の体力がどれだけ残っているかわからない。出産する環境や妊婦の体調を万全な状態に整えても出産では何が起こるのかわからないのだから、今の状況で子どもを産むのは非常に危険なのだ。
     ニーガンが言葉に詰まって何も言えずにいると、ローリは慰めるように腕に触れてきた。
    「ニーガン、私を励まそうとか慰めようなんて思わないで。この子を産むと決めた時から覚悟はしてる。リックにも覚悟はしておいてほしいと伝えてあるわ。リック自身を含めた誰のことも責めないでほしいともね。」
     そのように語るローリは柔らかな笑みを浮かべている。死を覚悟しながらも自然に笑うことができる彼女にニーガンは尊敬の念を抱いた。
     ローリは微笑んだまま「ねえ、ニーガン」と呼びかけてきた。
    「リックは強いけれど弱い人よ。完璧なんかじゃなくて普通の人。とても優しい、普通の人。私がいなくなったら悲しむし、きっと自分を責めて落ち込む。だから彼自身や子どもたちのためにも彼を支えてくれる人が必要なの。」
    「それが俺なのか?」
    「そう。あなたしかいない。」
     ローリは力強く頷いてニーガンの言葉を肯定した。
    「あなたとリックが深く信頼し合っているのは見ていればわかる。あなたならリックが立ち上がるための手助けができる。勝手なお願いなのはわかってるけど……私が死んだ後、リックを支えてほしい。お願い。」
     こちらを真っ直ぐに見るローリの目は澄んでいる。その美しい目にはリックへの深い愛情が確かに存在していた。
     ローリは自分の体が出産の負担に耐えられないと悟っている。出産を経験し、その上で今の自身の状態から導き出した答えに絶望しないわけがない。だが、彼女は前を向いて愛する者たちのために自分ができる最大限のことを行おうとしている。その気持ちに応えたいと心から思う。
     ニーガンは「わかった」と首を縦に振った。
    「リックを支えたい気持ちはずっと持ってるが、改めて君に誓う。何があっても俺がリックを支える。あいつを一人にはしない。」
     ニーガンは誓いの言葉を述べてからローリに手を差し出した。無性に彼女と握手をしたかった。
     ローリはニーガンの手をジッと見つめて、穏やかに微笑むと手を握り返してきた。細い指であっても握手を交わす力は強い。その力を感じると彼女の生命力を信じたくなる。
    「ニーガン、ありがとう。本当に感謝してる。」
    「礼を言われるようなことじゃないさ。だけどな、生きる努力はしてくれよ。俺は仲間を失いたくない。」
     それはニーガンの心からの願いだ。ローリは大切な仲間。彼女が死ねば寂しくて悲しい。
     ローリは一瞬だけ目を瞠ったが、すぐに笑顔を見せてくれた。その目が潤んでいることは敢えて指摘せずにおく。
     固い握手を交わした後、どちらからともなく手を離した。そして床に置いた塩と砂糖の袋をニーガンが拾おうとした時、そのうちの一つをローリが拾って胸に抱えた。
    「ローリ、それは俺が持つ。貸せ。」
     そう言ってニーガンが手を差し出してもローリは首を横に振った。
    「これぐらいは平気。ほら、行きましょう。みんなを手伝わないと。」
     朗らかに笑うローリは先にキッチンを出ていってしまった。それを目を丸くしながら見送ったニーガンの顔には次第に笑みが広がっていく。
    「強くなったもんだ。──いや、元から強かったのかもな。」
     様々な困難や混乱によって弱ってしまい、元々持っていた強さが隠れてしまうこともある。それが人間だ。それを乗り越えれば本来の強さを取り戻すことができる。それもまた、人間なのだろう。
     ニーガンは「本当に素晴らしい仲間たちに出会えたものだ」と思いながら目を閉じる。愛すべき仲間たちと出会えたことに感謝すると同時に、その機会を与えてくれたリックと出会えた喜びを改めて噛みしめた。
     もう少しだけここに留まろう、とニーガンは目を開けた。そして笑みと共にキッチンを見回す。そこにはローリとの会話で生まれた優しい空気が残っているような気がした。

    To be continued.
    ♢だんご♢ Link Message Mute
    2020/10/16 22:47:47

    道なき未知を拓く者たち⑦

    #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


    pixivに投稿した作品と同じものです。
    「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
    農場を追われて放浪することになったリックたちは厳しさに晒されながらも互いに支え合っていた。そのような中でそれぞれに転機が訪れる。


