たまにはちゃんとお仕事もするんですここ1週間足立を見ていない。
どうしたものか…と部下に問うと、
「足立さんなら、仕事部屋にずっと籠ってます。例の組織の情報収集みたいで。」
という回答が返ってきた。
いつものあいつなら、潜入して情報を掴んでくることをすぐし出すのだが、
(そうしていつも俺に仕置きをうけるわけだが。)
今回は本来の自分の能力であるハックさばきで情報収集をしているようだった。
確かにあいつのハッキング能力は群を抜いている。
それだけでも十分欲しい情報を収集できるはずなのだが、生の情報も欲しい、というのがあいつの言い分だ。
だが今回それをしていないということは…。
(あいつ、能力フル活動し続けているわけじゃあるめぇな…。)
俺は心配になって、足立の仕事部屋へと向かった。
「足立、入るぞ。」
軽くノックをして入ると、部屋は真っ暗だったが、
カタカタとキーボードをたたく音が奥から聞こえた。
その音を頼りに奥へと進むと、足立の後ろ姿があった。
「足立…?」
顔を覗き込むと、足立の目からは血のような涙が零れ落ちていたのだ。
「足立!おい、手を止めろ!お前、能力使ってるな?!!」
「ダメ…止めるな…今追われてるから…!」
足立は必死にキーボードをたたきながら、いろんなコードを打ち込み続けていた。
目も真っ赤になっていることから、
おそらく彼の能力……脳内処理の限界突破を使っているのだろうというのは一目瞭然だった。
少しして、足立がなだれ込むように椅子に身体を預けたので、なんとかひと段落したのだろう、ということが分かった。
「お前、こんなになるまで能力使うなと言っただろう。」
「だって……あなたが潜入やめろっていうからこうしたんですよ…?」
ぐったりした足立を姫抱きにして、近くのソファへと足を運び、抱き抱えたまま座った。
「あぁ…遼太郎さんの匂い……。」
「ったく、だからってそんなになるまでやる必要はないだろう。」
「ダメだよ…そうしたら僕の価値、なくなっちゃうじゃないですか…あなたに捨てられる。」
「!!?!」
項垂れるようなか細い声で呟いた足立の言葉に俺は驚いた。
あれだけ愛を注いでいても、こいつはまだ俺が離れていく不安を抱えているというのだろうか。
「透。」
「…?」
「誰が何と言おうと、お前がただの人間だろうと、俺はお前が隣でないと許さんぞ。
俺の隣以外のところに立ってみろ。相手を殺してでもお前を取り戻すからな。」
「それは駄目…!あなたがまた傷ついちゃう。」
「だから無理をするな。隣にずっといろ。」
優しくキスをして、目を瞑らせると、足立は俺の腰回りに腕を回して静かに眠りについた。
俺はただただ、あいつを少しでも安らげるように、ゆっくり頭を撫でて、抱き枕になり続けたのだった。