ふたりといっぴき おしょうがつのひるモネちゃんとスガナミは、長いチューのあとおひさまが昇ってくるのを見逃したのに気が付いて、二人で顔を見合わせてた。遅っ!気づくの遅っ!もー、僕が拝んどかなかったらどーするつもりだったの、ほんとー。遅ればせながらモネちゃんとスガナミも手を合わせて、なんだかお祈りしてる。ふたりといっぴきでたくさんすごせますよーに、だよね!
「昇ってくるとこ見逃しちゃいましたね」
「ね。でも、見逃す理由がこれだったら、僕にとってはむしろいくらでも見逃したいけど」
「もー、何言ってんですか」
ってもー、スガナミはばくはつするしかない。
昇ってくおひさまを見ながらかわるがわるコーヒーのんで、ポットの中身が空になったところで、帰りましょうか、ってモネちゃんが僕を提げて、二人が手を繋いで車に戻る。んで、その戻る時に気づいちゃった。コージたちも浜に来てた。でも、声かけらんなかったよねー。もーほんとふたりがすんません。
おうちに帰って、ちょっと仮眠しましょうってまた二人が寝るのに、モネちゃんが僕のことだっこして、そのモネちゃんをスガナミがだっこしてた。むぎゅむぎゅで寝るのもたのしーね!スガナミがセットしたスマホのアラームが鳴るまで、モネちゃんもスガナミもぐっすり。お互いのあったかさがあったら、すぴすぴ寝れるんだなー。
お昼前にもぞもぞ起きて、また支度して。島の神社にハツモーデして、そんで永浦のおうちに行くんだってー。僕も連れてってもらえるカナー。サメ三朗にも会いたいしなーって思ってたら、やっぱりモネちゃんが紙袋に入れてくれる!わーい!サメ三朗に会えるー!
僕が運転してもいいですか?ってスガナミが言って、モネちゃんがうれしそうに頷く。モネちゃんと僕が助手席に乗り込んだら、なんだかスガナミが登米にいた頃みたいだね!運転席に座ろうとしたスガナミが思いっきり座席を後ろにずらしたもんだから、いきなりチベスナ顔になるモネちゃんがオモシロイ。それに気づいたスガナミがモネちゃんの髪をくしゃって撫でた。スガナミ、図体でかいもんなー。スガナミのために一番後ろにずらしてる助手席のシートで、足をのびのびぱたぱたさせてるモネちゃんがかわいい。
モネちゃんの案内でスガナミが車をとめたとこには、見慣れた車があった。あ、コージとアヤコさんにオジーチャン、ミーちゃんも!あけおめー!!モネちゃんとスガナミもみんなと「あけましておめでとうございます」ってぺこりして、オショーガツのあいさつ!ねー。みんなでモーデ、いいね!
駐車場からみんなでてくてく歩いて、ながーい石段を登って、その間もモネちゃんと東京から帰ってきてるミーちゃんはお話がとまらなくて、スガナミはオジーチャンとなんかしゃべってる。んでコージとアヤコさんはそんな様子を一番後ろからうれしそうに眺めてる。
お参りして、コージは古いハマヤを納めて新しいの買って、みんなでおみくじ引いて。いいモーデだね!おみくじ、モネちゃんは『吉』で、ミーちゃんが『中吉』、スガナミは『平』だった。へー?どうやら、平穏の平とか、っぽいんだけど、なんていうか、妙に解釈にこまるこーゆーのをピンポイントで引いちゃうの、マジスガナミ。
モネちゃんとミーちゃんとスガナミで、どんぐりのせいくらべなこの結果の中で、どれが一番マシなのかって頭をつきあわせてたら、コージが「大吉だった!」ってめちゃくちゃ嬉しそうにやってきて、モネちゃんとミーちゃんにすんごいシラけた目でみられてた。コージ、どんまい!
そんで、永浦のおうちに行ったら、オガミのおへやに、アヤコさんがいろいろオショーガツのじゅんびをしてくれてた。わー、なんかごちそう!すごーい。スガナミは、気仙沼でオショーガツするのが初めてだから、なんか見たことないものもあるみたいで、きょーみしんしん。モネちゃんが、支度大変だったでしょ、なんてアヤコさんに言ってて、ちょっとずつやってたから全然よ~なんて、母娘の会話してる。去年はモネちゃんも手伝ってたもんねー。
あ、ってモネちゃんが気づいて、居間からサメ三朗連れて来てくれた!わーい、サメ三朗久しぶり!!サメ太朗にいさん、お久しぶりっす!って、サメ三朗も心の胸ビレぱったぱた!モネちゃんが僕とサメ三朗をちゃぶ台の一番端っこに並べて座らせてくれた。わーい!一緒にオショーガツできるー!
ん?ミーちゃんが怪訝な顔してる。おねえちゃん、なんでサメ?って聞いてるけど、モネちゃんもコージも、まぁ、サメ太朗とサメ三朗だから、ねぇ…?って言ってて。…ねぇ?ぼくら、サメ太朗とサメ三朗だし?