    後半の始まりとなる章です。
    秋から冬にかけての話で、放浪中のリックたちを描いてみました。ニガリク成分は濃い方だと思います。
    よかったら、どうぞ。

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    • リック受まとめ #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      #ダリリク  #シェンリク  #腐向け  #TWD  #ニガリク ##ダリリク ##シェンリク ##ニガリク ##TWD


      privatterで投稿したものと今までに投稿していないものをまとめました。
      平和な世界だったり、ドラマ沿いだったりごちゃ混ぜです。



      ◆今日のダリリク:相手が風呂を上がっても髪を乾かさないので仕方なくドライヤーをかけてやる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       髪を濡らしたままバスルームから出てきたリックを見て、ダリルは眉間に思いきりシワを寄せた。
       リックが「疲れた」と何度もボヤきながらバスルームに入っていった時点でこうなることは予想していたが、予想通りになったからといって喜ぶことはできない。
       ダリルは髪の先から雫を滴らせるリックを捕まえるとバスルームへ引きずっていき、ドライヤーの熱い風をリックの髪に吹きかけ始める。
       乱暴な手つきで髪を乾かしてやるとリックが苦笑いを浮かべた。
      「放っておいてくれて構わないんだぞ?」
      「バカか。風邪でも引かれたら困る。」
       それも理由の一つではあるが、リックに構いたいというのが一番の理由。
       普段は頼もしく凛々しい男がダリルの前では気を緩めて無防備になるのが嬉しい。それだけ自分に心を許しているということなのだと思うと甘やかしてやりたくなる。
       そんなことをリック本人に言うつもりは少しもない。
       そんなわけで、ダリルは緩みそうになる顔を引き締めながらリックの髪を乾かし続けたのだった。

      End




      ◆今日のシェンリク:昼下がり、相手が楽しそうに洗濯物を干しているのを、洗濯物をたたみながら眺める
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       今日は仕事は休み。
       そのためシェーンはリックと共に惰眠を貪り、遅めの朝食……ではなく昼食を食べてから活動を始めた。
       洗濯機を回しながら食器洗いや掃除を行い、それが終わると昨夜干した洗濯物を取り込んでいく。
       洗濯物の取り込みが終わった時点でリックが洗い終わった衣類を持って姿を見せた。
      「干すのは俺がやるからシェーンは洗濯物をたたんでおいてくれ。」
      「任せろ、相棒。」
       仕事中のような受け答えに笑い合いながら各自の仕事に取りかかる。
       Tシャツをたたみ、ジーンズをたたみ、タオルをたたみ……。
       シェーンはキレイにたたんだ衣類を並べながら洗濯物を干すリックに目を向ける。
       物干しに洗濯物を干していくリックの顔には笑みが浮かんでいる。それだけでなく鼻歌まで歌っているようだ。
       「何がそんなに楽しいのだろう」と首を傾げかけて、シェーンは自分の口元も緩んでいることに気づいた。
       ああ、そうか。二人一緒なら何をしていても楽しい。
       シェーンはリックも自分と同じなのだと気づき、自分の笑みがますます深いものになっていくのを自覚した。
       これが終わったら次は何をしようか?
       リックと一緒ならどんなことをしても楽しいに違いない。
       そんな風に心を弾ませながら最後の一枚をたたみ終わると、洗濯物を干しているリックの方へ足を運ぶことにした。

      End




      ◆今日のニガリク:無意識に「おかえり」と言うと相手が驚いた顔で「ただいま…」と小声で返すので、何だかお互いに恥ずかしくなる
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       遅くなるなら遅くなるって連絡しろ、クソ野郎。
       リックは怒りと共に冷めきったスパゲッティの皿にラップを貼ってから冷蔵庫を開けた。
       夕食の時間になっても帰ってこなかったニーガンからの連絡は未だにない。「夕食はいらない」という話もなかったので用意はしておいたのだが、日付が変わるまで残り三十分という時間になっても玄関のドアは開かなかった。
       ニーガンという男は他人の思い通りになるような人間ではないと知っていたが、少しは一緒に暮らしている者の身にもなってほしいとリックは常々思っている。
      「どこかの女の部屋にでも転がり込んだのかもな。」
       リックは吐き捨てるように言いながら冷蔵庫の扉を乱暴に閉めた。
       あんな男と一緒に暮らしている自分がバカなのだとわかっていても腹を立てずにいられない。
       ニーガンの言動一つに振り回され、翻弄され、感情が揺れ動く自分が情けなかった。それなのに離れずにいることも情けなくて悔しい。
       「早く帰ってきてほしい」だなんて惨めだ。
       リックは静まり返った部屋の中心に佇み、ボンヤリと床を見つめる。ニーガンがいるとうるさいと感じるのに、今はこの静けさが嫌いだ。
       どうしても「ただいま」の声が聞きたい。
       その時、ドアの開く音が微かに響く。その音に導かれるように玄関へ向かうと、そこにはニーガンの姿があった。
       ニーガンはリックを見ると普段通りの笑みを浮かべた。
      「文句は後にしろよ。説明してやるから、先にシャワーを浴びさせて……」
      「おかえり。」
       リックの口から滑り落ちた言葉にニーガンが驚いた顔をする。それは演技ではなく心からのものだとリックは確信した。
       ニーガンは驚きの表情を浮かべたまま口を開く。
      「……ただいま。」
       それは小さな声だった。
       そのことが妙な恥ずかしさを呼び起こしたため、リックは片手で顔を覆って俯いた。
      「どうして俺が恥ずかしくならなきゃいけないんだ?」
      「それは俺のセリフだ。……文句を言われると思ったのに、今のは反則だ。」
       意外にも近くで声が聞こえたためリックが顔を上げると拗ねた顔のニーガンが目の前にいた。
       リックは一歩後ろへ下がろうとしたが、ニーガンに抱き寄せられたためそれは叶わない。
       珍しく真剣な表情のニーガンは唇同士が触れそうな近さで囁く。
      「リック、もう一度『おかえり』と言ってみろ。」
       結局、この男には逆らえない。
       そう思いながら「おかえり」と口にするとニーガンは満足げに微笑む。
       そして「ただいま」と共に与えられたのは熱い口付けだった。

