ぼんやりしたところがない 獄族の俺は太陽が出ている間は動けない。
薄暗い森の奥の奥で寝る。
今日も昨日と同じように寝て、夕方に目を覚ました。
このところ、始と会うのが面白い。
あの街は獄族にも多少の慣れはあるらしく、俺が行っても恐くて叫ばれるなんてこともない。
だから気が向けば街へ行く。
さいきん気がついたのは、俺には始が始だとわかるということ。
人間は陽の種族だから人間だっていうのはわかるんだけど、個体の判別が俺にはできない。
ぼんやり光っているような感じというか、とりあえずそこにいるのはわかる、っていうくらい。
だけど始は遠くにいてもそこに始がいるってわかる。
ぼんやりしたところはなにひとつない。
面白いよね。
そのうち、俺より長生きをしている獄族に話してみようかな。
彼ならこの現象を知っているかもしれない。
ちなみに始に話したら、目が悪いんじゃないのかって言われた。
ちゃんと見えるよ、失礼だな。
ただ、人間の始が獄族の俺を心配するっていうのは面白いと思った。