コージが自分のお隣にスガナミを座らせて、モネちゃんがその隣に座って。みんなで改めてあけましておめでとうございます、ってごあいさつして、オショーガツしてるー。コージが、今日はちょっとはいいんだろ、ってスガナミのコップにビール注いで、スガナミがキョーシュクしながらもらいつつ、自分もコージにビール注いでる。コージ、スガナミと呑むの好きだもんなー。光太朗くん、正月に休むの初めてなんだって?なんて構われてるスガナミが、そうですね、って結構落ち着いて話してる。スガナミもだいぶコージに慣れたよね~。
モネちゃんが、先生、これも食べてみてください、とかなんとかあれこれスガナミのお皿に載せてくもんだから、スガナミがまた嬉しそうで、アヤコさんとオジーチャンがその三人をほほえましく見てる。ミーちゃんも、東京で何回かスガナミに会ってるらしくて、東京での先生と全然違う、なんて言われてやんの。
そんでしばらくしてたら、アヤコさんが、そうそう、って言いながら居間に行って、戻ってきたらなんか持ってる。サメ太朗とサメ三朗のおようふく新しく縫ったのよ~、ってアヤコさん、ステキ!!!着せてくれたおようふくはサメ三朗と色違いのしましま!わーい!モネちゃんが、お母さんありがとうって言いながら、僕にサメ太朗よかったねぇって笑ってくれる。ねー!うれしいね!アヤコさんが着せてくれて、僕もサメ三朗もサメっぷりが磨かれたよね!僕たちの前にはおみかんのカゴが置いてあって、ほんとオショーガツって感じがする。
ミーちゃんの東京での研究のお話を聞いたりしてたら、オジーチャンが、モネちゃん、ミーちゃん、前やってたお正月に今年の目標を聞かせてくれるの、あるかい?って。あ、すてき!なにかなー、なにかなー。モネちゃんとミーちゃんが顔を合わせて、そだねぇって、首をかしげてる。ミーちゃんが、漢字一文字で言えばやっぱり『深』かな、って。東京で勉強してることをもっと深めていきたい、ってミーちゃんも好きなことにイッショウケンメーなのモネちゃんの妹って感じ!モネちゃんは『広』かなぁだって。そだよね、気仙沼でのお仕事、広げていきたいもんね。
モネちゃんが、先生は?って話を振ったら、なんだかちょっと酔っ払いのスガナミが、うーん、ってしばらく考えて『泳』ですかねぇ、って言ってる。モネちゃんもミーちゃんもそれを聞いて、泳ぐ…?ってなってる様子がマジ姉妹。かわいーね!なんで『泳』なんですか?ってモネちゃんが聞いたら、ふわってスガナミが笑う。去年までは息継ぎもなしにもがいていたような状況だったけど、やっと百音さんと再会して結婚出来て仕事の状況も変わって。ひたすらもがくところから、息継ぎをしながら前に進んでいけるように、と思って。って、酔っ払いなのにまともー!ってか、酔っ払いだから、素直な気持ちをみんなの前で言えたのかな。
ノロケも入ったスガナミの言葉に、みんな感動したみたいで、コージなんか、そうだよな!いい年にしないとな!とか言いながら、またスガナミにビール飲ませてる。スガナミもなんか嬉しそうにそれを受けて飲んでて、なんか仲良しになってんなー。サメ三朗も、今日はコージさんマジうれしそうっすね、なんて感心してやんの。あのねー、実はコージはスガナミのことめっちゃ気に入ってるからね。そうっすね、ってサメ三朗もうれしそう。
だんだん酔っ払いのスガナミが、なんか気が付いたらタコの酢の物ばっかり食べてる。モネちゃんがそれに気づいて、先生、このタコ好きだったの?って聞いたら、スガナミがものすごーく素直に、うん、ってくしゃくしゃの笑顔でうなずいてる。あーもー、このスガナミをモネちゃんがめっちゃかわいいって思ってるのが顔にでまくってるー!んでモネちゃんがうれしそうに、たらふくスガナミのお皿にタコ盛るー!もー、ばくはつしろ!
結局、スガナミはアヤコさんがまだあるわよーって追加で出してきた酢タコも全部食べて、コージにあれこれ飲まされて、うとうとコテンって寝ちゃった。まぁ、仕事の後こっちに直行したもんなー。そんで、コージもフネこいでる。酔っ払いふたりー。モネちゃんがスガナミに毛布かけてあげて、アヤコさんがコージを居間で寝て頂戴って、連れてってる。それぞれフーフだねぇ。オジーチャンも、ちょっと寝てくる、ってお部屋に引っ込んでった。
ミーちゃんとモネちゃんがあらかたお片付けして、母娘三人とサメ二匹でのんびりお茶。アヤコさんが、ちょっと奮発して玉露買っといちゃった、なんて言いながらお茶淹れて。ミーちゃんは僕たちの前にチョコ置いてくれた。わー、やさしい!ミーちゃんとりょーちんの近況を聞いたり、モネちゃんがこないだのおうちクリスマスの話をしたり、あれこれ話すことはまだまだたくさんみたい。僕も、サメ三朗からコージの近況も聞かなきゃだし、まだまだオショーガツ忙しーね!