      End




      ◆ダリリク/制限付きの逃避行

      「笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか」
      https://shindanmaker.com/750576

      【制限付きの逃避行】

       ダリルの視線の先には難しい顔をして考え込むリックがいる。
       出会ったばかりの頃のリックはもっと表情豊かな男だったように思う。良いものも悪いものも表情に出していたように思う。
       しかし、リーダーとしての重さが増していくとリックの顔からは表情が消えていった。
       きっと、背負い過ぎたのだろう。
       きっと、失い過ぎたのだろう。
       それをどうにかしてやりたくても運命は過酷なもので、誰にもリックを救えない。
       だからダリルはリックの傍に行く。頬を撫でてやることしかできなくても、その一瞬だけリックに表情が戻るからだ。
       ダリルがリックの隣に立つとリックは視線だけを寄越してきた。
      「また考え事か?」
      「ああ、別に大したことじゃない。」
       嘘つきめ。
       そう言ってやりたかったが、言ったところで苦笑するだけだろう。
       ダリルは何となくリックに触れたくなって頬に掌を這わせた。そうするとリックは目を細めて幸せそうな笑みを浮かべる。
       笑う横顔に恋をしたのは果たしていつの日だっただろうか?
       ダリルは最近では滅多に笑わなくなった想い人に胸を痛め、自分にできることの少なさに落胆する。
       自分と過ごす時間だけでもリックが幸せだと思えるのならいくらでも傍にいるのに。
       そんなダリルの思いをやんわりと拒むようにリックが離れていく。
      「……もう行かないと。」
       小さく呟いたリックの顔からは表情が消えていた。
      「そうだな。」
       次にリックの笑顔に会えるのはいつになるのだろう?
       リックの傍にいたいのは彼のためなのか、それとも自分のためなのか、ダリルにはそれさえわからなくなった。

      End




      【この熱さをもたらすもの】ダリリク

       照りつける太陽が俺の背中を焼く。
       ジリジリと焦げつく背中に滲む汗は不快さしか与えてくれず、眉間にしわが寄ったのを自覚する。
       作業する手を止めて休めばいいのに「もう少しだけ」と作業を止められない。生き急ぐつもりはないが、小さな焦りが自分の中に存在しているせいなのかもしれない。
       思わず自分に苦笑を漏らした時、後ろから足音が近づいてきた。
      「仕事中毒か?水でも飲んで休め。」
       姿を見せたのはダリルで、彼は水の入ったペットボトルを手にして立っている。
       差し出されたペットボトルを受け取りながら礼を言うと、ダリルの手の甲が俺の頬に触れた。
      「おい、かなり熱いぞ。気分は悪くないか?」
      「大丈夫だ。だが、そろそろ切り上げた方がいいかもしれないな。」
      「あんた、結構汗かきだよな。脱水症状でぶっ倒れても知らねーぞ。」
       ダリルは呆れ顔で俺の頬を軽く叩いた。
       休まずに仕事を続けてしまうのは俺の悪い癖だ。そんな俺をダリルはいつも心配してくれる。
       本当に良い奴だな、と思わず笑みが溢れた。
      「気をつける。それにしてもお前は本当に俺のことをよく見ているよな。そんなに俺のことが好きなのか?」
       笑い混じりに冗談を言ってみた。
       「バカか」と呆れ顔をするダリルを想像していたが、予想とは違ってダリルは目を丸くして俺を見る。その顔が真っ赤に染まるのは一瞬のことだった。
       予想外の反応に何も言えずにいるとダリルが耳元に唇を寄せてくる。
      「好きだけど、何か文句あるか?」
       低く囁かれて背筋にゾクリとしたものが走る。
       ダリルは俺から体を離し、鼻を鳴らして去っていく。それを見送ることができないのは全身が硬直してしまったからだ。
       ああ、熱い。頬が燃えるように熱い。
       思いがけずダリルから与えられた熱に逆上せそうな気がした。

