逮捕後の黒足立さん&堂島さんは?今なんて言った?
僕は自分の耳を疑った
だから、お前のことが好きだと言ったんだ、足立
あなたね、自分が誰に告ったか、わかってます?僕犯罪者なんですけど
あぁ、わかっているよ
日本語が通じないらしい。
はぁ~…田舎刑事とはいえ、そこまで頭弱いとは思いませんでしたよ
あなたに好かれる理由がわからないし、
僕はあなたのことなんて好きじゃないです
利用できるからくっついて歩いていただけ
それを恋だと勘違いしたなら、あなた相当な馬鹿ですよ、堂島さん
…違う。
本当は大好きだ。
何もかも失って、飛ばされてきたこの街で。
彼は僕の空虚を埋めてくれていた。
温かい居場所をくれた。
彼が僕の頭を撫でたり、肩に腕を回してくっついてきたり。
そんなひとときが嬉しかった。幸せだった。
「お前は家族みたいなものだからな。いつでもうちに来い。」
そんな言葉までもらえたのに。
壊したのは僕だ。
一度壊してしまったものは直しようがない。
加えて壊れた部分にはもう、別の者が穴埋めをしてしまっている。
そう、太陽のようなあの子がだ。
だからもう僕には何もない。
あの温かい居場所は、もう僕のものじゃない。
それなのに。
あなたはどうして僕のことが好きなんですか。
…何で好きかって?
それはお前の本当に笑った顔が可愛くて、愛おしかったからさ
悠が来る前、酒に酔ったお前が言っていた
『こんな温かい場所、僕には眩しすぎる。だけどそこにいていいと言ってくれるなら…
願ってもいいのなら…そこにいたいなぁ。』って。
幸せそうに微笑んだお前の顔は今でも覚えているよ。
俺はそんなお前の『温かい場所』になりたいと…そのときから思っていたんだ。
だから観念して俺と同じ場所へ堕ちてこい、足立
俺と同じように馬鹿になって、ひたすら幸せになれ…俺の傍で、な
あーぁ、あんた本当にそれでいいの?
こんなお荷物抱えて、貧乏くじのなかでも最強に最悪だよ?
俺にとっては最強に幸せだよ
…あっそ
じゃあ絶対振り向くことがないけど尻尾振って待っていれば?
田舎刑事のおバカさん
そう言って足立は席を立った。
下を向いた顔には一筋の涙が通っていた。