足立さん小話■出所直後足立さん
塀の外に出た僕は、一人フラフラと街中を歩いていた。
10年経って、外はまるでおとぎ話の世界のような感覚だ。
七夕が近いため、歩道には笹が飾られている。
そして、暗くなった街では光で七夕を演出している街道もあったり。
…まるでクリスマスの夏バージョンのようだ。
こんなことが10年前にもあっただろうか。
否。
こんな演出はなかったはず。
…僕が気をやってなかっただけだろうけど。
そんなことを考えながら歩き続けていると、
家電店が目の前に広がっていた。
そして目の前には何台かテレビが並んでいた。
10年前。
この時代の最先端のひとつだった機械であるテレビ。
こいつのお蔭で僕は奇妙な経験を得ることになる。
テレビに近づき、そっと画面を触る。
…するとどうだろう。
テレビの画面が歪んだのだ!
驚いた僕は慌てて手を離す。
…アメノサギリの力はもう残っていないはず。
そうだと思っていたのに、まだ「このチカラ」は僕の中にあるのか。
この時の僕は、まだこれから起こる事件について、
何も気づくことはできなかったのだった。
…再び僕があの世界…『マヨナカテレビ』の世界へと足を踏み入れるまで、
あと数日の出来事った。
…つづかない。
■一人愚痴るからのゲス立さん
まったくさぁ、せっかく先月僕の香水が発売したのに、
その日にちが花村くんのお誕生日とかぶってたっていうじゃない?
そりゃーそうなると正義のヒーローたちの話題の方が優先されちゃうよねぇ…。
え?
僕も結構人気だから結構優先される?
そ、そうなの…(照)
あ、いや、僕そんなキャラじゃないでしょ~。
どこにでもいそうなやつじゃない?
(あのおばあちゃんみたいに、誰でも良かった人物になるくらいだしね。)
まぁでもさ。
当日は優先されなくても、そのあとなにかしらで僕のターンが回ってきても良くない?
…たとえばわんどろが回ってくるとかさぁ。
…結局、僕のことなんてどーでもいいってわけでしょ。
あぁ、君たちは僕のこと応援してくれるんだったね。
じゃあ特別にこの言葉を送ってあげよう。
『ありがとう、共犯者さん?』
これからも僕のオネガイ、聞いてくれるよね?
連絡きたら応じてくれるんだよね?
くくっ…まったく、君たち従順にもほどがあるよねぇ!ハハハっ!
バーカ。