      End




      【Strawberry】ニガリク

       ああ、今日もよく働いた。
       そんな充実感と共にリックは体を伸ばす。
       スッキリと晴れた青空の下で作業をするのは気分が良い。そのためか今日はいつもより張り切って仕事をしたような気がする。
       休むことなく動き回ったので、さすがに体が重い。リックは休憩のために近くの家の壁に背中を預けて座った。
       吹き抜ける風の柔らかさが心地良い。
       耳に届く住人たちの賑やかな声が穏やかな気持ちにさせてくれる。
       様々な困難を乗り越えたアレクサンドリアは希望に満ちた町へと変わりつつある。
      (幸せだなぁ)
       素直にそう感じたリックは微かに笑みを浮かべた。


       リックが幸せな気分を満喫していると足音が近づいてくる。その足音の方へ顔を向ければニーガンが歩いてくる姿が見えた。
       ニーガンのシャツの袖には泥が付いている。畑仕事を嫌がらずに行うニーガンを意外に思ったのはそんなに最近のことではない。
       敵対し、憎み、戦争までした相手と手を取り合って生きていることが信じられないが、目の前にあるのは全て現実だ。そのことが不思議で、おかしくて、そして嬉しい。
       リックがクスクスと笑っていると目の前に来たニーガンが呆れたような顔をする。
      「働きすぎておかしくなったのか?」
      「違う。気にしないでくれ。」
       まだ笑いの余韻を残すリックにニーガンは顔をしかめたが、それ以上は追及せずにリックの正面にしゃがんだ。
       リックの前にしゃがんだニーガンの手には苺が乗っている。畑で育てていたものを持ってきたのだろう。
      「見事な出来だな。ニーガンが農作業が好きだなんて意外だった。」
       そう言ってやるとニーガンはニヤリと笑う。
      「小さなレディだと思えば手間をかけるのも惜しくない。」
       「何だそれ」とリックが笑っているとニーガンはリックの唇に触れた。
      「お前に一番に食わせてやる。口を開けろ。」
       その言葉に従ってリックは口を開けたが、ニーガンは苺を自分で咥えてしまう。
       一番に食べさせてくれるのではなかったのか?
       リックがそんな疑問を抱いているとニーガンが顔を近づけてきた。そしてニーガンが咥えた苺がリックの唇に触れる。「食べろ」という意味なのだと理解したリックは苺をかじった。
       かじった瞬間に口の中に果汁が広がり、甘く爽やかな香りが鼻を通り抜ける。リックは自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳を見つめながら苺を咀嚼した。
      「美味い。」
       正直な感想を告げると、それを待ちかねていたかのように残り半分の苺がニーガンの口の中へと消える。
       ニーガンは己の唇に付いた苺の汁を舐め取りながら囁く。
      「お前のためにこの俺が育てた苺だ。全部食えよ、リック。」
      「……本当に押し付けがましい奴だな、あんたは。」
       溜め息混じりのリックの言葉を気にしていない様子でニーガンは再び苺を咥えた。
       リックは「仕方ない」と苦笑してからその苺を咥える。さっきよりも深く咥えれば唇同士が触れ合う。
       そして思いきって苺をかじれば触れ合うだけのものが深い口付けへと変わった。
       苺の甘い汁と共に舌を絡め合えば奇妙な背徳感に背筋がゾクリとする。その背徳感を嫌だと思わないのは目の前の男との甘い時間に溺れているせいだ。
      (甘い、さっきよりもっと)
       この甘さは自分だけのもの。ニーガンが自分のために育てた苺をニーガン自ら与えてくれることで生まれた甘さだ。
       そう認識した時、何度も噛むことでドロドロになった苺が喉を下りていった。
       まだ食べ足りない、と思ったリックは軽く口を開けて「もっと」と強請る。
       「仕方ない奴だ」とニーガンが楽しげな笑みを浮かべながら咥えた苺がリックにはこの世で一番美味しそうなものに見えた。

      End




      【唐突に告げる】シェンリク

      「愛してる。」
       シェーンの鼓膜を震わせたリックの一言は何の脈絡もないものだった。
       シェーンとリックは二人がけのソファーに並んで映画を観ている真っ最中。
       観ているのは恋愛ものの映画ではない。そういったジャンルに興味はなかった。ついさっきまでビール片手にストーリーにツッコミを入れて笑い合っていただけなのだ。
       それなのに突然リックが愛の言葉を口にしたため、シェーンは目を丸くして隣に顔を向けた。
      「何だよ、急に。」
       そう尋ねればリックは楽しそうに笑った。
      「何となく言いたかっただけだ。」
      「そんなムードじゃなかったぞ。」
       変な奴、と苦笑しながら新しいビールに口を付ける。
       突然のことに驚きはしたが、悪くはない。
       相手のことを常に愛しく思っているのはシェーンも同じだ。
      「愛してる。」
       今度はシェーンが愛の言葉を口にした。
       シェーンが再び隣へ顔を向ければリックも同じようにシェーンを見ていた。
       目が合った時、リックの目尻が垂れて幸せそうな笑みが浮かんだ。
       そんなリックを「愛しいな」と改めて思ったシェーンの口も弧を描いていた。

