ひみつのはなし 紫の瞳と長い黒髪、強い陽の気を持つ人間とは何度か会った。
会ったというか、森にいたら探された。
なるほど、この男は俺に興味があるのだ。
それはとても喜ばしいことだった。
俺は俺で、この男に興味がある。
どうして人間なのにこんなに眩い光を持っているのか、とにかく知りたかった。
森で出会えば少しずつ言葉を交わした。
強い陽の気を持ってはいるけれど、人間なんて脆く儚いものだと俺は知っている。
だから男がいつでも逃げられるよう、距離を置いて言葉を交わした。
あのときの俺を「警戒心の強い猫みたいだった」らしいけど、それは逆だと思うけれど。
そう言えば言っていなかった。
獄族が誰かに執着するのって、人間で言う恋に近いものなんだよ。
気がついたのは長い時間が過ぎてからだったけれど、俺は、始を愛していたんだ。