最初のはなし 初めて出逢ったときのことは強く覚えている。
大きな街と近い処にある森を歩いていたのは昼と夜のはざま時。
近づいてきた陽の気が珍しく、つい立ち止まってしまったのだ。
そうして現れたのは花金鳳花のような衣と艶やかな黒髪の男がひとり。
真昼の太陽よりもなお強い光を放つ人間なんて千年を越えた生の中でも見たことがない。
強さと美しさを合わせもった瞳が俺を捉えた。
瞬きよりも短い時間でその男は俺の心を掴んでいく。
嗚呼、と知らず声が溢れた。
まばゆいほどの陽の気を浴びてしまってはもうここから動けない。
「誰だ」
発する言葉すらも強さを帯びて俺を魅了する。
さて、なんと答えてみせようか。
一歩踏み出し、俺は笑った。
「ひみつ」