      End
      ♢だんご♢
    • 飽きたなら、さようなら #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      ニーガンに素っ気なくされるようになったリックが徴収の前日に調達に出かけるお話。


      ニーガンに素っ気なくされるリックを書いてみたかったので挑戦してみましたが、あんまり素っ気ない感じがしないかもしれません。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • リック受けまとめ2 ##TWD ##ニガリク ##ダリリク ##メルリク

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      ほぼニガリクでした。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • スコット受まとめ #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      #蜘蛛蟻  #隼蟻  #盾蟻  #腐向け ##蜘蛛蟻 ##隼蟻 ##盾蟻


      診断メーカーのお題で書いたものをまとめました。privatterに投稿していたものです。




      ◆今日の隼蟻:洗う係と拭く係とで別れて、口論しながらも見事な連携プレーで食器を洗う
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

      「だーかーら!今日は俺が夕飯作るって言っただろ!?しかも言ったのは朝!」
       スコットが泡だらけの皿を水で洗いながら怒鳴ると、その隣ではサムが洗い終わった食器を乾いたタオルで拭きながらしかめっ面をする。
      「俺がやりたくてやってるだけだ。俺としては何で怒られなきゃならないのかが理解できないね。」
      「疲れて帰ってきた奴にさせたくなかったのがわかんないのか!?あー、俺の優しさが無駄になった!」
       やけくそ気味に言い放ったスコットの言葉に対してサムが「自分で言うな」とツッコむと、スコットの機嫌はますます下降していく。
       今日の任務はサムだけだったので、スコットは今夜の食事は自分が作ろうと思っていた。毎日食事を作ってくれるサムへの感謝のためでもあったからだ。
       それなのに買い出しで家を留守にした間にサムが帰宅し、スコットが帰宅する前に夕食を作ってしまったのである。
      「あんたに美味いものを食べさせてやりたいと思うのがそんなにダメか?」
       サムはスコットが渡した皿を受け取って手際良く水分を拭き取った。
      「そうじゃなくてっ……サムに少しでも楽をさせてやりたい俺の気持ちも考えろってこと。」
       差し出されたサムの手にスコットは洗い終わった皿を乗せる。その皿の水気もサムの手によってあっという間に消え失せてしまった。
      「あんたを喜ばせたい俺の気持ちも考えてほしいね。……早く次を渡せ。」
      「はいはい、これで最後だよ。」
       スコットが不機嫌そうに最後の皿を渡すと、サムは目を丸くしてスコットの顔を見た。
      「最後?これで終わりか?」
      「何か問題でも?」
      「早いな。もう洗い終わったのか。」
      「……ケンカしても連携プレーはバッチリだな、俺たち。」
       その事実が二人の仲の良さを表しているようで、不思議と笑みが浮かんでくる。
       こうなってしまえば怒りは萎んで消えてしまい、後は仲直りをするだけとなる。
       スコットとサムは向かい合うと互いの体に両腕を回して抱きしめ合った。
      「サム、ごめん。ムキになって怒り過ぎた。」
      「俺こそ悪かった。スコットの気持ちは嬉しかったんだ。」
       謝り合ってハグをすればケンカはお終い。
       残りの時間は甘く穏やかな時間を過ごすことにしよう。

      End




      ◆今日の蜘蛛蟻:なんだか無性に甘いものが食べたいと思ってドーナッツ1ダース買って帰ったら相手も1ダース買ってた
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       お腹が空いたな、と思った帰り道。
       甘いものが食べたいな、と思って回り道。
       良さそうな店を探すピーターの鼻に届いたのは美味しそうなドーナツの香り。
       甘い香りに誘われてフラフラと店に入れば数えきれないほどたくさんのドーナツ。種類の豊富さは選ぶ楽しさを与えてくれる。
      (スコットさんは何が好きかな?)
       同棲中の恋人の好みを思い出しながらドーナツと見つめ合うが、どれも魅力的で一つだけ選ぶのは無理そうだ。
       それならば何種類も買って帰ればいいではないか。
       「我ながら名案だ」とピーターは笑みを浮かべ、澄まし顔で並ぶドーナツたちを次々と指名する。
       ドーナツを購入し、「ありがとうございました」と店員の声を背に受けながら店を出たピーターの手には大きな箱。その中にはドーナツが一ダースも詰まっていた。
       買い過ぎたかな、と思いながらも家に向かう足はステップを踏みそうな勢いだ。
       腹の虫を鳴かせながら家に帰れば愛しいスコットが出迎えてくれる。
      「見て、スコットさん。ドーナツ買ってきたんだ。」
       そう言ってドーナツの入った箱を差し出すとスコットは「えっ!」と言って目玉が飛び出そうな勢いで目を丸くした。
       どうしたのかと尋ねればスコットは気まずそうにダイニングテーブルを指差す。
       そこにあったのはピーターと同じ柄と大きさの箱。
      「俺もドーナツを買ってきたんだ。ピーターが喜ぶかと思って。……一ダース。」
       ピーターは困り顔で頬をかくスコットに抱きつきながら「僕たちの相性は最高だね!」と頬にキスを贈ったのだった。

