サメ太朗 スガナミのアドベント報告を聞く木のサメのキーホルダーがついた鍵でそっと東京のおうちのドアを開けたモネちゃんは、玄関入ってすぐの靴箱の上をみて、「うわぁ!」って嬉しそうだった。いつもモネちゃんやスガナミが鍵を置く木のお皿はいつも通りなんだけど、今日はその隣に、ガラスでできた小さなクリスマスツリーが置いてある。ツリーの緑色がきれいだし、それに赤とか白のガラス飾りがさがってて、そんでてっぺんではラッパ吹いてる天使が乗ってて、めっちゃクリスマス!スガナミのクセに…。
木が触れ合う心地いい音をさせて鍵を置いたモネちゃんが、僕に「キレイだね」ってにこにこしながら言ってくる。ね!キレイだね!そんで、カラリってお部屋のドアを開けたモネちゃんが、また「うわぁ」って言うんだけど、なんていうか心なしか語尾がさっきより下がってる。ん、なになに、どーしたの?って、うわぁ…。
エルディーケー(って名前を覚えた!エヘン!)のお部屋のあちこちがクリスマス!お部屋の奥に僕をタテにしたぐらいの大きさ(実は僕はけっこう大きい)のツリーがあると思ったら、テーブルの上にはなんだかローソクのクリスマスもあるし、サメ棚にもツリーがあるし、本棚の砂時計の横にはサンタさんとトナカイさんがいるし、その下の段にはも一個ワイヤーを組み合わせたみたいなシュッとしたツリーみたいなのがあるし、もー!めちゃクリスマスすぎるだろ、スガナミ!
しばらくびっくりしてお部屋を見渡したモネちゃんが、クスッって笑った。ねー、もー、これ笑うしかないよねー。スガナミ、どんなけクリスマス楽しみなんだよ。子供か!まぁ、でもそうじゃないんだな、モネちゃんとおうちでクリスマスだから、それが楽しみすぎたんだな。そりゃうん、気持ちは分かる。にしても多いけど。ねー、スガナミ買いすぎだよねー!
「もー、先生、買いすぎ」ってモネちゃんが笑いながら、エルディーケーの隣の寝るお部屋を開けたら、そこにもツリーが2個!ガラスを編みあみにしたみたいなのと、モフモフのまるを組み合わせたのみたいなのと。素材が違ったので的な言い訳をするスガナミが目に浮かぶ!ぜったいそういう!スガナミはタンジュンだから。
モネちゃんは「先生もクリスマス楽しみにしてたんだねぇ」ってうんうん、って頷いてて、スガナミの浮かれた気持ちに一緒に浮かれてる。ねー!クリスマスだもんね!イエス・キリストは知らんけど!
もう夜も遅いし、スガナミからは帰りが遅くなるから寝ててって連絡も入ってて、モネちゃんはそういう時無理に待とうとしない。昔、起きて待ってた分、結局次の日起きれなくってしょんぼりしちゃったことがあるらしい。そだよねー、なんだかんだスガナミは体力だけはあるけど、モネちゃんはそれに合わせちゃダメだ。モネちゃんがお風呂に入りに行くので、僕のことはサメ棚の前に椅子を置いてサメ同窓会にしてくれた。そう、ツリーがあるから、僕の場所ないんだよねー。あ、みんな、おひさー!ねぇねえ、お部屋の中めっちゃクリスマスじゃない?
ホホジロザメ(大)が重々しく頷いた。じわじわ増えたぞ、って。そうなんだー。いっぺんに買ったんじゃなくて、それはそれで安心だよ。いっぺんに買ってたら、さすがにスガナミも浮かれすぎてる。ネコザメさんが、今日は何を買ってきたのかなぁって最後の方はみんなで楽しみになっちゃったよ、って笑った。だよねー。スガナミなんてさ、モネちゃんかサメか本にしかお金使わないから、そうじゃないもの買って来たらめっちゃ見ちゃうよね。
僕、あのテーブルの上のローソクのクリスマス好きだな、ってジンベエくんが言う。あれね、なんか日曜日ごとに火つけてたよ。そうするものみたい。そしたら、火がゆらゆら-ってしてなんか綺麗なの。スガナミもうれしそうだったし、モネちゃん来たらあのローソクの全部に火がつくんだなー、って思ったら、僕たちもとっての楽しみだったんだ。って、そーなんだ!それはなんだかとってもいいクリスマスの待ち方だね。てか、あのスガナミにそうさせるクリスマスってすごいな。
あー、でもね、ガラスのツリーの飾りのつけ方が分かんなくて悪戦苦闘してるスガナミはちょっと面白かった、ってイタチザメくんが言って、みんなが笑いながらうんうんってしてるのが笑える。あー、それ見たかったなー。スガナミは結構トリセツ読むほうなのに、それでもなんかできないときって、ものすごーく納得いかない顔するからジワるよねー。でも、そんだけ、ほんとにこのクリスマスを大事にしよう、っておもったんだろなー。モネちゃんのためだもんなー。
そうそう、百音さん、お引越ししたんでしょ?新しいおうちはどんなとこなの?ってホホジロザメ(小)くんが興味深々。あのね、スガナミがすんごいあれこれ条件出してたんだよ。知ってる、しってる!なんかね、電話であれこれ言ってるの聞いてた!みんなで多っ!ってツッコミいれてたんだー、ってやっぱりそう思うよね!結局、ふたりともが納得できるおうちが見つかったよ。んでね、ひとりといっぴき暮らししてる。ここよりお部屋はもう一つ多いんだけど、オヤチンはここの四分の一なんだって!僕のサメ棚も作ってもらったんだー。え、専用いいなぁ、って?まぁ、あのおうち、僕しかサメがいないからねぇ。
サメ同窓会で盛り上がってたら、お風呂からほかほかのモネちゃんが出てきた。僕のはなっつらをちょんちょんってして、旧交は温まってる?て聞いてくれる。ありがと!ほっかほかだよ!僕の背中を撫でながら、モネちゃんはクリスマスなエルディーケーのお部屋をくすぐった嬉しそうに見渡してる。ね!ほんとにスガナミとおうちクリスマスできるんだね!楽しみ!僕ねー、知ってるんだー。モネちゃんが僕とか他のサメたちに、赤いボーシ用意してくれてるの!へへー。
東京のおうちに来た時は、モネちゃんは寝る時も僕をサメ棚のとこにいさせてくれる。おやすみ、って寝るお部屋に行くモネちゃんを見送って、またサメたちとキュウコーを温めてたら、だいぶ夜になって、スガナミがそーっと帰ってきた。ちーさい声で「ただいまー」って言ってる。わぁ!ヨレヨレ!まぁ、明日と明後日のお休み死守するのにめっちゃ仕事してきたんだろな。お部屋の隅にあるモネちゃんの荷物と、サメ棚の前にいる僕を見て、それだけで溶けそうな顔になってる。おーい、だいじょぶかー。
ジンベエくんなんか、あれだけであんなに溶けちゃってたら、百音さんに会ったスガナミはすってんころりんしちゃわないかな、ってハラハラしてる。うん、するね、すってんころりんするよ。まぁ、スガナミだし、大丈夫じゃん?知らんけど。
お部屋がクリスマスいっぱいで、そこにモネちゃんもスガナミもいて、僕もサメ仲間もシューゴーしてて、もうばっちり!おうちクリスマス、楽しみだねー!