年末のんびりな堂足おこたでの醍醐味。
それはまさしく「鍋」であろう。
土鍋をど真ん中に置いて、少しずつ具材を足しながら、
体を温める食材を食べていく。
はふはふとたまに熱さを逃がしながら、
体に熱を全体に巡らせるのだ。
そうして全身じんわり汗が出始めるくらいに温まったところで、
締めくくりのおじや。
おじやの緩やかな温かさでクールダウンもできたところで、今日の夕飯は終了だ。
「堂島さん、食器ありがとうございます。」
「鍋奉行やらせちまったからな、これくらいは、だ。」
冷えた手を真っ先におこたに突っ込み、ほっくりとした顔をした人。
僕より一回り程年上であり…恋人の堂島さんだ。
「今年も終わりますねぇ…。年末年始の勤務どうなってます?」
「わけぇのに任せてあるから、呼び出しのときくらいになっている。」
「そうですか…じゃあ一緒に年越しできますかね…!そば買っておきますね。」
僕は出所後、堂島さんと同居している。
どちらともなく、互いが必要だと告白し、大笑いしながらも、
誓いの口づけをしてプロポーズをし合った。
照れ臭いシーンだけど、お互い大事な想いを伝えられた大切な思い出。
こうやって穏やかな生活をとれているもの、堂島さんが傍にずっといてくれるからだと思う。
「ねぇ、堂島さん。最近お互い忙しかったじゃないですか。
…その、ちょっと触りたいなぁと…。」
上目遣いで堂島さんを見ると、ビール缶を片手にこちらを見る堂島さんと目が合った。
「お前…そういう強請り方、俺が弱いの知ってるだろう。」
ぽりぽりと頬を掻きつつも、ビール缶をテーブルの上に置くと、
手招きで僕を呼び寄せると、堂島さんは僕の背後から覆いかぶさるように座ってきた。
「お前、結構身体冷えやすいよな…。」
ぎゅっと腕一杯に抱き締められ、耳元で囁かれる。
堂島さんの吐息は、先ほどの鍋以上に身体の熱を高めてくれるのを、
本人はわかっているのだろうか。
「でもあなたからもらう熱が一番温かくて気持ち良くて…欲しいものですよ。」
「俺も、お前の笑顔からいっぱいあったけぇ熱をもらってるよ。」
すりすりと背中に額を擦り付けられあと、
ゆっくりと振り返り、キスを求める視線を送ると、ゆっくり口づけを返された。
若い頃だったら、こんな熱烈なキスだけで、即物的に性欲を掻き立てていくのだろうが、
なぜだか、こうやってじっくり熱を感じていくだけでも幸せで満たされていく。
(僕もいっぱい感情が分かるようになったってことかね。)
そう思い、心の中でふっと笑いつつ、
僕は、堂島さんから贈られるであろう、更なる熱を待つ態勢を整えるのだった。
「でもやっぱり堂島さんからあつい熱を注いでもらうのが一番かな?」
「おら、よそ見してるなよ、透。もっと奥、開いて注いでやる。」