      End




      ◆今日の盾蟻:仕事で疲れ切った帰り道、家の明かりが灯っているのを見て不意に泣きたくなった(相手には絶対言わないが)
      # 同棲してる2人の日常
      https://shindanmaker.com/719224

       すっかり暗くなった通りを歩きながらスティーブは冷たい風に体を震わせる。
       今日の任務は予定よりも時間がかかった。想定外の出来事が起きるのは当然で、そのための心構えは常にできている。
       しかし、疲れるものは疲れる。超人的な肉体を持つスティーブであっても疲れが溜まるのは避けられず、今日は特に疲れが大きい。
       重いものを引きずるように歩きながらの帰り道は気分まで重くさせた。
       暗い道を寒さに震えながら歩くのは妙に落ち込む。通りすがりの相手から嫌なことを言われたわけでもないのに……というより、誰とも擦れ違わないのだが。
      (なんだか情けないな)
       自分自身に対して苦笑しながら歩くうちに我が家が見えてきた。
       狭くはないが広いとも言いきれない小さな家には柔らかな明かりが灯っている。
      (スコット、まだ起きていたんだな)
       同棲を始めたばかりの恋人には帰るのが遅くなると連絡は入れてある。先に寝ていてほしいとも伝えておいたはずだ。
       それでも彼はスティーブの帰りを起きて待っていたらしい。

      ───ああ、一人じゃないことがこんなにも嬉しい。

       そう思った途端に鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなって、瞬きを繰り返さなければ涙が溢れてしまいそうな気がした。
       スコットという存在が自分の心に温もりを与えてくれることが幸せで……幸せだからこそ泣きたくなる。
       スティーブは家の玄関の前に立つと頬を軽く叩いた。
       泣きそうになったなんて絶対に悟られたくない。いつも通りの自分でスコットに会いたい。
       「よし!」と小さく声を出してからドアを開ければ、愛しい笑顔がスティーブを迎えてくれた。

      End
      ♢だんご♢
    • スコット受け他まとめ ##アントマン ##蜘蛛蟻 ##スコット ##ロケット ##トニー

      ぷらいべったーに投稿した作品のまとめです。
      CPあり・なしの話がごちゃまぜ。CPありは蜘蛛蟻のみ。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ある寒い日のこと #ウースコ  #アントマン  #腐向け ##ウースコ ##アントマン


      自宅軟禁期間のウースコ。
      寒い日にスコットの自宅を訪ねるジミーのお話。

      寒い日は妄想がはかどるので書いてみました。ウースコというよりもウースコ未満かもしれません。
      いつも「ウーさん」と呼んでいるのでCP表記をウースコにしましたが、ジミスコの方がいいんでしょうか?
      とりあえずウースコでいこうと思います。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤ずきんとおばあさん #蜘蛛蟻  #ピタスコ  #腐向け  ##蜘蛛蟻


      小説投稿機能のお試し。
      ぷらいべったーで投稿したものを少し手直ししました。タイトルのセンスがないのはお許しください。
      ピーターが遊びに来るのを待つ心配性なスコットのお話。
      よかったらどうぞ〜。
      ♢だんご♢
    • 本能が「欲しい」と囁いた #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿した作品です。
      S7のニガリクで、オメガバース設定を使用しています。
      ネタバレになるので詳細は控えさせていただきます。

      好きなように設定を詰め込んでいますが、よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 小さなバースデーパーティー ##TWD ##リック ##カール

      アンディの誕生日にグライムズ親子の誕生日ネタで1つ。
      放浪中の親子の誕生日のお話。短いです。
      ♢だんご♢
    • さよなら、私のアルファ #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  #オリジナルキャラクター  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の続きになります。
      ニーガンが運命の番と出会ったため、サンクチュアリを出ていくことにしたリックのお話。


      オリジナルキャラクターが複数名登場します。出番が多く、ニガリクの子どもも登場するので苦手な方はご注意ください。
      詳細は1ページ目に案内がありますので、そちらをご覧ください。
      ニガモブ要素を少し含みますし、ニーガンがひどい男です。
      よかったらどうぞ。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • ベッドひとつぶんの世界 #TWD #ダリリク #ニーガン #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿したものと同じ作品です。
      S7辺りのダリリク。
      ニーガンの部下になったダリリクと、二人を見つめるニーガンのお話。


