ドラゴンな堂足あるところに、番を失くした一匹の金色の龍がいました。
彼は番を失くした寂しい思いを秘めながらも、
近所の子龍たちに優しく、周りに慕われる龍でした。
ある日、傷だらけの黒い龍が彼の縄張りへ転がり込んでしました。
手当てをしようと近づくと、黒龍は威嚇の雷を呼び寄せ、
彼を近づけようとしません。
「お前、そのままじゃあ死んじまうよ。頼む、手当てをさせてくれないか。」
すると黒龍はこう言いました。
「そういう偽善、いらないんだよ。
あんたはただ、自分の寂しさを埋めたくてやってるだけなんだろう。
相手のことなんて考えずにさ。そういうの、迷惑なんだよ!」
そうして黒龍はさっき以上に雷を張り巡らせます。
そこで初めて金龍は、自分が今までしてきたことが、
自分よがりだったかもしれないと思い始めました。
でも、いつも接している子龍たちは笑顔で溢れていたのです。
そこに嘘があったでしょうか。
いいえ、そんなことはなかったでしょう。
金龍は思い立ち、黒龍に問います。
「それじゃあよ、黒龍。お前は…死にたいのか?
そんなに強い目をもって俺を睨んでいるのに、生きたいと思っていないのか?」
少し黙った黒龍でしたが、ふと大粒の涙を流しながらこう答えたのです。
「……生きたい。」
「そりゃ生きたいに決まってるでしょ!
でも僕なんかいらない子だから…忌み嫌われる『黒』を宿す龍なんて…
この世界には…いらないでしょう?」
そこでようやく、金龍は黒龍が手当てを拒んでいる理由を知りました。
彼は生きたいけれども、生き抜いたところで誰も求めやしないのだと。
とても悲しい、悲しい理由でした。
「生きたいなら、俺がお前の生きる理由になってやるよ。
『黒』だって、素敵な色じゃねぇか。闇夜に紛れても、
お前の『黒』はキラキラ星輝くように鱗が光るから、俺は好きだぞ。
だからお前も…俺の生きる理由になってくれないか。」
そこまで言われると、黒龍は照れ隠しのように金龍の周りを絡み付くように泳ぎました。
「うぅ…しょ、しょうがないですね。僕の気が変わるまでですからね…?」
そうして、金と黒の龍は仲睦まじく、永遠を生きていくのでした。
…金と黒の双龍が災いを払う象徴として人間に奉られるのは、
もう少し時が経ってからのお話…