向ける 月のような笑みを浮かべて獄族は見えなくなった。
さて、どうするか。
始は考える。
誰何の声に「ひみつ」などというふざけた答えをするような獄族だ、敵意はないと考えた。
この男のおかげで、厄介な陰の種族も消えている。
そう考えればしばらく放置しても構わないはずだ。
街としての対策はそれで終わり。
さて、どうするか。
考えるのは自分のこと。
秘密というからには答える意志があるのだろう。
街を守り、人々が穏やかに暮らせていれば外に興味はなかった。
けれどあの男には興味が湧いた。
数日後の日没近く、始はひとり森へと向かう。
「ひみつ」の獄族に出会うために。