      ダリリクが揃ってニーガンの部下になったら、互いだけを支えにして寄り添い合うのかなーと妄想したので書きました。
      寄り添い合うダリリクはとても美しいと思います。
      CPもののような、そうでないような、微妙な話ではありますが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • ちょっとそこまで逃避行 #蜘蛛蟻 #ピタスコ #腐向け ##アントマン ##蜘蛛蟻


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンFFH後の蜘蛛蟻。
      FFHのネタバレを含むのでご注意ください。
      辛い状況にあるピーターがスコットの家に逃避行するお話。


      FFHが個人的に辛すぎたので自分を救済するために書きました。
      蜘蛛蟻というより蜘蛛蟻未満?
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 数値は愛を語る #蜘蛛蟻 #腐向け #Dom/SubAU ##蜘蛛蟻

      pixivに投稿したものと同じものです。
      Dom/Subユニバース設定で、Switch×Subの蜘蛛蟻。
      ピーターに惹かれながらも寄せられる想いに向き合うことができないスコットさんのお話。
      特にどの時間軸というのはなく、設定ゆるゆるです。


      突然降ってきたネタに萌えてしまったので勢いで書きました。スコットさんがヘタレです。
      特殊設定なので「大丈夫だよ!」という方は、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(前半) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク

      S7の頃。救世主として日々を過ごす主人公が偶然リックと関わり、それをきっかけにリックやニーガンと深く関わるようになるお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 家族写真 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのニガリク。
      大切にしてる家族写真をニーガンに奪われたリックのお話。

      「ニーガンはグライムズ親子の写真を勝手に持って帰りそう」と思ったので書いてみました。
      特に盛り上がりのない私向けの話です。お暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち③ #TWD #ニガリク ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックは食料調達のためにシェーンとカールと共に森に入り、その最中に事件が起きる。それはグループの運命を変えるものだった。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      ニガリクタグを付けたら詐欺になりそうなくらいにニガリク要素が少ないです。ニガリクを探せ!という気持ちで読んでください。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 僕はコーヒー豆を挽かない #TWD #ダリリク ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S5でアレクサンドリアに到着した後。
      「生きてきた世界が違う」という理由でリックや仲間と距離を置くダリルを心配するリックのお話。


      ほんのりダリリクの味がするお話です。
      アレクサンドリアに着いたばかりのダリリクの何とも言えない距離感も良いですね。
      タイトルについては深く考えずに読んでいたたければありがたいです。
      地味な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • Restart #蜘蛛蟻 #ピタスコ #最新作のネタバレあり ##蜘蛛蟻


      ※スパイダーマンNWHのネタバレを含むのでご注意ください。


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      スパイダーマンNWH後。
      パトロール中のピーターがスコットに出会うお話。
      蜘蛛蟻未満だけど後々に蜘蛛蟻が成立するという解釈で書いているので蜘蛛蟻です。


      スパイダーマンNWHは面白い映画でしたね。
      でも個人的にとてもしんどい展開だったので自分を救済するために書きました。蜘蛛蟻は癒やし。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 侵入者との攻防 #ロケスコ #腐向け ##ロケスコ


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      アベンジャーズ・エンドゲームでのロケスコ。
      毎朝ロケットが自分の上で寝ていることに困惑するスコットのお話。


      エンドゲームを観て見事にロケスコにすっ転んだので書いてみました。
      口調が掴みきれてないので違和感があったら申し訳ないです。
      短い話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 亡霊殺し #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S2終了後のダリリク。
      リックの傍にシェーンの亡霊が見えるダリルのお話。ほんのりシェンリク風味もあります。

      盛り上がりが特にない私得なダリリクです。ダリリク未満かもしれません。
      じんわりとリックへの執着を滲ませるダリルが好きなので書いてみました。
      本当に暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 雛の巣作り #ニガリク  #TWD  #腐向け  #オメガバース  ##ニガリク  ##TWD

      pixivにも投稿している作品です。
      【本能が「欲しい」と囁いた】の番外編。
      ニガリクが番になって1年が経った頃のお話。
      よかったら、どうぞ〜。


      2018.6.21 一部を修正しました。
      ♢だんご♢
    • 罪な味 #TWD #リック #シェーン #カール #ダリル #ニーガン ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      リックと誰かの食にまつわるお話。
      時期も長さもバラバラ。基本的にほのぼのですが、ニーガンとの話はほのぼのしてません。


      ・【ピザ】 リック&シェーン
       アポカリプス前。「ピザの魅力には抗えません」というお話。

      ・【ケーキ】 リック&カール
       アポカリプス前。「いつもと違う食べ方をすると楽しくて美味しい」というお話。

      ・【肉】 リック&ダリル
       平和な刑務所時代。「調味料は偉大だ」というお話。

      ・【フルーツティー】 リック&ニーガン
       S7辺り。「悔しいけれど美味しいものは美味しい」というお話。


      リックに美味しいものを食べてほしいと思ったので書いてみました。ニーガン以外はほのぼのしてます。
      よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 特に何も始まっていない二人 #TWD #ダリリク #腐向け ##TWD ##ダリリク

      pixivに投稿した作品と同じもです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      特に何も始まってないけれど仲よしなダリリクの詰め合わせ。

      CPというよりブロマンスなダリリクです。お互いに相手を大事に思ってることが滲み出るダリリクが好きです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 道なき未知を拓く者たち① #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      「リックを最初に拾ったのがニーガンだったら?」というIFストーリー『生まれ落ちた日』の続編。
      リックの家族を捜す旅に出たリックとニーガンだったが、過酷な世界での旅は簡単なものではなく……。


      ドラマの展開に沿ったストーリーですが、オリジナル要素を盛り込んでいます。納得できない展開になってもご容赦ください。
      長編なのでのんびり書いています。次の章を投稿できるのがいつになるのか不明です。
      完全に私得な話なのでお暇な時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • プリンシパルとアンサンブル(後編) #TWD #ニガリク #腐向け #夢小説 ##TWD ##ニガリク


      S7の頃。前作の続きで、ケガの治療のためにサンクチュアリに滞在するリックを世話する主人公がリックとニーガンの関係性を目の当たりにするお話。

      夢小説なので主人公はドラマに登場するキャラクターではありません。夢主がキャラクターたちと関わるのを楽しみつつニガリクを堪能する作品です。
      夢小説とCP小説を合わせた作品なので苦手な方はご遠慮ください。
      主人公とキャラクターが恋愛関係になる展開もありませんのでご了承ください。
      前編よりも主人公がリックに肩入れしています。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 恋しい、と獣は鳴いた #TWD #ダリリク #ニガリク #腐向け #オメガバース ##TWD ##ダリリク ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7辺りのダリリク・ニガリク。
      リックと番になっているダリルがリックと引き離されて情緒不安定な時にニーガンと話すお話。ダリルとニーガンのちょっとしたバトル。


      「αが番のΩに依存する」という設定で書きたくて書いてみました。会話してるだけなので特に盛り上がりのない地味な仕上がりです。
      気が向いた時にでもどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 彼らが愛したのは「   」です #TWD #セディリク #ゲイリク #ニガリク #妊夫 #腐向け ##TWD


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S8終了後。
      ニーガンの子どもを妊娠したために孤立するリックを支えるセディク、ゲイブリエル、ニーガンのお話。セディクがメインです。

      ※注意
      ・男性の妊娠、出産、授乳の表現あり
      ・リックへの差別、迫害要素あり
      ・全体的に重苦しい展開


      CP要素があるような無いような微妙なところです。
      重苦しい雰囲気の話なのでご注意ください。
      本当に気が向いた時にどうぞ。
      ♢だんご♢
    • 生まれ落ちた日 #TWD #ニガリク #腐向け ##TWD ##ニガリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S1初回。
      ニーガンが病院でリックを見つけるお話。
      S1初回にニーガンを放り込んだだけ。ニーガンの過去について原作の設定を使っているので未読の方はご注意ください。


      S1の時点でニガリクが出会っていたら最強コンビになったのでは?という妄想を形にしてみました。別人感が強いです。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 赤い糸の憂鬱 #TWD #カルリク #ニガリク #腐向け ##TWD ##カルリク ##ニガリク

      pixivに投稿した作品と同じものです。
      S7のカルリク・ニガリク。
      リックとニーガンが赤い糸で繋がっているのが許せないカールのお話。
      特殊な設定がありますが、深く考えない方がいいかも?


      カルリクとニガリクで三角関係が読みたくて書きました。カールの前に立ち塞がるニーガン美味しいです。
      「カールは赤い糸が見える」という特殊設定がありますが、深く考えず雰囲気を味わって頂ければと思います。
      よかったら、どうぞ。
      ♢だんご♢
    • 「大丈夫」の言葉 #TWD #ダリリク #腐向け #ケーキバース ##TWD ##ダリリク


      pixivに投稿した作品と同じものです。
      平和な刑務所時代のダリリク。
      リックが「ケーキ」であることを知ったダリルが思い悩むお話。
      ケーキバース設定を使っています。この話にグロテスクな要素はありませんが、ケーキバース設定自体がカニバリズム要素を含むので苦手な方はご注意ください。


      リックのことが好きすぎて思い詰めるダリルが大好物なので書いてみました。
      盛り上がりの少ない私得な話ですが、よかったらどうぞ。
      ♢だんご♢
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